妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします!分割版   作:tom200

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古都内乱編㉟

 

「水波ちゃん、ありがとう。長い時間ご苦労様」

 

結構な時間魔法を維持してもらってましたからね。彼女もねぎらう。

 

「…いいえ」

「質問はしなくて大丈夫?」

「では二つほどよろしいでしょうか」

 

あら、たった二つでいいの?突然何の説明も無しにやりだしたから戸惑っていたことは確実なのに。

頷くと、水波ちゃんは硬い表情のまま、一つ目の質問を。

 

「御当主様はご存じなのですか」

 

答えはイエス。

叔母様に連絡せず四葉を動かすことなど不可能だ。きっちり筋は通しますとも。

続いての質問は――

 

「達也様はご存じではないのですね」

 

答えは――是。

けれどこの質問は疑問ではなく確信してのものだったのだろう。驚いた様子はなかった。静かに目を伏せて首を垂れる。

 

「楽にして。まずはお茶をもう一杯お願いしようかしら。もちろん水波ちゃんの分もね」

「かしこまりました」

 

入れてもらった紅茶はホテル備え付けのものではなく、用意してきたものだった。

私個人は別にパックのお茶でもいいのだけど、彼女の矜持が許さないのであればお付き合いするのも主の務めだ。

 

「そろそろ隠す必要性もなくなるのだろうけれど、まだ時期じゃないからもう少しの間だけ秘密ね」

 

水波ちゃんに向けて、口元に人差し指を立ててウィンクすれば、彼女は顔を引き締めて頷いた。

ううん、お堅い反応。またしても結構な秘密を押し付けちゃいましたからね。仕方が無いのかもだけど。

 

「まだもう少し時間があるし――光宣君の日記の謎でも一緒に考える?」

 

だけど次の話題に彼女の表情は簡単に崩れた。

一気に日常に戻ったような戸惑ったお顔になる。

光宣君の日記の謎、とは最新の彼が記した交換日記にあった意味深な一言だ。

 

「私たちを驚かせるってあったけど、何かしら」

「さあ…見当もつきません。そもそも彼の存在自体びっくり箱のような感じですから」

「そうねぇ。結構驚かされるわよね」

 

主にあのギャップがね。

最強チートな王子様の見た目なのに純情少年だったり、天使のような笑みを浮かべながらも中身がダークな一面を抱えていたりと落差があるのだ。

多分驚くことって言ったら明日発表会に彼が参加して優勝を掻っ攫うことかな、と思うのだけどどうだろう。

姿見せるだけだって十分驚くけどね。

 

「京都なんだもの、あとで会おうとか、そういうことかしら」

「二高の生徒たちもいる場で私たちのところに来るのはどうなのでしょう…。それにもし一高生徒の集まっているところに彼が来てしまうと混乱が生じてしまうのではないでしょうか」

 

混乱?吉田君たちはすでに光宣君とは知己だし、七草双子は元々付き合いがある。そんなに混乱は――と思ったけれど、脳裏に清水寺の様子が蘇る。

私たちが並んだ姿を見れば周囲の視線を集めてしまうかも。

でもそうなると――

 

「そうねぇ。来たとしても私も皆の前ではいつものように可愛がってあげられないのが辛いところね」

「…深雪姉様の可愛がり方を見たら一高生徒は大恐慌に陥ると思います」

 

大恐慌って、そこまでいくかな。…というか直接会ったのはたったの二回。ほとんど文面でしか可愛がってないと思うのに、どうしてそこまで愛でると思われているのか。日頃の行い?

 

「達也兄様に向けるほどではございませんが、光宣さまにも十分に愛情を注がれてますよね」

 

ため息交じりに水波ちゃんは言うけれど、非難している色は見えない。

 

「嫉妬しないの?」

「っ!わ、私は別に――」

「良いじゃない。想うのは自由だと思うから。ほのかという例があるでしょう」

「……私にはあのように振舞うことは出来かねます」

 

うん。それはわかるよ。ほのかちゃんのアレはそもそも特殊ですから。恋する乙女でもちょっと暴走しがち。

 

「…その…、私はそこまでではないので…そのようなアレはないのですが…」

 

随分濁すね。でもこれが今の彼女の本音でもあるのだろう。まだ自分でも手探り状態。恋なのか憧れなのかわからない。そんな曖昧な時期、ということかな。

 

「嫉妬、は無いです。深雪姉様にも、そしておそらく光宣さまにも、恋い焦がれる様子が見えない。互いに慈しんでいるのに、欲が絡んでいない。――それこそ、仲の良すぎる親子には嫉妬することはあるでしょうが、深雪姉様たちの仲の良さには人の欲がほとんど絡んでいない、純粋な関係だから。誤解しようが無いのです」

 

……あら、思ったよりも水波ちゃんが想いを育んでいるみたい。理解度が深い。

恋に恋する期間って女性が近づくだけで血縁関係があろうとも牙を剥く、じゃないけど面白く思わないものだ。だが水波ちゃんの恋は静かに想いを寄せるタイプなのかな。嘘をついている感じも無い。

 

「言葉が悪くなってしまいますが、お二人とも人間離れをしていると言いますか。まるで空想上の生き物のようで。嫉妬するのも烏滸がましいと言いますか。次元が違いすぎてそんな気も起きないのです」

 

人外にされてしまった。でもそうか。言いたいことはなんとなくわかった。

私も想像してみた。超絶美少年と絶世の美少女がキャッキャしてたらそれは芸術だ。見ることはできてもおさわり厳禁。童話の挿絵に嫉妬する人間はほとんどいないだろう。要は現実味が無い、そういうことか。

そもそもお互いがお互い、恋愛感情など抱いてないからね。それは嫉妬対象にもならないか。

それからもしばらく他愛ない話をしていたら、ノックが響く。この叩き方はお兄様だ。吉田くんのところに戻る前にこちらに来たのかな。

水波ちゃんにドアを開けてもらってお兄様が入室する。

水波ちゃんが後ろに下がったところで腕を広げるお兄様に身を寄せた。

 

「ただいま」

「おかえりなさいませ。だいぶ暴れられたご様子ですね」

 

抱きしめられると途端に香る独特の香り。

 

「…少し箍が外れた」

 

…少しではなく思い切り外れた、でしょうに。

お兄様にとって軍の裏切りはあの時を彷彿とさせてしまうので、今回のことは逆鱗に触れたようなもの。一条君を巻き込んで大暴れしたのでしょうね。

軍の被害総額が結構いきそうだな。確か戦車も壊したんでしょう?と他人事のように考える。

実際他人事だ。大亜連合の人間を軍が匿うとは何事だ。操られていたとしても許されるわけがない。むしろこの場合自覚なく操られていたことの方がまずい。

これから軍内でも一高と同じく洗脳チェックが入ることだろう。うちよりもっと厳しいチェックかもしれない。解けると良いね。

 

「ご無事で何よりです」

「ん」

 

お兄様が頭を下げてきたので僭越ながらなでくりなでくり。

お兄様、慣れない任務でしたけどお疲れさまでした。満点花丸を差し上げましょう。

しばらく抱き合ってから、お兄様は吉田くんとの部屋に戻っていきました。

…渋られましたけどね。そろそろ戻らないと彼もやきもきしていることでしょうから。

夕飯は一緒なのですからまた後で、とお別れしたのだけど、残念。泉美ちゃんが「頑張りました、褒めてください!」オーラを漂わせて隣の席に。

なんでもスパイがホテルに潜り込んでいたらしい。

それを発見した香澄ちゃんが張り倒そうとしたのを止めて、ホテルに連絡、警備員と(警察は間に合わなかった)現行犯で取り押さえたのだとか。

つい先ほど解決したところで報告は夕食時に、となったらしいけどそう言うのはすぐに知らせてほしい。何事も無かったから、と気を利かせてくれたみたいだけど会長はすべての責任を負わねばならないのでね。報連相はちゃんとして。

しかし…本当に頻繁にあるんだ。昨年のことがあったから厳重な警備が布かれていたのも知っていただろうに。

今回は企業が利用しようとしたんじゃなく、反魔法師のデモに使う予定だった、と自供。

…これ、もしかして横浜から密入国したアイツ等案件かな。だから会場周辺うろついてたのがいた、とか?後で確認だね。

周関連じゃなく別働部隊だった可能性が浮上した。

そうだよね、考えてみたら周って誰も信用してないから捨て駒としてももっと近場で用意するよね。使い捨てにできる古式魔法師いっぱいいるんだから。

というわけでお兄様の座る予定だった席に泉美ちゃんが。反対は雫ちゃん。どうやら先に根回しでもしてたかな、お兄様はほのかちゃんの隣に。

夕食は地元の食材を使った食事で大変美味しゅうございました。満足。

…だったけど、色々とご不満なお兄様がこっそり私たちの部屋にやってきてわずかな時間でもお茶をして帰っていった。

水波ちゃんも呆れていたけれど、お兄様がお仕事頑張ったのはわかっていたので目を瞑ってくれた。

お疲れさまでした、お兄様。

 

 

――

 

 

論文コンペ当日。

各校の生徒会長は審査員も務めるので皆さんにご挨拶。警備担当の人たちもずらっと並んでいる。

あら、一条君。視線が合った途端真っ赤なお顔でガッチガチに緊張モード。うぅん…リセットされたか。仲良くなったと思ったんだけどね。

その様子を吉田くんがええー…という残念そうな顔で見つめている。

でも吉田くん、奥手なところは似てると思うよ。早く下の名前で呼べるようになると良いね。

審査委員の席に行くと、うん、視線が一気にこちらに集中。でも九校戦ともまた違った感じ。

あの時は選手として行っていたから適度な距離感があったのだけど、今日は評価する側だからね。下手なことはできない、という緊張感がある。

開会の言葉だったりお偉いさんの偉ーいお言葉。市長さんの挨拶、等々。その間笑顔キープも面倒だよね。

あくびが出てもおかしくない、と思っていたらお隣の二高の生徒会長の呼吸が乱れた。

ちらっと見れば目が合って、微笑みかけるとぼぼっと顔が赤くなってしまった。

あくびしちゃったねー、と揶揄ったつもりも無いんだけど、申し訳ない。私としては眠いよね、と返したつもりだった。

心の中で謝罪してたらあっという間にトップバッターの発表校の準備が始まった。

さて、私もお仕事頑張りますか。

 

 

 

 

派手さの無い研究発表と聞いてたから体感長く感じるかも、と覚悟していたけれど早いね。あっという間。

お昼休憩の時間です。

昨年中条先輩が「来年は貴女の番だから参考に」、当時のメモを見せてくれたけど、あんなにびっしり書くのが普通ですか?私も同じようにびっしり書いたけど、お隣見たらそうでもなかったからびっくり。学校によって違うのかな。

一番近くの扉を出ればお兄様が迎えに来てくださっていた。

お弁当は各自選んで各々の場所で食べていいらしいけれど、お兄様はこの後七草先輩に呼ばれているのだとか。

 

「兄さん、それだったら二人の話が終わるまで待ってるわ」

「気にするな。相手は七草先輩だ」

 

え、気にしますよ。というかお兄様ちょっと不機嫌?

 

「どうかされ…したの?」

 

ちょっと意外すぎて敬語が出そうになったので言い直したのだけど。

 

「されたし、したな。…あまり思い出したくもないが」

 

……えー?七草先輩いったい何をお兄様にしたの?ここまでお兄様が不機嫌なのを見たことが無い。

戸惑っていると待ち合わせ場所に着いたお兄様は、流石に不機嫌なままお会いすることは良くないか、と表情を改めノックしてから入室。

私服姿のエレガントお嬢様七草先輩だ。双子とはお昼別なのかな。それともこれから一緒に取られるのか。彼女の前に弁当は無かった。

そしてさっそく本題に入った二人は名倉さんの死の原因となった男の末路を語った。

私、ここに必要かな。と思わなくもなかったけれど、お兄様が傍に居てほしそうだったのでね。静かに貝になって大人しくしていたのだけれど。

七草先輩は事件解決に胸のつかえがとれたとばかりに微笑まれて――

 

「ありがとう達也くん。これであの夜の件はチャラにしてあげる」

 

大人のお姉さん(成長中)のパチン、とウィンク付き!

おお、これは原作のあのシーン!と感動していたのだけれど、お兄様から抑え込まれていた不機嫌オーラが噴出した!

 

「――チャラにする、の意味が解りかねますが?むしろこちらが訴え出たいところです。お宅のお嬢様の教育は一体どうなっているのかと。俺は止めたはずです。それで羽目を外されたのは先輩でしょう。それでこちらを責められてもお門違いかと」

 

……。

お兄様ガチでお怒りです?冗談じゃなく⁇魅力の低音ヴォイスがですね、一層恐怖を際立たせると言いますか。

あまりの恐ろしさに七草先輩涙目なのですけど!

 

「あの、兄さん?」

 

ちょっと、抑えましょう?こんなに感情が溢れるなんて素晴らしい成長、と感動したいけれど、その呆れと怒りが先輩に向けられると思うと心臓がキュッとしてしまってですね。

ちらり、とこちらを見たお兄様は少し待っていなさいとばかりに少しだけ目を和らげてから、また先輩に向けられる。

注意というより断罪するような鋭い視線だった。

 

「先輩の方から口にしたのですから、深雪に愚痴を言うくらいの権利はいただけますよね。一応先輩のプライバシーもありますので黙っていたのですが、この場で言ったということは深雪に聞かせても構わないということでしょう?」

 

違うとわかっていながら畳みかけてますね。先輩はただ揶揄いたかっただけだから。

私に「あの夜とはいったい!?」とお兄様を問い詰めて欲しかっただけだから。

でも先輩。私、そういうことしそうに見えます?

今まで悋気を起こしたことなかったと思うのだけど。あ、入学当初のアレがその印象付けたかな。

先輩は止めて!冗談よ!と言っているけれどお兄様は聞く耳持ってないね。どこに落としてきました?ついさっきまで付いていたと思うのですけど。

 

「先輩、兄さん。『あの夜』のことは二人だけの秘密でよろしいのではないでしょうか。そしてお二人して口をつぐんでおいてくださいませ。それがこの件でお二人が喧嘩をしないで済む方法かと」

 

訊きたいけどね、二人の間で何が起きたのか。…なんか知ってる原作とは違っているようなのでね。

なぜか気まずさより険悪な空気だし。…でも、あれ以上のことって起こる⁇え、まさかベッドに連れ込まれた、とか?

七草先輩は分が悪すぎると、救いの手を差し伸べた私に感謝を述べてそそくさと出ていった。

部屋には不機嫌なお兄様と二人きり。

どうにもその『夜の件』はお兄様の方が大変な目に遭ったのではないかと、妹の欲目がなくても思うわけで。

 

(原作だって、お兄様何一つ悪くないのよね。ただ酔っ払いに絡まれて、面倒になって要望通りドレス引っぺがしてベッドに放り込んだだけだもんね)

 

普通なら据え膳を食われてもおかしくない状態。もしくはドキドキしてなかなか脱がすことができなくて、それでも手を伸ばすのだけど――と、なんやかんや発展しちゃうという展開が期待できるわけだけど、お兄様一切目もくれなかったものね。

 

(…お兄様、何も感じないわけじゃない健康な男子の体をお持ちなのに)

 

文字通り鋼の肉体と精神をお持ちです。

 

「お兄様。お腹が空いては余計に怒りが治まりませんよ。まずは食べましょう」

 

ね、と語り掛けると、お兄様はすまないと謝罪した。

 

「お前に当たることではないのに」

「お兄様がご自分にされたことで憤りを感じて怒られるなんて、私は嬉しく思いますよ」

「…だが、怖がらせただろう」

 

曖昧に笑っておく。はい。怖かったです。でもお兄様が、というよりこの空気どうしよ?!の方ですけどね。

お弁当を広げて突き合いながらお兄様はさっそく約束を破って――というより一言も約束するとは言わなかったからね。こうなることは予期してました。

 

「思わせぶりに臭わせて言っていたが何のことはない。ただ彼女の酒癖の悪さに迷惑を掛けられたというだけだ」

 

お兄様は初めこそ後輩として従順に付き合ったそうだ。

私からも大変だったのだから労ってあげて欲しいと頼まれていたこともあって、気分を害さないよう、気を使って彼女の思うように、と。

…気を利かせたつもりが私のせいで我慢を強いらせてしまったらしい。申し訳ない。

私としてはちょっと付き合ってあげて、くらいの気持ちだったのだけど、お兄様には違ったようだ。

けれどバーに誘われてからの彼女の行動は目に余るものがあったらしい。

そもそもお兄様はお酒を嗜んでいい年齢ではない。でも無理やり連れていかれてからの、『恋人ごっこ』――とはお兄様は言わなかったけれど、学生だとばれたらまずいので下の名前で呼ぶことの強要。

それを拒絶だと分かるよう敢えてお嬢様扱いしたらへそを曲げて当たり散らされ、バーテンダーから有力な話が聞けたと思ったら邪魔をされ、二人してテンションが下がってしまったらしい。

…うん、まあ、これも原作とそんなに変わりが無い流れのように思う。

バーテンダーが気を利かせてチョコをくれたりしたのだけれど、彼女の機嫌はなかなか直らず辟易したのだと。

拗ねる先輩は想像するだけでも美貌も相まって朴念仁だろうとクラっときてもおかしくない色香を放っていたと思うのだけど、お兄様辟易なさったのですか。

…まだそちらの情緒が育ってなかったかな…。あれだけお兄様自身にお色気成分あるんだから感じていそうなのに。

その後強いお酒を大分飲まれた先輩は足元が大層危うかったらしく、送らねばならないほど酩酊されていたそうだ。

それで部屋まで送ったら送ったで、今度はベッドまで運ばされ、しまいには――

 

「ど、ドレスをっ…!!」

 

ぬがせて、なんてお誘い以外で使うことなどないだろう。いくらお酒に酔っていたって、幼児退行していたからと言って、流石にそれで誘ってないなんて言い逃れができるはずが無い。

先輩のドレス姿を想像して真っ赤になる。

深雪は可愛いなぁ、とお兄様は頭を撫でるけれどごめんなさい。私の頭は今煩悩に塗れているので可愛らしい状態ではない。

先輩の服をお兄様がお脱がしに…///。その特典映像はどうやって入手できます?課金⁇

 

「――深雪のドレスも脱がせたことが無いのに」

 

んん?今、何かおかしな発言が聞こえたような?

お兄様の顔を見上げると、お兄様はなんだ?と不思議そう。あれ?聞き間違いかな。

 

「それで、お兄様は部屋を後にされたのですか」

「留まって変態扱いされるつもりもない」

 

部屋に留まられたら確かに酔いの醒めた先輩から責められたことでしょう。…お兄様の女難の相、恐ろしい呪いです。お可哀想に。

 

「お疲れ様でございました」

「とんだ災難だった」

 

…お兄様、大きなため息と共にお顔に嫌悪感が。

もしかしてだけど、これをきっかけに女性不信になってない!?

 

「お兄様、以前私もそうでしたが、その…お兄様もトラウマになりかけてはおりませんか?」

「うん?トラウマ……?ああ」

 

私の、というのはパラサイトの波動の一件である。今でこそピクシーには慣れたけど、あれは恐怖体験だったからね。もう震えることもないし、お兄様を避けたのもあの時だけだ。

お兄様もあの時のことを思い出したけど、首を捻っている。…こんな時にあれだけど、お兄様のこういう仕草一つもきゅんとくるよね。すぐときめいちゃう。

 

「いや…、どうだろうな」

「え!?」

 

まさか、お心当たりが?!

否定を口に仕掛けて、言い澱むなんて。

それは今後のお兄様の幸せ計画に支障が出てしまう可能性が!?どうしよう?

 

「深雪、ちょっと抱きしめていいか」

「ご存分に!」

 

お兄様の好きなようにして、と手を広げてお兄様を迎え入れる体勢に。お兄様はその私の態度にクスッと笑ってから抱きしめられるのだけど…いつもと何か違う?

 

「…分からないな。あの時の先輩はドレスを着ていたから制服では違うのかもしれん」

 

…ああ、そのシチュエーションにならないとわからない、と。

トラウマってそのものが見えたりしたら発動ってこともあるものね。

 

「それでしたら、先輩のドレスに似たモノをご用意した方がよろしいのでしょうか」

 

そこまでするか、と思われるかもしれないが、お兄様が女性不信になっていたら大変なことだ。どんなことも見逃せない。

 

「それは俺が用意しよう」

 

お兄様、張り切ってるね。…トラウマかどうかって今後のお兄様の仕事に支障が出るかもしれないものね。

お兄様の功績があれば四葉の外に出れたとしても、支援者獲得のためパーティーに参加することも増えるだろうし。

もちろん私にできることならなんでもお手伝いしますとも!

 

 

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