妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします!分割版   作:tom200

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四葉継承編⑩

 

 

奥の食堂に着いた時にはすでにほぼ全員が揃っていた。

いないのは勝成さんと叔母様のみ。

席は決められており、案内されるままに座る。

叔母様のお隣ですか、そうですか。

もうこれ席順が答えじゃない。サプライズもあったもんじゃないね。初めから出来レースなんだからそんなもの無かったのだけど。

次期当主候補とそれに連なる兄弟がフォーマルな恰好をして席に付く。

皆素敵な衣装です。これがただの身内だけの会食ならばまずは夕歌さんの姿を褒めて、とできただろうけれど、身内しかいない会食でもこんな緊張感MAX状態では和気あいあいなんて難しい。

昨日の夕歌さんたちとのお茶会が楽しすぎたのが悪かったのか、ギャップが凄い。

威圧感が半端ない。多分内装のせいもある。流石極秘の会食をする部屋。密閉度が高く、息苦しい。

大みそかにこんな堅苦しいお食事会って何の試練でしょうね。優雅に笑っているようで、皆緊張しているのがビリビリ肌で感じる。

遅れてやってきたのは勝成さん。よくこんな時間ギリギリに来れたね。もしやこんなギリギリになるまで治療に専念してたからってわけじゃないよね?彼らから離れる途中、琴鳴さんが体を起こしかけていたのをバックミラーで確認できたから危機は脱したように見えたけど。

夕歌さんに嫌味を言われるのが嫌だった、とか?…なくもない、かな。

待っている間、誰も口を開こうとしなかったから多分杞憂だったと思うけどね。

そして最後に時間ぴったりにご当主専用の扉から入室した叔母様は黒に近い深紅のロングドレスがまたよくお似合いで、なんと美しいことか。

眺める時間が少なかったことが残念だけれど、そもそもすぐに立って一礼し、首を垂れるからじっと見ることなどできない。

妖艶で美しい叔母様です。美人さん、綺麗。語彙力なんて初めからなかった。

そちらに目を奪われていたから椅子を引いてくれたのが水波ちゃんだったことに気付くのが遅れた。他の方の使用人はガーディアンではないようだけど、これも特別待遇?

叔母様は皆を労う言葉を掛けて着席を促し、全員腰を下ろした。

まずは食事を、と言うことなのだけど成人組にお酒を勧める叔母様は二人に断られても楽しそうだった。断られることをわかっていたんだろうから、不快にならなかったんだろうけど、言われた方はハラハラしただろうな。

普通こんな状況でお酒飲めないもの。

アルハラはしないよ、という叔母様だけれど地味にパワハラ案件だよね。言えないけど。

こういう階級ある社会ではこのくらい通常運転。貴族社会では挨拶だから。

十師族は別に貴族でも何でもないけど、血を継いで云々のシステムはそれのようなものだから。力で君臨する世界を構築した時点で階級社会は出来上がる。

豪華なお食事が机に並べられているのに、全然食欲がわきません。いい匂いしてるはずなのにね。湯気も立っていて出来たてって感じなのに。まるで画面越しに見ているよう。

体が自動で食事を切り分けて口に運んでいるけれど、ちゃんと食べられてるか自信が無い。咀嚼してるはずなのに美味しいと感じられない。

歓談もそこそこに食事は進み、メインに入る前の口直しが終わったところで本題に入った。

明日の次期当主の発表について、だ。

正直、次期当主であることは決まり切っていた。原作云々ももちろんなのだけれど、中学の時点で、叔母様本人に指名されていたのだから。

 

『次期当主候補ということになっているけれど、深雪さんだから』

 

候補とは名ばかりで、次期当主は貴女なのだと。そう宣告されていた。

初めてそう聞かされた時は混乱したものだ。

だって、候補が外れるのは四年後のこの晩餐の時だったはずだからだ。

けれど運命を変えると意気込んでいた当時の私にとってそれは天の啓示に思えた。

私が目覚めて動いたことで運命の歯車は変わったのだと、この時の私には背中を押された気持ちになった。

そこからは更にたくさんの知識を求めた。生き抜く術を身に付けることに必死だった。

魔法を求め、体力を求め、知識を求め、美を求め――鍛えられることは全て鍛えようとした。

この間もお兄様は過酷な現状に身を置き、唯一の希望、兄妹愛だけを支えに生きているのだから。自分に甘えなど許されない。

強くならねば。強くあらねば。

 

全ては私の夢を叶えるために。

 

(なーんて、献身的に聞こえるけど、結局のところオタクによるオタクのための推しへの活動をリアルにやってるだけなんだけどね)

 

献身的なんてとんでもない。めちゃくちゃ欲塗れですとも。…オタクが欲に塗れてないことあった⁇純白です、なんて言えるわけない。オタクほど欲に忠実な生き物を知らない。

推しの幸せのためならなんだってやる。自分の力だけでなく周囲をも利用して推しの幸せを願う。

はっきり言って、お兄様が推しという時点で推しを幸せにするための推し活はかなり詰んでいた状況にあったと思う。

だってスタート時点で不幸のどん底。お兄様には動かせるだけの感情が無い、心が無い、兄妹愛のみしか残されていない、ないない尽くしの状態からスタートなのだから。

一番に向けられるはずの親からの愛情は見当たらず、親戚からは死を望まれ、けれど生まれ持った魔法によって簡単に死ぬことなど許されず、自ら死ぬこともできなければ、死を望む心も無い。

ただ自分には大事な妹がいて、妹には避けられているようだが、自分にとって可愛い妹。

お兄様にとって彼女はか弱い生き物であり、彼女の生きる環境は危険が付きまとう。

それを守る役目を与えられたことでお兄様は生きる希望とした。

大事な妹を守るため。妹の喜びは自分の喜び。妹が悲しむならその原因を取り除く。

…こんなの、どうやって救えというのか。

難易度Max、ハードモードなんて言葉も生温く聞こえる無理ゲーに思えた。

ただ、幸いなことに私はお兄様の妹として生まれ変わった。お兄様の唯一残された愛として。

更に原作(未来)を知っていた。

お兄様がこの先学校生活を送られるうちに友情を芽生えさせることができると。彼らのために行動したいと、心が突き動かされていく、その様を。

 

心が無いと、痛む感情が無いと思われていたお兄様が、苦悩するのだ。

 

妹以外に心動かされるような未来がある。

それを知っていて何もしないで高校までを待つなんてできなかった。

だって、お兄様にはたくさん幸せになってもらいたかったから。

だからまずは一番身近なはずの家族愛を。

父親には望めなかった。初めからアレに求める気も無かった。

父親の義務をはき違えるような男に何も任せるものなどない。まあ、望まず父親にされたのだから同情の余地はあるのだろうけれど、あまりに小者過ぎたのだ。なので即行切り捨てた。

母は、原作を読むにお兄様への愛情はあったような描写が多々あった。推測ばかりではあったが、彼女は息子のために自身の身を犠牲にして尽くせる手を尽くしていたのだと。それが母の愛で無ければなんだというのか。

その推察の通り、いや、それ以上に母は偉大であった。心を衰弱させていても、いつでもお兄様を想っていた。愛の深い女性だった。

初めは戸惑っていた家族間のやり取りも徐々に受け入れられるようになり、何時しか歪だった関係が自然と丸く収まり、ほっと心を落ち着けられる家族になっていった。

軍での居場所づくりも原作通り。十師族に良い感情を抱いてない部署でお兄様が歓待されるわけが無かった。だが、その警戒はすぐに解ける。十師族に生まれながら十師族と認められず蔑ろにされて育ったお兄様に同情を抱き、共に訓練を積んで仲間意識が芽生えていく。

本人のひたむきに努力する姿も――というより、一つ覚えのように邁進する姿は彼らに悪い印象をを抱かせることは無く、むしろ同情心だけでなく好印象も抱かせたことだろう。

努力する人間を嫌うような人間は実力主義の世界にはいない。お兄様は職場には恵まれた。

FLTもそうだ。初めこそ、あの父の子として入ってきたことで七光りだなんだと嫌厭されていたけれど、お兄様の前向きな取り組みに、それに伴う技術力の高さに誰もが唸った。そして彼の生み出す夢のような理論に感服し、実現しようと手を貸す大人たちが増えた。

実力主義の世界なら、お兄様はどこに行っても認められた。

色眼鏡などない。点数だけがすべてではない世界に於いて、お兄様は水を得た魚のように巧みに動き回り、周囲を魅了していった。

その理屈ならば十師族の中でも実力主義の四葉家では――本来であれば認められたはずだ。たとえ魔法力が無かろうとも、演算領域が人並み以下の空白しか残されていなくとも。神のごとき魔法が二つもあるのだから、それを巧みに使いこなすお兄様は認められてもいいはずなのに、大人たちの身勝手な願いが呪いとなって罪の意識を根付かせ彼らを苛み、目を曇らせた。

実力は認められても、『彼』を認めることができない。

子供たち世代はそんなものに囚われていないからとっくにお兄様の実力を認め、大人たちの言動に疑念を抱いている。

もし、お兄様が邪険にされているその理由をこの場に居る彼らが聞いたなら、きっと誰もがこう返すだろう。

 

『くだらない』

 

と。

 

 

――

 

 

「では、満場一致ということでよろしいかしら」

 

叔母様の少し弾んだ声が鼓膜を震わせた。無邪気そうに聞こえる大人の色気のある声。無邪気で色気とは、なんて矛盾した言葉だろう。だけれどその言葉が今一番彼女を表しているように思えた。

回想している間に、文弥くんがここ数日の分家の反逆に加担していないとアピールするため候補の辞退を申し出て、続く夕歌さんも同様、私に恩を売ることで津久葉家の立場を優位にしたいのだと発言した。

 

「家の実力は直接的な戦闘力だけで決まるものではないと思いますけれど…津久葉家の意向はわかりました。深雪さん、夕歌さんは貴女の贔屓が欲しいそうですよ」

 

あらあら、叔母様楽しそうですね。画面越しでたまに見かける真夜姉さまのいたずらっ子のお顔が覗いていますよ。

 

「今の私は、四葉家の次期当主候補に過ぎませんので…。ただ、戦闘力だけが魔法師の価値でないという叔母様のご意見には賛成です」

 

というか、むしろ彼女たちのサポート力は四葉には不可欠だ。とんでもない価値を持っているのだから。

戦闘力が無いと言っても夕歌さんの手札はえげつない。全てを知るわけではないけれど、初手マンドレイクはなかなかの衝撃。

そして残る勝成さんはと言えば、叔母様の問いかけに多数派に従う旨を伝えると同時に、返上する上でお願いがあると頭を下げた。

…すごい度胸だよ、勝成さん。

自身の愛を貫く姿は素敵だと思う。そして同時に、四葉の魔法こそ持っていないが四葉の人間だな、と改めて思う。四葉は愛情の深い一族だから。

叔母様は面白いものを見るように勝成さんを見つめ、揺さぶりをかける。

 

「確か調整体『楽師シリーズ』の第二世代…。『楽師シリーズ』は今一つ遺伝子が安定しないから、分家当主の正妻には向かないのではないかしら」

「父にもそう言われました」

 

堂々とした返しっぷり。叔母様もこれには苦笑するしかなかったようだ。

 

「今でも内縁関係にあるのでしょう?」

 

…ご当主様ったら何でもご存じね。どこからそういう情報筒抜けるの?いや、この勝成さんのことだ。むしろ危険を承知でばらす前提叔母様の目と耳が届く範囲で――いや、これ以上考えちゃいけない。妄想を巡らせるの良くない。

本家でわざと、なんて琴鳴さんのいやいやする姿、きっと可愛かっただろうなんてよろしくない妄想です。オタクはおかえりください。

 

「そうねぇ、愛する者同士を引き裂くような真似をしたくはないし」

 

引き裂くような、のタイミングで叔母様の意味深な視線が私に向けられる。

こんな時、心の中でいつもお母様が助けてくれる。淑女の仮面はしっかりと私の身を守ってくれています。

 

「調整体だからと言って早死にするとも限らないものね」

 

にっこりと微笑みかけられた、けど…ここ、こんなシーンだったかな。

思っていた反応と違う動きに内心戸惑うけれど、表に出すことは無かった。

 

「良いでしょう。本家の当主ともなれば結婚相手も自分の意思だけで、とはいかないけれど」

 

わあ、叔母様ここにきて一番のいい笑顔ですね。すでに私の相手を決めてるってお顔。

…あれぇ?これは良くない流れになりそうな予感。第一希望が全く通って無さそうな。気づいていないよ、とすまし顔で乗り切らせてください。

 

「分家の当主なら、そこまで深く考えることは無いわ」

 

口添えを約束すると、勝成さんは立ち上がって深々と一礼をした。

この場の次期当主候補の三人が、候補を辞退することになり、必然的に残り物が繰り上がるような形になった。

あまり嬉しくない表現だけど心情的にもそれがぴったりくる。それだけこの四葉という名は重責だから。自分で選んだ道とはいえ、とんでもないものを背負ったものだ。

 

「深雪さん、貴女を次の当主とします」

 

叔母様の言葉に応える様、立ち上がって一礼。

これでこの食事会の本題は終了。叔母様の指示でメイン料理が運ばれてきた。

そのタイミングでグラスを空けた叔母様はとても機嫌が良さそうに見えた。

 

「よかったわ。こんなに簡単に決まってくれて」

 

けれどグラスに映る上機嫌を隠すことのないニンマリ笑顔に、私は背筋に冷汗が流れた。

叔母様のこういう笑みはよろしくないことを言いだす前兆なのだと、深く付き合うようになって知っていた。

 

「残念だわ。勝成さんがよろしければ、深雪さんの婚約者になってもらう予定だったのに。今からでもどうかしら。本妻に深雪さんに立ってもらって、愛人という形で彼女を愛せばいいわ」

 

(…やっぱり)

 

心構えがあった分、その言葉の衝撃はほとんど無かった。ある意味予測していたとも言える。

だけど、その他は相当な衝撃だろう。皆お顔が真っ青です。

あの、勝成さんの結婚の許可発言を聞いて顔を赤くしていた文弥くんでさえ、真っ青に凍り付いていた。

それはそうだろう。つい先ほど、候補を降りる代わりに琴鳴さんと結婚する許可を求め、それを了承した口で愛人にすればいいなどと。

当主でなければ非難が集中したことだろう。

 

「な、にを…」

 

可哀想に、勝成さんは青ざめた表情を強張らせながら呻くように何とか言葉を紡いだ。

勝成さんだけではない。ほとんどの人間が顔を引きつらせたり、強張らせたりしたまま動けずにいた。叔母様と葉山さんと、私を除いて。

 

「パーティーに出る時やパートナーが必要な時にはエスコートくらいしてもらうでしょうけど、それ以外は今まで通りの生活で構わないわ。当然子供を作っては貰うけれど」

 

それも提供だけしてくれればこちらでするから問題ないわよ、と。

叔母様は今度お茶でもどうかしら、と聞くくらいの気軽さで次期当主との婚約を勧めている。

勝成さんの顔はますます血の気を失っていく。まるで低体温症を引き起こす直前のようだ。

無理もない。私もまさか今更(・・)こんな人の多いところで提案するとは思わなかった。

 

「子を作った後は離婚して正式に自身の愛する女性と結婚して構わないわ。今時離婚を傷だと言う人もいないでしょうし」

 

深雪さんもそれくらいで傷ついたりしないでしょう?と微笑みを浮かべられるけど…これ、悪意ない発言だってわかるの現在私だけだと思うよ叔母様。

その言葉に苦笑する私の反応に、周囲がとても奇異なものを見る目で叔母様と私を見つめたのがわかる。そうだろう。つい先ほどまでのやり取りと、このやり取りでは親密さが違って見えるだろうから。

夕歌さんの視線が、まさか叔母様とも!?と驚愕が含まれているのもわかるが、今その返答はできないのでしらを切らせてもらう。

しばらく続いた沈黙を破ったのは勝成さんだった。

 

「自分は、そんな器用な男ではございませんので。それに、次期当主にはもっとふさわしい男がいるかと」

「残念ねぇ。迅速に深雪さんの婚約者を選びたいのだけれど。きっと荒れるでしょうから」

 

いや、今この場を荒らしてるのは叔母様ですよ。

私の婚約は確かに至急必要なのだけれど。でないといろんなところから縁談が申し込まれて面倒なことになるのは目に見えている。四葉はブラックボックス。忌避もされるが興味も引く危険物。血が欲しくて申し込むところもあれば、四葉内部に入り込むチャンス、と送り込んでくるところもあるかもしれない。そうでなくとも深雪ちゃんは魅力的な女の子でもあるから。世界から危険視される魔法一族の次期当主、以外の注目を浴びるのも必至。婚約者が不在のまま発表などしたら、危惧するように荒れるだろう。

でも、勝成さんだって何の用意もなく婚約者を割り振られてはたまったものではない。

早めに誰かと婚約しておかないと周囲が騒がしくなるのは想像に難くないけれど、原作で公表後魔法界全体が揺らぐのはそのお相手にお兄様を選んだからであって、お兄様でなければあそこまで荒れることはないはずだ。

叔母様、お目目がキラキラと輝いていてとても楽しそうですね。

うんうん、美女の楽しそうな表情は目の保養だよ。ちょっと予想外のことが多くて魂がここから離れているから他人事に思えて美女の笑みを楽しんでおります。はい、現実逃避です。

夕歌さんの視線が先ほどより厳しく突き刺さっている気がするけど気にしない、というよりできない。

何故なら――

 

「達也さんならどなたがいいと思います?」

 

お兄様の方から感じたことのない沸々とした怒りをビシビシ感じて、身動きが取れないでいた。

見た目はごく普通に見えるんだよ。怒ってるようになんて見えない。とても落ち着いたいつものカッコいいお兄様。

四葉家でガーディアンしてる時の空気に溶け込むように気配を消している感じではなく、ごく自然のお澄ましお兄様。…だからこそこの深雪ちゃんだから感じられるお兄様の心が余計に恐ろしい。

誰もお兄様のお怒りに気付いていない様子で、叔母様の問いかけにどう答えるのかと皆の視線が一点に集中している。

ただ、私一人が焦点をずらし、お兄様のお顔を見ることができずにいた。

 

「兄としてなら深雪を幸せにしてくれる相手をと言うところでしょうが、四葉家次期当主に望まれるとなると自分にはわかりかねます」

 

控えめな発言に、けれど叔母様はとても、それはとても愉しそうに笑われている。…これは、あまりいい状況ではないなぁ。叔母様がハイになっている。葉山さんは――止めないか。

なら――

 

「よろしいでしょうか」

 

そっと手を挙げて二人のにらみ合いにストップをかける。

 

「貴女のお話ですもの。どうぞ、深雪さん」

 

余裕ある笑みを湛えワインを揺らしながら促された。

一つ一つの動作が様になっている叔母様です。麗しいけれど、このお話は一旦ここまでです。

 

「ありがとうございます。まだ決めかねているのであれば、時間稼ぎもありかと」

「仮で婚約?それでは深雪さんにも傷が付かないかしら」

「それくらいのことで傷だと騒ぐようなお相手では四葉でいることは難しいでしょう」

「ふふ、それもそうね」

 

叔母様はご機嫌にワインを呷り、新たに注がれたグラスを傾けてそれ以上追求することはなかった。

もうすでに叔母様の中でプランが決まっているのだ。

この場で話したのは…多分だけどお兄様たちの反応を楽しみたかったんだろうな。

叔母様、好きな子ほどいじめちゃうタイプ。…やりすぎちゃうと困るのは叔母様だと思うのだけど。

こうして皆の前でお兄様と会話できるだけでテンション上がってるのか。

そう思うと可愛らしい人なんだけど、やってることと振り回してる権力が可愛らしくないんだよなぁ。

微笑みを湛える頬の筋肉鍛えていてよかった。

キープしつつ食事を飲み下していった。

 

 

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