妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします!分割版 作:tom200
懇親会も終わり、生徒会長主導の元、ホテルへ戻ることになったのだが。
同室のC組の子に断ってお兄様の部屋に行くことを伝えると、自分も部活の先輩のところに入り浸るつもりだと返ってきて、どうやら私たちの部屋は空き室になるみたいだと笑い合って別れた。
いえ、私の場合ずっとお兄様といるわけじゃないのだけど。だってお兄様は技術班だからね、お仕事がある。
雫ちゃんたちの部屋にもお呼ばれしてるので楽しみです。
こんこん、とノックをするとお兄様から「入って」の声。
「よかった。一人だね」
「お話があるようでしたから、ほのか達には遠慮してもらいました」
ほのかちゃん達が付いてきたそうではあったんだけどね。これからの打ち合わせをしてくると言ったら遠慮してくれました。
ああ、なんだろう。敬語を使っているのに開放感がすごい。とっても落ち着く。
「…そんなに敬語が恋しかったのかい?」
くすくす笑うお兄様だけど、すっごく恋しかったですとも!
「そんなにストレスなら、おいで」
腕を広げるお兄様。
もうブレザーは脱いでラフ過ぎないが、楽な格好になっていた。
腕の中に入ると閉じ込めるように腕が背に回される。
ほっと落ち着く腕の中。ドキドキでもあるけど安心感が今は勝る。
「深雪は老師が怖かったのかい?」
「昔読んだ妖怪ぬらりひょんかと思いました」
「ぬらりひょん…」
呟いてからお兄様から小刻みに振動が伝わってくる。そんなに面白いですか。私は怖かったです。
「いや、いつもながら深雪の表現は素晴らしく的確だな。ぴったりだ」
まだまだバイブレーションは続く。そんなにツボに入りました?これは珍しい。
「お兄様は嬉しそうでしたね」
「そうだな。ああいう大人がいてくれると日本はまだ捨てたもんじゃないと思える」
「ああいう曲者タイプの大人は性格も曲者ですが、超一流の技巧をお持ちですからね」
お兄様の好きなタイプは把握済みです。
好きというより尊敬するタイプ、だけど。
「…深雪は俺の腹筋を鍛えようとしているのかい?」
「それ以上固くなられたらバイクに乗るとき、お兄様のお腹にタオルを巻くことになりますよ」
「それは…気を付けよう」
笑わせるつもりはなかったのですけど。今日はツボが浅くない?
お兄様が楽しそうで何よりです。
「さて、このまま笑って終わりたいがそうもいかないからな」
「――無頭竜ですか」
「バスを狙ってきたからな。目的ははっきりとわからないが、とりあえず一高自体が範囲に含まれていることは間違いない」
「『ウチ』というのは気づかれてはいないでしょうけど、だからと言って狙われていない理由にもなりませんしね」
「お前を狙う理由は家以外にもあるからね」
「軍からは何と?」
「それが――おそらく今晩動きがあるのではないか、と」
「お兄様は動かれるのですか?」
「通りすがって見かけたら、ってところだな。罠を張っているということは侵入させたところを捕えるだろうから」
「ではあまりホテル内を動き回らない方がいいでしょうか?」
「中にまで侵入はさせないだろう。――もし内部に潜り込んでいる者がいても大会前に動くにはリスクがある」
目的がわからないが、お兄様的にはすでに私に手が出された状態なので容赦する気は無く、積極的に潰していく対象になったようだ。
だからこそ、あの設定になったのだろう。
傍にいてもおかしくない理由を。護衛をしやすくするために。兄妹よりかは恋人の方が寄り添えますからね。二人きりになる理由も作りやすい。
エンジニアなのだから私の調整をする時などは傍にいると思うのだが、それでは足りないのか。
「目的がはっきりすればいいのですが」
「わかったところで潰させてもらうが」
うぅん、物騒。でもしょうがないね、私はお兄様の逆鱗ですから。大亜連合ってだけでもう嫌悪対象なのに。
バスを狙った時点で触れている。すでに彼らは討伐対象だ。
「あ、そうでした。お兄様、少し作戦を変更しようと思うのですが」
ハグしたままだったからちょっと押しのけるような体制になったけど、相変わらずお兄様は微動だにしない。私だけしなってる。く、悔しくなんてないんだからね!
「作戦?どれだ?」
そんな常に戦略練ってないですよ。九校戦で作戦と言ったら競技二種とこの恋人ごっこくらいなもの…三つあったね。
「えっと、アイスピラーズブレイクです。今日の閣下のお言葉に感化されまして――」
これこれこうで、こういうことを~、と説明すればお兄様は目を輝かせて。
「――ほう?ならCADを一から組み替えるか」
「お願いできますか?」
「もちろん。面白いことになりそうだね」
「あまり小細工というのはしたことがなかったので新鮮な試みです」
「お前にはそんなことをしなくても圧倒的な魔法力があるからね。だけど――だからこそ面白い」
お兄様は腕を背中からわきの下に移動させると軽々私を持ち上げる。
「深雪、お前が妹であることが俺は誇らしいよ」
くるくるその場で回りだした。わーいメリーゴーランドー。お兄様、私いくつ?っていうかお兄様腕力どうなってます?
身体強化使ってないのは分かってますよ。
私だって成人女性とほぼ変わらない体重ですよ?どんな筋肉⁇今度袖無しの服でやってもらえば腕の筋肉どうなってるかわかるかしら?
そろそろ下ろしてと思ったら腕に座らされて天井が近いです。お兄様からして私はいくつと思われてます?そしてお兄様は腕をいたわってあげて!なんで安定感があるの?私が座ってるのは椅子だった⁇温かい、これは腕!
「お兄様ー」
「はは、すまない。嬉しくてつい」
嬉しいならしょうがないね、とは普通はならないからね。こんな子ども扱いされたら普通怒るところですから。
「もう、お兄様ったら」
でもそんなに嬉しい顔をされたら許すしかないじゃないですか。
きっと私も笑ってるのだろう、お兄様は更に笑みを深くした。
――
時間も遅いということでお兄様は私をほのかちゃん達の部屋まで送ってくれた。
遅いと言ってもまだ九時だけど、一人で出歩かせるのはお兄様的にアウトだったんですね。
移動中いろんな人とすれ違い、いろいろ見られもしたけれど皆いい具合に勘違いしてくれていて、恋人同士だと認定されてるようだった。
良いんですけどね。困ることないので。あ、でもお兄様は困る?学校以外で恋人作れなくなっちゃう?
横を見ればお兄様は穏やかな笑みでどうした、と聞いてくるけど言えないよね。
何でもないと返して手を強く握ると、今度はその手で遊ぶことを思いついたのか、ちょっと離すように言われて離せば今度はパーを出してと指示が。
なんだ?と思いながら手のひらを差し出すと――おお、これは世にいう恋人繋ぎですね。お兄様芸が細かいね。周囲から歯ぎしりと羨ましいといううめき声が聞こえます。ってこの時間帯に意外と人がいるものだ。
「送ってくれてありがとう」
「ああ。少し早いが、おやすみ」
「うん。おやすみ」
中の二人が寝間着だったら問題かなと思ったので扉の前で分かれたのだけど、中に入るとまだ寝間着になってない二人がいた。しまった、これなら中に入ってもらえばよかった?
「え、いいよ!達也さんも気まずいんじゃない?一応女子だけの部屋だし」
言われてみればそうだった。お兄様原作でいつも女子に囲まれてるから、違和感なかったけど普通じゃなかった。
それにお兄様はこれから作業車に向かうと言っていた。邪魔をしてはいけない。
しばらく三人でこれからのこととか競技についてとか、今日の懇親会すごかったという話に花を咲かせているとノック音が。
こんな時間に?と三人顔を見合わせて出てみれば、一年女子が揃っていた。
何でもここには人工温泉があって、お願いしたら使用許可が下りたらしい。
さっそく行こうという話になってきてみれば――貸し切り状態の広い浴場があった。ユニットバスしか使えないと思っていたのでこれは嬉しい誤算だ。
温泉を見つけたエイミィちゃんにお礼を言って、用意されていた湯着とタオルを手に取り皆で着替えだしたんだけど…
「どうしてこっちを見るの?」
いくら視線に慣れていても、裸になるのを人に見られるのは同性であっても恥ずかしい。
顔も赤くなっている気がする。
するとどこからか息をのんだような音が。
というか皆、何か言って。動いて。私のストリップ見てどうする気なの?
「ほら、十時までなんでしょう?時間無くなっちゃうわよ」
ぱん、と手を叩けば皆夢から覚めたようにはっとして慌てて着替えだした。
「深雪~、お願い!先行ってて。深雪がいるとどうしても目が行っちゃう」
「なあに、それ。もう!わかった。先に一人で入っているから皆も早く来てね」
せっかく皆できてるのにここでボッチとかひどくない?何か理由があるみたいだけど寂しいじゃないか。
ちょっとむくれながら一人中に入る。
背後でやばい…やばい…というオタクゾンビの声が聞こえた気がしたが、あれは前世のイキモノだ。ここにいるはずがない。
先に体を洗って――と目の前の鏡を見てハタと気づく。
(…そうだわ。深雪ちゃんのパーフェクトボディは男女関係なく魅了するんだった。これは未成年には毒だわ)
うっかり忘れていたけれどこの体は磨きに磨き、内側からも丹念に、それはもうこれ以上ないほど最高に仕上げている傑作深雪様だった。
毎年美の更新をしているこの芸術作品は体の成長と共に色香を放つようになった。それも大人に成りきれていないこの時期限定の妖しさも醸していた。
これを普通の女子高生が見てどうなるか――新たな扉、開いちゃうよね。
まずい。どうしようか。人間洗濯機のブースに入る?でもアレあまり好きじゃないんだよ。体洗った気がしなくて。だけど背に腹は代えられない。皆に変な性癖を植え付けないためにも。
もう一度湯着を脱いで体を見下ろす。…うん。これは酷い。死人が出るレベル。
冗談抜きでこの眩い裸体を求めて争いが起こるレベルだ。つまりやばい。
…これ、ここを出たらまたやばいのでは?
お兄様が絡まないから安心してたけど、こんなところでお色気話が待っているとは。
気を持ち直してシャワーを浴びる。
――この後温泉に入ったんだけど、全員見てはいけないものといった感じで体ごとそっぽ向かれた。
私って歩く猥褻物になってる!?なんかごめんね!
そのまま女子トークが無理やり始まった。
初めこそたどたどしかったが、そこは女の子。一度テーマが決まれば展開は早い。
どこの誰が格好良かったか、同年代よりおじ様がいいとか。
「かっこいいと言えば見た?噂の三高のプリンス」
「ああ、一条君ね。見た見た」
「「深雪に一目惚れしてたよね~」」
はい?…ああ、そんな話あったね。っていうか一条君見るの忘れてた。
一色さんの近くにいたはずなんだけど、彼女を見るのに必死だったから。
魔法科高校きっての人気キャラだから見ればよかった。お兄様ほどではないにしろファンだったのにうっかり。
良いキャラだよね、一条君。ぜひ吉祥寺君とセットでお願いします。
「深雪気づいてなかったの?」
「…正直言って兄さんの作戦で頭がいっぱいだった」
「「「「「ああ~」」」」」
正確にはお兄様禁止令ね。
呼ばないようにするのって大変。
「でもあの作戦なかったらさ、本当に群がられてただろうね」
「思った。いくら私とほのかで守っても全然だめ。移動で何度かかわしたけど、結局無理で先輩たちに頼るしかなかった。一年女子だけで守るには限界がある」
「た、確かに深雪はこんなに美人さんだからしょうがないけど!」
「ほのか…そんな真っ赤になってそっぽ向かなくても」
見たら一体どうなるっていうの?ほのかちゃんが獣になるとは思えないから、失神?どっちにしろ危ないね。
「綺麗ってのも大変だね」
「つまり深雪を恋人にできたら、そういう奴らから深雪を守り抜かなきゃならないのか」
「…確かにコレは達也さんを倒せるくらいじゃないとお付き合いできないかもね」
「え、倒してもお話しかさせてもらえないんじゃなかった?」
「皆、あれは兄さんのジョークだから」
「「「えー?」」」
もし本当にそんなことになったら一生男子とお話しできない。
「ね、ね!深雪はタイプってどんなの?」
「タイプねぇ…」
「お兄ちゃんみたいな、とか?」
「ああ、四月のアレ!私見てたけどカッコよかった!」
「ふふ、そうね。兄さんは確かにかっこいいけど、兄さんがタイプって…頭が良くて運動ができて、魔法力が弱くてもそれをカバーできる技術があって?その上優しくて気遣いができて、付き合いがよくて――なんて、そんな人他にいる?」
皆黙った。
私も言ってて思った。
「そんな完璧超人いないよ」
「…深雪ブラコンフィルター分厚くない?大丈夫⁇」
いえ、いるんですよ我が家に。
信じられない、空想上の生き物だよ、と誰も信じてくれなかった。お兄様やっぱりツチノコ説。
そろそろ上がらねばのぼせちゃう、と皆が上がろうとしたので続こうとしたらストップがかかる。
「全員が出てからじゃないと、危ない」
…くすん。皆がひどいんです。
最後に上がり、そっぽを向かれながら最後に着替え、皆で浴場を後にした。
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