妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします!分割版 作:tom200
10月20日土曜日。
公休扱いで京都旅行にやって参りました!
…なんて浮かれているのは私だけ。お兄様も水波ちゃんもお仕事がある。お兄様は四葉の依頼がメインの下見に、水波ちゃんは私の護衛だね。そこに生徒会のお仕事だけの私。本当は行かなくてもよかったはずだけどね。
お兄様は数日前、葉山さんとの話し合いで四葉から護衛の応援を頼んだらしい。
だから私が水波ちゃんと自宅にいても問題はないはずだけれど、お兄様的には護衛がいるからといって東京に置いて行く考えは初めから無かった模様。流石のお兄様でも京都と東京を一瞬で行き来することはできないから。四葉の護衛や水波ちゃん、そして私の実力がどうの、というより狙われる可能性がある状態で自身が離れなければならない状況がNGだった。公的な理由を付けて任務にきていることを隠すことも重要なのだけど、お兄様的にそっちを理由に私たちを連れてきたというより多分こっちが本命な気がする。
どのような理由であれ、まずは三人での京都列車旅が始まったのだけど、このトレーラーってすごいね!車輪がある!!なのにリニアとほとんど速さが変わらないとか。科学の進歩ってすごい。
キャビネットが収容されていくところなんか特撮の合体シーンみたいでじっくり見ちゃった。
このまま中で過ごしてもいいのだけど、もっと広いところで景色を見ながらリラックスできるところがあるならそちらの方が良いだろうと移動してきた。
わあ。景色すごい。リニアとはまた高さが違うから違って見えるね。目を輝かせていると二人から温かい視線が。…はしゃぎ過ぎましたね。
「やはり今度時間ができたら旅行に行こう。できれば長距離の列車に乗って。それとも飛行機がいいか?だが飛行機も船も途中から景色が同じだろうからな…」
お兄様が何やら考え込んでしまったけれど、海も空も好きですよ。景色が一緒でもテンションは上がる。
でも確かに電車が一番見るものが多くて楽しんでいるかも。
パネルを操作してお茶を貰って――それもロボットアームが運んできてくれるからアミューズメントパークみたいで心が躍るのを、また二人に温かい目で見られたりして――一服していると、同じトレーラーに乗り合わせた乗客が。エリカちゃんだ。
「あれっ、達也くん?!」
お兄様は人の気配を察知してカップをサイドテーブルに置いていた。流石お兄様、反応が早い。
水波ちゃんがカップを持ったままでいたのは迎撃用みたい。単純にお茶入りを投げつけるだけでも相手が怯んだり動きを阻害することもあるからね。
私は何も気づかずお茶を楽しんでおりました。警戒心が無くて申し訳ない。
「おはようエリカ」
お茶を含んでいたために、お兄様が先にご挨拶。
私も口の中身が無くなってから挨拶を交わす。おはよー。
「エリカもこのトレーラーだったんだな」
「ホント。すごい偶然だねぇ」
お兄様の前に自然と腰を下ろして驚きをみせながら頷いているけれど、それもそのはず。乗り合いはランダムだから同じ時間、同じ目的地を目指しても知り合いに会うなんて確率はかなり低い。
こうなることを知っていたとはいえ、何百分の一くらいの確率。
これもまた縁によってだと思うけど二人にそういったことにときめく色は見えない。…もう友人関係に落ち着いてしまったのだろうか。
以前のエリカちゃんには、お兄様への憧れを感じた。
けれどいつしか、――そう、壬生先輩と同じ目になっていった。
遠くを走って行く後ろ姿を切なそうに見つめているような。お兄様はいつだって隣を走らせてはくれない。
歩調を合わせる前に全てを片付けて安全を確保してからじゃないと一緒に歩いてはくれない。
エリカちゃんは引っ張っていくか、一緒に困難を乗り越えたいタイプだから。
お兄様に追いつかなくちゃいけない、なのに一向に手は届かず、お兄様の背中ははるか遠くにある状態が続くと手を伸ばす気力も失せてしまうもの。
これでエリカちゃんが守られることを良しとする性格であれば可能性はあったのかもしれないが、彼女はただ守られるお姫さまではいられない。
せめてもう少し手が届くところにいてくれれば違ったのだろうけれど。
分を弁えるというか、身を引くというか、潔い。悪く言えば人との関係に対してあきらめが早い。期待しない過去を持つ人に多く見られる傾向である。
「うーん、手足を伸ばせるってやっぱ、良いね」
「確かに、開放的でいいわよね」
「お、深雪もわかるクチ?気にしないタイプかと思ってた」
「そこしかないのであれば気にならないけれど、せっかくこんな景色が綺麗に見えるところで観られるならそっちの方が良いわね」
「あ~、私はせまっ苦しいのは鍛錬だけで充分」
あら、エリカちゃん自分から言っちゃうのね。
家の事情話すのは拒絶気味だったけれど、人前で心置きなくクソ親父と父を罵れるくらいには気心が知れたということかな。
ちなみに鍛錬は剣の修行じゃなくてお茶でした。茶道は確かに狭苦しい場所だね。侘び寂び。
エリカちゃんも十分似合うよ。
お兄様もそのことに賛同してエリカちゃんの雰囲気が似合ってると伝えると、エリカちゃんはわかりやすい照れ隠しをしてそっぽを向いた。可愛い。
それからしばらく一緒にお茶をしていたのだけど、科学の進歩は良い所もあるけれど悪いところもある。早く目的地に着いてしまうことだ。もっとたくさんおしゃべりしたかった。
お互いのキャビネットに戻ってそれぞれ京都駅へ。
そこには先に到着していた西城くんと吉田くんが待っていた。早いね。おはよう。
そしてエリカちゃんともすぐに合流してホテルへ向かうためコミューター乗り場に向かったのだけど、お兄様が振り返る。
その視線の先には――あらぁ。キラキラの笑顔を浮かべた可愛いゴールデンレトリバーが駆けてくるじゃありませんか。
「達也さん、深雪さん、水波さん」
お兄様の前に立った光宣君は会えて嬉しい!を前面に出していた。
「おはよう光宣」
「光宣君!おはよう。元気そうね」
「ええ。おかげさまで」
眩しい。きんきら笑顔。美人で華麗で可愛いってどういうこと?本当、属性と設定もりもり。溢れちゃってるよね。もうこれ以上乗り切らないってくらいてんこ盛り。
エリカちゃん達が絶句しています。とんでもない美少年ですからね。仕方ない。
エリカちゃんもだけど西城くんもお目目見開いて口も唖然、呆然を絵に描いたらこうなるという見本のように開いてます。
吉田くんだけは口元に手を当てているので中身は見えないけど。古式魔法師で符術を使うからそこに手を持っていくのは無意識だったのかもね。
それにしてもお上品に映る。平安時代とかのお貴族様が口元に手をやる感じ。
「びっくり」
エリカちゃんのすごい所は何でも口に出せるところだよね。
「まるで深雪の男の子版だね…こんなに整った顔立ちの子が深雪以外にもいたなんて信じられない」
だよねぇ。とんでもない美貌ですから。
お兄様がエリカちゃんにそれを本人目の前で直接言うのか?と目を細めているけれど、むしろそれが彼には新鮮みたいで嫌そうな気配は全く見当たらない。
光宣が気にしていないのなら、とお兄様は彼の方に向き直り、予定の確認をする。
「光宣、迎えに来てくれたのか?予定ではホテルで待ち合わせだったはずだが」
「ええ、そうなんですが、このくらいの時間だとうかがっていましたので」
待ちきれなくて迎えに来ちゃったのかぁ。可愛いね。水波ちゃんも顔は赤いけど日記のやり取りのお陰か前回の時ほど緊張感はないみたい。そして多分だけどキュンキュンしてるよね。わんこが喜んでる姿可愛いもんね。
わかるよ、と水波ちゃんの手を握ると水波ちゃんと目が合って二人して頷いた。今、私たちの心は一つだった。
その間にお兄様たちは時間を無駄にすることなく自己紹介を交わしていた。
お兄様も意地悪のつもりはないんだろうけど、九島さんちの光宣君だ、なんて紹介したことで光宣君の眩しい光が若干明りを落した。
気を悪くした様子はないけれど、十師族として特別に扱われたくないとの表れか第二高校一年の、と自己紹介していた。
特別扱いがいやだという理由も無くは無いけど彼の場合、過去に相手を気後れさせることがあったから配慮したのかもしれない。
魔法師はどうしてもその背景の家のことを無視できないから。
思春期特有の気難しさより、相手との距離感が空いてしまうことを避けようとしたのだろう。
だけど、その後のエリカちゃんと吉田くんの紹介を聞いた時には、千葉家、吉田家と気づいたのが顔に出ていた。
こういう取り繕いができないところはまだ人馴れしていない少年らしくてお兄様と顔を見合わせて微笑む。微笑ましいよね。
お兄様もだいぶ光宣君に心を砕いているご様子。直接会えなくても日記の効果は結構大きいみたいだ。
色々影響が出ている。それも良い方向に。これからもっと仲を深めていけたらこれからの未来にもいい影響を及ぼせるだろうか。
挨拶もそこそこに、一旦荷物を置きにホテルへ向かい、コンペの会場となる京都新国際会場に向かった。
パッと見、大人数が潜伏できるような老朽化したビルや見晴らしのいい高層の建物も一見見当たらない。
「…でも逆に言えば、少人数が分散して隠れるには向いている」
「そうかなぁ?野宿して隠れていられるほど深い山じゃないと思うけど」
「山の中で寝泊まりする必要は無いんじゃないか。当日隠れているだけでいいんだろ?だったら場所は幾らでもありそうだぜ」
皆ちゃんとお仕事してるね。
お兄様もそれとなく周囲を警戒するよう見渡している。水波ちゃんも、四葉式キャンプを経験しているだろうからね。どこに潜伏しやすいか、こういう悪条件でも隠れられる場所は、等の視点からチェックしてる。
光宣君は皆の言動を興味深そうに見つめていた。こうやってグループ活動を目にすることも珍しいのかもしれないね。
そんな彼にこそっと近づいて。
「皆、親しみやすそうな人たちでしょう?」
「ええ。日記にあったご友人の方々ですよね。お名前は伏せられていましたが、すぐに分かりました」
「ふふ、自慢の友人たちよ」
光宣君、日記を始めてからも数日以上体調を崩していたらしく、ずっと日記を読み返していたらしい。それこそ暗記レベルで覚えてるみたい。
昨日は打ち合わせのため音声のみの電話をしたのだけど、もうその時点で会えるのが楽しみだというのが声からも溢れていた。
今はパレード使ってないのはわかっているのだけど、さっきからね、ぶんぶんと振り回されている尻尾が見えるんですよ。ブオンブオン音が聞こえ、風圧を感じている気さえする。
頭を撫でたいけどここは視線が多すぎる。せめてホテルに戻ってからだね。
ニコニコと二人で笑っている間、私たちの知らないところでこそこそ話す皆の姿があった。
「ちょ、ちょっと達也くん!あれ、放っておいていいの?」
「いいの、とは何がだ?」
「あー、と。近くねぇか、あの二人」
「ああ、微笑ましいだろう」
「「「……え…」」」
「深雪がうずうずしているのがわかるな」
「「「…は?」」」
「水波、カメラは?」
「すでに」
「でかした」
「…どーなってんだ?」
「達也が深雪さんに男性を近づけているのに威嚇もしないなんて」
「でも兄公認ってわけでも無さそうよね…」
「ところで警備の相談はいいのか」
ニコニコ会話をしていたら、お兄様たちの方針が粗方決まったよう。上手く誘導ができたようだ。
私たちも会話に参戦します。
というか藤林さんと従兄だと言うと皆あっさり受け入れたね。彼女と親戚なら実力あって当たり前、みたいな。
十師族云々よりそっちの方が信用度が高そうね。それ等の事情から詮索無用ってのも同時に共通認識したみたいだ。順応力も高い。
吉田くんは囮になるためエリカちゃん、西城くんと共にこの周辺を探るらしい。いるかもわからない人捜しよりも炙り出す方が早いとのこと。思考が武闘派。
そしてお兄様は市内の方を担当することに。光宣君の案内の腕の見せ所だ。期待してますよ。
「じゃあ達也、よろしく頼むよ」
「ああ、幹比古もな」
「吉田くん、西城くん、エリカ、また後で」
「うん、ホテルでね」
囮役頑張って。でも無茶はしないでね。
彼女たちにお兄様が便利アイテムを渡しているのを見ながら心の中で祈った。
――
二手に分かれてやってきました観光スポット。
最後に周が確認された場所付近ということだけれど、黒羽の捜索部隊とやり合った最後の場所が一本ずれたらこんな人の多いところだとは。
すぐ先に行けば人気のない山奥で、鬼門遁甲が方位を惑わす、逸らさせる魔法であることを考えるなら逃げた先は森の中と考えるのが自然なのだろうけれど、全く人気がいない場所なら方位を惑わされても人を探知することに集中すれば見つける術がないわけではない。特に黒羽にはそういった気配を読むことに長けている人材が多い。なのに周の逃げたと思われる方向が山に向かっていたのは逆に不自然と考えられた。
森の中を逃げ回るより、たくさん人がいるところに逃げ込んだ方が紛れ込める分回避率が高くなる。私たちの知らない何らかの方法で逃げた先を誤魔化したか。
お兄様は地図とにらめっこをして思案顔。
そしてしばらくして下した決断が市街地を回ることだった。
逃げていった方向には拠点の鞍馬山があるが、そちらに人気は少ない。
「お兄様は人が多いところに隠れているとお考えなのですね」
周囲に人がいないとはいえ、その名を口にすることは避けた。
私の言葉にお兄様が頷くのを見て、光宣君もすぐにルートを変更する。
「ある程度人通りの多い場所で、且つ伝統派の拠点がある所というと…清水寺の参道、金閣寺の近隣、それから天龍寺の裏手でしょうか」
「意外に少ないんだな」
「京都は本物の伝統を受け継ぐ宗派の勢力が奈良以上に強いですから。名前だけの新興派閥は周辺の山の中に押しやられているんですよ」
「奴らの『伝統派』という名称はもしかして、伝統に対するコンプレックスの表れなのか?」
お兄様の皮肉たっぷりの独り言に、水波ちゃんは隠すことなく呆れ顔。私に隠すこともしない。
これは別に主として気を使われていないというわけではなく、気心が知れてきたからの態度だった。
それくらいで不快に思わないからね。むしろバンバン出してくれていいよ。そんな遠慮もしない水波ちゃんも可愛いからね。
そんなことも考えつつお兄様の発言にはちょっと笑ってしまった。お兄様の穿った思考って面白いよね。たまにすごい考えすぎでは?って時もあるけど。
光宣君はまだそういったお話には触れたことが無かったのか、特になんとも思わずといった感じで自然と会話を続けていた。
お兄様も気にされることなく何事も無かったかのように二人会話を続けていて、水波ちゃんと目を合わせて苦笑した。
その様子を見て光宣君がちょっとだけ首を傾げるのもまた私たちの笑いを誘うのだけど、これは今日の水波ちゃんの日記に期待かな。
水波ちゃん、文章だと意外と容赦なく書くタイプ。
だけど二人の話を聞いて改めて思うのは、伝統派の人たちは自分たちにとって都合のいいようにしか物事を考えてないということ。
第九研のスローガンが現代魔法と古式魔法の融合というところだけに目を奪われて、目的が古式魔法の術理・術法を取り入れた現代魔法師の開発にあったという項目をすっかり見落としたのか、聞き流したのか知らないが、それで自分たちの魔法が盗まれたと騒ぐのは愚かとしか言いようがない。
というか自分たちの秘術をリスクも考えないで、ホイホイ他人に託して開発してもらおうなんて都合がよすぎないだろうか。
しかもその際の契約書、説明書等にも提供の見返りとして新魔法の提供という文字はどこにも記載が無かった。
一方的に盗まれた!というのは明らかな言いがかり。騙されたと騒いだところで弁護のしようもない。裁判なら負けている。
政府のことを信頼していた?そんなバカな。
いつの時代だって政治とは国のためにある機関であり、個人を守るために動くものではないと歴史が教えてくれているのに。
彼らとて元はそんな政府の暗部として付き合ってきたんじゃなかったのか。スパイや暗殺業に手を染めている歴史があるというのなら彼らが絶対に信を置ける相手じゃないことはわかるでしょうに。一体何を学んできたのか。
呆れて物も言えないが、一度走り出した手前、止まるタイミングを失ったのかも知れない。冷静に考えればわかるからね。
…ただし、もしかしたら当時、唆して参加させた輩がいたかもしれない。
その辺りは闇の中。当時を生きていない私には知りようがない。
話はなぜ『九』と敵対することになったかということ、伝統派がなぜ外国人を受け入れるような真似をしたのかというところにまで展開したが、お兄様が今考え得る可能性の話で皆納得した。
身も蓋もなく言ってしまえば要は引っ込みがつかなかったのではないか、と。
『九』に対しては、恨むべき政府を恨まず、その矛先を同じ被害者とも取れる『九』に向けて逆恨みをしたことを理解しつつも止まることもできず、理不尽に攻撃した結果、その理不尽に対して反撃されてもおかしくない、と己の影に脅えているのではないか、と。『九』の人たちがわざわざ伝統派を駆逐するまでの理由はないのだけどね。目の曇った人たちにはそれも理解できない。きっと何かを企んでいる、と疑心暗鬼に囚われている。
そんな中今頃になって、伝統派と謳っているわりに外国人を受け入れたのはなぜか、との疑問に対して人手が足りずしぶしぶ利用してたら取り込まれた、とこれまた情けない理由を挙げられた。もしその通りならこれまた身もふたもない話だ。
言い知れない虚無感が私たちを襲う。
…まあ、アレだよね。そんな奴らのせいで迷惑を被っていると思うとそうなるよね。
特に最後の件では光宣君の落ち込み具合が凄かった。危うくお宅もそうなる所だったもんね。
…パパとの関係は大丈夫?元々縁が薄そうだったから心配。光宣君の家族全体でなく、光宣君だけ変に絡まってうまくいってない感じなイメージだけど。
出生を知っている父親と祖父との関係が何も知らない子供たちにも影響し、光宣君が孤独になりかけていた。
原因を作ったと思っているお祖父ちゃんが憐みから可愛がっていたところ才能が開花し、けれど思うように力をふるえないことを憐み、更に甘やかすことで家族間に蟠りと歪が生まれ――、という負の無限ループ。
何も知らない子供にとってみれば本当にいい迷惑だ。
一生懸命自分にできることを頑張っただけなのに異質と見られてしまうなんて。
ご当主も偉大な父を持ったからかは知らないが、真っ当に努力すればいいものを。…というのも難しい話か。
しょせんは他人の家の話。そう割り切れれば楽だろうが、友人がこうして落ち込んでいる姿を見て何も思わずにはいられないわけで。
「光宣君、早く次の観光スポットへ行きましょう。京都旅行楽しみにしていたの」
わざとらしく明るい声を出して笑顔で言えば、一瞬きょとんとした美少年は、続けて花が開いたような笑みを浮かべて。
「そうですね。せっかく来てもらったんです。楽しんでいってください」
私の意図を汲んでくれて、先頭を歩きだした。
うんうん。尻尾もふりふり戻りましたね。よきよき。
天龍・金閣寺ルートと清水寺は分かれている。どちらも中継地点のように京都新国際会議場を通る。
合流すべきかお兄様に問えば、時間が惜しいと却下。まあ、別行動にしているのだから合流する意味はないよね。
ということで清水寺へと出発した。
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