妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします!分割版 作:tom200
庭に面したあのゲストルームには、いつの間にか無くなったと思われていた大型ベッドが部屋を圧迫していた。…これ、廃棄したんじゃなかったんだ。
シーツも何もかも綺麗に整えられていて、――もしや私が夕飯を作っている間にお兄様が準備されていたのだろうか。…もしやも何も、この家にはお兄様と二人なのだからお兄様しかいないのだけど。
全然気づかなかった。
「余裕があるようだね」
余所見をするなんて、と気もそぞろになっていることを責められるけれど、目の前のお兄様があまりに色っぽ過ぎて意識を逸らさないと今にも泣きそうなのです…。謎の追い詰められた感が。
前回とは触れ方も、お兄様から漂う雰囲気も異なっていた。
大みそかの時は実験でもするような真剣な面持ちで、湿度の無い空気が漂い観察されているみたいな形から始まったので、戸惑っているうちに…という感じだった。
だが今回は初めから頭から食べられてしまうのではないかというほど目つきからして違う。
先ほどの発言のせいか「どう食べようか」と舌なめずりしているようにも見える。獲物を完全に捕らえた肉食の獣のよう。目の奥が爛々と光っている、そんな強い視線。
それだけではない。
この部屋に入ってからは優しかったお兄様の雰囲気が抑えられ、見ているだけで…はしたない言い方をすれば孕んでしまいそうになるくらいの妖しさを漂わせていた。
部屋の電気は落とされ、わずかな光量が頼りの薄暗い部屋。静かに降ろされたベッドの上で抱きしめられている状態。震える体は優しい手つきに宥められ、冷えた手は大きくてかたい手に握られて温められて――もう、止まれる要素が何もなくなった。
順に額に、蟀谷に、瞼に、頬に、鼻に、顎先に口付けを落とされ、その間に首筋と鎖骨に掛けて擽られてしまうだけで体中に熱が駆け巡る。
まだ快感らしい快感を知らぬはずのまっさらな体が、得体のしれない感覚に怯えるように体を震わせた。
しかし、今度のお兄様の手は震えを止めるためには動かなかった。
「さ、目を瞑って」
キスをされるのだ、とわかってまだそこに触れられてもいないのに胸が高鳴った。瞼がゆっくりと下りると、いい子だ、と言わんばかりに頬を撫でられ角度を付けられ柔らかい唇が重ねられる。
しっとりと、吸い付くように重ねられたそれはぴたりと隙間なく重ねられ、最後にちゅ、と吸われて離れた。
たったそれだけ、一回だけしか触れられていないというのに唇に火が点ったように熱く感じた。
ジンジンと痺れるような――まるで少し先の未来を先取りしたような感覚。もしくはデジャヴュ。
すぐに再び重ねられた時には深い口づけに変わっていた。互いの吐息が混ざり合い、怯えて逃げる舌が絡めとられ、擽るように撫でられていたのが弱い箇所を見つけては重点的に攻められる。
初めは不安と緊張と焦燥で強く握りしめていたお兄様のシャツも、長く口づけを交わしていくうちに体から力が抜けてきて今にもすり抜けそうになっていた。
前回は、慎重に動いていた、それこそ満遍なくチェックするような印象があったが、今回のこれは弱点を探られ責め立て陥落させようという意思が感じられる。
弱い部分を見つけられるたび翻弄され、また次のところを見つけては執拗に絡められ、口内を蹂躙されてこの口が誰の口なのかもわからない錯覚に陥った。
いや、自分のモノのはずだ。それなのにどういうわけか逃げ場がない。追い出すこともできない。
何より…気持ち良くなってきて何も考えられなくなった。
ただ、呼吸ができなくて苦しい。
めちゃくちゃにされ遠のく意識の中、鼻で呼吸をしろと脳内で命令が出ているのに上手く吸えず、角度を変える為時折密着していた唇がずれる瞬間が酸素を取り込むタイミングだった。
しかし吸うよりも先に吐息が漏れ、同時に自分でも聞いたことのない切なさを含んだような音をしていて、それが自分のモノではないように感じられ、淫らな声だと他人事のような感想を抱いた。
一方的に貪られ続け、どちらのものかもわからない溜まった唾液を飲み込もうとするけれど、間に合わずに一筋口の端から垂れてしまったところを、つい先ほどまで口腔内にいたはずの熱い舌が追いかけるように舐めとった。
その舌の動きが敏感に感じ取れて、そのまま舐めあげて唇まで戻ってきた赤い舌がやけに卑猥に見えてそれだけで体が燃えるように熱くなる。
(ああ、だめ……流されてしまう…)
「ゆっくり呼吸をしなさい。――そう、上手だ」
くったりと力の入らない体を抱きとめて、優しく背を撫でながら呼吸を促された。
こんなことになった張本人だというのに、逆らうことなど考えることもできない。
いい子だね、よくできたね、と褒めながら、その口は唇から頬へ、そして耳に音を立ててキスをしてから指で挟まれふにふにと揉まれた。
感触を楽しまれているのだろうか。しばらくそうしていたのだけれど、もう一度顔を寄せるとふぅ、と息を吹きかけられる。それだけでぞくんっ!と背筋を何かが駆け抜けた。抑える間も無く、吹き込まれた以上に口からはあられもない声が飛び出る。
「やっぱり、耳が弱かったんだな」
以前から予想していたとばかりの言葉が確信に変わると、息を吹きかけ指で擽るだけでは飽き足らず唇で食まれ、感触を楽しまれた後縁をぺろりと舐め上げられる。
その一つ一つの感触に声が口から洩れそうになって今度こそ口元を押さえるも、くぐもった声が漏れ出てしまった。
「深雪、ここには誰もいない。声を我慢しなくていいんだ」
我慢することは辛いだろう、と甘くとろけるような声で囁かれ、敏感になった耳が更に刺激を受けてしまい、ビクビクと体が痙攣を起こしたように跳ねるのを、お兄様はくつくつと笑って抱きしめて可愛い…、と耳に吹き込みもう一度反応を楽しまれる。
お兄様のじわじわと攻める戦術は着実に私を追い込んでいた。
「声を聞かせてくれないか」
お兄様からのお願い。いつもなら応えてあげたい。
だが、ぼぅっとして働かない頭を回転させて結論を出し、それはできないと力なく首を振る。
「…お兄様が、いらっしゃるじゃないですか」
「ん?ああ、俺にも聞かれたくないのか。深雪は恥ずかしがり屋だね。それともどんな場面であれ声をあげるのははしたないと、母さんに教わったのかな」
あれだけのヒントでお兄様は答えを導き出す。
私の骨身に染みている淑女教育はいつでも身を助けてくれる。どんな時でも感情的になるな、淑女だという意識を持て、とは確かに母に教わったこと。
それは、お兄様を相手に感情的になって命を止めてしまわないようにと施された教育の一環だったのだけれど、そのような危機は一度もなく、身を守る鎧として助けられてきた。
「深雪、確かに声を上げることは恥ずかしいかもしれないが、こういった場面でははしたないことではないよ。むしろどう思っているのか伝える手段でもある。深雪を気持ちよくさせてあげたいから教えてくれると嬉しい」
先ほどとは打って変わって優しく諭す言葉に、鈍った思考はそういうものなのかと咀嚼を試みるもうまくいかず、そのまま飲み込んでしまう。
「うれしい、のですか」
「ああ、深雪が喜んでくれるなら、俺は嬉しい。だから気持ちが良ければ反応を示してほしい」
もう一度口の中でうれしいという言葉を転がしていると、お兄様からもう一度キスをしていいかと訊ねられたので、目を閉じた。
重ねられる唇は優しく思いやりにあふれているのに、その中に忍ばせた舌は強引さがあって、私の隠したいものを暴いていく。
吐息も奪われ苦しいのに、舌先だったり上あごだったりを擽られると、びりびりとした刺激となって体が感電したように跳ねた。
「んっ…はぁ、……っん」
「声に出すのが難しいなら頷いてくれてかまわない。――気持ちがいいか?」
気持ちがいいとはどういうことを指すんだっけ、と言葉の意味すら曖昧になる。
気持ちが良いことは何度でもされたいと思うこと。私は、これをもっとしてほしい…?
鈍る思考で自問自答する。
(…ほしい)
本能が応えた。
身体が疼く。次を、もっと、と強請るよう。
でも同時に怖くてたまらない。未知の領域に踏み込むことが恐ろしい。
「それとも嫌かい?」
嫌…もうしたくない…?それだけは違うとわかるので首を横に振る。
そのことにお兄様が安堵するのを見て、不安にさせてしまっていたのだと気付かされた。
お兄様は何も不安がることはない。お兄様を不安になんてさせていいはずがない。
お兄様はいつだって、こんな時だって私のために、私に合わせてくれている。
そう思うと胸がきゅう、と苦しくなって――
「……っと」
「ん?」
「もっと、ほしい、です」
ぼんやりとした薄暗い闇の中、お兄様の目が光った気がした。
「お前の望みのままに」
それから幾度となく口付けを交わし、唇が痺れ、腫れるほど貪られる頃にはベッドに横たわっていた。覆いかぶさるお兄様の、なんとカッコいいことか。
やっぱり、私はお兄様が好きなんだなぁ、と力の入らない体をされるがままになりながら思った。
服の上から体をなぞられ、擽ったいような、もどかしいような感覚に見舞われ身を捩ると、息をのむ音が聞かれ、お兄様と視線が合うが、すぐに唇がふさがれ表情を窺うことができなかった。
その間も身体を弱い刺激がゆるゆると与えられ、口内では強い刺激がもたらされ、どんどん思考が溶かされていく。
呼吸が難しくなるころになってようやく離れたお兄様の唇が艶めかしくて目が離せない。
下唇を赤い舌が舐め取る仕草に、己の体内のどくどくと激しく流れる血流の音を聞いた。
見惚れているとブラウスのボタンはあっという間に全て外され、ホックの外されたブラジャーがかろうじて引っかかっている状態になっていた。私はいつ、背中を持ち上げただろうか?
疑問を抱くもそんなことを考える余裕は与えないとばかりに胸の形を確認するように愛撫する手の動きを感じながら、首筋にはスタンプを押し当てるような口付けを受けていた。
時折鎖骨辺りに下りてくるとピリリと痛みを伴う口付けをされる。…キスマークが付けられているんだろうなぁ、とここで前世の私がようやく意識を浮上させた。お兄様からの熱烈なキスの衝撃で思考ごとノックアウトされていたのだ。雄みの強いお兄様は刺激が強すぎた。
(だって!あまりにお兄様がえっちすぎたから!!)
そしてさらに言えば、お兄様はSっ気が強かった。今回のSは策士のSが前面に出ているように思う。
望みのままに、と言うけれどこれは望まざるを得ない状況に追い込んでいる。…こんな時までお兄様の思考は最適解を求めるのね。流石です。
見事に丸め込まれようとしていた。
それから前回も思ったが…この身体、快楽に弱すぎる。どこもかしこも敏感なのだ。
指が肌の上を滑るだけで小刻みに震えてしまう。声が口から漏れ出そうになる。
これがお兄様がお相手だからなのか、はたまた元から感度が高すぎるのかわからない。分からないがとにかく今わかることは、
(このまま快楽の海に溺れてなし崩しになってしまう…)
先ほどから攻略が進められている胸もそう。周辺をなぞられ、形を把握し感触を確かめるように揉まれているだけだというのにびくびくと身体は快感を拾い上げ下腹部に熱が集まり出している…。
まだ攻めも序盤のはずで、その場所の一番の性感帯である場所に触れられてもいないのにその中心が期待するように固く尖り始めていることがお兄様に見られているのかと思うと恥ずかしくてたまらない。
そう思うのに、ぐずぐずに溶けかけた思考はその先を想像して疼いている。
「はっ…ぁん!」
息が先端を掠めただけで体が跳ねた。けれどお兄様の顔にぶつからなかったことから避けたのだろう。まだ直接的な刺激が来ない。
「ゆっくり慣れていこうな」
焦らなくていい、とまた中心から離れて輪郭をなぞられスタートに戻る手が優しい手つきなのに追い詰めてくる。
徐々に高められるだけ高められて、触れられずにいることがもどかしくて、身を捩りたいのに、足の間にはいつの間にかお兄様が入り込んでいて閉じることも横に逃げることもできない。
「も…おねがいっ…」
限界だった。切なくて苦しくて、ぽろぽろと涙が零れ落ちる。
これ以上はおかしくなる。今でさえもう体のコントロールは利かない。お兄様の服を掴もうにも指が震えてままならない。
耐え切れなくなった私の懇願に、お兄様はうっとりとした笑みを浮かべられた。
――喰われる、と本能で理解した。
「深雪、――愛してる」
噛みつかれる、と覚悟したのに、それでも優しい口付けを落とされて私は観念した。
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