妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします!分割版   作:tom200

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四葉継承編㉚

 

エリカ視点

 

 

はっきり言って深雪は一分の隙も無くて、それなりに死線を掻い潜ってきた自分でさえ恐れを抱くほどのプレッシャーを感じた。

以前のような隙も無い、人とは思えない美貌で、人の感情を無くしてしまえば、それは世界最高の美術作品のよう。

神の創りし芸術作品。

それと対峙しようってんだから、こっちだって気合を入れなきゃ立ってもいられない。それほど緊張を強いられていた。

でも、それでも彼女に立ち向かわなければならなかった。

そうでもしないと、大切なものを失うから――。

 

「千葉さんのおっしゃる騙された、という発言ですが、達也様は本当にご存じありませんでした。言いがかりはお止めくださいませ」

 

せっかく空気の流れをこっちに運んで崩そうとしているのに、冷ややかな声ですぐに引き戻されてしまう。

やっぱり完璧に武装されてしまうと崩すのは難しいのか。

横でほのかが深雪が達也くんのことを様付けで呼んでいることに反応していた。そっちはそっちで通常運転してくれるおかげでちょっと気が楽になる。

雫なんて、

 

「…まさか、達也さんの趣味?」

 

なんていつもの天然節がさく裂している。

ありがたい援軍だわ、本当に。

けれどいつもならその発言に可愛い!って感じで笑っているはずの深雪が不愉快、とばかりに眉をひそめていた。

美人を不機嫌にするってこんなに心臓に悪いものなのね。意味もなく謝罪したくなる気持ちが分かった。しないけど。

 

「達也様は四葉家当主の直系であらせられますので。おかしなことではございませんでしょう?」

「…その割に随分婚約者様に冷たく見えるけど?」

 

学校が始まってから、校内の雰囲気はガラッと変わった。

以前まで慕われていた深雪の態度が一変し急に恐怖政治をし始めたかのように恐れられるようになった。

ただ雰囲気がそう感じさせるだけであって実際何か命令されたわけでも横暴な態度が見られるようになったわけでもない。

仲睦まじかった兄妹が従兄弟になり、婚約者になったら途端に二人に溝が生まれたように寄り添う姿が見られなくなった。

「兄さん」、と慕っていたのに、「達也様」に変わっただけで二人の関係が事務的なものに変わったような、冷めた関係に変化したように見えた。

だけどそれは深雪からだけであって達也くんからの変化はべたべたしないだけで――そう、まるで入学したての彼らを見ているようだった。

だからこそ、皆こうして集まって大舞台に立つことにしたわけだけど。

 

「立場を弁えているだけです。それで、もう問題は解決いたしましたかしら」

「いんや、まだある」

 

この空気をぶち壊したのはレオだった。戦闘スタイルと一緒で前衛を担うつもりなのだろう。

 

「ぶっちゃけると、俺らは疑ってたんだわ。あんまりにも達也に都合のいいように動いているからよ」

「…秋の京都でのあれらは四葉での仕事だったんじゃないか?僕たちは達也に利用された。違うかい?」

 

そこに続くミキはサポートに入る。古式魔法師はオールラウンダーでもあるから遊撃も揺さぶりも得意。

京都の一件、横浜同様工作員がいて、それを軍の指示で敵の計画を潰すため私たちに協力を仰いで解決させたのかと思っていた。

だけど振り返れば藤林女史のサポートこそあったけれど軍が動いている気配はほぼなかったように思う。それに何より、達也くんからどこからの命令で動いているという発言は一切なかった。

…一条君に軍のことを明かした理由は私たちにも誤解させるためだったのでは、と疑うことになったのは、今回の件があまりにレオの言う通り達也くんに良いように動いたからだ。

 

「もしそうだとして、何だというんだ?」

 

それを否定も肯定もせず先を促す。…慎重と言えば慎重だし、情報をすべて引き出してから否定をする方が理論的と言えるのかもしれないが、やり口がいやらしい。そういうところが不審を抱かせるのだけど、他人にどう思われようと気にしないから、ってことなのよね。腹立つったら。

 

「だったら、辻褄が合うんだ」

 

ミキの意味深な言葉に達也くんはしばし考えてから。

 

「まさかとは思うが京都の件で、実はあの任務は四葉からの任務で、その功績によって婚約者の立場を手に入れたのではないか、という筋書きか?」

「…そう考えると辻褄が合う。タイミング的にも良すぎるくらいに」

 

あの時私だけが彼が四葉の人間ではないかと、ほぼ確信に近い形で思っていた。

はっきりと言われたわけじゃない、ただ匂わされただけ。それだってわざとほのめかしたのだとわかっていた。

でもまさかそれが直系で当主の息子だなんてことは思わなかったけれど。それならまだ深雪の方がそうだと言われた方が信じられた。

深雪の魔法力もさることながら、彼女の身に纏う気品ある姿は確実に一般人のものではなかったから。

ただの上流階級のお嬢様だなんて思えなかった。次期当主なんだから、そういった教育も受けてるんでしょうから違って当たり前だったのかもしれないけど、自分の知ってる十師族のお嬢サマ、七草の家とはずいぶん教育は違いそうだ。

あの人も一筋縄でいかないところはあったけど、深雪のそれとは比べ物にならない。

深雪は一年の時にはすでに、彼女の成しえなかった二科生の壁をぶち破ったのだから。

だから――そんな深雪が何の計画もなしに、こんなことをするわけがない。

 

(きっと、これも達也くんのためなんだ)

 

こんな四葉家次期当主の『深雪』は知らなくても、自分たちは『深雪』を知っていた。

彼女がいくら仮面をつけて武装しようとも、彼女の本心は変わらない。

そして私たちは達也くんが深雪を何より大事に思っていることを知っていた。

深雪以外のことで感情は読みにくいし、何を考えてるかもわからないけど、それでも深雪に関してならどう思っているかなんて筒抜けなんだから。

だからこそミキは秋の京都と呼んでいる、コンペ周辺の襲撃事件が四葉の絡む事件であり、その報酬で深雪との婚約ができたんじゃないか、なんて推理を立てたみたいだけど、たぶん『四葉が絡んでいる』までは合っていると思うけど後半は違うと思う。勘だけど。

でも揺さぶるにはこれが手っ取り早いから。

 

「だったとしても俺のような下っ端の人間が願ったところで到底手が届かない高嶺の花だぞ」

「ま、その辺は想像よ。当主の息子なんだから融通も利いたんじゃないの?」

「強引だな」

「そもそも達也が下っ端って言うのが信じられないんだがな。達也の実力なら文句なしのトップクラスだろ」

 

それとも四葉ってのはそんなにすげぇ奴らばっかなのか?とレオが首を傾げる。

やめてよ。こんなのがいっぱいいたら四葉はとっくに世界を牛耳ってるわよ。

 

「達也くんはご実家では異端扱いで、当主の息子だってのに四葉として認められてないとかあったけど」

 

きっとこの辺りに何かしらの原因があるのでしょうけどね。

 

「それが何か?おかしなことではないでしょう。この世は魔法力で判断される。二科生でも入学がギリギリの魔法力しかないのであれば如何な当主の息子だろうと四葉は実力主義の一族。魔法の使えない魔法師に価値はありません」

「なっ!?深雪、そんなこと――っ!」

「ほのか」

まるで入学時にトリップしたようだ。二科生の扱いは確かにそんなものだった。魔法力がすべてで、実際の実力――実戦力なんて採点基準に含まれていなかった。

誰よりもその考えを否定していた人間がその言葉を口にするなんて皮肉だね。

「でもっ」

「話は途中だよ」

「!!」

ほのかはあの時の自分の考えを刺激されちゃったのかもしれない。

あの時は無意識でも選民意識が強かっただろうから。

「続き、と言われましても四葉ではそれが全て。他家がどのようかは存じませんが、我が一族は達也様に対し、いくらその他が優れていようとも受け入れがたい、というのが現状ですので」

「ふぅん、実力主義ってわりに脳みそ固いんだ」

 

四葉が少数精鋭の実力主義だってことは知る人は知っている。ほかの十師族と一線を画すだけの戦闘力を誇っていることも。

指摘すると深雪は否定せず目を瞑った。

深雪も苦労するね。さっきの言葉はけして達也くんを見下してのものではない。あくまでそう判断がされている、というだけ。

 

「じゃあよ、ならなんで次期当主の深雪さんと、落ちこぼれの達也が結婚するっことになるんだ?さっきも立場がどうのって言ってたけどよ」

「レオ、それはウチの事情に突っ込み過ぎじゃないか?」

「ウチのったって、今の話じゃ達也は四葉に認められてないんだろ?それだったら達也が次期当主の婚約者っておかしくねぇか?」

 

随分踏み込んだ発言に、深雪は睨むようにレオを見つめたけれど、残念ながらこいつも心臓に毛が生えているから。それくらいじゃ引き下がらない。…でもちょっとは気にしてるみたいだけど。なんかまずった?と言わんばかりに頬を掻いている。

レオだって魔法師間で踏み込んでいけない領域くらいはわかっている。魔法師の家庭で事情を抱えていない家などないのだから。

 

「当主の血縁関係を切り捨てられないだけだろう。一番近いのが俺で、次点が深雪だからな」

「そういうことで、もうよろしいかしら?」

 

うんざり、という気配を隠すこともなく、というよりわざとだろうね。だけど、逃がさないわよ。

 

「待って。まだ婚約の理由を聞いてない」

 

雫が引き留める。

落ち着いて見えるけど、深雪と達也くんの婚約を聞いて感情的になっていたのはほのかの陰に隠れていたけど、雫も同様だった。

 

「家庭の事情だ」

「つまり、無理やり婚約させられたってこと?」

「当主のご判断ですので」

「四葉の決定に、ケチをつけたところで得などないと思うが」

 

深雪は目を伏せるようにして。

達也くんは淡々とお前達には関係がないだろう、と。

線引きをするような言葉に場が静まり返る。

 

「――恋が、損得で簡単に割り切れると思わないでください!」

 

その静寂を切り裂くように叫んだのはほのかだった。

彼女の気持ちは誰もが知っていた。ここ数日、彼女には彼らに次いで注目が集まっていた。同情が主だろう。下卑た好奇心が向けられることはほとんどなかったと思う。

それでも居心地は悪かっただろう。

 

「割り切れないのは勝手ですが、そちらの事情に巻き込まれても困ります。感情の押しつけは当人同士だけでどうぞ。達也様、光井さんは貴方様にご用向きがあるご様子。どうぞしっかりとけじめをつけてくださいませ。――水波」

「はい、深雪様」

 

深雪が付き合っていられないとばかりに身をひるがえそうとするけれど、恋する暴走乙女がそれで止まるはずもない。

 

「深雪!私には貴女に聞かなきゃならないことがある!貴女は達也さんのことどう思っているの!?」

「将来結婚するお相手。――これでよろしいかしら」

「よ、よくない!それは結果でしょ。どう思っているかを訊きたいの!」

「具体的に好きか嫌いか、はっきり言って」

 

今度は雫からの援護射撃付き。これに対して深雪は少しだけ眉をひそめて答えた。

 

「それこそプライベートなことなのでお答えする謂れは無いと思うのですが?」

「じゃあ、ずるい言い方をする。ずっと騙されて利用されてきたんだから、それくらい教えて」

 

雫がそんなことを言うと思わなかっただろう。

達也くんが少しだけ眉を上げていた。私でもわかるくらいなんだから思ったより驚いているのかもしれない。

 

「お慕いしております――これで解決かしら」

 

慕っているという言葉を、これだけ無感動に聞いたのは初めてだ。というかその言葉自体聞くことがないけど、これが告白的な意味での好きだって意味に聞こえないのは、彼女が意図的にそう聞こえないようにしているから。

彼女は徹底的に避けようとしている。

遠ざけようと。

 

「それは、お兄さんとしてじゃないの?」

「――達也様は従兄であり、婚約者です」

 

まるで記者会見の問答のように決まった答えを返すのみ。

でもさ、それってさっきの話じゃ先日聞いたばっかりってことは発表があったのが二日、クリスマスからその間、ということになる。年末辺りに聞いたとしてたった二週間だなんて…心の整理がつくはずないじゃない。

 

「でも深雪はずっと兄だと思ってた。…深雪も、達也さんも知らなかったんでしょ」

 

雫もそのことを指摘する。

今度の質問に答えたのは達也くん。

 

「確かに、俺たちは兄妹として育った過去は変えられないな」

「深雪はそれでいいの?」

 

いくら答えを用意していたように答えてきた深雪も言葉に窮しているようだった。

完璧な深雪にも弱点がある。

達也くんに弱い、というのは別にして。――彼女は自分のことにひどく無頓着だった。

彼女にとって自分の兄だった達也くんがそうだったように、彼女も人のことが言えないくらいに自分のことを後回しにするタイプ。

世話されるのが当たり前の雫が世話を焼きたくなる時点で相当だと思うのに、本人だけが気付いていない。

だからなぜ、自分が心配されているのかがわかっていないのだ。

 

「先ほどから何をお訊ねになりたいのです?端的にお願いいたします」

「じゃ、はっきり言うわ。深雪、アンタ達也くんに騙されて婚約させられてんじゃないかってこと」

「………意味が、分からないのですけれど」

 

やっぱり、私たちが一体何を心配しているのかわかっていなかった。

一応この話をしてたんだけどね、ずっと。

深雪だけが兄妹じゃないことを知らされずに育って、年齢は離れてないけど紫の上みたいに刷り込んで育て上げられてって。

それは達也くんも知らなかったらしいってことで違うとわかったけど。それでも婚約にこぎつけたのは達也くんの策略があったからじゃないかって推理はまだ生きている。

騙されたってのは私たちだけじゃない。深雪だって騙されてるんじゃないかって。そのことをずっと危惧していた。

 

「だってさっきも雫が指摘したように深雪、ずっと兄として慕ってたじゃない。それがいきなり従兄で婚約?大丈夫なの?」

「大丈夫…とは」

 

表面上、一分の隙も無い深雪だけど、きっと動揺してるんだと思う。困惑?混乱かな。大分仮面がはがれてきたようだけど、早くいつもの私たちにだけ見せる気を許したような顔を見せて欲しい。

 

「ずっと達也くんが誰と恋をするのか楽しそうに見守っていたアンタのことだもの。どうせその相手が自分になるだなんて思っても無かったんでしょ」

 

この発言にちょっとは反応返ってくるかなー、と思ってたんだけど、深雪本人ではなくまさかの達也くんの方から返ってきた。

とはいってもこっちに向けられたものじゃない。

…そっか、達也くん知らなかったんだ。深雪に、お兄ちゃん早く恋人作らないかな、と楽しみに思われてたこと。うわぁ…余計なこと言ったかも。

 

「深雪が、達也さんのことを大事に思っていたことは知ってる。いつだってお兄さんのことを第一に考えてたのも。…私はずっと見てたから」

 

ちょっとまずった?と思ったら雫が軌道修正した。というか、これは深雪のフォローに入ったのかも。

達也くん、口には出さなかったけど、どういうことだ?ってオーラが出てたから。

 

「その見ていたものは虚像だった、と理解されたらいかがです?」

「「「「「「それは無理」だ」です」よ」だよ」」

 

持ち直した深雪は、私たちを突き放そうとしたんだろうけど、初めて深雪が悪手を指した。

私たちに見せていた、あれが虚像?嘘偽りですって?ちゃんらおかしいわ。

 

「深雪さん、いつもあんなに楽しそうだったじゃないですか。幸せだって、言って、笑っていたじゃないですか」

「あんな嬉しそうにされて嘘でしたー、なんて、信じられるわけないでしょ」

「たとえ深雪さんが演技してたんだとしても、達也はそんなに器用なやつじゃねぇよ」

「興味の無いことには取り繕うことさえしない達也が、深雪さんのことになると表情が豊かになるのは皆が知ってることだから」

「達也さんが深雪を大事にしていたように、深雪も大事にしていたの、ずっと見てきた。苦しかったけど、親友と好きな人が幸せそうだったから、嫌って言えなかった」

「――だけど、深雪の言うことも嘘じゃないんだよね」

 

誰もあれがすべて演技だなんて信じない。

今の四葉である姿も偽物ではないだろうけど本心を奥底に隠して見せないようにしているのはわかる。

それくらいわかるくらいには深い付き合いをしてきた。

雫が何を言うのかはわからないが、私も同じことを思った。

深雪は人を不幸にする嘘だけは吐かない、と確信していた。

 

「深雪はこんな時でも嘘をついてない。誠実であろうと真実だけをしゃべる。…そんなところも好きだから、秘密にしてたけど、約束を破るよ。

 

 

――お兄様、なんでしょ。深雪はあの日、教えてくれた。いつもそう呼んでるって」

 

 

雫の告白に、私たちも、深雪たちも黙った。

 

(お兄様、ねぇ。確かにその方がしっくりくるわ)

 

兄さん呼びがおかしかったわけじゃない。ただ、彼女が達也くんをそう呼ぶ姿を想像すると、それがよく合っていると思った。

いつだって兄を尊敬し、慕っている姿によく似合うと。

 

「あの時は言葉の意味がさっぱり分からなかった。でも、深雪が達也さんのために頑張っていることだけは伝わってた。だから今回の通達の内容を聞いて、真っ先に深雪が言いたかったのはこのことだったんだって繋がった。

――ねえ、教えて。深雪の努力は報われた?達也さんは救われたの?」

 

雫と一体どんな話をしたのか分からないけれど、それが一年の夏休み、達也くんがほのかから告白をされたというあの時のことではないか、と思った。

あの後から二人の距離が縮まっていたから、きっとその秘密が彼女たちの絆を深めていたのかもしれない。

深雪が、達也くんのために努力して、それが報われたか、なんて私たちから見れば答えは一目瞭然なのに、深雪の口は重くなったようになかなか開かない。

達也くんの環境が良くないのは手紙を見る前から皆ある程度予想していた。だって、高校生で軍属だよ。この時点で何かあるって思っておかしくないでしょ。彼の特殊な魔法も見ちゃったしね。

体術だって普通一般に身に付くものじゃないし、武人として彼が只者じゃないということは四月のあの動きを見れば十分に察せられる。魔法力は授業で見る限り現行の規格に合ってないのだろう。

だから彼は開発した。自分の手でも魔法が使えるように。努力したからあれだけ理論や考察に長けているんだろう。調整なんてあんな簡単にやるもんじゃないことくらい私にでもわかる。

恒星炉の実験なんてわからなくてもその後の世間の騒ぎ方でどれだけの偉業か知れる。…まあ、そこにあの家が関わったから訝しんだのも事実だけど、商売に私情を挟むのはご法度だから。

とまあ、達也くんが並の人生を歩んでこなかったなら、傍にいる深雪も当然平坦な道を歩めたわけじゃないだろうこともわかるわけで。

この兄妹は二人で支え合って生きてきたのだ。

達也くんは深雪を、深雪は達也くんを。

だから深雪は、もっと自信をもっていいのに。

 

「それは――」

 

ここまで頑張ってきた仮面が剝がれ落ちそうになっている。

本当、深雪の弱点はわかりやすいんだから。

嘘をついて乗り切ることだってできるのに、突き放そうとしている私たちに誠実でいる必要なんてないのに。

 

「――雫が深雪から何を聞いたかは知らないが、俺はとっくに救われている」

 

ほら、ね。答えはあっさり本人からもたらされた。

 

 

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