妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします!分割版   作:tom200

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四葉継承編⑪

 

 

お食事が終わる頃、叔母様にこの後のご招待を頂いた。…いや、居残りを命じられた、が正しいのか。

お兄様の機嫌があの質問の前あたりからずっと下降したままなのが気になって仕方が無い。

相当ストレスも溜まっていることだろう。ここに来るまでにも色々ありましたからね。

戦闘とか戦闘とか通せんぼとか回れ右とか。

いつまでたっても辿り着けないイライラに加えてようやく辿り着いたと思ったらこれだものね。

お兄様がこういったお食事の場に呼ばれることも初めてのことであったし、何より妹の結婚の話はお兄様にも面白いお話ではないらしい。

十文字先輩とか冗談でもピリッとしてましたからね。この世界でのシスコンブラコンは恋人ができると不満を抱くのが当たり前の世界のようだから。…お兄様もそうなるとは思わなかったけど。

それとも世間がそうだから態とお兄様もそれに倣っているのかな。普通に見せる擬態…にしては不満の感情が伝わってくる。

不満、が可愛らしい表現だとは思わなかった。おこですおこ。お怒りです。

一体全体、何がそこまでご不満なのか。お兄様だって次期当主ともなれば婚約者が付くことはわかっていたはず。だから怒りが向いているとすればこの件ではないと思うのだけど、タイミング的に切っ掛けはこれだと思うのよね。

お兄様の無表情の下に隠された感情が伝わってくる。

こんなにも、お兄様の気持ちが流れるように伝わってくることは初めてだ。

私がお兄様の心の動きに敏感なことをお兄様はご存じだ。以前話したことがある。だが、それは私の観察眼によって見分けていると思われているのだと今になって気付いた。

まさか精神干渉力が強く、血の繋がりの濃さが身内の心の動きを捉えやすくなっているなんてお兄様も思わなかったのかもしれない。

恐らくだけれど封印を解けば他人だろうと心の揺らぎが読めると思う。

深雪ちゃんは他人に興味が無かったから周囲を深く探ることなどなかった。お兄様しか見えていなかったから、そこだけがわかれば十分だった。それ以上必要などなかったのだ。

こんなことを考えている間にテーブルがセッティングしなおされていた。

叔母様の前にはストレートの香りの高い紅茶が。お兄様にはブラックコーヒー、私にはミルクの入ったコーヒーが用意された。各々の好みに合されたものをそれぞれの前に。

一体どこで調査されたんだか。お兄様になんて、今まで出たこともなかったのに。

並べ終えると使用人だけでなく、葉山さんも退室した。

完全に身内のみだという演出か。

先に口火を切ったのは、当然叔母様だった。

 

「さて、あまり時間も無いから用件を済ませましょうか」

 

本来叔母様から次期当主になったことを祝う言葉を頂戴する場面からスタートのはずだったけれど、叔母様にとって私が成ることはわかり切ったことであったためわざわざ言うことでもなかったのだろう。

優雅に傾けていたカップを置いた叔母様は手を組んで前のめりに体を傾けて妖艶に微笑まれて。

 

「まず初めに、伝えておかねばならないことがあります」

 

 

 

「達也さん、深雪さん、――あなた達は兄妹ではありません」

 

 

 

どくん、と心臓が悲鳴を上げた。

叔母様がそう話を持っていくことはわかっていた。わかっていたのにこの衝撃。

兄妹ではないと突き付けられたことに嘘だとわかっていても――恐怖を、絶望を抱かずにはいられなかった。間違っても歓喜ではない。

深雪ちゃんにとってそれは希望の言葉であった。ありえないはずの言葉であった。同時に叶わないとわかっていても、願っていた言葉であった。

けれど私には違う。お兄様にとって唯一残された心が妹を想う兄妹愛。

この根底が崩されてしまうことがどれほどの恐怖か、今まざまざと思い知らされた心地だ。

ありえないとわかっていても、兄妹ではなかったことで今まで築き上げた関係が崩れるのではないかという、絶望が心に広がっていく。

もちろん、叔母様の一言でお兄様が揺るがないことはわかっている。兄妹でないことなどありえないことも。

知っているのにそれでも怯えてしまうのは、私という異分子がいること。この身体がお兄様の兄妹であっても、私の心はお兄様の妹に擬態しているだけの一般人であるということ。

ここまで築き上げた絆はある。共に過ごしてきたのは間違いなく私だ。お兄様の妹として生まれ落ちたのも、私。だから擬態と言うのはただの気持ちの問題ではあるとわかっているのだけれど、どうしてもその一線を越えられない。

震えそうになる体を必死に叱咤して押さえつけた。

今まで学んだできた事はしっかりとこの身に付いている。淑女教育はいつも支えとなり、こんな時でも笑みを湛え、自然体のように叔母様と向き合えている。

だが、この場面での動揺の無さは逆に不自然に思えたことだろう。そんなことに気づけないほどに動揺していた。

 

「深雪さんはとても落ち着いていらっしゃるのね」

「…いいえ、とても衝撃的なお言葉に、どう反応していいのかがわからず困っているところです」

 

今度こそ困っている風に眉を下げてみるも、その言葉に嘘偽りはないのに滑って聞こえるのは言葉に感情が上手く乗り切れていないから。

隣でお兄様が気遣わし気に私を見ているのがわかる。

お兄様とて動揺していないわけではないのに。

叔母様は相変わらず笑みを湛えたまま。これから口にする言葉が楽しみで仕方が無さそうだった。

 

「叔母上、一体何の冗談です」

「冗談?冗談ではないわ。だって達也さん、――あなたは私の息子だもの」

 

この言葉にお兄様はついに絶句した。

ぽっかりと、お兄様の感情が空になったように読めなくなった。

きっと頭が真っ白になったのだろう。お兄様には滅多にない状況だ。

おかげで私は少し冷静になった。

 

「どういうことです?お兄様が叔母様の子というのは」

 

そして叔母様は、お兄様が自身の卵子をベースに妹の深夜に代理母として出産してもらった子だと説明した。

 

「…後程、詳しく教えていただけませんか」

 

お兄様は取り乱しはしなかった。あくまで冷静にそう口にし、叔母様も鷹揚に頷いた。

 

「そうね。いきなり納得しろと言っても難しいでしょうし、この後、親子水入らずでお話しましょう」

 

私たちが兄妹でないのだと改めて宣言をしたうえで、畳みかけるように命を下す。

 

「四葉家次期当主、深雪さんの婚約者は達也さんよ」

 

――ああ、変えられなかった。

無力だ、と固く目を閉じた。

残念、無念、ではない。無力だ、とまざまざと見せつけられた気分だった。

 

「明日の次期当主指名と同時に婚約者も発表します。ですので達也さんにも、深雪さんの婚約者として明日のお披露目に出席してもらいますからそのつもりで」

 

ここまでの努力ではやはり叔母の決定には逆らうことができない。だけど予想できなかったことじゃない。――まだあがけるだけの手はある。

 

「叔母様、それはお兄様が一時的に私の婚約者となり盾となるということでしょうか」

 

お兄様の肩がわずかに動いた。身じろぎするほど大きくもなく、けれど息を吸った以上の動きだ。

お兄様も徐々に衝撃から抜けてきたのかな。きっと今頃脳内ではすさまじくフル稼働させてあらゆる可能性を導き出していることだろう。

でも残念だ。きっとその中に答えはない。

これは女性特有の複雑怪奇な思考が生み出した妄想による暴走。お兄様には難解過ぎた。

 

「なあに、深雪さん。もしかして他にどなたか想われている方でもいるのかしら」

 

まるで達也と結婚したくないみたいね、と叔母様はそれはそれは愉しそうに笑われていた。

続けられた言葉がずしん、と私の胸を圧迫した。

お兄様と結婚、したいかしたくないかと言われれば――お兄様のように素敵な人と結婚出来たらそれは最高に幸せなことだと思う。だけどそれはしてはならないこと。

もし、私と結婚してしまえばお兄様は一生四葉から離れた生活などできないのだから。

それでは真の自由など得られない。

 

「想う方など、そのような方はおりませんが私とお兄さ――失礼しました。…達也様と私が結婚するとは現実的ではございません。兄妹で無いにしろ血が近すぎます。叔母様と母は双子ですから普通の姉妹以上に血も濃いでしょう。一時的な候補として据えているのだと考えるのが妥当です」

「ふふ、そうね。深雪さんが言うことは正しいわ――普通なら、ね」

 

…まさか、叔母様私の前で完全調整体のことを暴露する気!?

内心慌てたけれど、しかしそれは杞憂だった。

 

「どのみち時間稼ぎが必要なのは深雪さんもわかるでしょう?すでに十師族の内、二家から司波深雪にそういった意味での調査が入っているのだから」

 

叔母様による別の暴露が止まりませんね。

このままでは私が叔母様に提案した内容さえもバラされそうだ。これ以上は口を噤めってことだと理解した。

口を閉ざして俯いたのを、叔母様は私が正しく理解したのだと読み取って口元をにんまりと歪めた。

 

「一時的にでも何でも、明日は深雪さんの次期当主の件と婚約者の発表は覆らないわ」

 

私の案に乗る様な形の発言だけれど、叔母様の意志は変わりない。そう窺える表情だった。

 

「ねえ、深雪さん。私は貴女がこれまでどれだけ努力してきたか、知っているつもりよ。“幸せ”のためにここまで頑張ってこられたのだものね。私も応援しているの。貴女の望む幸せが叶うことを」

 

白々しい言葉、だと言い切りたいのに叔母様の目には母にも似た慈愛が浮かんでいて。

 

(…叔母様はお兄様を四葉に縛り付けたいから私と婚約させようとしているとわかっているのに)

 

それはけしてお兄様の幸せには繋がらない。

伝えたことはない。叔母様に、お兄様を幸せにしたい等と言ったことはない。

けれど叔母様が察しているかもしれないと初めの頃から思っていた。今では確信している。

それなのに叔母様は私を応援しているというその口で、お兄様を手放して自由にするつもりはないと言う。

ぐらぐらと私の頭と心は揺れ動き、かき乱された。

 

「さあ、明日は貴女の望みが叶う第一歩よ。目いっぱい磨かれていらっしゃい。せっかくの晴れ舞台だものね」

「…はい、叔母様。お心遣い、感謝いたします」

 

これ以上の問答は許さない、とその場を追い出されたのだった。

 

 

――

 

 

部屋を去る際、お兄様を見ることができなかった。

あまりにも不甲斐無い自分を見せることが惨めだった。

それから、促されるまま叔母様の呼び出した使用人に連れられ部屋を退出。廊下をどう通ってきたのかわからない。気が付いたらお風呂場で、三人の女性たちに体を洗われていた。

 

え!?洗われてる?!?!

 

一体どれだけ気がそぞろだったのか。

泡モコの身体にされている状態でようやく意識がはっきり覚醒した。

髪はとっくに綺麗に洗われ、どのようなオイルを使ったのか、まだ濡れているのに指通りが良さそうだとわかる。

羊のようにもこもこになっていた泡も洗い流された体は香油を垂らしたような花の香り漂う湯船に入れられた。湯加減は少し温いくらいだろうか。

失礼します、と二人の女性から片腕ずつ取られて首の付け根辺りからマッサージを受ける。水波ちゃんはいない。あれ?原作では水波ちゃんいなかった?!

たらりと直接身体に垂らされた香油は既に温められていたので不快になることはなかったが、痛くなる直前の絶妙な力加減で塗り込められ、血流を促すように刺激されていけば体中が熱くなる。

その間、「なんと美しい肌でしょう…」「滑らかな肌触り、吸い付くようです」「水の弾きも肌のきめ細かさも素晴らしいですわ」「筋肉も程よくついたこの弾力に虜にならぬ者はおりませんでしょう」etc。

ひたすらに褒めちぎられてます。恥ずかしい。しかもそんなつもりはないだろうけれどお姉さんたちの声がだんだんと熱気と水気を帯びているように聞こえてきて身の危険を感じ始めた。

いや、そんなことないでしょうけどね、視線もね、頬もね、熱を帯びているように上気していて…お風呂の熱に中てられてるんだよね?

手先までのマッサージが終わったらまた肩回りに戻って脇から胸に――って!

 

「ひゃんっ」

「あら、可愛らしいお声ですこと」

「深雪様は声にも魅了をお持ちなのですね」

 

いやいやいやいや。なにこれ。どういうこと?!今私に何が起きているの!?誰か教えてエロい人!じゃなかった偉い人!!

お姉さま方に気持ちよくさせられてたらなんかとんでもないことになってるんですけれど?!

いつの間に浴槽を出ました?瞬きの間にマットの上に寝転がっていたんですけれど。魔法かな!?想子動いて――動いてるね?!

両サイドから薄っすらと濡れている湯着を纏ったお姉さま方に挟まれてマッサージを受けている状況。何これ天国⁇

でもね、さっきからね、ただ気持ちいいだけではない気分にさせられているのだけれど!?これなんたらマッサージとか言いませんよね?!

 

「あ、あの!」

「深雪様、どこか痛いところでもございましたか?」

「いえ、その、大変気持ちがいいのですが、」

「それはよろしゅうございました」

「このままわたくし共に身を預けていただければ、隅から隅まで磨き上げますので」

 

お姉さま方は施術をしながらにこやかに答えているけれどその口調からは想像できない手つきでもみほぐされ、あまりの気持ち良さに私の口からは先ほどから我慢していても声が漏れ出ている状態。施術によって血行が良くなった以外の要因でも熱くなっている気がするのだけどこれは合法な奴です⁇

気持ちがよすぎてもう何が何やらわからない。

 

「それにしても、どこもかしこも引き締める必要のない身体というのは初めてですわ」

「本当に。普通でしたらぎゅうぎゅうと締め上げるところなのですが、深雪様にはそのようなことは必要ないくらい、非の打ちどころのない完璧な肢体です」

「日頃からストレッチをされているのですか?」

「、ええ。日課に、して、んっ…」

「それは素晴らしいことですわ」

「その努力がこの魅惑の肌のツヤと柔らかさに顕れているのですね」

 

褒め殺しと気持ちのいいことをされて思考はぐずぐずに溶かされてしまった…

施術を終えた彼女たちは汗だくになりながらもきらきらと輝いていた。

そしてお風呂場から上がると、白川夫人がタオルをもって待ち構えているではないか。

こんなこと、彼女がする仕事では無いはずなのに――

 

「…いい仕事ぶりですね、貴方達は下がりなさい」

「「「はい」」」

 

お姉さま方は先ほどまでの駄々洩れていた怪しい雰囲気を一瞬にして掻き消して頭を下げるとすっと部屋を出ていった。

残されたのは私と白川夫人のみ。

 

「より一層お美しくなられましたね。これは明日の慶春会ではどなたも貴女様に目を奪われることでしょう」

 

普段ほとんど余計な口など開かない夫人の誉め言葉に、そつなくお礼を述べるけれど内心バクバクである。

一体何が目的か、色々と考えてみるもこの溶け切った頭では何も浮かばない。

体裁を整えるだけで精いっぱいだ。

身体を拭われ、まとめられていた髪を下ろされたと同時に髪に魔法が掛けられる。一瞬にして乾く髪の毛。…体もこれで乾かせばよかったのでは、と思ったけれど、身体の方は程よくオイルと水分が残った方がしっとりとするのでこの方法は間違っていない。

一人で着替えられるけれど、白川夫人には逆らってはいけないと幼少期から身に染みてしまっているのだ。

身体が力み過ぎないよう意識して、されるがままになっていたのだけれど、次の瞬間目に入ってきたとんでもないものに目を奪われる。

 

(…んん?そ、それはっ!?)

 

「し、白川夫人!?あの、こ、これは」

「奥様からです」

 

叔母様が!?

いやいやいや!何を考えてるのあの人!?

 

「深雪様のために吟味に吟味を重ねてお選びになっておいででした」

 

淡々と語る白川夫人は他の物を用意する気などないと言外に伝えているのが良くわかる。…わかってしまう。

他の物を着る選択肢などどこにもないのだと。

サーっと血の気の退く音を聞いた気がした。

逆らうことなど許されず羽織らされるそれは普段自身が身に付けることのない色味で、複雑な模様を描く細やかなレースが裾を縁取っている。

身体を覆っているはずなのに軽すぎて着ている気にならないのに、ひんやりとした生地が体に纏っているのだと教えてくれた。

目の前で白川夫人が前を留めてくれているけれど、大きく開いた胸元とトップからアンダーに掛けて宙に浮いた生地に当然温かさなどない。

触れる布が無いのだから当たり前なのだけれど、先ほどまで火照っていたからだが急激に冷えていくのを感じた。

鏡が無いので完成形をしっかり見ることができないのだけれど、はっきりと言おう。

 

(見下ろしただけでわかる。――えっっっっっっろいよ!!エッチが過ぎるよ!!)

 

どういうことだ?何がどうなってこんな…こんな……ベビードールなんて着させられているの?!更に下のお召し物もとっても布の面積が少ないのだけど!?腰のおリボン可愛らしいですね。ごく細の毛糸並みの細さがとっても心許ない。すぐほどけそうで心配になる。できれば堅結びでお願いしたいけれど、それでは美観を損なう?ですよね。

黒と紫の配色がエレガントでもありつつも夜の雰囲気たっぷりで、この布一枚で色気を感じるんじゃないかっていうくらいドキドキする。魅了系バフ付いてます?

とにかく布が薄い。胸のところ以外は透けている。スケスケである。

今は年末ですよ。真冬!室内だから季節は関係ないって?そうなんだけどさ。

薄いだけでなく、その上センタースリットが入っていてお腹を完全冷やす仕様です。

それを白川夫人が黒の光沢あるおリボンで結んで締めてくれているのですけれど、お胸の下で締めているのでトップとアンダーがくっきりと浮き彫りになってですね…深雪ちゃん、ご立派になられて…。

おかげで見下ろしてもおへそは見えませんね。ワイヤーもパットも無いから形がはっきりとわかる。垂れていないのは日ごろのストレッチのおかげか。それとも若さか、とにもかくにも形がいい。

胸を支える布が脇の部分予算カットしたのかなというくらい丸見えで輪郭が良く見える。他人事であれば手を差し入れたくなる誘惑に掻き立てられそう。

…というか自分一人であったならちょっとくらい、とか――いやいや!正気に戻れ!魅了がかかっている!!

締められるおリボンは一つではなくその下にも二つほど。おかげで括れもしっかり露わにされてしまっている。さっきまですーすーしていたお腹周りにひんやり薄い布が巻き付いた。

しかし、おへその上のリボンなんて、位置完璧すぎない⁇設計者を呼んで。大変素晴らしい出来ですわ!全身像見れていないけど。上からしか見えてないのだけど!!

え、何で私がこんな恰好をさせられているのです?

 

(叔母様からってどういうこと?これは何の意図がある⁇)

 

とんでもないエロい下着を身に付けられている。

…個人的な嫌がらせ?可能性はなくもない。揶揄うの大好き真夜お姉様だから。愉快犯って可能性もある。

原作を知っているのでこの後お兄様と同室で寝ることになるのはほぼ確実だろう。

正直この魔窟でお兄様と離されることの方が問題だ。この場に限ってはお兄様と同室の方がありがたいことも事実。

だけどね、そうであってもいくら上に羽織っているとはいえこの恰好はかなり精神的ダメージが大きい。寝られる気がしない。もちろん何かが起こって――ということを心配してじゃない。お兄様の横でこんな恰好を…真冬に単衣一枚でこのどエロい下着姿を隠して寝られるとお思いで?

いくら寝間着を着用していても、中身がこれというだけで落ち着かない。…白いからって透けてないよね?!

もしかしてだけど睡眠不足を狙ってる?明日の失態を期待して⁇――それはない。

叔母様にとって私の失態はお兄様を引きずり下ろすきっかけを与えることになりかねない。

なんやかんや理由をつけては文句を言う分家に変な隙を与えたりしないだろう。

ならば何が目的?本当にただの愉快犯でいつものお遊びだったなら問題はないのだけど。ぬいの新コスチューム依頼とかね。タイミングとしてはかなり性質が悪いけど。

…まあ、どちらにしろお兄様に見られることは無いから私がただ羞恥心を煽られて終わるだけなんだけど。

お兄様が部屋にいなければ一度全身をじっくり見たいけど、きっと先に戻られているものね。

…今度似たタイプの買ってみようかな。し、資料としてね!あ、でもこれが叔母様の贈り物なら持ち帰ることになるのかな。…水波ちゃんには見られないように仕舞わないと。

羽織らせてもらった白い着物の帯も締め終わった模様。

それにしても、こちらも生地が薄い。寝るためのものだから当たり前なのだけど、今はこの一枚だけが私を守る防具だ。中身?危険な匂いのする身に付けると呪いのかかる防具のことは忘れましょう。

見えない防具は無かったことに。RPGにおいて、防具の重ね着はできないので表に出ている方が正式防具!

と意気込んでも一枚だけではやっぱり心許ない。所詮は布の服だ。

布の服一枚で冒険に出られる勇者は本当にすごいと思う。私には無理。今すぐにでも革の鎧が欲しい。

何で布の服の上に革の鎧が身に付けられないんだろうね。防具重ねてパワーアップしてくれればいいのに。

…今しているだろうって?防御力のない布に何の意味があるというのか。そのくせとんでもない呪いがセットされていると思うとこの後が恐ろしい。呪いを解く教会はこの村に無い。

心配したところで何もないはずだと考えても、着ていることを思い出すだけでとんでもない羞恥が襲ってくる。

心配と言っても寝乱れたりして見られるようなことがあったらっていう、あり得そうな事態についてなのだけど。怖いね。本当気をつけないと。

特にお尻の辺りが動くとね、忘れたい事実を思い出させると言いますか…。淑女教育の修行にも矯正ギプスってあったんだね。

否が応でも鍛えられそうだけれどすでに筋肉が負けそうです。心と共に悲鳴を上げています。

そんなことをつらつら考えながら白川夫人の案内で誰もいない廊下を歩く。

徐々にその時が近づいていると思うと心臓がランニングからジョギングに移行していっているのがわかった。

 

 

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