妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします!分割版 作:tom200
入室時に付けた明かりも早々に落として深雪の為に常夜灯モードにした。
四葉では障子越しに月光が月に照らされ入る光があったが、遮光率の高いカーテン越しではほぼ暗闇状態だ。ベッドの縁に下ろされて座る深雪には何も見えなくて恐怖を煽ることになるだろうから。
しかし、それによって周囲を見回されるのは少々気まずかった。
前もって準備していたと気付かれた気がして落ち着かない。
「余裕があるようだね、余所見をするなんて」
同じように隣に腰掛け頬に手を当て、顔を自分に固定させて探られないようにと見つめれば、深雪の瞳がみるみる潤んでいく。
今にも泣きだしそうな様子に怖がらせてしまったか、とも思ったがそれにしては怯えというよりも戸惑っているような、そんな視線に見えた。
まずは落ち着かせるように目元を中心に口付けていく。
初めは身体を固くしていたが、直接唇に触れられないことで少しずつ受け入れられるように力が抜けていった。
押し当てるだけだったそれを徐々に音を立てて触れるとうっすらと上気する頬が目に入るが、肩に力が入ったのも少しの間だけで、俺のシャツを握りしめて羞恥に耐えている姿がなんともいじらしい。
(困ったな)
可愛い反応に今にも押し倒して圧し掛かりそうだ。
口付ける度に震える睫毛も、むずがるように肩を揺すったり眉間が寄るところも、どこからともなく香る彼女特有の甘い香りも、腕の中で徐々に熱を上げていく柔らかい体も何もかもが理性を蝕んでいく。
気が付けばまだ唇に触れてもいないというのに首筋と鎖骨に指を滑らせ魅惑の谷間に手を滑らそうとしていた。
特に視覚的にこの角度はまずい。
見下ろす先には、普段ならブラウスに隠されているところなのだが、先にボタンを外してしまったことで白い肌が露わとなっており、下着のレースの縁取りに覆われた眩いばかりの女性特有の双丘が身じろぎするたびに形を変えて誘惑されそうになる。
下着姿など見慣れている、などと簡単に割り切れるものでは無い。絶対触れてはならない状態で見る下着姿と、これからその先に進みこの手で触れることを前提に見る下着姿が同じであるわけがない。
(余裕があるようだね、なんてよくこの俺が言えたものだ)
表面上穏やかに笑っているつもりだが、内面は――殺気立っていた。
少しでも気を抜けば野獣になって襲い掛かりそうな本能を何度殺していることか。
殺してもなおすぐに復活を遂げる本能に、これがデーモン、とふざけた言葉が浮かんだ。
戦場で俺が恐れられ嫌われるわけだ。殺しても殺しても蘇っては襲い来る。厄介なことこの上ない敵だ。
(頼むからこのまましばらく眠っていろ。ここでまだお前を解放するわけにはいかないんだ)
まだベッドの上に座ったばかりだというのに、これを解放しようものなら深雪に嫌がられる未来しか見えない。
元々深雪に対してしか動かない衝動を抑える方法など知る由も無かった。抑えることなどした試しがほとんどなかったからだ。
初めて衝動が暴走した――深雪を傷つけられたあの日、深雪が敵の殲滅など望んでいないことくらいわかっていた。
ただ、自分が許せなかったから怒りのままに動いた結果、桜井さんの死という別れを母と妹にさせてしまったことは今でも後悔している。彼女も、まさか最期を俺に看取られるなど思ってもいなかっただろう。
駆け出した時にその結末は予想していなかったが、もし予想できたとして止まれたか、と聞かれれば俺はきっと止まれなかった。
深雪を傷つけた原因を放置するなど、できるはずがない。
今でなら他にやりようもあるが、あの時は魔法も未熟で、敵の動きも読むことができず、露払いの応援を頼むことすら知らなかった。
すべて自分の未熟さが招いた結果だ。
だから知識を、力を求めた。もう、深雪を泣かせないために。大切なものを守れるように。
俺は、あの子の兄だから。
猛ったものが落ち着いてきたところで気付かれないように息を吐きだしてからもう一度頬に手を添えた。
「さ、目を瞑って」
俺は婚約者でもあるけれど、この子の兄だから。
この子を傷つけるようなことはしない。怖がっているのなら優しく、安心させてあげるのが兄の役目だ。
ゆっくりと瞼を閉じる深雪に、いい子だね、と親指で頬を撫で、力加減を間違えないようにそっと唇を重ねる。
小さくてもしっかり弾力のある唇はその触感だけで美味しいとわかる甘美な果実だ。
思うままかぶり付きたいところだが、ここは慎重に。
逸る気持ちを抑えつつ、それでも離れがたくて惜しむように軽く吸って離れたのだが、それがいけなかった。
ほぅ、と深雪の口元から小さく漏れた吐息を唇に感じた瞬間、気が付けば口が開いて吐息すら余すことなく食べなければとかぶり付いていた。
急に深くなった口付けに驚いた深雪が俺の服をきつく握りしめるのを感じながらも唇は放さなかった。
あれだけ慎重に、と思っていたのに深くなってしまった口付けに、しかしがっつかずに丁寧にと意識して――いたはずだが、実際どうかはわからない。あまりの気持ちよさにいたるところに舌先を伸ばしていた。
普通に考えれば人の唾液が美味しいわけがない。
先ほどまで夕食を食べ、コーヒーを飲んだ後そのままここへきているのだ。
だからコーヒーが香るのも、彼女の舌に残る苦みも感じているのに、なぜそこに入ってもいないシロップを感じ、直に舐めているように舌先が痺れるほどの甘味を味わっているのか。
特段甘いモノに目が無いわけでもないのにこれは一滴残らず飲み干したい。そう思うこの欲望は果たして性欲なのか、食欲なのか。
深くなっていく交わりに呼吸も乱れ、わずかに空いた隙間からこれまた甘い音が漏れる。
「んっ…っあ、は…ぅん、む……ふ、うぅ…はぁっ、は…っ」
悩ましい声が漏れる度に腰にずしんと重りが載せられたようだ。
何度も思うがまだ序盤、キスだけでこれだ。
深雪の才能はこんなところまで優秀だなんて。
それともこれも四葉の技術の賜物だとでもいうのか。だとしたらその研究施設は即刻分解せねばならないだろう。
理不尽にも空想だけで怒りを覚えて少し乱暴に舌をかき回したせいか、深雪の喉からくぐもった音がする。
まるで溺れているかのように息苦しそうだ。鼻を押さえているわけでもないのにうまく吸えていない…?
そこで気付いた。
以前のように興奮しすぎて呼吸が止まってしまっているのか。
「ゆっくり呼吸をしなさい」
すぐに唇を解放して背中を撫でながら呼吸を促す。人工呼吸をしなかったのはまだ意識がありそうだったから。
その判断は間違っていなかったようで深雪は自力で息を吹き返し、呼吸できるようになった。
よかった、と安堵しつつ、深雪の許容量にも気を付けなければ。
(せめてさっきのように声を上げ続けてもらえれば止まったかが気付けそうなものだが)
いや、この場合声を出していれば呼吸も忘れないのではないだろうか。
呼吸が止まってしまうことに対して何か策は無いかと思案しながらもよくできました、と褒めるように口づけを落す。
とりあえず一点ばかりを責めすぎたな、と反省するように唇から頬へ、それから深雪の弱点のはずの耳にわざとらしく音を立ててキスをするとビクッと身体を縮こまらせたので、また落ち着けるように唇を遠ざけて指でそこに触れる。
つまんで軽く揉んだり、縁をなぞったり。耳たぶはひんやりとしていて柔らかくて気持ちがいい。口に含んだらどんな触感がするだろう、と思いながら再度顔を寄せて穴に向けて息を吹きかける。
「ひゃん!」
可愛らしい声に追い打ちを掛けたくなるのを少し止めて、
「やっぱり耳が弱かったんだな」
とあえて言葉にすると、ふるふると震えながらぎゅっと目を瞑るのがなんとも悪戯心をくすぐられる。
深雪の言う苛めっ子というのは合っていたということか。
流石は深雪だ。俺の知らない俺を理解してくれているとは。
指で触れるのもいいが、やはり口に含みたくなるのはすべて食べつくしたいという願望によるものなのだろうか。
口元を押さえて声を出さないようにしているのだろうが、弱点とはっきり分かった耳を口に含んでは舐めて順に縁を辿っていくと堪える声が漏れ出る。
その健気さがまた可愛くて仕方がない。
「深雪、ここには誰もいない。声を我慢しなくていいんだ」
だからその可愛い声を抑えることなく聞かせてほしいのだが、深雪が口を開くと声が漏れてしまうからとふるふると首を振って答える。
ふむ。
「我慢することは辛いだろう…?」
深雪が一番弱い低い声を弱点の耳元で囁くと小刻みに体を震わせていたのが大きく体が跳ねてしがみ付いてきた。
(ああ、なんて)
憐れで可哀想で――愛おしいのだろう。
追い詰めている元凶なのに助けてとばかりに縋りついてくる可愛い妹を安心させるように抱きしめておきながら、その耳にもう一度息を吹きかけて頭を撫でる。
今度は抱きしめていたから深雪の反応がはっきりと伝わった。
怒られる前に宥めるようにとんとん、と背中を叩いて落ち着かせる。
「声を聞かせてくれないか」
再度催促をするが残念なことに俺にも声を聞かせたくないらしい。
だが、その理由は彼女が恥ずかしがり屋だからというだけでも無さそうだ。
思い浮かぶのは在りし日の親子の淑女教育の様子だ。
母はいつも淑女たるもの感情をあらわにすべきではないと教育していた。
いつでもどこでもどんな場合であっても、淑女は声を荒げる等の行為はしないのだと。
母・深夜は確かに淑女であった。彼女はプライベートでもあまり感情を表に出すことはしなかった。
深雪はその母を尊敬し、今も手本として実践しているのを知っている。
だからこんな場面であっても頑張ろうとするその意思は尊重してあげたいとも思う。だが――
(あけすけに本心を晒すのなら、堪えるのに必死な深雪も愛おしい。だが、乱れる深雪も見てみたい)
淑女の仮面を引き剥がしたい。感情の赴くままの、むき出しの深雪を知りたい。
「確かに声を上げることは恥ずかしいかもしれないが、こういった場面でははしたないことではないよ。むしろどう思っているのか伝える手段でもある。深雪を気持ちよくさせてあげたいから教えてくれると嬉しい」
よくもまあ、口が回るものだな。
しかも、深雪の弱いワードである「嬉しい」という言葉まで織り込んでいる、と他人事のように分析しながら頬に手を当て深雪をじっと見る。
焦点は定まっているものの、ちょっとしたトランス状態のように意識がはっきりしていないようだ。
「うれしい、のですか」
ゆっくり反芻するように紡がれた言葉は幼さが見え、素直に訊き入れてしまっているのが分かる。
心配だ。こんなあっさり口車に乗るようでは、と思いながらもそうだよ、と甘く囁き頭を撫でる。
「深雪が喜んでくれるなら、俺は嬉しい。だから気持ちが良ければ反応を示してほしい」
刷り込むように言葉を重ねると、深雪はもう一度うれしい、と繰り返した。
意識はあるようだが、反応が薄い。
「もう一度キスをしていいか?」
この言葉に数瞬遅れながらも目を閉じた。偶然ではない。きちんと意思を持った行動だ。
同意を得たので唇を重ねる。何度口付けても足りない。もっと求めたくなる気持ち良さにさらに深く追い求める。
「んっ…はぁ、……っん」
「声に出すのが難しいなら頷いてくれてかまわない。――気持ちがいいか?」
頼んだからと言ってすぐに反応が返ってくるとは思っていない。
深雪がこれまで身に沁み込ませてきた淑女としての在り方をすぐには変えられないだろう。
何度も口付けていると、どこに深雪が反応するかが分かってくる。
緩急をつける攻め方に変えて、時に擽るように、時に強めの刺激を与えて。
その度に体が反応してしまっていることに深雪は果たして気付いているだろうか。
「それとも嫌かい?」
遠慮がちに問えば、これにはすぐに答えが返ってきた。
分かっていたとはいえ横に首が振られたことに安堵しつつ。
「……っと」
「ん?」
「もっと、ほしい、です」
おずおずと顔を上げながらの答えは俺が欲していた以上のもので。
その言葉に堪えきれず生唾を飲み込んだ。
「お前の望みのままに」
(――オチたのは、深雪でなくて俺かもしれない)
――
深雪が陥落するよりも先にこちらの理性が引きちぎられるのが先になりそうな予感がする中、交わす口付けに酔いながらゆっくりと身体を横たえた。そのまま覆いかぶさって、さらに深く、強く舌を絡ませながら支えていた腕を外してブラウスのボタンを外していく。
冬でも室内は一定の温度を保っているから寒いということは無いだろうが、肌に空気に触れたことで体を震わせたのを抱きしめてからそのまま下着のホックも外す。
直接見られるのは恥ずかしいだろうからまだ覆いを外すことはしないが、こんなものは気休め程度だろう。
酸欠からか羞恥からか、はたまたその両方によってなのか、深雪の肌がうっすらと赤く染まっていく。
暗闇の中でもよく見える目のおかげでこんなわずかな光量であろうと色づくのを見逃さずにいられる。
…見られたくない深雪には悪いが、恥じらうように身を捩る姿がまた官能的で踏みとどまるのも一苦労だ。
愛おしくて、愛したくて――めちゃくちゃにしたくて仕方がない。
口付けはついに唇を離れ下へ下へと下りていく。
白い喉元に噛みつきたくなる衝動を、吸い付き痕を残すことで消化して、痕を付けるごとにそこを舐めてはその横に、下にと新たに跡を残してはまた舐めてを繰り返していたら想像した噛み痕以上に酷い有様になっていた。
断続的に聞こえる「んっ…」「は、ぁっ」と熱く息を漏らしつつ声を押し殺しながらも身悶える反応に興奮してしまい消化どころか煽られ続けたことも原因か。
とはいえ深雪本人に煽っているつもりなんてないだろう。
彼女に自ら煽るような余裕なんて見当たらない。
滑らかな肌に指を滑らせるだけで体は痙攣するように震え、呼吸は浅く速まっていく。体温が上がっていることで汗が滲み、火照る体を持て余し身を捩ろうとするが、足の間に足が差し込まれていることで身動きが取れず、掴んでいる手が時折力んでは俺のシャツに皴をつくるしかできずにいた。
瞳には今にも零れ落ちそうなほど水気が湛えられ、はくはくと動く唇は何度も吸い過ぎたことにより赤みが増し、厚みも増している上にてらてらと怪しい輝きを放っている。
どこを食べても美味そうだ、と喉を鳴らして己が唇を舐める様は極上の餌を前にした肉食獣のソレだった。
本能に従いかぶり付きむしゃぶりたいところだが、俺は人間であり、この子の兄であり、前回やらかしたことを反省し、可能な限り深雪の意思を尊重すると誓った身。
自分勝手にがっつくことなど許されるわけもない。
(彼女の口から「いや」「だめ」「まって」と言われたら止まる、許可なく肝心なところに触らない。常に深雪を気持ち良くさせることを前提に)
待つと言ってすぐに手を出すことになったことに対するせめてもの償い、いや戒めだ。
つぅ、と指を体に這わせるだけでも刺激になるようで体に力が入っては体中の熱が上がり、しっとりと肌を濡らしていく。
深雪の体は非常に快感を拾うことが上手いらしい。
ただでさえ滑らかな肌の滑りが良くなり手が止まらなくなる。
だんだんと手は大胆に動くようになり、汗が溜まっている場所に行きついた。
柔らかく、薄い肌に包まれた白くて丸いその丘の麓には滴が溜まっていて、それを伸ばすように回りを縁取っていく。
申し訳程度に乗っかっている下着はできるだけそのままに、手を添えては撫でるように滑らせるのだが、掌に感じる男の身体にはない柔らかい感触に抗いがたい引力を感じられてまたも生唾を飲み込んだ。
蟀谷からも汗が流れる。
一瞬、この汗が深雪の上に垂れてしまうことで穢してしまうのではと汗を蒸発させようとしたが、しっとりと濡れた艶やかな赤い唇を見て今更か、と胸を撫でたまま唇を重ねたのは、その事実を誤魔化すためか。
自分を誤魔化そうとする意味など、読み解いた今無駄な行為だというのに、しないという選択肢が無かった。
ただ口付ける口実が欲しかったのだと気付いたのは気持ち良さにすべてを委ねそうになってからだった。
深雪の体がビクッと震えたことに慌てて手の軌道を変えた。
深雪の許可なく触れないという己に課した誓約を破りかけ敏感なそこに指が触れてしまったのだ。
乗っかっているだけの布と肉体の間に入り込んだ手がひと際繊細な箇所をかすめた瞬間の、口内のくぐもった声と引っ込められた舌、反り返り意図せず押し付けられた女体は柔らかくて理性が飛びかける。
離れた唇からはくり、と息を吸おうと動かしたタイミングだった。
無意識に浮いた腰に腕を回し、更に密着させたことで下着越しにこすれて甲高い声が上がった。
(衝動の制御など、なぜ、できるなどと思ったのだろう)
深雪以外に働くことが無いのだから鍛える機会すら少ないというのに。
今までそのほとんどが制御できていなかったくせに、一体何を驕っていたのか。
先ほどの口づけで分かった。
――自分はただ、口実が欲しかったのだ。
ひとつ回答を得ると妙に頭がすっきりした。
迷いがなくなった、とでもいうのか。
二人の間を仕切るように添えられただけの下着をずらす。
綺麗な白い乳房にちょこんと乗る桜色の粒がつん、と上向いている。ショートケーキのイチゴを連想させたが、ここにあるのはその最上級の傑作、至高の一品。
どんな極上の味か想像もつかない。
あまりの美しさに触れるのを躊躇う。躊躇うが引き寄せられることは止められない。
「美しいよ」
前を覆う物がすべて取り払われて羞恥と緊張に強張った表情さえ美しい。
「綺麗だ」
滲む汗がキラキラと光を与え白い肌を一層輝かせていた。
香水をつけていないのに漂ってくる芳しい香りは深雪自身の芳香だろう。
なぞっては体を震わせ、その度に強くなる香りと輝きでくらくらする。
深雪も徐々に追い詰められているのかちらりと視線を向ければ苦悶の表情を浮かべていた。
まだ言葉にならない堪える声に、少しずつ、ゆっくり慣れていこうな、と声を掛けるが果たして深雪に届いているか。
感じやすい体でここまで高められれば苦しかろう。
(結局俺の本性は最低で卑怯で――鬼畜なのだろう)
深雪の為と言いながら目標を達成させることしか頭にない。
選択肢を与えている風に見せて一つしか答えられないようにしているにすぎない。
待てと言われれば待つと言いながら、それを言わせる前に口を封じてしまう抜け道を用意していた時点で破綻している。
愛おしいと思うのに、一番大切にしたいと思っているのに――。
「も…おねがいっ…」
ついに決壊した。
ぽろぽろと、大粒の涙が零れ落ちるのを舌で掬い、口付けながら吸い上げて、想像以上の甘露に頬が緩む。
込み上げる歓喜が口角を吊り上げた。
「深雪、――愛してる」
今度こそできるだけ優しくしよう、と触れるだけの口づけを落しながら、――できるだけ、なんて逃げ道が初めからある時点でこれもまた破るのか、と冷めた思考が突き刺してくるが、興奮状態で痛みなど感じるはずも無く。
もう一度愛してると囁いて抱き起しベッドの中央に移動しながら引っかかっただけのブラウスを脱がしにかかるのだった。
NEXT→