妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします!分割版   作:tom200

20 / 265
九校戦編③

 

 

さて、今日は正式に九校戦の選手を発表する発足会。

このためにどれほど準備をしたことか。

とっても大変でしたとも。

四時限目を終えて講堂の舞台裏で人数分の服やらバッジやらの数を確認して。

そろそろ来る頃、と振り返ればまさにそのタイミングでお兄様が現れた。

 

「こちらを」

 

そういって渡したのは薄手のブルゾン。

一高生代表の技術者用のユニフォームだった。

今まで二科生がこれを着たことがなかったので一科生のシンボル入りだが、むしろ一人だけ違うのも浮いてしまうのでこれでよかったのだろう。

 

「着せてくれるかい?」

 

耳元で囁くお兄様に、しょうがないですね、と言いながらついにやけてしまう妹です。

うん、かっこいいですお兄様。

そういえば懇親会ではお兄様がサイズの小さい服で困っていた描写があったような。七草会長に言って手直しさせてもらおう。それくらいなら私の裁縫技術で何とかなる。

 

「深雪は先輩たちのように着ないのかい?」

「私は進行役だから」

「そうか、大役だな」

「…あまりプレッシャーをかけないで」

 

お兄様にはそんな気はないし、私だってそこまで緊張することではないけれど。

宥めるようにお兄様が頭を撫でると周囲からはきゃーと嬉しそうな悲鳴がちらほら。

いえ、悪意がないのはいいけど、これはこれで大丈夫かな?お花畑な思想が広がってそうで怖い。

そして式は始まり――つつがなく進行していき――お兄様の出番になるとなぜか感動したような声とどよめきが起こる。

そうだね、これもまた規模は違えど歴史的瞬間だもんね。

二科生が九校戦の大舞台に選ばれるなんて創立以来、初めての珍事だ。

これがまたお兄様の伝説の一つになるのだ。

そう思えば誇らしいではないか。

発足式は無事何事もなく終わり安堵した。

もう、お兄様に対して悪意ある視線などほとんど無くなっていた。

その事実にやっぱり一つのエンディングを迎えた気分だな、とにこにこ笑みが止まらない。

周囲には本当にお兄ちゃんが好きなんだな、というような視線をビシバシ感じたけど、いいじゃない。私、お兄様、好き!

そんなこんなでそこからは怒涛の日々だった。

練習練習また練習。皆放課後遅くまで残って練習漬けで、たまに生徒会の仕事を挟んでまた練習。

正直、私自身そこまで練習が必要ではない。ちょっと練習しただけで概要を掴み、ほとんど皆の練習に付き合っているような感じだ。

またお兄様も調整と、先輩たちに技術を教えたりとこれまた一年生らしくない活動に勤しんでいた。

僻みなどなく――とまではいかない。やっぱり先輩たちにも意地があるし、プライドは高い。そう易々とお兄様の言葉に耳を傾けられない素直になれないボーイも存在する。

思春期だもの、しょうがない。

でもすごいようだと認めないでもない、という感じなのでそのあたり刺々しさは少ない。森崎くんは完全この思春期グループだ。一年生筆頭だ。むしろ一年生男子のリーダーだもんで、周囲のお仲間は同じくお兄様に負けてばかりいられるか!と言わんばかりに目の敵にしている。

だが一年女子は素直に調整をしてもらってから一層傾倒しているようだった。

お、これは恋の予感?と思ったけど残念。

そこまで行きそうなのは原作通り自分を引き上げてくれた!と感動しているほのかちゃんくらいか。

雫ちゃんはどちらかというとビジネスパートナー色が強めです。

恋でもええんやで?親友が靡いていると難しいとか?あー、女の子の友情は難しい。

お兄様にはぜひ、いろんな恋に触れてほしい。

…いえ別にハーレム作れって言うんじゃないよ。とっかえひっかえでもなく。ただ想いに触れるだけでいいの。そこから一つ選んで恋を育み愛にしてもらいたい。

妹はいつでもお兄様を応援しています。ファイト。

 

「深雪、疲れていないかい?」

「ありがとう兄さん。私は大丈夫。兄さんこそどうなの?」

「お前の顔が見られたら疲れなんて吹き飛んださ」

 

きゃー。のBGMは今日も快調のようですね。

もう聞き慣れました。これが日常。

ちなみに、発足式のアレを見た演劇部員が、プリンセスの戴冠式と騎士の叙勲のシーンを作って婚約だ!と訳の分からないことを叫んでその場から走り去ったらしい。続編決まったな。

 

 

――

 

 

そして迎えた8月1日。

予定より遅れてバスは出発する。

七草会長が家の用事で遅れたからだ。

…正直、この話を聞いた時もしかしたら無頭竜の情報でも入っていたのでは?と思ったが、それにしてはサマードレスでお兄様にノリノリでちょっかいかけているのを見る限り、そうじゃないんだな、と修正。

お兄様は弄ばれて――ないですね、なんでそんなにいつも通り?美少女のちょっかいですよ、もう少しテンション上げてあげて!

ああ…お兄様は技術者メンバーなので後方のバスに行ってしまった。

残念だけど仕方ない。慣習に逆らってはただのわがまま娘になってしまうからね。

遠足気分の盛り上がりでウキウキわくわくのメンバーたち。

バスで移動ってだけでテンション上がりますよね。わかりますよ。

でもね、これからこのバス大変なことになるのですよ。だから――

 

「そういえば渡辺先輩。こういうバスで移動している時、事故とかに巻き込まれた時の対処法とかって何かあったりするんですか?」

「なんだいきなり物騒だな」

「こんな大人数で移動すること自体初めてに近くて。もしこういう場面で誘拐されたらどうすればいいんだろうって」

「ああ~。流石に九校戦でそんな大それたことをする奴がいるとは思えんが、君はよく狙われてきたと言っていたな」

「私も流石に無いとわかってるんですけどね。いろんなシチュエーションを知っておいて損はないかと思いまして」

 

通る声なので普通に話していても皆が聞き耳を立ててくれている。聞くだけでなく参加してくるメンバーもいた。

 

「闘技場で聞いたけど、まあそれだけ魔法力が高くて可愛ければ変なのに目をつけられてもしょうがないのかもね」

「バスが狙われるって可能性まで考えなきゃいけないって相当やばいの?」

「あまり周囲を巻き込む系は遭遇したことないです。無いに越したことはないのですが、未来は分かりませんから」

 

あくまで可能性としてだと言うと、どう対処するのがいいか話し合いが始まった。

 

「まずはそうだな。ここにバスジャックが現れたら持っている武器が何か、対魔法武装はしているか見極めてから魔法を選ぶか身体能力で取り押さえるかを決めるな。動くのは実働経験のある風紀委員か十師族でも十文字が動くのがベストだろう」

「連携が取れるだけの信頼がある者が動いた方がいい。もしいなければ自身の行動を口に出して周囲に知らせるのも一つの手だ」

「え、でもそれだと犯人にばれませんか?」

「だが無秩序に魔法を発動したりしたらそっちの方が危険だ」

「その通りだ。魔法が相克を起こし、肝心の魔法が使えなくなっては元も子もない。パニックにならないのがベストだが、もし事故や事件が起きた時冷静になるのは難しい」

「そういう時はその場のリーダーを見て、順番を決めたりするのが良い対策だろうな」

「リーダーですか。この場合十文字先輩になるんでしょうか」

「真由美もリーダーだが、今はお疲れのようだからな。十文字だろう」

「渡辺も十分リーダーだと思うが」

「その時は私とお前でアイコンタクトでどう動くかだな。一人ひとり役割を声に出して決めて瞬時に対応できたら完璧だ」

 

ほーほー。聞きました皆さん。頑張りましょうね。

 

「ありがとうございます渡辺先輩、十文字先輩」

 

共に被害を最小限に抑えましょうね。

 

 

 

 

「……もしやバスに乗ってすぐの質問はこれを予期していたのか?」

「いえ…流石にこんなことになるなんて」

 

はい。知ってました。

対処法話しておいてよかったですね。

おかげさまでバスは傷一つなく、襲い掛かってきた車は爆発しましたがこちらは無事です。

 

「これってまさかホントに深雪を狙った誘拐犯が…?」

「それはないんじゃない?巻き込まれ事故っぽいし」

「誘拐にしては手口がおかしい。ただ、事故と判じていいかはまた別だ」

 

一瞬私のせいで、みたいな空気が流れたけれどすぐに七草会長たちが否定してくれた。

流石十師族です。手口に詳しい(偏見)。

 

「深雪、大丈夫か」

「兄さん。ええ、なんともないわ」

 

降りてすぐお兄様が無事を確認に来ましたがなんともないですよとアピールしておく。

そして耳元で短く伝えられた。

 

「痕跡が見えた。あれは事故じゃない」

 

目的は九校戦。そして――一高の、私の乗ったバスが狙われたことでお兄様の怒りのギアが一つ静かに上がった。

 

 

 

事情聴取やらで時間を取られてからやっと会場へ。

すると会うはずのない顔が見つかる。

エリカちゃんだ。私服かわいいねー。美月ちゃんもグッドグッド。

普段見せないような露出多めなお洋服にくぎ付けです!解放的!でもお友達だからちゃんと教えておくね。TPO大事です。お着替えしましょうね。

それから西城くんと吉田くんも合流し、まだここにいる理由は明かさないけど滞在するんだー、と楽しそう。

いいね。青春満喫してるね!でも君たち皆宿題免除じゃないから大変では?と思わなくもないけどお口チャック。

楽しみにしているのに水を差してはいけない。

彼らの移動を見送って、いったん荷物を割り当てられた部屋に置いてきたらいいお時間。

懇親会の移動時間です。

 

「流石深雪、ぴったりだ」

「苦しくない?」

「ああ。まるで初めから誂えたようだな」

「ならよかった」

「…深雪さんって女子力高いわね」

 

お兄様の借り物のブレザーはやはり肩回りが窮屈で合っていなかった。

なので前もって七草会長に尋ねておいて正解だった。修正していいって許可を取りました。

 

「え、何々深雪って裁縫もできるの?!」

「ちょっとした手慰み程度よ」

「…手慰み程度で手直しなんてできないわよ」

「前時代の花嫁修業でもしてるの?」

 

趣味のため、とは言えないので曖昧に笑っておこう。

 

「花嫁…」

 

おっと、隣から不穏な重低音。

お兄様、私は当分嫁に行く予定無いですよ。

お兄様のお相手を選別するまでは、叔母様に頭下げてでも行かない予定。

 

「兄さん、そんな悲しい声を出さないで」

「すまない。きっと花嫁のお前の姿は世界一美しいだろうが想像すると――嫁入り道具に兄は入るか?」

「うーん、一般では入らないけど、兄さんなら入ってそう」

 

もしもだけど結婚しても、女の子のガーディアンができても、お兄様って何事も無ければガーディアンのままでは?分家が何を言おうと次期当主守るのにお兄様の力ってどうあっても最強ですし。

つまりお兄様は嫁入り道具⁇一応四葉から離れて自由になってもらう予定だけれど、何もできないまま順当にいけばそうなる可能性も。

 

「一般で入らないってわかってるのにどうして深雪さんの場合なら入るなんて話になるのよ…」

「というか達也くんの場合本当に入りこもうとしそうで怖いな」

 

先輩方―、聞こえてますよ。

冗談、冗談ですから。

 

「そもそも相手もいない想像なんてしても無駄でしょ?」

「お前に惚れない男はいないだろうからな。いつそんな話が起きてもおかしくない」

「…学校でもそんなことなかったじゃない」

「それは俺がけん制しているからな」

「え」

「けん制してるぞ。深雪に声を掛けたければ俺を倒してからにしろ、とな」

「……お、兄さん、冗談は真顔で言っては分かりづらいわ」

「悪かった」

 

…危ない。お兄様の口元の歪みと目じりの一ミリ見逃してたら冗談だってわからなかった!

やってそうだよお兄様!そしてもしそうなら誰も私に話しかけられないね!お兄様倒せる人なんて地球上ほぼいないもの。

師匠とか風間さんレベル?

周囲からは本当に冗談か?との視線を感じますが冗談顔ですからね!お兄様ズジョーク。

 

「もう、兄さんったら」

「お前が可愛すぎて心配なんだよ」

 

さらりと髪を撫でるお兄様に、つい頭を寄せてしまう。条件反射って怖いね。

 

「ちょ、二人とも!ここは学校じゃないんだからあまりいちゃつくのはだめよ!」

 

七草会長、多分だけど学校でもだめだと思う。

っていうか学校でそんなにいちゃついてるつもりないんだけど。…何がそう思わせているのだろう?

頭を捻っていると、くるり、と体を一回転させられてお兄様の肩に引き寄せられました。何事?ダンスの練習?

 

「それなんですが会長、深雪には虫が寄り付きやすいです」

「む、虫…そうね、それはまあ、想像できるわ」

「真由美自身、毎年群がられてるしな」

「な、摩利だって!」

「私は女子の方が多い」

 

あー、想像できますねお二人とも。

スターに近づける滅多にないチャンスですものね。

 

「なら会長もわかるでしょう。とても疲労することが。おそらくこの懇親会で妹は様々な虫に目をつけられて集られることでしょう。それでは一高の勝利に関わります」

「……つまり?」

「虫よけが必要です――深雪」

 

え、私!?

 

「なに?」

「これから俺を兄と呼ぶことを禁止する」

「え」

 

ええ?

 

「ちょ、ちょっとちょっと達也くん⁇」

「できるな?」

「できるかできないかなら、できるけど…必要?」

 

そこまですることって必要ですかねお兄様。

今まで通りじゃ何かいけない理由でもありました?

あの、後方で女子がきゃあきゃあ楽しそうなので私もあそこに行ってきていいですか?あ、でも行ったら餌食にされそう。

 

「達也くん、流石にそこまでするのは」

「一高が勝つためです」

「そ、その心意気は嬉しいのだけど」

「これは一種の心理戦でもあります」

「しんりせん」

「大抵の男子は深雪に見惚れるでしょう。だが恋人がいるとわかれば落ち込みます」

「だがそれならなにくそって立ち上がってこないか?」

「やけくその攻撃など冷静に対処すればただの隙でしかない」

 

…思ったより心理戦だった。

え、うそでしょお兄様。そもそも大抵の男子、そんなことで精神乱される⁇

 

「あいつに人の心ってもんはないのか」

「なんてひどい作戦」

「俺らの気持ちまで折る気だ」

 

なんか男子は男子サイドで何か言ってる。

おいおい、嘘だろマイケル。まさか本当に作戦として成り立つっていうのかい?

 

「司波」

 

!十文字先輩!!

流石に先輩ならこんなのおかしいって思いますよね。どうぞどうぞ言ってやってください!

 

「やれるだけやってみろ」

「ありがとうございます」

 

まさかのゴーサイン!?なぜ?!

 

「じゅ、十文字君!?」

「一高が勝つためだ。…正直その作戦にどれほど価値があるかは知らんが、もし効いたなら儲け、くらいでいいだろ」

「…面倒くさくなったのね」

 

収拾付かないから勝手にしろってことだった。

大所帯をまとめるにはこういった決断も必要なのか。大変だな、部活連会頭って。

 

「深雪」

 

お兄様が見つめてくる。

 

「…司波くん?」

「お前も司波だな」

「名前で呼ぶ機会あるかな?」

「まあ兄と呼ばなければ大丈夫だろ」

 

無理に名前を呼ばせる気はないらしい。

ただ恋人っぽく振舞えばいいということ。

外出する際よくやる手口ではあるけど、ここはいつもと違って学校の皆がいる。知人の目があるのだ。対応が変わる。

そもそもいつも思うんだけど…恋人っぽく振舞えってどうすればいいの?

見本になりそうなのは、千代田先輩と五十里先輩カップルだけど…腕に絡みついてますね。

………

 

「ああなる必要はないさ。普段通りでいい」

 

その普段は学校の普段?お家の普段⁇

とりあえず今の肩を抱かれている状態は正解ですか?腕に絡みつくより近いですね。

 

「よし!いいかお前たち。私たちはどんな手を使っても勝ちたい。三連覇がかかっているからな。よって、こういった卑劣な手を使ってでも勝とうではないか!今からこの二人のことを兄妹と漏らすことを禁ずる。無理にカップルとも言う必要も無い。ただ、見た通りです、とか言ってかわせ。それは嘘でも何でもない!そんなことでお前たちが精神を不安定にさせることはない。

――いいか、これは戦いだ。試合はもう始まっていると思え」

「我が一高に勝利を!」

 

おー。

…いいのか、これで。

先輩方はもう何を使ってでも勝つ精神で、全体を煽り志気を高めた。

高まってる生徒たちよ、今一度問う。それでいいのか?…お祭り騒ぎだからなんだっていい?そんなものですか。

…まあそうよね。騒げれば理由なんてなんだっていい。オタクもどうでも語呂合わせの日をネタに原作関係なく盛り上がるしね。

 

「深雪、俺たちが作戦の要だ」

「…精いっぱい頑張る」

 

お兄様、随分コメディ路線に突入しましたね。お兄様の新たな一面に私は戸惑いますが――受け入れて見せましょう!

 

「これからよろしくね」

「ああ。これからもずっと一緒だ」

 

(…あれ?ちょっと意味合い違くない?)

 

何はともあれ一高は懇親会に乗り込んだ。

姑息で卑怯な作戦を引っ提げて。

 

 

NEXT→

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。