妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします!分割版   作:tom200

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四葉継承編③

 

 

さあて、やってきました無駄足チャレンジ一日目!29日は伝統派のように十師族に恨みを持つ強化サイキックを率いた対大亜連合強硬派の方たちでしたかね。

真っ向から衝突する気満々の強硬策を進めるのではなく、じわじわ敵国の力を削ぐことに注力してくれていれば殲滅することにはならなかった。

…要は、我が国を守るためー、と周囲の理解も得ようとせず猪突猛進で突っ走ろうとしたので、他の国防に尽力している部署からも煙たがられ、思うように動けないところにその殲滅対象に唆されて懐に入れてしまっていたのだ。

敵に利用される者は早めに処分を、と上層部が考えるのも当然の決断と言えよう。それに、ただやみくもに対立しようとする彼らの思想は国内に分裂を招く。

しかし、四葉分家も強かだよね。自分たちの任務をお兄様に押し付けて高みの見物だもの。給料差っ引くよ。…されたところで痛くもかゆくもないんだろうけど。

予定通りに家を出て嵩張る荷物の一つでも持たせてもらいたいと訴えるも、お兄様と水波ちゃんが箸より重いものを持たせないと言わんばかりに何も持たせてくれなかった。

駅までは普通の移動。今回襲撃してくるのは腐っても我が国の軍所属の人たちだ。どこぞの大陸の人たちのように管制をジャックして、なんて手荒な真似はしない。

愛国心があるからこそ、彼らは結束している。日本国に不利なことなどはしない。…というよりできないだろうね。そんな技術を持っている人もいないだろうし、そもそもこの襲撃は四葉の人間を人質を取って要求をのませることを目的とした作戦。被害を大きくして誤魔化しの利かない罪を重ねたくはないだろう。

大それたことを目的に掲げていても、罪を最小限に抑えて厳罰対象にならないよう考えているはずだから。

…国防軍人が魔法で誘導されて、勝手に人造サイキックを連れ出している時点で罪は重いと思いますけどね。魔法で操られる自体まずいのに、人造サイキックは軍の最も隠したい罪の一つなのだから。どうあがこうにも彼らはすでに詰んでいる。

そこにわずかな希望(幻想)をちらつかせるんだから、四葉、人が悪すぎる。効率的ではあるんだけれどね。お兄様を餌に最短で片が付けられる。被害も少ない上にお兄様に傷を付けられるかもしれない…は分けも高望みだと分かるか。四葉本邸に私たちを近づけないこと、慶春会参加を妨害することが目的なのだから。

キャビネットに揺られながら移動している間、水波ちゃんが緊張しているのか黙り込んでいた。

黒羽貢による警告をお兄様はその日のうちにお話になった。忠告って形でマイルドに、ではあったが。

だけどお兄様からの忠告の前に夕歌さんとの話で襲撃を聞いていた水波ちゃんは、今回の襲撃がただ事ではないと察し、身を強張らせていた。

彼女はガーディアンに選ばれたとはいえ、まだ高校一年生の少女だ。いくら覚悟ができていると言っても、実際の戦闘経験はまだ少ない。

たった一年しか違わないお兄様や、同い年でも黒羽の姉弟とはまた違う環境だからそこまでの実戦慣れはしていない――って、年齢が近いからと比べる相手が違い過ぎたね。四葉の使用人教育はすぐさま実戦に投入できるレベルまで仕上げるが、だからといって教育が終わったら連日裏方任務、というわけではない。水波ちゃんはガーディアンの役目もあるが、日常はメイドの仕事がメインだ。

本来ガーディアンはもう少し経験を積ませてから就く。だが、分家が私とお兄様を引き離さなければ、と当主に願い出て見習いという形で強引に送り込まれた。

もちろんそれだけの技術を身に付けたから、許可が下りたわけだけど…水波ちゃんがガーディアンになったからお兄様を引き離そうって考えはどうなんだろう?お兄様を表舞台から引っ込ませて隠して使い潰したい⁇…というより目障りだから見えないところでひっそりと飼い殺したい、のかな。

 

(自分勝手なこと。勝手に願い、勝手に失望し、勝手に怯え、嫌悪し、迫害し、その復讐に怯える。――ばかばかしいったら)

 

なんて、こんなくだらない策を巡らせている分家のことを考えている場合ではなかった。今は隣でカッチカチになってしまっている水波ちゃんをどうにかしなければ。

だけどこの状態になってしまっては「襲撃の恐れあり、と忠告があったからといってそこまで気を張り詰めなくても大丈夫よ」と宥めてみても、彼女は「…はい」と答えるだけで緊張は解れない。

…考えてみれば、襲撃されると分かってるんだから落ち着いて、なんて無理な話だ。普通前もって情報があるからどっしり構えて待てばいい、なんてできるはずがない。このようにがちがちに緊張して当たり前。

以前急な襲撃にはお兄様の指示に従って冷静に魔法を行使していたけれど、いつ来るかわからないと宣言された敵と、目の前に急襲してきた敵では心構えも気合も変わるのか。

本人はいっぱいいっぱいかもしれないけど水波ちゃんのこういうところが、普通の女の子然としていてとても気に入っている。なんというか、染まり切っていない新鮮な反応です。ずっと傍に置きたいくらいに清涼剤。好き。

お兄様も彼女の様子をわかっていて、水波ちゃんを咎めることも、無理に落ち着かせようともしなかった。

ただ――

 

「深雪、寒くはないか。もう少しこちらに寄りなさい」

「あの、」

「寄りかかれば多少温かいだろう?」

 

お兄様、ここはお外ですよ。そんな肩を抱き寄せなくても。

キャビネットの中は空調もしっかり効いているので寒くはないし、コートもしっかり着込んでいるのに。

 

「手も冷えているね」

 

ええっと、それは元からの冷え性ですね。密着度が二人きりの時並みに高いのですけれど。

お兄様どうしました?ここは確かに監視されてはいないでしょうけれど…今後のストレス対策?

お手手が掴まれたと思ったら指を絡められて恋人つなぎになってにぎにぎされてます。

深雪ちゃんのお手手はぷにぷにしてないのでスクイーズのような気持ちよさは無いと思うのですがね。

 

「お兄様、その…何かございましたか?」

 

もしや私の感知していないところで何かあったのだろうか。

こっそり周囲を警戒し口元が見えないようお兄様の胸にしなだれかかるようにして小声で尋ねるのだけれど。

 

「心配しなくても何もないよ。それとも何かなくては深雪とこうして触れ合ってはいけないか?」

 

いけないわけではないけど…うん?いけないわけない、のか⁇いけなくない?いけなくなくなくない⁇(混乱)

ここは外ですよ。いくら他の人が乗り合わせていなくとも、完全にプライバシーが守られるという保証のない、公共の乗り物です。しかも二人きりでもなく水波ちゃんが居るのに。

それ以上顔を近づけないでいただきたい。近い、近いですお兄様!

混乱して身動きが取れない間に、肩に乗せられていた手が滑るように首の方に近づいて――

 

「!達也様、深雪様から離れてください!いくらご兄妹とは言えど距離が近すぎます!!」

 

!助かった。水波ちゃんが復活しました。

 

(…もしかしなくてもそういうこと?)

 

急に何が始まったのかとドキドキしたけど、お兄様はお兄様なりに水波ちゃんの緊張を解こうとしていた、ということかな?

私にちょっかいを掛ければ反射的に守ろうと動くだろうと。

…うん。直接言葉を掛けるより効果はあったと思われる。

奇策は成功し水波ちゃんの身体からは外部への緊張が薄れたようだけれど、間接的に緊張をほぐすためとはいえその作戦は私にだけ負担が多くかかっています。

負担と言っても嫌なわけではもちろんなく、心臓への負担なのだけど。お兄様はどうしてか私の心臓だけは労わってくれない。

お兄様に食って掛かる水波ちゃんは次第に自然体を取り戻し、対するお兄様は普段と変わりなくいなしてから、最終的に彼女の言う通りに手を離した。ほっと一安心。

水波ちゃん、ちゃんと貴女はガーディアンができています。自信を持って。そしていつも守ってくれてありがとう。

そんなこんなで待ち合わせの駅に到着。

 

「本日はよろしくお願いしますね」

 

本邸まで送迎してくれる運転手に声を掛ければ一瞬惚けた後、シャキッと背筋を伸ばしていいお返事を。声が固かったのは今後のことを知っているからかと考えるのは疑い過ぎかな。

彼には彼の仕事があるから必要以上に突きはしない。運転よろしく。

水波ちゃんは彼と交流したことがあるのか和やかに話しかけていた。水波ちゃん、お外だとそんな感じなのね。あまり使用人同士の交流を見たことが無かったので新鮮。

そしてお兄様には、うーん無反応かぁ。悪態を吐くよりましだけれど、原作深雪ちゃんがこれを見たら荒れるぞぅ。

 

「もう少し柔軟に対応ができれば嬉しいのだけれど、貴方は私を喜ばせるのがお仕事では無いものね」

 

仕方が無いわ、とチクリと言えば深く頭を下げられて謝られた。うんうん、謝るくらいなら初めからしないようにね。無理しなくていいよ。運転が仕事だものね、とにこにこと。

お兄様からはほどほどに、と苦笑を頂いて後部座席に誘導される。もうトランクは積み終えていた。水波ちゃんも助手席に乗り込む。

さ、アクション映画さながらのスリル満点なドライブへと洒落込みましょうか。

 

 

 

 

…なんて余裕をかましていたけど、実際体験するとお兄様の隣という安全地帯にいるとわかっていてもびっくりはする。

人家が無くなると同時にお兄様が反応を示した。その口を開くより早く、運転手に向けて警告を口にした。

 

「襲撃です!」

「、グレネード弾前方二、後方一」

 

お兄様の反応が少し戸惑った瞬間があったのは私がセリフを奪って声を上げたからだろう。ごめんなさい、この方が早いから。

運転手の態度からして素直にお兄様の指示に従うように見られなかったから、口を挟ませてもらった。こんな時にごたごたなんていりません。スマートに行きましょう。

お兄様の声に水波ちゃんが反応して瞬時に対物・耐熱障壁の魔法を展開しようとしたのだけれど、不協和音のような嫌な波動を感じた。

この時すでにお兄様は相手がどのような魔法を行使していて、目的を理解し、相手の目星をつけて水波ちゃんに指示を出す。

 

「水波、魔法を中止しろ」

「、はい!」

 

何故、何、などの問答もしない。指示通り魔法を中断する水波ちゃんを確認することもなくお兄様は斜め上を右手で指差す。

車内で、窓から顔を出すわけにもいかない状態で見える範囲は限られている。だから何が起きているか中継することはできないが、お兄様が攻撃を退けていることはわかる。

窓の外で何かが飛来しているのが見えたかと思ったらその方向で小爆発が。でも余波が来るほどの衝撃ではない。

特撮とかでよく見る小爆発の横を通り抜ける光景に、危険に晒されている真っ只中だというのにちょっぴり興奮した。

そして今度はお兄様の左手が空を払うように動くと、漂っていた不協和音が綺麗さっぱり消えた。

実際に聞こえているわけではないけれど不快だったので助かりました。ありがとうございますお兄様。

水波ちゃんが仕事を全部お兄様に取られて落ち込んでいるけれど、もう魔法使えるから対ショックの防壁張っても大丈夫だよ。

 

「町へ引き返すんだ!」

 

お兄様の短い指示に、私は間髪を空けずに繰り返す。

 

「車を町へ戻してください」

 

敵の襲撃の撃退を全部お兄様に任せて強行突破して先に進もうとする運転手だったが、お兄様の言葉を繰り返しただけの私の指示に従いハンドルを大きく切った。

お兄様の指示には従わない姿勢を見せるくせにその力をあてにこの場を突っ走って抜けようなんて、一体どんな教育をされてるんだか。ガーディアンの地位が低いとこういう時に不便だ。

特に、分家当主から何らかの指示を受けている彼にはこれが当たり前の対応だったのかもしれないけれど。

これが終わったら教育方針について叔母様と要相談かな。この無駄なワンラリーの時間いらないと思うんだ。それとも先に「お兄様の指示は私の指示だと思いなさい」と令嬢ムーヴをかますべきか。

 

「水波、深雪を頼む」

 

くだらないことを考えているとお兄様が続きの指示を出しながら懐から特殊サングラスを取り出して掛けるのだけど――カッコいいよね。映画みたい。このシチュエーションも相まってとってもお似合い。

 

「はい!」

 

動揺しているだろうに水波ちゃんは力強く応えた。

 

「深雪、駅前で落ち合おう」

「ご武運を」

 

心配しないわけじゃないけれど、お兄様を引き留めることなどできない。

窓を開けながらわずかにサングラスをずらしてチラリと向けられる視線に頷いて返すけれど、口元には一瞬苦笑が浮かんでいるように見えた。ほんの、一瞬だけれども。

サングラスをしっかり顔にフィットさせて人相を隠すお兄様は、本当に映画の主人公が出撃する前のよう。

窓を開けたのは運転手がハンドルを切るタイミングを計ってなのか。そこから飛び出すところも自身の身体能力を把握できているからこその動き。

お兄様が主演の映画ならいくら払ってでも見たい。何回でも通う。

ハリウッドも驚きのスタント無しの一発撮りですよ。カッコ良すぎる。

こんな時だというのにときめかせないで欲しい。まだ緊張感漂ってないといけないのにお兄様に見惚れそう。

でもお仕事はしないとね。

見事なハンドルさばきでUターンを決めたけれど、中もなかなかの遠心力で、如何な衝撃を和らげる素材の座席であろうとも内臓にまで衝撃が来ますからね。慣性制御の魔法を三人に掛けて衝撃を和らげる。

運転手が驚いているけれど、貴方は運転に集中していてください。

 

「水波ちゃん、念のため対物の障壁お願いね。お兄様が打ち漏らすことはありえないけれど、この先に隠れている敵がいないとも限らないから」

 

注意を怠らないように言えば水波ちゃんは対物のみならず、耐熱障壁も同時に掛ける。

うんうん、さっきのこともあってか気合が十分。大丈夫だよ。私もサポートするから。いつでも魔法を掛けられるように準備はして。

警戒も立派なお仕事です。落ち込んでいる暇は有りませんよ。

駅に近くなった頃には周囲に警戒すべき気配は見当たらなかった。こちらに追手はかかっていないようだ。お兄様が全て引き受けてくださった模様。

 

「さて、ではこの車はこのままどこかを走らせてから本家の指示を仰ってから戻ってください」

「、このまま本家へ向かわれるのではないのですか?」

 

…これってお兄様を置いたまま連れて行くってこと?これまでの言動からガーディアンの為に迎えにはいかなさそう。

お兄様が傍に居なくても守護できることを彼は知らないと思うけど、二人で守り切れるつもりかな。

それともこの後仕掛けてくる人はいないことを知っているか。

だとしても、ね。

 

「街頭カメラに映った車で移動をするリスクを背負ってまで予定を強行しなければならないわけでもありませんから」

 

運転手的には己の任務を遂行しようとしたのかもしれないけれど、もしや街頭カメラに気付かなかった、ということはないよね。

念のためでも関係性を疑われる可能性がある。爆発物を使っているのに警察が動かないわけがないのだから捜査の為時間を取られるのは明白――、これも一種の妨害工作?いやでも私たちが四葉とばれることは分家の彼らも望むところではないはずだ。

 

「カメラのないところへ降ろしてください。水波ちゃん、ちょっと大変だけれど二人で運べば一度で済むから我慢してね」

 

この場合の我慢は、嵩張る荷物を運ぶことではなく私が運ぶことを許容してね、ということである。

水波ちゃんはしょんぼりしているけれど、往復している時間が無いことはわかっているのでしぶしぶ了承するしかないのだろう。

複雑な使用人心だね。水波ちゃん、いくつ心を持っているの?乙女心といい大変だね。

ということで駅前からちょっと離れたスポットで荷物を下ろして運転手とはお別れ。電話も遠くでしてね。電波傍受とか厄介だから。

心の中でハンカチを振ってお別れして荷物を運ぶ。嵩張るだけでたいして重くもない。

だからそんな心配そうな顔をしないで欲しい。これくらいじゃ痕もつかないから。

 

「水波ちゃんは心配性ね」

「…深雪様が落ち着かれているのは、襲撃犯がわかっているからなのですか?」

「いいえ。襲撃犯が誰かとか、関係ないの。ただ、状況的に誘拐はされても、殺しが目的ではないと確信しただけよ」

 

でなければ初手であんなジャミング擬きの攻撃をすることもなければ、グレネード程度の攻撃をすることもない。

普通の車だったなら一発でアウトだけどね。普通車に見えるようでいてこの車もかなり改造している。グレネードがブラフで、続く榴弾で車をひっくり返しでもして人を攫う算段だったのだろう。

車がいくら頑丈でも爆風や衝撃でひっくり返ることは防げない。魔法を使えれば問題無いかもしれないが、相克状態で魔法は使えないのが魔法師の常識。

それなりに勝算があったんだろうけど、お兄様の分解魔法は妨害できないから。

 

「誘拐、ですか」

「ええ。もしそうなったら世間知らずのお嬢様をするから、水波ちゃんは年相応の新米メイドさんとしておどおどしていてね。間違っても身を挺して守ろうとしちゃダメよ」

「どうしてです?」

「二人いるとね、一人を甚振れば一人が大人しく言うことを訊く人質が有効になる。甚振る前に怯えながら従っていれば二人とも傷つくこともないかもしれない。まあ相手に嗜虐趣味があるようならまた対処が違うのでしょうけど、今日の彼らの武器や動きを見る限り軍人のようだったから、人質の扱いは丁重のはずよ」

 

これが大亜連合の前、大漢のような目的で連れ去られたのだとしたら――世界が滅びるだろうけど。お兄様を止められる気がしないもの。

国一つで済めばいいね、っていうレベル。ま、そんなことになる前に私が敵を全部凍らせちゃうけどね。そうすればお兄様も暴走しないで済むだろうし。

でももし魔法が使えない状態になって私が身動きも取れない状態になったその時は、まあ、諦めて滅んで?

 

「…そうならないよう、深雪様をお守りします」

「そうね、その前で止められたら止めましょう。攫われてお兄様と離れ離れになったら大変だもの」

 

主に、敵が。そしてお兄様のその後が。お兄様を暴発ばかりさせちゃうとお兄様を封印したい大人たちが張り切っちゃうのでね。

話している間に駅の待合室へ。重くは無くても嵩張るモノを運ぶのは大変だ。ふう、とため息を吐いて椅子に座る。

無人の待合室なので周囲を気にしなくていいのはいいね。

正午過ぎに家を出て、キャビネットに揺られて一時間で、車に乗って少し走らせてからの襲撃。

目まぐるしく動きまわっていたけれど、まだ3時半にもなっていなかった。

あれだけの人数を相手にして、となると背後を探ろうとすることも考えてお兄様がここに戻られるまでまだ時間がかかるだろう。

 

「水波ちゃん、お茶にしましょう」

 

私は鞄の中からお茶菓子を取り出した。

 

「…かしこまりました」

 

水波ちゃんから準備の良さに呆れたような視線を向けられたけど、こんな時だからこそ慌てても何にも無いから。

お兄様を心配しっぱなしで水波ちゃんに迷惑をかけるのも嫌だもの。

 

(そう、お兄様なら大丈夫)

 

必ず戻ってきてくれるから。

 

 

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