妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします!分割版   作:tom200

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古都内乱編㉖

 

 

デザートまでもしっかりいただいて大満足した後、お兄様は店員に声を掛け動き出す。相手の動きが視たい、ということだったけれど、一体お兄様には何が見えたのだろうか。

ここからは原作と同じ流れで奥座敷まで案内され、伝統派の神輿にまで担ぎ上げられた男性と対面を果たす。

だが、この人物はただなし崩しにトップに立ったのではなく、その優秀さから集団をまとめ上げたリーダーのようだ。

静かに動いていたこちらの監視を命じたのは情報収集の一環であり、事を荒立てるつもりのない真っ当な感覚を持っている人だった。

伝統派として九島家憎しと決起した組織ではあったが時が経つにつれ事態を把握し、己と組織の過去を見つめ直し、その座を下りられた人だった。

この人が凄いのは、無責任に下りたわけではなく、周囲を説得して大人しくさせていること。

自分の派閥の者には一切、大陸の客人(・・)を迎えさせなかったことを徹底させていた。

彼らは二度と国に歯向かったなどとレッテルを張られるような過ちを犯す気はないのだ。

だが、引っ込みの付かない一部の連中は過ちを忘却の彼方に置き去りにし、そういった者を不用意に自陣へと招き入れ、案の定御すこともできず内部に巣くったがん細胞に掌握されてしまっているのだとか。

近しい者だったからこそできた調査結果の内容に、私たちも声が無い。

同じ伝統派一派。九の付く家からの報復を恐れた彼らは、大陸の連中に掌握された一派を見張り、九の動向も見張っていた。何かが動き出していることはわかっていたから。

 

「腕利きの探偵ということでしたが、所詮は噂。九島家相手には荷が重かったか…」

 

ここが突き止められたことにため息を漏らしているけれど、あのハードボイルドさん、一般人にしてはよくやった方だと思いますよ。ただ、魔法師相手には素人だっただけで。

少しは対魔法師用に知恵を授けてあげればよかったのに。いや、彼もまさか九島相手に丸腰知識で立ち向かうとは思っていなかったのか。

話している最中こちらの御隠居さんは、光宣君にも、お兄様にも敵対する意思を感じられなかった。

むしろ二人の返しに感心し、周の消息を語る際には結界の秘密を当てられて喜んですらいた。自身の魔法に誇りを持っているのだろう。

だからこそ、彼は自信をもって断言する。周公瑾は宇治から南に出た形跡はない、京都市街地には来ていない、と。

そしてそれは原作を知っているからこそわかる。嘘偽りない真実だと。

残念ながら現段階ではウチの情報部でも見失っちゃってます。とんでもないね鬼門遁甲術。魔法師の目だけでなく科学も欺くのだから。

 

「貴方達が問答無用で私の許へ来たならば、この結界のことも、周公瑾のことを話さなかったでしょう。――貴方たちは最低限の礼儀を守ってくださった。無用な血を流すこともなかった」

 

だから敬意を払ったのだとご隠居は言う。

それはただの偶然であり、お兄様に礼儀を重んじるとかそういった意図はなく、逃げ出さないなら急がなくていいと優先順位を変えただけのことだったのだけれど――これが、神の采配というもの。

ただのピースの一つに過ぎないとわかっているのだけれども、お兄様を認めてくださり、憎き九島の者である光宣君に敵意も見せずに誉め、そして何より最高のもてなしをしてくれた方にこちらからも感謝を。

 

「お食事はどれも大変美味しゅうございました」

 

食事のみならずサービスもよく、店員さんの教育も行き届いていてとても快適に過ごせた。

礼儀には礼儀を。淑女らしく優雅さを心掛けて感謝の意を伝える。

 

「ほっ。貴女のように美しい方に我が店自慢の料理を召し上がっていただけただけでなく、お褒めのお言葉まで頂戴できるとは。後世の自慢となりましょう」

 

…いや、後世の自慢は先ほどの川を利用した魔法の方を残してください。一女子高生の美味しかったです発言は後世にまで残すほどの自慢になりません。お兄様も横で小さく頷かないで。

最後がちょっとグダグダになったけれど、鞍馬と嵐山の一党には気をつけなさいという助言をもらって、全体的に和やかに終わったと思えば良い結果なのか。

結構長居をしてしまったので、すでに日が傾き始めていた。

市街地にはいないという彼の言葉だけでは現状全面的に信用はできないけれど、参考にはできるかもしれない。

少なくとも店主自身はそう思っているようだったという話し合いの下、今日のところは予定にあった金閣寺には向かうが宇治以北は範囲が広すぎると断念。

嵐山については明日じっくり見て回ろうということになった。

明日には七草先輩が合流して探偵もする予定ですからね。方向が近いのでついでに回る予定なのでしょう。効率厨のお兄様ならではの発想。

流石仕事をたくさん抱えるお兄様は同時進行もお手の物。…だから過密なスケジュールでも仕事が回されてしまうのですよ、と前世の私が忠告する。

でもお兄様にとってはもう今更のことなのだろうね。無理やり休ませるのは帰ってからだ。

それにしても、と店を出てしばらくして思い出し笑いが漏れてしまう。

それを目ざとくお兄様に見つけられてしまい、隠すことでもないので白状する。

 

「先ほどの店主の方には、お兄様が私とは同い年には見えなかったのでしょうね」

 

お兄様に対して、「二十歳にもなっていないだろうに」と掛けられた言葉は、「まだ高校生だろうに」とは別のニュアンスに聞こえた。これって数字的にはわずかな差だけれど私たちとはそれなりの年齢差を感じさせる物だった。

まあね、お兄様の置かれている状況は彼を子供でいることを許さないものだったから、私たちのように子供とは思えなかったのだろうけど。

 

「それは俺が老けている、ということか?」

 

少し前にも光宣君と同じ話をしたでしょうに、お兄様実は結構気にされてます?

 

「大人びている、ということでしょう」

 

お兄様が面白くなさそうに、拗ねたように言うけれど、その表情はいつも以上にわざとらしく見える。

 

「でも、こうして拗ねてみせてもらえると、年相応に見えますよ。カッコイイお兄様が可愛らしく見えます」

 

そう言って腕に絡みつけば、お兄様は機嫌を直したといったように空気を和らげるが、忠告も忘れない。

 

「可愛いは男の誉め言葉にはならないぞ」

「私にとってはどちらも愛を伝える言葉です」

「…確かに、可愛いに愛は入っているか」

 

その言い回しは苦しくないか、とお兄様は笑うけれど、私にとって「可愛い」は男性女性関係なく誉め言葉だから。

 

「好きと好意を伝えることは難しいので、代用しているのだと思ってくださいませ」

「そういうことなら変換するとしよう」

 

ぜひそうしてください。好きと言い辛い日本人の伝え方です。月が綺麗ですねが愛を伝える言葉になる様に、奥ゆかしい人種なのです。

その後、コミューターでの移動中、景色を眺めながらお兄様と仲良くし、水波ちゃんは何も見てませんというように反対方向の窓の外を眺め、光宣君はニコニコとこの時を楽しむように微笑んでいた。

 

 

――

 

 

時間が限られているので金閣寺では観光をせずに拠点捜索をメインに行ったけれど、ここでは何の収穫も得られず残念な結果に終わった。

 

「これなら深雪に観光させてあげた方がよっぽど有意義だった」

「…お兄様、目的を見誤ってはいけませんよ」

 

それに遠目に見えただけでも結構満足です。

近づけばまた人混みが凄かったでしょうしね。

近くを散策するだけでも結構な視線を浴びましたから、今日はもう十分です。

視線に疲れたと言えば、それもそうだな、とお兄様はさっさと帰りのルートを探る。切り替えが早い。

ホテルはコンペ会場からは離れているけれど、一高生はここが御用達のようなので。…四葉系列で無いのはきっと偶然じゃない、よね。こちらもいいホテルなので問題はないのだけど。

事前に光宣君とお家の方とお話をつけているので、今日は光宣君も一緒にお泊り。

こういう機会でもないと彼は旅行もままならないし、同世代と泊りがけのお出かけができること自体嬉しいようだ。

本日調査できるところは巡り終え、後はお泊りするだけ。

すでに尻尾がぶおんぶおん揺れてる。お目目がとってもキラキラね。ちょっと抑えないと水波ちゃんがサングラス掛けそうな勢い。

 

「光宣君、楽しみね」

「はい!深雪さんたちと部屋が分かれてしまうことが残念ですが、達也さんたちとご一緒できて嬉しいです」

 

うん、この時点で彼には男女の壁は無い。つまり異性だと意識してないことがわかるね。純粋。ぴゅあっぴゅあ。

 

「今回は他にも連れがいるからな。常識的に無理だ」

 

お兄様が苦笑して答えるけれど、そうじゃない。ツッコむべきはそこじゃないです、お兄様。

まるでエリカちゃん達がいなかったらこの四人でお泊り予定だったなんて恐ろしいことを言わないよね?

水波ちゃんが不審な視線をお兄様に向けている。

 

「家族一緒に同室はおかしなことじゃない」

「ホテルに年の近い男女二組が同室はおかしなことですよ」

 

兄妹にも家族にも見えないですからね。疑われるよ。そんなことになれば学校行事の為、と事前に連絡があろうとも保護者か学校に連絡行くから。

未成年だけでお泊りなんて普通のホテルではいくらお金があろうとも宿泊を拒否されてもおかしくない。厄介事の可能性が高いからね。

家族設定は日記の中と私たちの時だけでお願いします。常識を忘れないで。

そして光宣君はしょんぼりしないでほしい。貴方を拒絶したわけじゃないから。

 

「水波ちゃん、ここは私たちが教育していかないと」

「はい、このまま光宣様が達也兄様と同じ思考になられたら事です」

 

…まあ、そういうことにはなるんけど…そこまで言う?

良いけどね。水波ちゃんがそれだけ素直になってくれてるってことで。

そんなことを話していたらあっという間にホテルに到着。

このところホテルにお泊りが多くて楽しい。

基本的にこういった外出はお母様との家族旅行で年に一回あればいい方だった。父親?知らない人ですね。お忙しいのでしょう。

預けた荷物を受け取って――駅で合流した際に手ぶらだったから、光宣君は先にホテルに荷物を預けていたのでしょうね――エリカちゃんたちを待つ間に部屋に荷物を置きに行こうかとロビーに向かうと、ちょうど吉田くんたちが帰還した。

おかえりエリカちゃん!と迎えに行こうとしたのだけれど――その背後に居ますね。目が合いました。

 

「一条」

「司波さん」

 

ごめんなさいお兄様。視線が合っちゃったからこっちにしか目が向かなかった模様。

お兄様と顔を見合わせて、お前が相手をしてやってくれ、と苦笑されていた。

背後で水波ちゃんがさりげなく移動しているけど、もしかして九校戦同様警戒してる?大丈夫だから。彼は人畜無害の紳士ですよ。

光宣君が不思議そうにさりげなく動いた水波ちゃんを見て、お兄様に視線を向けたけれど、お兄様はそれも苦笑して返す。今話すことでもないし、話せる内容でもない。

 

「お久しぶりです。一条さんも京都にいらっしゃっていたのですね」

「こちらこそご無沙汰しております。来週の論文コンペの下見をと思いまして」

 

今日はスムーズに聞こえるけれど、とても堅苦しい言い回しだね。

紳士としては間違ってないけれど、同い年に話しかけるにはちょっとお堅い。

 

「まあっ。私たちもです」

「ええ、吉田君たちに聞きました」

 

純情少年かな。ちょっと笑いかけただけで顔が赤く染まり、背景にはキラキラ眩しいオーラがね。まるでここで会えるなんて、運命!?という吹き出しが見えるようです。

ここには私だけでなく周囲にお兄様たちがいることわかってる、よね?そこまで視野狭窄になってないよね⁇

視線がずっとこちらにロックオンされてるようだけど、時折照準がずれる。まるで目が3秒合ってしまうと死んだり石化したりする呪いにかかってしまう、みたいな緊張感。でも見たい衝動を抑えられないというジレンマと戦っている。

…エリカちゃんが笑いをこらえるのに苦戦してるね。プルプルしながらバシバシ西城くんの背中を叩いてる。いい音。

西城くんが可哀想だろ、と同じ男としての情けか宥めていた。…可哀想なのはエリカちゃんに笑われていることになのか、報われ無さそうなことになのか。

そんな音がしていても視線がこっちからぶれない一条君も凄い。外野は眼中にないのか。

とりあえず話を進めよう。

 

「吉田くんたちとは新国際会議場でお会いになったのですか?」

「危ない所を助けてもらったのよ」

 

質問を再度重ねたところで、笑いが収まったエリカちゃんが割って入ってきた。一条君を助ける為かな、と思えるのは彼が口をもごもごさせていたから。エリカちゃんも律儀だから恩はちゃんと返す機会を狙っていたのかもね。

危険なところを助太刀しました!とは自分からは言い辛いだろうし、途中で割って入ったから状況説明も難しい。そこへ彼のカッコいいところもアピールしつつの端的な説明によるナイスフォロー。エリカちゃんは脳筋ではないのですよ。フィジカルも強い上に戦略だって並じゃない。基本的な戦術から応用まで。…エリカちゃんが落ちこぼれの二科生だったって、絶対おかしいよね。

エリカちゃんの危ないところとの発言を聞いてお兄様が反応する。

 

「部屋で詳しい話を聞かせてもらえないか?」

 

ロビーで立ち話するには内容も内容ですし、長くかかるでしょうからね。お兄様がさりげなく誘導する。

突然の誘いに戸惑っているようなので、こちらも援護射撃を。

 

「一条さんもこちらにお泊りなのですか?」

 

この後の予定を聞く流れに持っていくために質問すると、動揺を振り払うように咳払いをしてから返してくれた。

 

「いえ、俺は隣のKKホテルに。ですがその件で、詳しい事情を知りたいと思っていましたので」

 

それでエリカちゃん達に付いてきた、ということだった。…ならどうしてお兄様のお誘いに戸惑われたのだろう、と思ったけれどちらっと私を見たことからもっと邪険に扱われるものだと思っていた、とか?お兄様にとって一条君は妹に懸想する男だから近づけさせたくない、みたいな。

九校戦でも別にそんな態度を見せていなかったのに、彼の中では私の知らないお兄様像があるのかな。

だけどそうと決まれば展開が早かった。西城くんもエリカちゃんもコミュ力高いから。

 

「じゃあ、俺たちの部屋に行こうぜ」

「んじゃ、荷物取ってくるね~」

「ちょっと待ってて」

 

気さくに肩を叩く西城くんと、美少女の自然な笑みとお手振りで颯爽とクロークに向かうエリカちゃん。

唯一後れを取った吉田くんが慌ててエリカちゃん達を追いかける。

振り回されて大変そうだけど、この三人だからこそこのチームは安定するんだよね。頑張って、吉田君。

 

 

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