妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします!分割版 作:tom200
「嫌だったら抵抗しなさい」
ここで初めて命令を下した。
嫌ならば、抵抗するように。
今ならばまだ引き返してあげられる。そう思ったから。
できれば拒絶しないでほしいと願いつつ、顔を再度近づけていく。
身体を押しのけられることもなく――深雪はゆっくりと目を閉じた。
唾を飲み込むのを我慢して、触れるだけに専念する。
触れるだけで、すぐに離れる。深雪の反応を確認してから次の行動を、そう考えていたのに。
唇の皮膚は薄くて、鋭敏な触覚を持っている。
その感覚をもって触れた唇の柔らかさが、いとも簡単に理性の糸を弛ませた。
一瞬で離してあげられたのは、前もって行動を決め、反射で動くようになっていたから。
深雪が瞼を上げ、視線が絡み合う。
無意識に吸い寄せられるように唇を重ねていた。今度は少しだけ踏み込んで。
柔らかさと心地よい弾力に気付けば立て続けに角度を変えつつ口付けてその感触に溺れそうになり、さらに踏み込みそうになるのを何とか抑え込んで深雪の反応を確認する。
瞳が潤み、赤みが差している。
離した直後に漏れる吐息の温かさに誘惑されそうになるのを、無理やり視線を外して目を合わせると、その瞳のしっとりと水気を帯びた黒色に、ぞくりとした。
吊り上がりそうになる口角を誤魔化そうと口を開くのだが、
「ずっと、触れたかった」
明らかに欲をにじませた声だった。
怖がられてしまうか、と思われたが、深雪の口が薄く開いてほう、と再びため息を漏らして吹きかけられたらもう駄目だった。
何を言われたわけでもない。
それでももう、止まれない衝動に突き動かされる。
「嫌だったら我慢することはない。ちゃんと、止まってあげるから」
口ではこんなことを言っていたが、そんな約束、守れる気がしなかった。
俺は深雪をだまそうとしている。
罪悪感が湧くが、それさえも今は興奮材料にしかならなかった。
深雪も不安を覚えたのか、俺の服を握りしめる。その手に己の手を重ね、少しでも不安を誤魔化してあげようとする。
和らげようとする、ではない。誤魔化そうとしているのだというところが己らしく思える。
素直でいい子の深雪はすっかり騙され瞳を閉じた。
(ああ…なんて愛しいのだろう)
憐れで可愛い俺の妹。
こんな男に騙されて、流されるままこれから純潔を奪われるのだ――。
唇を重ね、さらにその奥へと深く踏み込んでいく。
流石にすんなりと開きはしなかったが、固く閉ざされた隙間をねっとりとなぞれば体を震わせ、隙間が生まれた。
ここで恐怖を抱かせるようにむさぼるわけにもいかない、と慎重に舌を進ませていく。
自分以外の体温を感じるというのはそれだけで高揚する。
大胆に動かしたくなるのを抑えつつ外側から攻めるか、と興奮で鼻息が荒くならないように動かしていると、滑らかな内頬にわずかながらの凹凸を感じた。
先ほどから体を震わせている深雪だが、そこに触れた時の反応は違っていた。
二、三度往復させると、やはりかすかに血の味がするような。傷はふさがっているようだがなぜこんなところに傷を作るようなことがあったのか。
舌を引き抜こうとしたが、このまま抜けば混ざり合った唾液が繋がったまま垂れそうだったので唇を舐めて切ろうとしたのだが、深雪の鼻にかかった吐息が漏れて下半身に熱が集中しそうになり、意識を切り離す。
深雪としてもそんな声を漏らすつもりはなかったのだろう。羞恥で頬に朱を走らせ瞳を揺らしているのがさらに刺激を促すのだが、確認が先だ。
傷ついた側の頬に手を添えて、この内側はどうしたのかと訊ねれば、先ほどとは違う理由で瞳を揺らしていた。
言い淀むような何かがあったというのか。
「隠さないで、教えてくれないか」
口の中が傷つくような何か。深雪が攻撃を受けるようなことはなかったはずだ。俺が見ていないところと言えばこの本邸に着いてだが、それに関しては離れていても眼は向けていたし、視ることのできない場所でも感知はできるようになっていた。
だから断言できるが、ここに来てからのものではない。
例えばこれが昨夜横向きに寝ていて、その際付いた跡だというのなら問題ないように思うが、血の味がしたということはただの跡ではなく傷になっているということだ。
食事に何か混入して?いや、彼女の食事にそのような傷のつく物は混ざっていなかった。
自分で噛みしめて作ったという線が濃厚なのだが、叔母上の前でそのように顔が歪むかもしれない堪え方をするだろうか。
一体いつ、そんなに強く噛んだというのか。
「深雪」
教えてくれ、と強く願えば深雪はゆっくりと口を開いた。
「お兄様、これは自分でしたことです」
「分かっている。もし他人の仕業だったなら俺はその時点でソイツを消している」
もし他の人間が、どうやってかわからないが深雪の口内に傷をつける…だめだ。どこに付けたところで暴走する自信があるのに、誰にもやすやすと触れることのできない口内に傷を作ったとなれば確実に「仕留めない」という選択肢が無い。深雪が止めようとも止まってあげられる気がしなかった。
どう息の根を止めてやろうか。できるだけ苦しむ方法が良い。
なんて、居もしない敵の拷問を考えて気を紛らわせていたのだが、他人に深雪を傷つけられたことに気付かないわけもなく、被害者である深雪は己の犯行だと自白した。
「申し訳ございません。自分の感情を抑えきれず、ここなら人に見えないだろうと」
謝罪は俺が受けるべきものではないと思うが、それにしてもこの話ぶり、恐らくこっそりと自傷する行為は初めてのことではなかったのだろう。
気付けなかった今までを悔やむが、口内に傷がついていることを俺が知るにはこうして触れ合わない限り気付けなかった。
これからはこういったところもチェックしたいところだが、しかし、深雪がこのように感情をそんなに揺さぶられるなど…そう疑問を口にすると返ってきたのはある種原因が自分だということだった。
「お兄様が、勝成さんの攻撃を受けた時です」
「!あの時か…」
わざと受ける必要があったとはいえかなり派手に受けて見せたからな。
深雪には衝撃的なシーンだっただろう。
俺のせいで、深雪が傷ついた。直接的な理由でなくとも、それは間違いなく俺が原因の傷だった。
「すまなかった」
「いいえ、お兄様は何も悪くありません」
そうは言うが、そもそも受ける必要もないモノだった。
初めから圧倒的に制圧するよう分解を使って打ち倒していればそもそも5分とかからず終わっていた。
今後の関係等を考えずさっさと終わらせてしまえばよかったのだ。
そうすればあの攻撃を受ける必要どころか深雪たちの手を煩わせることも無く――あんな話を深雪に聞かせることなどなかった。
あんな、自分にとってはくだらない過去の話でも、深雪には知られたくなかった。
それはともすれば恐怖。深雪に嫌われてしまうのでは、という怯え。
「…深雪は、恐ろしくなかったか?」
あの時、確かに夕歌さんと水波からの視線は感じた。
異常だとでも思われただろう。普通は力を得たからと、制御ができるようになったからといって子供が成人男性を殺すなどありえない話だ。
しかも、相手から手加減など一切ない。あの時対峙した男は俺を殺せれば自由が手に入ると約束されていたのだから。
とはいえ、四葉が本当にその約束を守るかと言えば…解放した後で処分、となっていただろうが。
そんなことを知らない男は、本気で目の前のガキを殺そうとしていた。だが、本気であっても相手は自分の腰にも届かない小さな子供だ。油断はあった。
子供が相手だろうが、殺すことに躊躇するような倫理も持っていない男。秒で終わる、誰もがそう思っていた。
そして、その通りになった。
小さなガキが、何のためらいもなく人を殺す。淡々と、感情を見せることもなく。
それがどれだけ気味の悪い光景だったか。周りの大人の反応でも分かった。
なんの興奮も恐怖も覚えなかった自分に向けられる視線を記憶から引き出せる。
だから――恐れた。
他の誰にどう思われようとかまわない。だが、深雪にだけは――そんな目で見られることはないとわかっていても知られるだけで怖かった。
じっと深雪を見つめれば、逸らされることなく受け止められて。
「恐ろしくなどございません。ただ、悲しくは思います」
恐ろしくない、の言葉が本当か瞳の揺らぎを見るが、そこに偽りや誤魔化しの様子は一切見られない。
「お兄様が、そのようなことをさせられている間、私は何も知らずにお兄様を慰めるどころか傍にも居なかったことが、申し訳なく思います」
信じきれずに探る視線を向けられていたというのに、深雪は臆することなくただ悲しいと、寄り添うことができなくて悪かったと悔恨の念を滲ませる。
俺が初めて人を殺した当時、深雪の傍に行くことは許されなかった。俺のような不安要素を次期当主候補に近づけるなどさせるわけも無かった。
兄妹だと認識できても『家族』だとは認識できなかったあの頃。
遠目で見た深雪はお人形さんのように可愛らしく、健やかに育てられているのを見ては、彼女の為にこの厳しい訓練に耐えられているのだと支えにしていた。
ずっと、心の支えだった。大切な妹だった。あのまま関係が冷めきったままであろうとも俺はずっと深雪を守護して生きていけた。
(あのままでも十分であったのに)
今ではこんなに近くで、優しく手を握られて、心が温かくなる半面、苦いものが広がった。
「お前が知る必要はなかった」
過去のことであっても優しいこの子が苦しむことは想像できた。嫌う、なんてありえないと知りつつも幻影に怯えるのは幼少期の記憶が強く残っていたからだが、深雪ならこのことを知れば傷つくことがわかっていた。だから教えるつもりなど無かったのに。
「知らぬことが良いこととは限りません」
…ああ、深雪はもう、何も知らない子供ではない。
成長し、自分の目で物事を判別できるだけの見識を持っていた。
もう目隠しをしてあげられないのだということに気落ちする思いだが、それでも彼女は前を向く。とても眩しく思えた。
だがそれが、一瞬にして陰る。
「深雪?」
一体何を考えた?と名前を呼べば先ほどまでの凛とした空気が嘘のように視線が泳ぐ。
「…ええっと、お兄様。もし、その、このまま?婚約をして、け、結婚をすることになったら、なのですけれど」
「俺はそのつもりだしそれを阻むものがあるなら全力で抵抗するが」
その相手が深雪だとしても手加減するつもりはない。どんな手段を用いようとも必ずその権利を勝ち取る。
そんなことにはならないと思うが、念のため強く主張すると若干引かれたが、宣言を覆すつもりも無い。
そ、そうですか、とおろおろする深雪も可愛らしいな。
嫌だ、と否定するのではなくちゃんと受け止めてくれるところもまた愛らしい。
困ったな。どうあっても深雪が可愛い。
抱きしめたくなる可愛さだが、何を言いかけていたのか話の続きも気になる。
促すと暫し躊躇った後、口を開いた。
「私は、お兄様といつか対等に立てる日を夢見ていました。そのために努力もしてきたつもりです。守られるだけの存在から、互いを守り合えるような、そんな関係性になれればと」
「俺が、お前を守るのではいけないか?」
「それでは何時まで経ってもお兄様に寄りかかったままになってしまいます。寄りかかるのではなく支え合える関係になりたいのです」
「…それは、難しいな」
唇とつんと尖らせて不満だと前面に表す深雪に、抱きしめてその唇に触れたい衝動をぐっと堪えて。
「俺にとってお前は掌中の珠だ。俺の大事な宝物なんだ。だから誰かに奪われそうになったり傷ついたりすることが許せない。――お前が大切なんだ」
深雪に守られるよりもすべてから守りたい。
だが、深雪にとってそれでは不満らしい。
「お兄様。私だってお兄様が大切なのです。お兄様が傷つくと苦しくなります。お兄様が何も思わなくても私はその痛みに寄り添いたいのです」
「その思いだけで十分だ。それだけで俺はいつだって救われている」
実際深雪は俺の支えだった。ずっと、そしてこれからもそれは変わらない。
「それだけじゃ足りないのです!」
怒るように声を強めて拒む言葉を口にしながらその華奢な体を俺に押し付ける。
「お兄様が私のためにしてくださっているように、私もお兄様の為に尽くしたいのですっ…」
その言葉が、どれほど俺を喜ばせているか。深雪はやはり自分を知らなさすぎる。自分の影響力がどれほどあるか、わかっていない。
力が入りすぎないように抱きしめる。できるだけ真綿に包むように、優しく。俺の想いに潰されないように、これ以上ないほどの力加減で。
「…私は、頼りないですか?」
「そんなことはない。お前は強くなったよ。俺なんかより、よっぽど強くなった」
本当に、深雪は強くなった。魔法も体術もそうだが、何よりも心が。彼女を中心に世界は変わっていくような、そんな求心力をもって。
「叔母上に言っていたじゃないか。実力は戦闘力で決まるものじゃない。話術を含めた処世術だって、サポート力だって深雪は群を抜いて高い。俺にはできない数々を、お前は一人でこなしてみせる。俺の手なんて、必要とされなくなりそうだ。だが、お前が傍に置いてくれるから俺は今もお前のガーディアンでいられる」
「…私が手放したら、お兄様は離れていかれるのですか?」
「昨日までの俺ならば、解任されても陰ながらお前を守っていただろう」
水波がきて、解任される可能性は高まっていた。もともといつか来るだろうと思っていたのだが。
(分家が俺たちをどうしたいか、俺をどうするつもりか、分かっていた)
いつかは受け入れなければならないことだと理解していた。深雪の為なら納得もできた。――昨日までならば、本気で引けると思っていたのだ。いつか深雪の傍から離れる日が来ると。
彼女への想いを自覚した今ではもう手放すなど不可能だった。今だって触れ合っているのに物足りないと感じるほどなのに。
それに――
(きっと自覚していなくとも、離れることなどできなかった)
何か傍にいられるだけの理由を作って傍に居ようとしただろう。
(深雪から離れて生きていけるなど、何故思えたのか)
無自覚ながらそれを理解していたから確率の低い四葉からの脱出と銘打った逃避行の計画まで立てたのだろう。
抱きしめる腕を強めて密着させる。服越しに温度を感じられるようになって、次いで頬に手を当て上向きにさせて。
深雪が目を伏せるより早く唇を重ねた。フライング気味だったからか、無防備な唇を割って舌を侵入させた。
真っ先に傷を舐めたのは、これが俺の為に作られたと思ったら愛おしくなったから。我ながら現金なものだ。
そして、先ほどは触れないで置いた彼女の舌先を探り当て、表面をほんの少しだけ舌先で撫でる。
鋭敏な舌でざらりとした表面を感じ取るとくすぐるようになぞっていく。
「んんっ…」
そのくすぐったさに身をよじる深雪から漏れる、堪えようとする声に、ゾクゾクと背が粟立った。
深雪も同じモノを感じているのか、震える背を宥めるように撫でてやりながら、次第に深く舌を絡めていく。
ただそれだけの行為なのにその刺激にだんだんと官能が高められていき、より強い刺激を追い求めて舌を動かした。
昂ると深雪の都合を置いてけぼりに、ただその快楽を求めてしまう。
角度を変えてさらに求め貪ると、深雪の身体から力が抜け、時折ビクンと跳ね、くぐもった声が漏れ聞こえるたびに下半身に熱が集中するのが分かったが、今度こそもう止まれなかった。
確認をする?そんなもの、もう答えはわかりきっていた。
初めから俺は深雪を妹でありながら異性であると認めていたし、深雪も今の顔を見れば、勘違いだとは思えない色香を溢れさせ、その瞳には先ほどまでなかったはずの情欲が見て取れた。
深雪もしっかりとこのキスで感じているのだと思うとさらに興奮が増した。
ぐったりとして、息も絶え絶えの姿に一旦離してやりながら、朦朧としているだろう深雪に畳みかける。
「どのような意図があろうとも、お前と結婚できるチャンスに恵まれ、手に入れられると知って手放せるほど、俺は善人じゃない」
「…ぜんにんじゃない、なんて…まるでお兄様が悪い人、みたいではないですか」
息も整わず苦しいだろうに、こんなことをされてまで俺を庇おうとするなんて。
苦笑を漏らして反論する。
「同意を得られてないのに手を出している時点で俺は悪人だろう?」
その言葉を、数回瞬きをしたのち自分がされたことを理解した深雪は、更に頬を上気させ口を閉ざした。
自分でも非道なことをしている自覚はある。だから謝れと言われればいくらでも謝るのだが、後悔はかけらもしていない。
この後も、するつもりはない。
「まだ確認途中だったね。もう少し先に進もうか」
「……え…?」
正面からキスをするのは距離が離れすぎていた。
抱き上げて自分の足の上に座らせてしまえば、顔も近くなりキスがしやすくなる。
逃さないようそれとなく腕を回して密着すると、いつもと違う香りに交じっている深雪本来の匂いを探り当てられた。
それにより興奮を覚える。
早く、味わいたい。
侵食されていく思考に緩みかける理性の紐を引き締めて、兄の部分を引き戻す。
とはいえ完全に兄には戻れなくなっていた。
「キスは拒まれなかったということはここまでは嫌じゃなかったということだろう?」
指の背で頬を撫で、そのまま滑らせてあごの裏をくすぐるように指をスライドさせると密着しているから小刻みに震えているのがよりダイレクトに伝わってきた。
紅潮する頬、ぴくぴくと痙攣するように動く眦。どうやら深雪は少しの刺激でも敏感に反応しやすい体質のようだ。
漏れる吐息の熱さが彼女の興奮を物語る。
「っ、…おに、さまっ」
身を捩るたびに重みが変わりバランスを取ってやるとその動きにも感じてしまうのか掴む指先が震えていた。
顎裏をくすぐり終えてから首筋に指を這わせながら口づけを落としていく。
唇だけでなく、頬に、顎にと音を立てて触れるたびに深雪の身体が身悶えするのがたまらなくて、わざとらしく耳の近くで音を立てると深雪の身体が大きく跳ねる。
「大丈夫か」
「怖くないか」
「嫌じゃないか」
ちゅ、とわざと音を立てて口付けて体が震えるたびに確認をすると、真っ赤な顔で首を振ったり、頷いたりと、声はほとんど聞かれないが意志は返ってくる。
漏れ聞こえるのは熱い吐息と我慢する声。
身体の熱さから、深雪の体も昂りを感じているのはわかる。
背中や腰に這わせた手を動かせばびくりと震え、
「まっ…て、ぇ」
涙をためて請われる声は大変色っぽく、水気を帯びていて腰にクる。
「だ、め…っ」
身体をしならせて快楽を逃がそうとする健気な姿もたまらない。
だが、ここで焦りは禁物だ。
待て、と言われれば待ってやり。
駄目と言われれば何が駄目だったかと訊ねる。
訊ねたところで深雪は答えられないので、
「性急すぎたな」
「もう少しゆっくり進もうか」
と、止めることなく一度引き下がってまた前進する、ということを繰り返した。
もうキスは顔面を飛び出し、首にまで降りてきた。
明日のこともあるし、念のため跡は付けるのを我慢して、唇で触れるだけに留める。
出来ることなら舐めたりもしたいところだが、確認作業だと言った手前あまり踏み込みすぎるのは危険かと、キスだけを落していく。
正直、ここまでとんでもない理性を発揮していると思う。
これだけ匂い立ち色気を放つ絶世の美少女を前にがっつくことなく抑え込めているのは、精神をコントロールできる術があるからこそのことだが、それでもギリギリだった。
もしこれが他の女性相手であれば俺は完璧に抑え込めた。衝動など抱けないのだから例え高ぶりを覚えたところであろうとその先に進まない選択を選ぶことなど造作も無い。
だが、深雪に対しては感情の制限などない。ただ兄としての意地が理性の手綱を握っていた。
「はぁ…は、…ぁ」
悩ましいため息に、その手綱を今にも手放したくなるのだが、妹との約束を破るつもりか、と脳裏に過ぎるその言葉がかろうじて理性を引き留めていた。
吐息を奪うように口付けて、深雪の苦しげな表情に、次に進んだ方が良いかもしれない、と優しく髪を梳いてやりながら唇の弾力を味わってから離す。
少ししつこすぎただろうか。熱を持ち腫れ始めている。もうここから離れなければ明日に響く。
名残惜しいが次に進もう。
深雪にも進んでいいか尋ねると、ぼう、とした状態のまま小さく頷いた。
待ってやりたい気持ちもなくも無かったが、ここに戻ってきた時刻を考えるとあまり時間が無い。
(明日の慶春会の為にも早く休ませてやらないといけないからな)
異変は首から鎖骨をなぞり、びくびくと震える深雪を堪能しながら手をそのすぐ下へと滑らせ、そこへ乗せてすぐだった。
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