妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします!分割版 作:tom200
原作では三が日までを四葉で過ごし、4日に水波ちゃんと三人で帰宅できたはずだ。
だが、ここでも違いが出た。
「ああ、そうそう。水波ちゃんはせっかく地元に帰ってきたのだもの。一日くらいお休みがあっても良いでしょう」
慶春会も終わり解散した後、服を多少肩肘張らない恰好へと着替えさせられ、親子の交流の場だという名目の席に「将来の親子ですもの」と婚約者も一緒に、という立場で呼ばれた居心地の悪さよ。
まだ叔母様と二人きりの方がよかった。お兄様がいると二人の空気がね、とっても硬くて痛いのです。さっき会で見せた軽口の応酬も緊張感がありました。
この空気を何とかできそうな葉山さんは物言わず空気に溶け込んでいて助けてくれる気配はない。
雑談もたいして広がらず、紅茶の進みが早いお茶会の空気を変えたのはやはり叔母様だった。
でもまさかその内容が水波ちゃんのことだとは思わなかったけれど。
「それは、もちろん。休暇を頂けるのであれば彼女にもぜひ」
むしろ一日しか与えられないことが心苦しい。もう二、三日どうにかならないだろうか、と思ったけれど三が日まではここのお屋敷で働くことは聞いていた。今後のことを考えると4日だけが彼女の休暇ということになる。
学校は8日からだし、そもそも今回のことで明日には私たちが四葉だと周知されるのだから守りを薄くもできない、という家の事情も分からなくはない。
「――叔母上、何をお考えです?」
申し訳ないな、と思って賛同したらお兄様が隣で叔母様を威嚇していた。え。なぜ⁇
ちなみにだがお兄様は公的の場こそ母上呼びになるらしいが、今のところそのような言葉は聞かれない。
…私もこれからの立場上、達也さんとお呼びしなければならないと思うのだけど、お兄様からは対外の場以外はこのままでいい、と言われている。
叔母様はお兄様の視線を受けて、にこりと微笑まれるとゆったりと背を椅子に凭れさせた。…息子に向ける色香ではございませんね、余波を喰らう私までくらくらしちゃう。夜の女王の名を恣にしているだけのことはある。
「あら、一体何を考えていると達也さんは思っているのかしら」
「……」
お兄様は沈黙を守り、叔母様は目を弓なりにしていた。んー、ギスギスしてますねぇ……怖いです。一触即発の雰囲気。
でも、それも長く続かなかった。
「なんて、冗談よ。そこまで干渉することもないわ。大みそかのプレゼントもただ喜ぶだろうとしただけだから」
「なんの意図も無かったと?」
「今まで何もしてあげられなかった息子にプレゼントすることの何がおかしいのかしら」
なんというか、親子(偽)の会話が怖いのですけれど。お兄様プレゼントなんて貰った――って、アレのことか!!叔母様なんてことを!
文句を言いたいけれどそんなこと言ったら何のことか理由を説明しなくてはならない。言えるはずも無かった。顔が赤らみそうになるのを必死に堪えて無言を貫く。
「私のセンスも悪くなかったでしょう?」
にんまりと笑う叔母様に対し、お兄様が苦虫を潰したようなお顔を晒しています。とはいっても他人には些細な変化しか見えないでしょうけどね。
そしてプレゼントでしたか?ええ、ええ。大変すばらしいセンスでしたとも。お兄様には大変不評のご様子ですけど、私は嫌いじゃないですよ。というか大好物だけれど自分がまさかそのような用途で使うことになるなど夢にも思わなかった。使うというか、使わされた、ですけれど。
黙ったお兄様に気を良くしたのか叔母様は話を戻した。
「三が日までいてもらいたいところだけれど、年末の大掃除の件で周辺が騒がしくなったでしょう?二日の夕方には一時解除される予定になっているからその隙に二人だけ先に帰った方が良いと思ったのよ」
え、良いの?明日も挨拶回りがあるはずなのに、その予定を切り上げても良いのだと言う。
まあ少数精鋭の四葉だから分家筋への挨拶が終われば後はそこまで重要な交流は無いのだけれど。顔見せくらいは必要では?
毎年一部参加していた私なら顔を覚えられているだろうけれど、当主の息子となったお兄様の顔が知られないのはまずいのではないだろうか?
そう思ったのだけど重要な挨拶はほとんど午前で済むとのことらしい。
けして誰の口からも言われることはないが、年末の大掃除は分家による暴走だ。
もしかしたらその辺の折り合いも兼ねて何かしらの交渉事があって挨拶が限られたりしているのかもしれない。
「このような勝手が許されるのは今年だけだと思ってちょうだい」
つまり、来年からは頭から終わりまで出ることは決まっているらしい。というか、今年からそのつもりだったのだけれどいろいろありましたからね。
「ゆっくりできる時にはしておいた方が良いわ。今年は師族会議もあるから周辺もバタバタするでしょうし、ね」
どうやらこの先大変な騒動が起こる前にゆっくり休めと言う叔母様からの気遣いらしかった。
確かに、師族会議は大変な事態に巻き込まれる恐れがありますからね。その先見の明は流石です。慶春会でも言ってましたものね。
尊敬の念で叔母様を見つめると、叔母様は、…あら。なぜかちょっときょとん顔?何か思惑と違った反応を返してしまった模様。
え、他にいったい何の意味が含まれているのだろう。さっきのお兄様とのやり取りといい、イマイチ裏が読みづらい。
ちょっと微妙な空気の流れるお茶会はそれからすぐに終わった。
――
とりあえず二日の夕方に私たちはこっそりと帰宅するよう命令が下った。
今夜は昨夜と違って磨き上げられることはなく、普通にお風呂に――というけれど、ここに泊まって一人で入ったことはない。体も洗われマッサージを受けることはここでは当たり前だった。
…昨日のように丹念に、なんてことは初めてだったけれど。
あの施術、叔母様は毎夜受けているのだろうか…ってヤバい。妄想しちゃいけない世界だった。とってもお耽美な世界だった。よくない。
元は何を考えていたんだっけ。あ、そうだ。あのトンデモ施術のマッサージからの着替えだ。
うう…昨日のことが鮮明に頭を過るけれど、今日は特におかしなことなど何もなく身に着ける下着も普通の、とはいっても四葉家の用意するモノに一般的レベルのものなどなく、お高いブランド物ではあるのだけれど、昨日のようなアレなものではないだけでとんでもない安心感。
清楚な白のレースの綺麗な上下の下着にキャミソール。この三点セットにここまで安堵する日が来るとは。
これだってもちろんデザインが素晴らしくフィット感もいい。
深雪ちゃんが纏えば清楚であろうとえっちはえっち。だけどしっかりした布があるってそれだけで安堵できた。
そして部屋は昨日と同じ部屋だったけれど、昨日と違い案内係は扉の前で下がっていった。
ええ、今日は流石に白川夫人ではなかった。アレは特別仕様だったようだ。次期とはいえ、一番は御当主だから普段私の身の回りなんてすることはないのだ。
既にお兄様は部屋にいて、昨日のように動揺することもなく迎え入れてくれた。
九校戦の時に私が迎えられたことが嬉しかったと言ったことを覚えていてくださったのだろう。
おかえり、と笑みをつけて出迎えてくれるお兄様に精神的に疲労していた気分が高揚した。
自然と広げられる腕の中に、いつものように吸い寄せられて抱き込まれるのだけれど…どうして私は自分の立場をすぐに忘れてしまうのだろう。
もうただの妹という関係性でないことを思い出し、身体が強張るが、それを先読みしていたかのように添えられたお兄様の手が背中を擦る。
「深雪。確かに俺たちには婚約者という関係が増えたが兄妹ではなくなったわけではないんだ。世間が何と言おうと、戸籍が変わろうと俺たちが兄妹という事実は捻じ曲げることはできない。俺はお前を女性としても愛するけれど、妹として愛することもやめるつもりはないよ」
つまり、今までの通りで構わない、とお兄様はおっしゃっているのだろうけれど、その切り替えは私にはまだちょっとできそうにない。
(だ、だって!昨夜にあんな姿を見られたのですよ?!そ、それにき、キスだって!)
これをどうして意識せずにいられようか。
ふっ、とお兄様の笑う声が漏れる。
「可愛いね。…だが困ったな。妹として可愛がると言った口で、キスしてしまいたいと思ってしまう」
ちょ、ちょっと待ってほしいお兄様!手の動きが!!宥めるように動いていた手が背筋を撫でるように蠢き始めて――…ぽんぽんと宥めるものに戻った。
緩急の付け方が手馴れすぎてやいませんかお兄様!?
「少しずつ、慣らしていこうな」
「……慣れる気がいたしません…」
「大丈夫だ。深雪の学習能力が高いことは俺が一番よく知っているから」
深雪は努力家だもんな。とお兄様が微笑むけれど、今までだってお兄様の色気に耐えられたことは一度もありません。
鍛えられるの?何年かけてもその耐久レベルだけは上がった気がしません。もしや、私の耐久値が上がるたびにお兄さまも攻撃力が増している…?
ただ昨日の宣言通り手加減はしてくださっているのか、ゆっくりと体を解放してくれて、離れ際に頭をぽんっと撫でられれば、その優しさに心臓が跳ねる。
…お兄様は本当に私のことをよくご存じで弱点、萌えポイントさえもよく把握されているのが怖い。怖いのに拒絶などできない、抗えない魅力。
「とりあえず座ろうか。明日のことも話しておかないとな」
そして昨日のように座布団に座り、座卓を挟んで対面でお話を。
明日の車は既にお兄様の方で手配してくださったらしい。
肩書が違うだけでお兄様お一人でもスムーズにできたとのこと。何だかな。
彼らにとっても複雑なんだろうけど、それなら初めから差別なんてしなければよかったのに。
とはいえ原作ほどひどくならないように、地道に彼らの言動コントロールをしていたのでそこまでギスギスすることにはならないはず。
大変だったんだよ。四葉使用人内の意識改革。使用人の中でガーディアンの地位は低く、いくら四葉直系に近い血筋であっても真実を知らない上位になれない執事たちは見下した態度を隠しもしないから、その思想が使用人全体に浸透してまっていましたからね。
しかも分家当主たちから滲む嫌悪も彼らの悪感情を増長させていた。これは見下してもいいものだ、とそう思わせるには十分だった。
それをひたすら、四葉の品位を貶めるような言動には注意しましょうねと言い回った約五年間。頑張ったよ。
素敵ね。こちらでは過ごしやすくなったわ、と飴を配りまくって日々の言動を注意していたらいつの間にか信奉者を作ってしまっていたようだけれど、当主になるなら悪くもないだろう。
(年末分家に襲われることも信奉者さんたちからの密告で知りましたしね)
信奉者を生み出すことも悪いことばかりじゃない。有効に使えば反乱分子の動きが手に取るようにわかってしまう。
使用人には優しくしましょうね、おじ様方。不満を抱かせると忠誠は揺るぎますよ。
と、話が逸れたけれど、使用人たちの愚痴を制したら、それが結果として青木さんのような不用意発言する中途半端な中間管理者を作る原因となってしまった。立場が上だと何を言っても許されると。
今は葉山さんによって更生しているので良しとするけれど。
(それに、これからは規律を改める新たな教育係として――名倉さんが指導する未来が待っているらしい)
軍を経験していた者にとって四葉での生活は案外息がしやすいんだって。生温い家での仕事は逆に彼らにとって息苦しい環境なのだそう。危険な生活をしていると緊張が緩む生活に馴染めないっていうからね。
名倉さんはその前に七草を経験しているからどうなのかわからないけれど、ウチは実力をきちんと評価し、各自能力に合った仕事を振り分けるから働きやすい職場だと思う。
(しかし…心臓破裂した人間がどうして生きているのか。お兄様の再生ほどではないにしてもすごい魔法や技術でもあるんだろうか)
まだ全貌の見えない四葉の闇に、いずれすべてを把握しなければならないのかと思うと気が重い。
でも、――生きてた。それで今は十分ではないか。私の我儘を叶えてくれたことに感謝だ。
明日の帰りの予定時刻は日が暮れる前。ライトなど目立たない時間の方が良いという配慮だった。
案外早く帰れそうだ。夕食前には着くかな。
「少し気が楽になりました」
「そうだな」
お兄様も降って湧いたこの状況に気を張り詰めていたらしい。
それもそうだろう。お兄様にとっては私が次期当主に選ばれるだけだと思っていたのだから。
まさか自身が当主の息子として紹介され、私の婚約者となるなど、いくら優秀なお兄様の脳であってもこの展開は読めなかったはずだ。
「特にこの二日間がとても長く感じたよ」
「ふふ、そうですね」
本当、長かった。今日がまだ元日だということが信じられない。それくらい濃厚な二日間だった。
勝成さんと戦ったのが昨日?三日くらい経っていませんでしたっけ?もう遠い過去の出来事になっている。
「さて、もう寝ようか。…昨日は遅くなってしまったから、疲れているだろう。安心してくれ。今日は一緒に眠るだけだ。もちろん、深雪が許してくれるなら俺としてはやぶさかではないが」
「お、お兄様!」
そのくだりは昨日もやりましたでしょう!?
「冗談だ。昨日はすまなかったな。あまりに性急すぎた」
殊勝に謝られてしまうと、カッとなった頭も冷めるというもので。
「そ、それは…その…急なお話でしたから。お兄様も戸惑われたのでしょう」
「それはそうだが、据え膳だと思ったのも事実だ」
「お兄様!!」
咎めるように遮る私の言葉に、しかしお兄様は笑うだけで謝罪も否定も無かった。
お兄様ぁ…。
たった一日で起こったお兄様のとんでもビフォーアフターに翻弄されっぱなしです。
「…これだけは確認しておきたいのだが」
「なんでしょう」
「今日は叔母上から用意された物は無いね?」
「っ、ありません!」
瞬間的に顔が真っ赤になった。昨日の恰好を思い出したことで連鎖的に思い出してしまったあれこれのせいである。
お兄様もこれは悪かったと思ったのか謝罪された。
布団はなんとなくわかっていたけれど、昨日と同じ二人用お布団。一つの布団に二人分の枕。
まだ今日の寝室となる場所はふすまで締め切られていたので確認していなかったが、先にお兄様は確認されていたらしい。
昨日は結局お兄様しかこの枕を使うことはなく、お兄様の腕枕で寝たのだけれど…今朝はごたごたして訊ねることができなかった。でも気になるよねってことで訊いてみた。
「…お兄様、腕は大丈夫だったのですか?」
「ん?腕…ああ、腕枕か。朝は痺れていたが、すぐに取れたから気にしてなかった」
やっぱりお兄様でも痺れるんだな、と聞いてちょっと安心もしながら同時に申し訳なくも思うわけで。
(…でも、気にするな、ではなくちゃんと痺れたと言ってくれてることが嬉しい)
正直に心内を話してくれているのもきっと私のため。お兄様だってカッコつけたいはずなのに。
胸がきゅんと高鳴り、お兄様に触れたいと体が疼くのを、自身の手を握ることで誤魔化しつつ、腕枕はしなくてもいいと口にしようとしたところでお兄様から先制の釘が刺された。
「言っておくがそれくらいのことでやめるつもりはないぞ。デメリットが小さすぎる」
腕の痺れがデメリットでないと?常に守護を念頭に置いているはずのお兄様には不都合であるはずなのにと思うのだけど、と尋ねればお兄様曰く、痺れていても補助なく使う魔法に関しては問題なく使えるとのこと。思考操作型CADがあればそれも解決するからそもそも問題ないって。
もともと痺れや負傷した際の対応は実践済みということか。どんな状況でも対処できるよう身に付いているみたいだけれど、それがこんな状況でも応用できてしまうお兄様…使える能力は何でも使う感じがとても素敵だと思ってしまうのは、判定ゆるゆるお兄様大好き妹だからだろうか。
お兄様が良いというのだから気にしなくていいということだとわかってはいるのだけれど、だからって安心して眠れる気がしない。
昨夜は頭と心がパンク状態で、体も疲労困憊していたため意識を失うように眠ってしまった。
けれど今日は何も無くこのまま二人で眠るらしい。…寝られると思う?正気の状態でお兄様に腕枕をされて?密着状態ってことだよ?
「その…眠れる気がいたしません」
羞恥に身を焦れた状態で人は眠りに就けるだろうか。私はしません。速攻で白旗宣言。
まだお兄様に触れられたわけでもないのに顔も体も熱くなる。想像するだけで恥ずかしいのだ。…はっきり言うと、昨日の熱が甦る、という羞恥の上塗りがね。
どんどん追い詰められている気がする。
すると前に座られていたお兄様が動いた。
「箍が一度外れると緩くなるというのは本当だな。今までも十分お前が可愛くて仕方が無かったが、抱きしめたい欲求を抑えられない」
座ったままの状態で腕の中に収められ、可愛い、と抱き込まれた状態で耳元に囁かれて体の熱は一気に上昇した。
「お、お兄様っ」
「制御が難しい。元々深雪に対しては抑えが利き難いことはあったんだが」
それは怒りが体を支配してしまっていたことですよね。お兄様にとって兄妹愛だけが唯一残された感情だったから。
「…怒りだけじゃないぞ」
「え?」
「気づいた今ならわかるが、普通兄は妹をあんなに抱きしめたり撫でたりしない」
…うん?
今さらお兄様が私の心を読むことに狼狽えることはないのだけど、お怒りだけではない、とは?
抱きしめたり撫でたりすることの何が関係するんだろう?
言葉だけを受けると、その撫でたり抱きしめたりが、我慢できていなかったことになるのだけれど。
「…お兄様はよくなさってましたよね?」
頭を撫でたり、抱きしめられたりというのは当たり前の日常でしたよね。
普通の、兄妹としてのスキンシップ…って、あれ?そもそも兄妹とはなんでしたっけ?普通とは何だっただろうか。
「あの時にはすでに妹としてだけでなかったのだろうな」
え…どういう…?
見上げるとお兄様は申し訳無さそうに眉を下げていた。
「もちろん褒めてやりたい、労ってやりたいというのは兄としてのものだと認識している。頑張っている妹を褒めるのは兄の大事な役目だから」
お兄様がそう言うのならそうなのだろうけど、普通一般ってそんなに褒めてるかなぁ。幼い頃ならまだしも、高校生同士の兄妹で褒め合うってまず珍しい現象だと思う。…この世界だとそうではないのだろうか。
「だが、それ以外は…違ったということになる」
一旦言葉を切るとお兄様は表情を引き締めて私の頬に手を添える。
「もっと近づきたい、触れたいという欲求は、妹に向けるものではない。ましてや恥ずかしがる様が見たいと結構色々とお前を困らせた記憶がある。恥ずかしがる深雪は可愛いが、そこに気分が高揚してしまうのは妹に向けるには良くない欲求だ」
…お兄様、やっぱり意識的に困らせてきてたんだ…。あの時もその時も、お兄様は楽しまれていたのか。
戸惑う私を見て…。
「でも、それはお兄様が苛めっ子気質があったということであって、それをその、勘違いなさっているとか…」
「苛めっ子…」
あ、お兄様が虚を突かれたような顔に。
もしや自身がSだとお気づきになられてない?以前美月ちゃんとエリカちゃんに指摘されてましたよね。
それともオブラートに包みすぎてわかりづらかったかな。でも深雪ちゃんの口からお兄様ってサディストですよねって言うのはよろしくないかと思いましたので。
しかし立ち直りの早いお兄様はすぐに持ち直す。
「だとしてもそこに性的欲求が絡めばそれは勘違いで片付けられるものじゃない」
せいてきよっきゅう……妹相手に?
原作でもふんわりとだがそのような描写があったから、そういうこともあるだろうとは思ったけれど改めてストレートに言葉にされると衝撃がすごい。あれです、気まずさを覚えて視線を逸らすシーン。何度かありましたよね。
しかしアレはあくまで女の子として意識しないように、と逸らしていたけど、原作と違い、あのような格好をしたり、お兄様を惑わすようなことをしたつもりはないので、そんな機会は内容に思っていたけど日常生活でお兄様に困らせられていたことを思い出すと、それなりにそう言う場面は多かった。
お兄様の方から積極的に揶揄いに来ていたのを往なして躱してと逃げたり見逃してもらってきたけど…もしあのまま進まれたら一体何をするつもりだったのか。…私は何をさせられるところだったんだろうか。
(これはお兄様の理性に感謝すべきお話?ちょっとよくわからなくなってきた。というよりずっと混乱してる…)
こんな密着されて至近距離に顔を近づけられているのに、表立って慌てふためいていないなんて。混乱のピークを越えるとこうなるのだろうか。心と体が連動しない、この異常事態。
「大事な妹で、誰よりも愛おしい存在であっても、手を出すことなんて許されることではない。その常識が、モラルが俺をぎりぎり引き留めてくれていた。だが、四葉の非常識がそれを打ち破っていたこと知ったことで、歯止めが利かなくなった。お前を、そういった意味でも愛していいのだと、禁域に踏み込んでしまった」
頬に添えられていた手がするりと髪の方に滑り、流れるように髪を耳にかけ滑り落ちるように髪を撫でつけて毛先を摘まむと口元に運んで口付けるのをただただ見つめる。
「いつか手放さねばならないはずの妹を、手元に置いておけると知ってしまったら、もう手放すことなどできなくなった」
真直ぐと見つめられた瞳には、昨夜にはあまり見ることのなかった欲が色濃く映り込んでいた。
「ずっと、お前が欲しかった」
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