妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします!分割版   作:tom200

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四葉継承編 達也ver.⑯

 

 

「お、お待ちくださいませお兄様!」

 

意識を朦朧とさせて夢現の状態だった深雪がはっきりと覚醒して制止をかけた。

突然の制止に手が止まり、まじまじと深雪を見つめる。

あれだけ赤く染まっていた顔は今も赤みは残るものの、目元や頬はうっすらと程度にまで色を戻した。

カッと見開かれた目には溜まっていた涙も引っ込んでしまっていた。

一体、何があったいうのだ?

 

「何だ」

「あ、あの、…一旦時間を頂けませんか?」

「何故」

 

ここまで来て深雪が逃げようとしている意味が分からない。

俺は何かをやってしまっただろうか?キスまでは問題なかった。

直前まで深雪は快楽を耐えるように必死に体を丸めたり反らしたり捩ったりしていたのだから、感じていないわけでもなかったはずだ。

駄目や待て、の言葉はあっても嫌とは言われていない。深雪からも拒絶されるような気配はなかった。

だが、胸に触れた瞬間、深雪は初めて拒絶を示した。時間が欲しいと、距離を置きたがった。

――何故だ?

 

「すぐ戻ります」

「理由は?」

 

この先に進むことは構わないようだ。そのことには安堵しないわけでもないが、何がしたいのかわからない。

俺は今、何を理由に拒まれている?

深雪はなかなか口を割りたくないようだが、視線を受け、観念したのか俯いて真っ赤な耳をさらしつつ小さく震えながら答えた。

 

――下着を、着替えたいのですっ、と。

 

俺の眼は別に透視ができるわけではない。武器が仕込まれていれば気付くこともできただろうが、服を透かして裸を見るような魔法の目ではない。よっていくら眺めてもその下に何を身に着けているのかなどはわからない。

正直この単衣は下着姿よりも艶めかしく映っていた。

深雪の裸を見たことはない。だが、それに近い下着姿なら毎週見続けている。

アレだって、高校に入ってからは正視するのは難しいものだった。

だが、妹の体に欲情するわけにはいかないと、精神をコントロールして落ち着きを見せていたのだが、それが悪かったのかもしれない。

深雪は自分の魅力に気づいていないような言動を取るようになった。

もちろん、周囲の視線には気付いているから他人に対しての警戒心は失われていない。しかし俺に対しては時に酷く大胆な行動もしてみせた。

 

(兄だから大丈夫、と思っているのだろうが。こちらはいつだってギリギリだというのに)

 

兄の心、妹知らずとでも言おうか。

そして今も、下着の上に羽織っているだろうこの単衣姿にはいつも以上に興奮を隠せないのは、清楚を纏っているのに艶めかしい女性特有の曲線を描くラインが浮き彫りになっていて、それがより一層想像力を掻き立てられているから。

思い返せば背を撫でた時も、腰に腕を回した時も大した厚みを感じなかったのだが、下着だとしたら相当薄いものを身に着けているのか。

ここまで見せるのを拒む下着というものに興味が出た。

視線は深雪と絡ませたまま、(手を添えた個所もそれらしいものを感じなかったな)と確認するように親指を乳房の下に滑り込ませて上下を挟み込むように手を折り曲げる。

 

「ひゃんっ!」

「…着替えたい、ということは身に着けているということだな」

 

 

甲高く上がる深雪の声に、冷静に分析する言葉を口にするが、全然冷静などではなかった。

突然の予期せぬ行動に、先ほどまでの熱が残っていたのかあられもない声を上げてしまい羞恥で身を強張らせる深雪に、このまま揉みしだきたくなるのを堪えて指に意識を集中させるが、ふむ。

 

「だが今触れた感じだとワイヤーも無く、重なった布の感覚も無かった」

 

普通一般の下着なら服の上からでも感じられる厚みがあるものだが、こんな薄い衣なのに今触れた感触にそれは感じられない。

つまり深雪は、普通ではない下着を身につけさせられているということだ。

さらに俯いて拒む姿勢を見せるが、容赦なく手をかけて。

 

「脱がせるぞ」

「お、お待ちください!」

 

深雪の服を開けさせるなど、興奮を覚えておかしくない場面だというのに非常に嫌な予感がした。

深雪が慌てて袂を押さえて帯も解かせないよう押さえるが、そんなものでは防げない。

こんなことで使うとは深雪も思っていないだろうが、緊急事態だ。

 

「お兄様!?」

 

分解魔法に驚きの声を上げる深雪はその直後再生で帯が戻ったことに気付く前に固まってしまい、あっさりと袂の主導権を俺に奪われ、はっと彼女が気づいた時には制止の手も空しく空を切り、両サイドに開いていた。

 

「まっ――」

「これは――」

 

黒と紫の、深雪が纏ったことのない色合いの、非常に薄い布地の、下着と呼ぶにはあまりにも頼りない官能的過ぎる代物だった。

ぐらりと理性が揺さぶられ、焼き切れそうになるほど、――今すぐしゃぶりつきたくなるような男の欲を刺激する危険なモノだったが、その中心にあるものにガツンの頭を殴られた気分だった。

 

「…りぼん…」

 

リボンが胸の下から三つ、綺麗に結ばれていた。

 

 

『――達也さんにとっておきのプレゼントを用意したの。後で部屋に届くはずよ。ちゃんとリボンを付けたからすぐにわかるはずだわ。ちゃあんと受け取ってね?』

 

 

脳内で再生される声に、沸々と沸き上がるのは肉欲よりもはるかに強い怒りの感情だった。

 

「深雪」

「な、んでしょう」

 

深雪が怯えている。

俺の怒りに震えている。

それを申し訳なくも思うが抑えが利かない。

それほどの激情に呑まれていた。

 

「これを用意したのは叔母上だな?」

 

疑問形で尋ねていたが断言に近かった。

リボンを掛けたプレゼント、間違いようが無かった。

俺が喉から手が出るほど欲しているモノ――一番欲しいモノだった。

 

「はい、そのように伺っております」

 

だろうな。間違いなかった。

だからこそ耐えられなかった。

深雪がその下着を纏っていることが。

俺の腕の中に納まっている深雪が、ずっとリボンがかけられたままでいることが。

まるで叔母上の用意したプレゼントであり、まだ手に入れられていないのだと嘲られているようで、耐えがたい屈辱に思えた。

生まれた時から俺のものであるはずの深雪を、ずっと叔母が彼女の所有権を持っていたのだと知らしめられているようで。

まだ俺の手に渡っていないと、叔母のモノだと言われているようで。

この色合いも叔母を示す色に思えて。

似合っていることも、その姿に欲情させられてしまったことも――すべてが気に入らない。

 

「脱がすぞ」

 

忌々しい下着を、リボンを解いてはがしていく。

サテンのリボンは指を引っ掛けるだけでするりと解け、抑えられていた胸が寄せられていたのが解放された反動で揺れて元の位置に戻るのを目で追いながらも肩からひもを下ろしただけでこちらもするりと体から滑り落ちた。

次に目が向いたのはその落ちた先。そこにも黒紫の糸が繊細に編み込まれた下着、ショーツがあった。相当生地が薄いようで刺繍部分以外は肌が透けて見えた。

ここにも両サイドのリボンを見つけて舌打ちしたいのを歯を食いしばって我慢する。

 

「倒すぞ」

 

このまま脱がせるにしても、俺の上に乗ったままでは抜き取れない。

ゆっくりと深雪の体を横たえて、扇情的な姿を堪能することもできないほど怒りに目を曇らせていた俺は、紐を引いてショーツとして役目を果たさなくなったそれを腰に手を添えて浮かせた体から一気に引き抜いた――のだが。

 

その薄い布から、少量であるが粘液が糸を引いていた。

繋がっている先には深雪の裸体。

 

それがどういったものであり、何故付着しているのかを知らないほど無知でもなかった。

 

二人の間に長い、そして重い沈黙が落ちた。

欲は怒りで塗りつぶされるが、怒りは驚愕によって白紙にされるらしい。

そして真っ白になった頭で思ったことと言えば、

 

(キスだけで、これほどまで感じてくれていたのか)

 

煩悩の塊だった。

 

「……すまない」

 

深雪が羞恥で顔を染め、俺から逃げるように横向きになって顔を覆った。微かに涙目だったのも見えた気がした。

背を丸め、足を折り曲げ丸まっているようだが、一糸纏わぬその姿は彼女の感情をそのまま表す様に薄紅色に染まっていくのが見て取れた。

折り曲げられた腕によって部分的に隠されている、つい先ほど触れたことでふわふわと柔らかいことを知った乳房、足も縮こまるように折りたたまれているが、そのせいで魅力的な双丘を惜しげもなくさらしている状態になっていることに気付いていない。

その憐みさえ誘う姿に欲望と直結している下半身は熱を集め、今度こそ言い訳できないほど固くなったが、これはあまりにも最低だと己を戒める。

出来るだけ痛みが残るように分解を使って強制的に鎮めながら、深雪に謝罪する。

今の深雪には届かなくても、何度詫びても許されるべきことでないことくらいわかった。

痛みと情けなさで食いしばりながらすまない、悪かったと詫び、徐々に冷静になり始めると、何時まで深雪をこんな格好で放置しているのかと己を叱咤した。

着物をそっとかけてやりながら、改めて謝罪する。

しかし、酷いともっと詰ってくれていいのに、貝になりたい、とは…。口を閉ざしたいという意味だったか。残念だがその願いは叶えさせてあげられない。

 

「すまなかった。嫌がったら止めると言ったのに、俺は止まってやれなかった…」

 

それまでとは違う、強い拒絶だったというのに、怒りに身を任せ、衝動に突き動かされ判断を誤った

それから言い訳じみた言葉をこぼしながら、深雪が単衣を纏い始めたタイミングで帯を差し出すと驚かれた。

深雪はあの時驚きすぎて再生に気付けなかったもんな。

恐らく、ついさっき自身に対し使った分解も気付かなかっただろう。冷や汗が出るほどの痛みを残した自動修復にも気づかれていない筈だ。血も何も出ないようにしたし、サイオンの動きも極最小にした。

通常の深雪なら気付いただろうが、あのように羞恥で混乱していた状態では気づけないはずだ。

深雪が単衣の下に何も身に着けていないで座りなおしたことに気付いたが、痛みに集中して意識を散らす。

申し訳ないと思っていてもなお欲を抱いてしまう己の不甲斐なさも含めて深く頭を下げて謝罪する。

深雪から何故あのような行動をとったのかと尋ねられ、誠意をもってすべて白状した。

叔母上のプレゼントの下りと、俺が行動を起こしてしまった経緯を。

 

「深雪は欲しいが叔母上にプレゼントされたと思うとそのことが許せなかった」

「…それは、どうしてです?」

「プレゼント、と言うことはお前が一時的にも叔母上のモノだったということになる。それが嫌だった」

 

深雪が誰かのものであることなど想像するだけで耐えがたかった。

 

「それに、叔母上の用意した下着を身につけさせられていることも気に入らなかった」

 

しかも、叔母上のカラーでまとめられた下着など、より一層怒りがこみ上げた。

なら他の色ならよかったのか、と問われればそれもそれで叔母上からの証があったなら同じことになっていただろうが。

 

「…もしこれが、私の選んだものだったとしたらいかがです?」

 

その質問には虚を突かれ、怒りが霧散する。

深雪が、あの下着を自分で選び、身に着けたのだとしたら――?

先程脳裏に焼き付いた下着姿を思い出す。

上から被るのではなくシャツのように羽織ってボタンの代わりにリボンで締めるタイプと言えばいいのだろうか。

こういった下着には詳しくないのでわからないが、胸の下あたりで締められるリボンによって寄せられる谷間は美しい曲線を描いていて、ノースリーブのむき出しの肩に、脇までざっくりと空いている部分から覗く、横にはみ出ている丸みを帯びた胸のラインもまた扇情的であった。リボンとリボンの隙間からちらりと覗く肌も指を差し込みたくなる魅力があって、リボンをきつめに縛ることで浮かび上がる括れと腰のラインもまた目を奪われる。

ショーツに至っては刺繍部分こそ糸が図柄を描いているので隠れていたが、布自体が薄く、全体的に上と同じで透けていた。

そう、上も透ける素材の布が大半で、縁取るフリルが重なることで重要な部分が隠されている、そんな刺激的な下着だった。

これを、深雪が自ら選び、俺の為に着用してくれていたのだとしたら――

 

「深雪が用意してくれた据え膳なら喜んでいただくよ」

 

ただし、深雪の希望に沿ったセックスはできないだろうが。

 

(確実に理性を失うからな)

 

あの下着を身に着けた恥じらう深雪を前にして野生を思い出さない雄はいない。

想像するだけでも危険だ。

今は痛みがあるから目に見えて伝わることはないだろうが――と、思ったのだが深雪の視線が泳いでいるな。頬も赤い。

…何かやらかしたか?

 

(いかんな。深雪を怯えさせたいわけではない。ここは一旦兄として、深雪を落ち着かせよう)

 

深雪の身体を抱きしめて、もう何もしないと欲を封印して触れる。

 

「結局俺はお前を傷つけた」

 

あれだけ傷つけるつもりはないと思っていたのに、まさか怒りに囚われて嫌がる深雪に無体を働くことになろうとは。

 

「ええ、傷つきました」

「!!…すまない」

 

わかっていたことだが、言葉にされると刺さるものだ。このまま抱き締めてしまいたいが、それでは反省にはならない。

そして続けられた言葉に俺はさらに打ちのめされることになる。

 

「でも、お兄様に責任を取ってもらうつもりもありません」

 

その宣言は、俺を拒絶する言葉に聞こえて、体が硬直した。

一呼吸おいて、何とか言葉を絞り出す。

 

「責任を、取らせてはくれないのかい?」

「それではお兄様の都合の良いようになってしまうではないですか」

 

…それは、確かにそうか。

こういう場合責任を取るというのは男性が女性の一生をもらい受けるときの常套句だ。背負う、だなんて言っていても結局のところ手に入れることと何ら変わらない。

深雪が少しだけ腕を突っ張り押しのけるように俺から体を離した。

しばし見つめ合う。

先ほどまでの熱も、動揺も何もかも読み取れない、淑女らしい、隙のない表情だった。

嫋やかな美しさの中に強い意志の籠められた瞳がひときわ輝く。

 

「お兄様はおっしゃいました。私に愛してもらいたい、と」

「ああ。兄としてだけでなく、男としても、愛してもらいたい」

 

そこには恥も外聞もない、嘘偽りなく思いの丈を伝えた。

異性としても愛してもらいたい、それは嘘偽りない本心であり、願いだった。

自分勝手で、愚かしい――兄妹ではありえない想いに嫌悪を抱かれてもおかしくはない。

だが、ここで嘘偽りは言えなかった。

自身のことで衝動を抱けないが、肝は冷える。冷や汗だって掻くことも経験が無いわけではないが、今日ほど強く感じたことは無い。

次の言葉を待っている間がとても長く感じる。

 

(引かれるか、拒絶をされるか)

 

深雪の判決を息をのんで待つ。

すると、深雪は予想に反してにこりと微笑んだ。

その笑みは先ほどまでの淑女らしい笑みと違い純真無垢な笑みにも見えるのに、子供とは思わせない強い意志があった。

 

 

 

「でしたら、私に恋をさせてくださいませ」

 

 

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