妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします!分割版   作:tom200

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古都内乱編㉝

 

 

次の日。お兄様がいなくともいつも通りの起床。お兄様にドリンクは作らないけれど、身体を動かし、お花をいくつか見繕っている頃水波ちゃんが挨拶に。おはよう。今日も可愛いね。

それからお母様へ挨拶して二人だけの朝食。なんだか不思議な感じだね、と二人で笑い合いながら二人で登校。

エリカちゃん達と合流して昨日はお疲れ、と挨拶を交わしていると雫ちゃん達もやってきた。そして、

 

「あれっ、達也さんは?」

 

ほのかちゃん、挨拶よりも先にお兄様でした。うん。分かってた。

でもゴメンね、お兄様は任務でまだ戻られないんだよ。

 

「実は昨日事件に巻き込まれた影響で兄さんは警察に行くことになってるの」

「警察って!だ、大丈夫なの?!」

「ええ、誰も怪我してないわ。心配してくれてありがとう」

「するよ!心配くらい。でも…そうなんだ…達也さん、今日もいないんだ…」

 

ほのかちゃんの落ち込み具合が思ったよりすごい。

 

「ほのかは昨日もこんな感じだったの?」

「ん。昨日は空元気。でも今日会えるからって奮い立ってたんだけど」

「それは…ごめんなさいね」

「ううん、深雪が謝ることじゃないよ。悪いのは襲ってきた人たちでしょ」

 

ほのかちゃんは怒りの矛先を見つけたようだけど、それはダミーだ(キリッ)。本命は別にある。

 

「私も、寂しかった」

 

雫ちゃんがお手手繋いでくれた!しかも寂しかったって!!やだ、可愛い。好き!

 

「私も、雫が傍にいてくれたらと思ったわ。雫やほのかには仕事をしてもらうため残ってもらったのに、こんなこと思っていたなんて許されることじゃないけれど」

「ううん、深雪たちは深雪たちの仕事をしたんでしょ」

 

気にしなくていい、という雫ちゃん優しすぎない?あとでお土産渡すね!もちろん皆にもだけど。

 

 

 

それにしても、どこにもお兄様のいない学校は不思議な感じがした。

普段からいないはずのA組の教室にも違和感を覚えるくらいだから相当だろう。

お兄様がいない。お昼も、放課後も、そして帰り道も。

放課後の生徒会室では泉美ちゃんに抱きつかれてピクシーから聞いたこともない警戒音が響いたり、それなりにバタバタしたのだけどその間も、お兄様がいてくれたらどうなっていただろう、なんて常に考えてしまう。

何時からこんなに傍に居ることが当たり前になっていたのだろう。

このところ家でもすれ違い生活ばかりして、一緒の時間なんて学校にいるわずかな時間しかないくらいだったのに、それすらなくなって。

それが、こんなにも寂しい。

今日、たった一日のはずなのに。

 

「深雪も、やっぱりそうなるんだ」

「え?」

「いやー、深雪もブラコンなんだなってことよ」

 

ほのかちゃんに同情された顔でのぞき込まれ、エリカちゃんがおちゃらけて答える。

雫ちゃんはぴったりと私の隣にいて、水波ちゃんは後ろに控えて歩いていた。

西城くん、吉田くんもあいまいな笑みを浮かべている。美月ちゃんに至ってはなぜかニコニコ。

 

「達也くんだけの片思いじゃなかったんだ」

 

エリカちゃんの発言に、ほのかちゃんはか、かか片思い!?と悲鳴のような声を上げ、吉田くんはおいっ、と強めの制止の声をエリカちゃんに掛ける。

 

「片思いって…ブラコンシスコンに片思いなんてないでしょう。ほのかは落ち着いて。私たちは兄妹なんだから」

 

恋する乙女は暴走しやすい。兄妹だと何度言ってもすっぽ抜けてしまうらしい。困ったものだ。

 

「でも、そんなにおかしな顔してた?」

 

皆が呆れではなくそれとなく心配してくれているのがわかるので、何かしら顔に出ているのだと思うのだけど、と思いながら問い掛けると、皆は顔を見合わせてから、代表で美月ちゃんが答えた。

 

「迷子みたいな顔をされてます」

 

…わあ、深雪ちゃんフェイスでそんなお顔してるの?それはいけないね。

 

「おかしいわね。兄さんがいないことなんてしょっちゅうなのに。そんな不安そうな顔をしていたの?」

 

むにむにと頬を揉むと、男子たちは顔をそれとなく背け、女子たちはじっと見つめて優しいお顔。エリカちゃんには揶揄うオーラが見えるけど、目は優しい。

 

「安心しなさい。私たちが気付いてるだけで、周囲はそこまで気づいてないと思うから」

 

ま、あの部長辺り気付いているでしょうけどね、とにまにま。新作に期待ですか?

 

「でも背中が寂しそう、とか言われてましたよね」

「あれは妄想と期待でそう言ってるのよ。本当にそう見えたんだったらもっと同情的に見るんだから」

 

エリカちゃん…その素晴らしい観察眼、使いどころ間違ってません?よく皆の思考が読めるね。

エリカちゃんならそういうの上手くコントロールして扇動とかできそうだよね。…恐ろしい才能を秘めてる自慢の友人です。

 

「でも達也ってそんなしょっちゅう家空けてんのか?イメージ無かったぜ」

「あ、こら」

「え。まずい話か」

「いいの、エリカ。西城くんも気にしないで。言ったのは私だもの。朝練だったりアルバイトだったり。しょっちゅう出かけているわ。本当休む暇なんてあるのかしらって心配になるくらいよ」

 

エリカちゃんはすぐに軍関連の方、または四葉関連が過ったみたい。流石探られたくない事情には敏感だ。

だけど私が冗談交じりで応えたことで彼らの緊張は解かれた。

 

「じゃあ、達也さんと一緒にいることってそんなにないの?」

「休日は朝だけしか会わないこともあるわね。でも兄さんが家にいる時だってずっと一緒にいるわけじゃないのよ。兄さんにも私にも自分の部屋があるんだから」

 

皆の印象が家の中でも兄妹べったりな気がして何度か訂正を試みているのだけど、どうしても彼らの印象を変えることができない。…まあ、全くないかと問われれば無いわけではないけれど。

だからって四六時中一緒ではないのだ。それは否定させていただきたい。

 

「何度も聞いてわかってはいるんだけど」

「何だかなぁ。刷り込みってヤツか」

「…僕は全面的に達也のせいと思うけど」

「吉田くん、それは…」

「言っちゃいけないヤツ」

「あっ」

「…兄さんがまた何か言ったの?」

 

前にもあったよね。ずっと傍に居るような印象を与えるような妹自慢をよくクラスでしていたって話。

まさかまだあれ続いてるの?

 

「いや、なんっつーか」

「あ~、あれよ。妹が大事でしょうがない兄ばか発言」

「そうそう、そんな感じ!」

 

怪しい。特に吉田くんがテンパって敬語が抜けちゃってるところが怪しくてしょうがない。

西城くんも目が泳いでいるし、美月ちゃんはきゃっ、って感じに赤くなった頬を押さえてるし。

お兄様…私がいないところで何を言ってるの?

でも掘り返したら私まで恥ずかしい気配を察知したので深堀はしません。

 

「兄さんには言わないでね。恥ずかしいから」

 

たった一日お兄様が傍に居ないだけで迷子みたいに不安な顔をしてるなんて、何時まで経っても兄離れのできない妹ではないか。よくない。それは良くないことです。

 

「さあ?それはどうしようかしら」

 

うう…エリカちゃんがこの弱みをどう料理しようかしらと愉しんでおられる。

 

(悪いエリカちゃん、…可愛い、美人さん、大好きですとも)

 

「何かリクエストある?」

「チョコチップのマフィン!アレ美味しかった~」

「喜んで献上させてもらうわ」

 

落ち込んでいるのを紛らわすついでにお菓子もゲットしちゃうだなんてエリカちゃんたらちゃっかりさんなんだから。

 

「うむ。良きに計らえってね」

「抜け目ねぇ女」

「人の弱みに付け込むのが上手いというか」

「なーんか言った、ミキ?」

「僕の名前は幹比古だ!」

 

お決まりコントで全体の空気を和ませてくれる良いお友達に恵まれました。みんな大好き!

 

 

――

 

 

家に帰ってもまだお兄様は帰られてはいなかった。残念。とはいえわかっていたのですけどね。帰宅予定時刻の連絡来てましたし。

その分お出迎えの準備はできるというものだ。

水波ちゃんと今日は一緒にキッチンに立って準備。ついでに明日上納する分のマフィンも作らないとね。

そろそろ完成、というところで帰宅を知らせる音が。いそいそとエプロンを外すところを水波ちゃんが微笑ましそうに見つめていた。

…ちょっと恥ずかしいけど、浮かれてるのは誤魔化せない。気づかぬふりで切り抜けさせてもらいます。

玄関に向かって一呼吸置くと、扉が開く。

――お兄様だ。

一日ぶりのお姿に神々しさまで感じる。ありがたや。

そのお姿を拝見しただけでも嬉しくなるね。

でもいつまでも惚けているわけにもいかない。

 

「おかえりなさいませ、お兄様」

「ただいま、深雪。今回は悪かったな」

 

急な予定の変更のことを指しているのだろうけれど、お兄様が謝られることはない。ただ四葉の任務を遂行しようとしたのだから。

荷物を置いた時には靴を脱いでいて、一歩踏み出すと同時に抱きしめられていた。

お兄様からする香りに怪我をした匂いが無い。よかった。

 

「無事に帰ってきてくださっただけで、私は十分です。お疲れ様でございました」

「ああ、…ちょっと疲れたよ」

「!!」

 

力を抜いたように首元にお兄様の頭が乗せられる。

吐息交じりに返ってきた言葉はかすれ気味で、その…お兄様からはそんな雰囲気は流れていないというのに色っぽさを感じてしまい、顔が熱くなる。

おずおずとお兄様の背に手を回して、顔を見られないよう画策して。

…でも心音は聞かれてるんだろうな、ということは気付かなかったことにする。

 

「だいぶお疲れのご様子ですね。休まれてからご飯になさいますか?それとも先にお風呂に入られますか?」

 

どちらも準備はできていると伝えるが、お兄様が離れそうにない。

 

「どちらも後でいただくが、先に深雪を堪能させてくれ」

 

…どうしたんだろう。相当お疲れのご様子。

もしや七草先輩との最後の空気に耐えられなかった?原作では昨晩のことを問い詰められ、雑に誤魔化そうとしたところをズバッと見破られ、ずっと気まずい空気の中東京に帰ってくる羽目になったんだもんね。

いかな空気を読まないことのできるお兄様でも親しい付き合いのあるお相手と長時間その状態では居心地も悪かろう。

 

「私には温泉のような癒し効果は無いと思うのですが、それでもよろしければ」

「俺にとっては温泉など比べ物にならないほどの癒し効果がある。むしろお前がいないと俺は生きていけない」

 

なんか、行くとこまで行っちゃってませんか!?そんなに七草先輩と二人旅大変だった⁇

ぎゅうっとしがみつく力がね、強まりました。

弱っていても力強いねお兄様。

しばらく玄関で抱き合ってから一旦リビングへ。

お兄様の荷物は水波ちゃんが持っていきました。その中には本当に駅に売られていたお土産も買ってきて下さったようで、お礼を述べるとお兄様は微笑まれた。

 

「お前が喜んでくれる顔を想像して買うのはとても楽しかったよ」

 

気に入ってもらえると良いんだが、とお兄様は言うけれど、日本のお土産のお菓子に外れは無いから。どんなネタ土産だろうと喜びますよ。

前世で北海道土産にとジンギスカン味の飴ちゃんを貰った時だって、皆が拒否る中喜んでたから。大丈夫。

あ、味はしっかりまずかったよ。ネタじゃなかったら許してない。

ソファに座ってもらって肩を揉みながら、僭越ながら鼻歌も歌っている現状。

少しでも癒しになるんならと恥を忍んでやっているけれど、お兄様の機嫌が目に見えて上昇してます。うん、身を削る甲斐もあるというものです。

というかお兄様…凝ってますね。いつもならこんなに固まってないのに。そんなに緊張を強いられましたか。

 

「手は痛くないか」

「そこまで軟ではございませんよ」

 

でもお兄様のお声がけいただいたのはタイミングとしてはよかったかもしれない。

鼻歌を止め、お兄様の肩から手を離して隣に腰かける。水波ちゃんはまだしばらく戻ってこないだろう。

聞けるタイミングは今しかない。

ちらり、とお兄様を見やると、任務の進捗状況を教えてくれるけれど、今からお話したいのはそれではないのです。

 

(――ここで、この分岐点で本編から逸れる道を選択する)

 

どう転ぶかはわからない。だけれどこれは『司波深雪』の大きな分岐点となるはずだから。

 

「あの…」

 

だけどいざ口を開こうとするとうまく言葉にできない。

何度か開閉していると、いつの間にか膝の上で固く握っていた手にお兄様の手が重ねられていた。

 

「言ってごらん。何が聞きたいんだ?」

 

お兄様のこの言葉を聞いて、いつもなら安堵して滑るように言葉が出るのに、更に言葉が引っ込む。

 

(原作の流れに逆らうなんて、もう何度もしてきたこと。なのにどうして、こんなに不安になるのだろう)

 

心が落ち着かない。今にも逃げ出したくなるような。

けれどもう計画は動いている。こんなところで躓いては、立てた計画に狂いが生じてしまう。このタイミングしか、無いのだ。躊躇っている場合ではない。

それに何より、お兄様の心に重しがのっかっているのがわかる。それはあの時からずっと、お兄様の心にしこりのように現れた。

お兄様の倫理観は人のそれを外れているというが、そんなことはない。

確かに殺人や犯罪行為に対して罪の意識は薄いかもしれないが、それでもお兄様の中に禁忌は存在していて、今回のことに関してはお兄様の逆鱗に近しいところに触れるものだった。

親しくなった光宣君の秘された真実は、お兄様にとって重くのしかかるだけの影響力のある情報であった。

それを一人で抱えるには、重すぎる。どうか、その重荷を私にも分けて欲しい。その思いもあった。

だから――意を決してお兄様を見つめ、重い口を開く。

 

「お兄様、光宣君の体質の原因は何だったのですか?」

 

見つめる先の、その瞳が動揺したように揺らめいた。お兄様にとって予想外の質問だったのだろう。

そして続いてキュッと引き絞られた口端に、お兄様の意思が見える様。だけど、ここは固く閉ざした口を割ってもらわねばならない。

苦しみを分け与えてもらうことももちろんだけれど、――お兄様の選択を広げるためにも。

 

「…言った通りだよ。光宣の魔法力が強すぎて、身体がそれに耐えられないんだ」

「それは今の状態ですよね。お兄様はその原因をご覧になったのではありませんか?」

「…何故そんなことを?」

「あの時のお兄様のご様子は、ただならぬものでした。一体何をそんなに気にかけていらっしゃるのですか?」

 

離れそうになるお兄様の手を引き留めて。

視線をお兄様から逸らさない。

 

「お兄様、お願いします。お兄様が何にお悩みなのか、お聞かせください」

 

身を寄せて懇願するも、お兄様は渋い顔だ。聞かせるもの嫌だと、強い拒絶を感じる。

 

「お前は知らない方が良い」

 

それは、お兄様の優しさ。人の業の深さなど知らなくていい、と目と耳を塞ぎ守ってくれようとしている。

でも、それではダメなのです。ここで引いてしまっては、もうお兄様の横に並び立つことなどできない。一生お兄様の庇護下のもと守られ続ける事を認めることになってしまう。

私だって、お兄様をお守りしたいのに。

引き下がるわけには、いかない。

 

「お願いします。お兄様お一人で苦しまないでください!」

 

卑怯な言い回しなのは重々承知だ。お兄様の優しさに付け入る卑劣な手段。

こちらもなりふり構ってられないのだ、と強く視線で訴えれば、私のお願いに弱いお兄様は折れるしかない。

 

「分かった。かなりショッキングな話だから、心を強く持って聞いてほしい」

 

案の定お兄様は折れ、姿勢を正して重い口を開いた。

 

 

 

「光宣と藤林さんは異父兄弟だ」

 

 

 

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