妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします!分割版   作:tom200

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四葉継承編⑦

 

 

夕歌さんちの別荘から本家まで通常約二時間で着くところ、山道の近くを通り抜けなければならなくて、雪道を通らなければならない可能性を踏まえると三時間、更に襲撃もあると考えるともう少し早く家を出たかったのだけど――

 

「夕歌さん、二日酔いではないのですよね?」

「…本家に行く前にそんなことできるわけないでしょ…夜型なの」

 

つまり、朝がめっちゃ弱いということですね。

というわけで朝と呼ぶにはちょっと遅い時間から出社、じゃない、出発になりました。…昨日とかどうしてたんだろう。あの時間にタイミングを合わせて来ていたなら昼前には運転してたと思うんだけど。目覚まし的なドリンクでも用意すればよかったかな。

別に危なげない運転ではないのだけれど、気だるげに見えるから言い知れない不安が。

なんて、思っておりましたが無事に?襲撃ポイントまで来ました。

思ったより早く来れましたね。

 

「お兄様」

「ああ。定石通りならば来るだろうな」

 

四葉の村へ入るにはこの先のトンネルにある特殊な魔法セキュリティを通らねば入れない仕組みになっている。

村の中でお兄様に暴れられては村を覆っている結界が危うくなる恐れがある。仕掛けるならその前まで出ないと彼らには不都合なことになる。

それを鑑みてこの道中仕掛けられなかったということは、もう襲われることは無いと油断をさせるつもりでここが襲撃ポイントに選ばれたということ。

 

「え?ここまでくれば仕掛けるなんて無茶なこと――」

「ええ。その考えを逆手に取られたのでしょう。四葉の人間ならここまでくれば安全圏に入ると思うでしょうから」

「!」

 

夕歌さんのハンドルを握る手に力が入った。タイミング的にはギリギリかな。

トンネルが視界に入る頃、それは来た。

 

「深雪、雪崩を融かせ!」

「はい、お兄様!」

 

CADに指を滑らせ魔法を放つ。

夕歌さんがブレーキを掛ける。

 

「水波、半球シールド!」

「はい!」

 

雪崩の発生した位置は少しでもタイミングが遅れたら掠る程度にはギリギリのコースに思われた。寝ぼけたままの夕歌さんだったら危なかったかもしれない。

勝成さん、夕歌さんが朝弱いこと知らなかったのかな。私たちよりも付き合い長いから知っていそうなんだけど。

この時点で、勝成さんが私たちだけでなく夕歌さんも一緒に来ることを知っていたと確信していた。

叔母様から情報を得たわけではないだろう。

動きを読まれていたか、あるいは――津久葉家の別荘に密告者がいるか。

もっと単純に、昨日の運転手が私は夕歌さんに連れてかれたとでも報告したのが漏れたのか。

そのうちのどれかでなかったとしても、対応は変わらない。

雪が融け、水となって様々なものを飲み込んで濁流となり、下へと流れていく。…この辺に民家が無くてよかった。

多少景観は悪くなるけれど、この修復はどこが受け持つんだろうね。一応ここはまだ四葉の土地ではない。ばれないうちに誰かが片付けるのかな。それとも自然災害として処理するのか。報告書が楽しみだこと。

お兄様は水波ちゃんにシールドを解除させて車を降りた。

前方には倒木や岩が転がっている。これは水波ちゃんがいる前提での攻撃だったのかな。

岩の軌道なんてそう読めるものじゃないし、彼らがそこまで気を回してくれると思わない。

殺す気はないけれど、なんともこちら任せの雑な作戦に思えてしまう。それとも少しでも魔法を使わせて消耗させたかった?これくらいでへばると思われていたのだとしたらそれは随分と舐められたものだ。

こんなに四葉は生温かっただろうか。

 

「お兄様、これは足止めでしょうか」

 

そう言いながらもCADをしっかり握っている。

 

「いいや、待ち伏せだ」

 

お兄様は既に敵を捕捉しているらしかった。

 

「出てきなさい!」

 

あら、さっきまで気だるげで動くのも億劫という感じだった夕歌さんがブチギレです。おこですおこ。

ハンドバッグから折り畳み式CADを取り出して――って、ちゃんとバッグにしまってるのね。

完全思考操作型のCADは持ち合わせていない模様。アレは使うのにコツがいるから手を付けてないのかな。

でも折り畳み式は最新のものだから目新しいものはチェックしてるようだけど。

 

「出てこないなら、遠慮しないわよ!」

 

そう言って繰り出されたのは…直接浴びているわけではないけど、近寄りがたい波動が前方に向けられている。

使われているのは『マンドレイク』。夕歌さんが得意とする精神干渉魔法。

致死性は無くとも、恐怖を植え付けられる魔法なんて喰らったら精神が持たない。痛みがあるから恐れられる、その先の恐怖を予想して恐れるという段階をすっ飛ばして未知の恐怖だけが襲ってくるのだ。

対抗魔法と精神魔法の耐性が無いと大抵の人間が詰む。

中条先輩がいれば梓弓で落ち着くだろうけど。アレも悪用すれば結構な魔法だよね。悪用じゃなくても軍とかに利用されないよう祈るばかり。

想子の「音」によって繰り出されるだから物理的な音とは違い遮音シールドでは防げない。だが、音波を減衰させる魔法なら別、らしい。

 

「…この魔法、琴鳴さんね!正体は割れているのよ、出てきなさい!」

 

相手を予測していたからこそのマンドレイクだったみたいだけど、夕歌さんも容赦がない。

 

「勝成さんも、女の背中に隠れてないで、出てきたらどう?!」

 

随分と直接的な挑発。だけど案外こういうのが効いたりするんだよね。

目の前に陽炎が揺らめく。濡れた地面があっという間に乾いた。

 

「フォノンメーザーか」

 

お兄様が魔法の正体を教えてくれた。

雫ちゃんが身に付けた技ですね。レーザー攻撃だけでなく用途が色々あるようで。

そして現れる三人の人影。新発田勝成さんを中心に、堤琴鳴さんと弟の奏太君。

…こんな時に本当にアレなのだけど、本当にどこかでカメラ回ってないの?特撮とか撮影してない⁇

まんまその光景なのだけど。揺らめく陽炎の中、三人の戦士が現れる、みたいな。よく見かける演出で満を持して登場のシーンそのもの。

ブラック、グリーン、…ブラック?色被りはよくないと思う。

奏太君は差し色に赤が入っているからレッドでいいかしら。見た目クールだけど熱血系っぽいし。…でもツンツン具合はブラック寄りだよね。

堂々とした陰から支える系ブラックが勝成さんで、俺はお前らの仲間になった覚えはないからなブラックが奏太君。

 

「私は隠れてなどいない。散らばった障害物を抜けるのに時間がかかっただけだ」

 

…うん、実際そうなんだろうけど、何と言うか言い訳すると間抜けに聞こえてしまうことってあるよね。本人至って真面目なのだけど。

近づいてくるブラック――勝成さんはお兄様よりも頭一つ分大きいのに、細身であるから十文字先輩のような威圧は感じない。

けれどその分表情が高圧的に映るのは、七三に見える髪型の所為か、目つきの所為か。

…よそ様から見たらお兄様もこう見えているってことかな。ふてぶてしく見えたって七草先輩が言っていた記憶がふと過った。

 

「隠れてなかったならなぜすぐ答えなかったのよ」

「もっと普通に話せる距離まで近づいてから答えるつもりだった」

 

あらあら。二人が喧嘩を始めてしまった。

鼻で笑う夕歌さんに、年下をあしらうような態度の勝成さん。うーん、相性はあまりよろしく無さそう。

奏太君が食って掛かろうとするのを制して勝成さんは冷静に返す。

 

「答える前に撃ってきたのは君だ。相変わらず好戦的だな、夕歌さんは」

 

その挑発になんだとー!と怒る夕歌さん可愛いかな。

だんだん微笑ましい光景に思えてきた。

だけどその毛を逆立てて突っかかる夕歌さんに黙っていられなかったのは奏太君。

直接的な攻撃なんてしかけてない、と主張するけれど、それは君が言うことではない。口出しできる立場にないことがわかっていないらしかった。

当然そのことは勝成さんの隙となりツッコまれる。

 

「奏太さん、引っ込んでくださらない?」

「何を!?」

「私は今、勝成さんとお話をしているの。津久葉家の娘が、新発田家の跡取りと話しをしているのよ。使用人の出る幕ではないわ」

「な!?」

 

…勝成さん、これは甘やかしすぎでは?これは若さを理由に庇えない。

というか彼の恰好すごいね。ミュージシャンみたいな恰好なのは楽師シリーズを印象付ける為なのかたまたまなのかわからないけれど、そんな派手なファッションで四葉本家に行くつもりだったのだろうか。

琴鳴さんも作業用の繋ぎみたいな恰好だし…暴れ終わったらどこかで着替えてから向かう予定だったのかな。

クリーンな魔法使えない⁇ああ、切り裂かれたりしたら修復はできないものね。

彼の失言をお姉さんの琴鳴さんが注意するんだけど、うん。身内の恥をそんなに大きな声で今注意することじゃないかな。

こっちも非常識?ガーディアンってこうなの?水波ちゃんを見ると彼女がびくっと体を震わせて、視線だけで違う!と訴えてくる。

うん。そうだよね。この場で声を発することなんて許されてないよね。うちの子はちゃんと弁えられてて偉い!後で褒めさせてもらうとして。

 

「勝成さんに恥をかかせないで」

 

うん、本当。その通りなんだけどそれを人前で堂々と言っちゃうのも減点対象ですよ。ガーディアン検定があるなら受け直してきて。

 

「へぇ…。勝成さんは部下に慕われているのね」

 

夕歌さんの口調には皮肉の棘が生えている。まだ腹の虫がおさまらない模様。

 

「慕われているのは琴鳴さんに、だけじゃなかったのね」

 

意味ありげに口調を変えて紡がれたその言葉に、引き下がったはずの奏太が顔色を変えた。

 

「ああ、おかげさまでな」

 

しかし勝成さんの感情を伺わせない低音が、奏太の暴走を押し止める。

これってもう少し前からできなかったのかしら。こういう機会を使って教育しようってことなら教育をお手伝いしますよ。

そう思ったのだけれど勝成さんの方が早かった。

 

「私にはもったいない部下だと思う。私はいつも、彼女たちに相応しい主でありたいと考えているよ。四葉家の流儀に従うなら、もっとドライであるべきだと思うんだけどね。その点は夕歌さん、君を見習うべきかもしれないな」

 

わあ。ここでもお貴族社会の応酬が。今度は夕歌さんが顔色を変える番だった。

でもそこに救世主が現れる。言わずもがな、お兄様である。

 

「俺もガーディアンですが、口を挟ませてもらいますよ」

 

お兄様の温度のない声はすっと彼らの間に綺麗に入り込む。

 

「構わない。ガーディアンとはいえ、君は御当主様の近しい血縁だからな。我々とそれほど立場は変わらないと、私は思っているよ、達也君」

 

勝成さんが見せる鷹揚な態度は、年下に対する気安さか、はたまた使用人に対する粗略さか。区別がつきにくいものだけど、どちらにしても四葉の人間には珍しい態度だ。

こういうところが彼の慕われる理由だろうね。淡々としているように見えるけれど情が無いように映らない。

…おかしいな。お兄様だってそっちタイプのはずなのに、どうして周囲から冷たいって取られてしまっていたのだろう。

 

「ありがとうございます。すぐに済みますので」

「ほう?何かな」

「簡単なお願いです。ここを通していただけませんか」

 

単刀直入に用件を伝える。潔い端的な要求だ。

 

「なるほど、達也くんらしい率直さだ」

「恐縮です」

 

お兄様は頭を下げず、目礼すらせず言葉だけでそう応えた。

形だけでも体裁を整えることもできるだろうにそれをしないのはもうすでにお兄様の策は実行に移されているから。

 

「しかし、それはできない」

 

勝成さんの双眸に、威圧的な光が点る。

彼はけして、このお兄様の態度に不満を抱いたりはしていないように見える。

けれどちらりと視線をずらせば感情を隠すこともしない奏太君の表情にいら立ちがくっきりと浮かんでいた。不敬だ、と。噛みつかないのは先ほどの勝成さんとお姉さんの言葉があるから。

そのお姉さんの琴鳴さんはといえば、表情を表に出さないように努めているようだけれど緊張は隠せていない。

 

「私の方からも言わせていただこう。このまま来た道を戻ってくれ。そうすれば余計な争いをせずに済む」

 

この言葉にお兄様が無言で頷く。だがそれは要求に従うことを示すための物ではなかった。

 

「つまり、ここを通るためには争いが不可避ということですね」

「その通りだ」

 

…ああ、ダメだ。勝成さんは交渉事には向いていない。これではまだ重役を任せることはできない。まんまとお兄様の用意した落とし穴の隠された蓋の上に乗っかった。

 

「では提案です」

 

蓋の開くスイッチに指がかかる。

 

「聞こうか」

「言うまでもないことですが、四葉のガーディアンはマスター、ミストレスをあらゆる危難から護衛する魔法師です。俺は深雪のガーディアンとして深雪を危険な戦いの場に立たせたくない。それはそちらのお二人にとっても同じでしょう」

「もちろんです!」

 

穴の上に勢いよく駆け寄ってきましたね。お二人様でよろしいですか?

 

「あたしは勝成さんを、このような内輪もめで危険にさらしたくありません!」

「オレも想いは姉さんと同じだ」

 

はーい、三名様ごあんなーい。これで締め切りですね。

 

「…おい、まさか」

 

今更後ずさってももう遅い。

勝成さん、貴方のプランは甘すぎた。敗因は、さっさと戦闘に持ち込まなかったこと。

 

「俺たちはここを通りたい。貴方はここを通したくない。このにらみ合いの現況を打破するためには、闘争が不可避。ならば」

「待て」

「ガーディアン同士の決闘で決めませんか。こちらは俺一人。そちらは二人一緒で結構です」

「駄目だ!」「いいでしょう!」

 

だから、貴方は大事な人を戦いに巻き込む羽目になる。

元々ガーディアンにしている時点でそれは回避不能なはずだけれど、自身の力を過信でもしましたか。

 

「こちらには第三者である夕歌さんがいますので、水波は深雪と夕歌さんの守りに付かせます。約束しますよ。手は出させません」

「やらせて下さい!」

「駄目だ、危険すぎる!」

 

手を出させない、なんて。相手に有利な条件をちらつかせるよう見せかけておいて、相手を戦闘から逃さないための巧妙な罠。

リーナちゃんの時もそんな感じだったよね。

あちらは慶春会に出席させたくない以上戦闘は元々避けられない。警告なんかで引き下がるわけがないことくらいわかっていたのだから。

何もこんな真正面からぶつかる必要性などなかったのだ。

夕歌さんは待ち伏せなんて卑怯だって思ってるみたいだけど、私だったら罠や仕掛けをたっぷり用意した上で奇襲をかける。…お兄様相手には無意味だけれどね。

お兄様の危険度を前もって知っていたはずなのに。

――そう、彼は父親から聞かされていたはずだ。

 

「達也くんは皆が思っているような欠陥品ではない!この私でも確実に勝てるとは言えない相手だ。前当主の英作様の命によって、彼は生まれた直後から戦闘魔法師として育成されたんだぞ!」

「あたしたちだって戦闘用に造られた調整体魔法師『楽師シリーズ』の第二世代です!生まれる前から戦うための能力を遺伝子に叩き込まれた魔法師です。誰が相手でも、そう簡単に後れは取りません!」

「そういう話ではない!達也くんはそういうレベルとは次元が違うんだ!彼が初めて人を殺したのは六歳の時、人造魔法師実験の直後だ。彼は手に入れたばかりの力に戸惑うこともなく、三十歳の脂がのった戦闘魔法師を、事故でもなく不意打ちでもなく、最初から殺し合いの条件で血の海に沈めた。たった六歳だぞ?まだ小学生にもなっていない歳だ」

 

勝成さんの言葉に琴鳴さんの口は止まった。目を見開き、衝撃を受けた形で。言い争いに参加していなかった彼も同様に。兄妹そっくりのお顔ですね。

勝成さんは聞いていた。お兄様が手術を受けたことも、お兄様の戦闘履歴も。どれだけの実力を秘めているのかを、こうして異常だと訴えるくらい知っていたはずなのに。

資料を持っていたにもかかわらず、愛する人を連れてきている時点で勝成さんの敗北は決まっていた。

 

(この私でも確実に勝てるとは、といっていて自分の弱点を連れてきたら、余計に不利になると思わなかったのか)

 

彼女たちはあくまでサポートで自分が矢面に立つつもりだったのだろうけど、お兄様の口車に乗ったことでガーディアンのみで戦うこととなり、彼の点てていたプランは崩れてしまった。

作戦は自分の中に留めるのではなくチームで共有しておくものですよ。

自分で何とかすればいい、なんて実力を過信しすぎたか。

 

「勝成さん」

 

お兄様の冷ややかな声が漂っていた気まずい空気を切り裂く。

お兄様の感情に揺るぎはない。怒ってもいない。だが――わずかに落ち込んでいるのがわかった。

 

(できることなら今すぐにでも抱きしめたい)

 

それが許されないことだとわかっているから、疼く手を固く握って自身を抑え込む。

視界に入る背中だけでもわかる。水波ちゃんが体を強張らせている。隣の夕歌さんを盗み見れば、表情が強張っていた。

夕歌さんはそこまで知らなかったのか。まあ、秘匿事項ではあるからね。

勝成さんは今回の件で資料でも渡されたんだろうね。以前から知っていたのだとしたら、お兄様に向ける視線は違っていたはずだ。分家当主たちはお兄様を常に警戒していたことは未成年の私たちにも伝わっていたけど、その誰も親たちが警戒しているからといってお兄様に嫌悪や警戒を向けてはいなかったから。

分家当主たちも守秘義務を守ってはいたということだ。

だが、今回のっぴきならなくなり、足止めするためには事情を説明しなければ危険だと判断した、と。

だけど、それにしてもおかしいよね。なんというか…その割に中途半端な戦力を送ってくるのを見るに、イマイチその資料の信憑性に欠けるのだけど。

お兄様の実力、侮られすぎでは?

 

「人のプライバシーをぺらぺらと喋らないでください」

 

勝成さんも自分の発言が迂闊だったと気付いたのか気まずそうに視線を逸らした。

 

「マスター、やらせて下さいよ。確かにそいつは手強そうだ。向かい合っているだけで首の裏がチリチリしてくる。ですが二対一で勝てない相手とは思いません」

「そう思わせるのが達也くんの策だ」

「それでもいいじゃないですか。こちらが有利になるんですから」

 

主人の気まずさをフォローするように自信ありげに奏多君が前に出るけど、何でかな。己を鼓舞するためではなく本当に有利であることを疑っていない様子。

 

(ああ…だめだ。私も堪えられない)

 

お兄様を落ち込ませ、侮られることへの不満が堪えきれない。

出しゃばるつもりも無かったが、このまま何もしないでなんていられなかった。

 

 

――もう、十分でしょう。猶予は与えた。これ以上は必要も無い。

 

 

そう、これはきっと必要な断罪だ。

都合のいい考えに流されるまま、口を開いた。

 

 

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