妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします!分割版   作:tom200

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四葉継承編 達也ver.㉗

 

 

それから、俺は人生初めて陶酔状態で身動きが取れなくなるという経験をすることになった。

恐らくだが、これから深雪以外に誰かを抱くことになってもこれ以上のエクスタシーを得ることはできないだろう。

それほどまで強烈な記憶を刻み込まれた。

それだけ、深雪にも相当無理をさせてしまったということでもあるのだが。

初めこそ優しく、とできるだけ丁寧に触れていたつもりだ。

深雪も緩く上り詰めていっていた。だが、湿って張り付いていたシャツを脱ぎ捨てたところで深雪の視線が一点に集中し、古傷を愛おしそうになぞられた途端、スイッチが入ってしまった。

いくらペースを抑えていても深雪の我慢ももう限界だったのだろう。

堪えきれない激情に翻弄されていき、ついには嬌声を上げるようになって何度も繰り返し呼ばれた。

「お兄様、お兄様っ」と泣きながら縋られた時の背徳感は相当なもので何度呑まれそうになったことか。

途中から名を呼んでくれとお願いすると恥じらいながら恐る恐る「た、たつや、さま…」とのぞき込まれた時には意識が飛びかけた。

可愛すぎるのに妖艶さが同居する深雪を前に理性など保てるわけが無かった。

次々と見たことのない表情を浮かべる深雪に魅了されながら突き動かされて、互いに熱に浮かされ一つに溶け合ってどれくらいの時間が経ったか。

正確な体内時計を持っている自分が時間の感覚を狂わされたことに危機感を抱くが、それほどまでに深雪に溺れていたのかと思えば仕方のないことでもあると納得もした。

はぁ、はぁっ、とどちらともなく荒い吐息が漏れ、熱いのに密着する体を離すこともできずに汗を流しながら力なく抱き合って。

このまま、抱き合ったまま眠りたいという欲を、重い手を持ち上げ顔を覆って消し去ると、シーツごと深雪を持ち上げて浴室へ直行した。

シーツに包み込むでもなくただ添えただけなので裸のままの状態で移動したのと変わりのない格好になっていたが、直接触れないようにとしか頭に無かったのでそこまで気を回せなかった。

肌に触れてしまえばまた欲望に流されない自信が無かった。己が信用できなかったこその対策だった。

CADが無くても行使できる魔法だが、慎重に慎重を重ねるべきだと保険の為にと持ってきていた。

100%ミスなどありえないが、今夜は何一つ計画通りにいっていないことを考えるとそれぐらい不測の事態に備えるべきだと判断してのことだ。…正常な判断が出来ていなかったのだと、今ならわかる。

そして深雪の体内外からあらゆる体液を分解し、一呼吸を置いてから再生を掛ける。

――正直、どうなるか不安はあった。

怪我に対する痛みが何十倍にもなってフィードバックされることには慣れている。

濃縮した痛みを一瞬で受け止めるのだ。かなり苦痛を伴うもので、何度受けても痛みが鈍るようなことは無いが、それでも堪えるタイミングや逃がす呼吸法などは身に着いている。

ただし、このような――痛みだけではない場合、再生を使用したらどうなるか試したことが無い。

できることなら深雪の目を塞ぎたいところではあったが、両手がふさがったままだから仕方ない、と覚悟を決めた。…使い終わったCADを置けばよかっただけなのだが、本当に頭が働かない状況というのは判断力が鈍化するようで、そんな簡単なことにも気づけなかった。

覚悟を決め、引き金に指をかけて魔法を行使し――拍子抜けした。

確かにいたるところに痛みが来た。全身の引きつる痛みは力んだことによる筋肉痛のようなものだろう。首や胸の突き刺すような痛みはキスマークか。

喉にも痛みがあることから喉の涸れも回復できたのかもしれないが――来るかもしれないと警戒していた濃縮された快感も、処女膜を突き破った痛みも無かった。

快感については痛みではない感覚的なモノなのでフィードバックしなかったのだろう。処女膜に至っては、恐らく俺に女性器が無いから痛む箇所が無く修復だけして不発に終わったのかもしれない。

ただ、腰の痛みはかなりのものだった。相当負担がかかっていたのだろう。当然か。こんな細くて小さな体で俺を受け入れたのだ。負担がかかっていないわけが無かった。

隅々まで深雪の体を調べても異常は見当たらず、いたるところに付けてしまったキスマークも消えている。

こちらは消えてしまったことが惜しいと思ったが、残した鬱血痕を見た水波からの非難を思えば消した方が穏やかに過ごせるだろう。

問題ないことを一通り確認したら今度は洗浄だ。

持っていたCADを浴室内から出し、お湯の温度を確かめてから深雪の体を清めるため洗い流す。

深雪が困るだろうからと一応視界に入らないよう腰にタオルを巻いたのだが、正面で向かい合いながらしなければよかったのだと後に気付くことになる。

分解をしたのだから汚れは落ちたも同然なのだが、これは気分の問題だ。

 

「お前は疲れているのだから、全て任せなさい」

 

以前から何となく気付いていたが、命令口調になると深雪はすんなり言うことを聞く。

それは年末叔母上が言っていた、深雪が俺の為に作られたからなのか、なんて非現実的な考えも過ったが、魔法なんて百年前には非現実的だったものが実在し、兄妹で子供を作っても問題ない肉体をつくっている時点でこれくらいできてしまうのかもしれない。

今後、要検証だな、と思いながらこくんと頷き体の力を抜いたのを確認してから動く。

たっぷりの泡を付けて深雪の肌に滑らせるのだが、再生はすべてをリセットする魔法ではない。体から痛みがなくなったからと言って、経験が消えるわけではないのだ。

初めは何ともなさそうだったが、次第に息が上がりだし、頬も上気して瞳も潤みだして、その瞳の奥には怪しい揺らめきが燻ぶっているのが見て取れた。

つい先ほどの熱が再燃してしまったのだとすぐに分かった。

洗う手だけでなく、俺の視線にも焦がされたのかもしれない。…俺だって、切り替えがうまくいかず先ほどまでの乱れた深雪の美しい様を思い出してはこの白い肌をそういう目で見てしまっていたのだから。

深雪の目は向けられていなかったが、腰のタオルはすでに肝心なところが隠れていなかった。

それでもこれ以上無理は、と体を洗い進めるのだが、深雪の声が次第に浴室に響くようになり、息遣いも荒くなって互いに我慢の限界が来た。

ぶつかる視線にはもうお互いを欲する色しか見えない。

この場面で堪える理由が見当たらなかった。

泡で濡れた深雪の体は滑りが良すぎて掴むのが難しくもどかしさと浴室の反響音が燃料となりすぐに燃え上がった。

…かろうじて俺ができたのは最後、中で果てなかったことくらいだ。

 

(理性とは何と脆いものだろう)

 

だが、もう一度破ってしまった処女膜については一度目のように痛みに苦しむということは無かったようだ。

こちらは慣れたというよりも一度快感を覚えたことによりそちらに意識がいったことで痛みを感じる余裕が無かったのだろう。痛みを感じることが無くていいことのように思うが、そのせいで止まるタイミングを失ったことも事実。果たして深雪にとってどちらが良かったのか。

終わった後、すぐに再生を使おうとしたのだが、深雪に止められた。

 

「…痛みがまったく無くなってしまうのは、嫌です。…この痛みはお兄様が私にくださったもの。だから、刻み付けて置いておきたいのです」

 

………断言するが、俺を兄として愛しているだけならきっとそんなことは言わないはずだ。

今すぐにでも自覚してもらいたいところではあるが、俺はそうか、と返すだけで精いっぱいだった。

でないとこのままここでもう一度深雪を抱いて善がらせ、抱きつぶしてしまいそうだったから。

すぐに自分の体も洗い流し、備えて置いてあった未開封の予備の下着とパジャマを二人分取り出して着替えた後、深雪の体を再度抱き上げ自室に向かった。

ゲストルームには戻れないし、だからといって一人で寝るつもりも無かった。

 

「何もしない。だから安心して眠るといい」

 

そう言ってベッドに横たえ、その横に滑り込むように入って抱き寄せた。

また緊張するように体を強張らせる深雪に、大丈夫だ、と言い聞かせて髪を撫でつける。

 

「今日はもう眠りなさい。明日またゆっくり話そう」

 

おやすみ、と言えば、おやすみなさぃ、と小さな声で返して俺の胸に顔を埋めた。

可愛い反応に、今度はとん、とん、と背を叩いて寝かしつける。

寝つきの良い深雪だが、今夜ばかりはすぐに眠るということは無かった。

つい先ほどまで体を重ねていたのだ、それも仕方ないだろう。

だが、今度こそ何もするつもりはないので意識を落して先に目を閉じる。

これに安心して、深雪もすぐに眠ってくれればいいのだが。

結局30分ほどしてすぅすぅ、と寝息を立て始めた妹の安心した寝顔を見て、その額に口付けてもう一度おやすみと呟いてから完全に意識をシャットダウンした。

 

 

――

 

 

いつもより早い時間に目が覚めた。

それは腕の中で身じろぎした気配を感じたから。

深雪はあの後眠りに落ちてここまで起きることなく深く眠って腕の中に納まっていてくれたらしい。

 

(なんて愛おしいのだろう)

 

この温もりがたまらなく愛おしくて、ずっとここに閉じ込めておきたい。

 

――鳥籠の中で鳥を愛でているみたい――

 

ふいに呼び起された記憶に、腕に籠めそうになった力を抜く。

別に檻の中に閉じ込めておきたいわけではない。

深雪の自由を奪い、自分に縛り付けるというのは望んでいない。

深雪は自由であっていいのだ。

生き生きとした彼女を見るのは昔から好きなことだった。

昔と違うことと言えば、俺の下へ必ず帰ってきてくれるようになったことか。

どこかへ行っても必ず、俺の下に戻ってきてくれる。

 

(だから、大丈夫)

 

眠っている間、深雪は揺すっても起きないので遠慮なく乱れた髪を整えるように撫でる。

安心しきった寝顔は最近大人びてきた表情を昔に戻したようにあどけなく、可愛らしい。

可愛い、可愛い俺の妹。

そして、可愛い上に美しく、数時間前のようなすべての男を虜にする妖艶さも持ち合わせた婚約者がこの腕の中で眠ってくれているこの幸福をどう伝えたらいいだろうか。

自然と上がる口角に、きっと人に見せられない、だらしのない顔をしているのだろうと予想するが、今この時くらいは良いだろう。

見飽きることのない美貌をじっくりと眺めながら、シルクのような手触りの艶やかな黒髪を延々と撫でつけて過ごす朝。

泣きたくなるほどの幸福とは、こういうことを言うのかもしれない。

胸に溢れる様々な感情が行き場を失って体からも溢れ出しそうだ。

深雪の愛らしい寝顔がぼやけるのを、瞼を閉じてリセットしようとするのだが、一粒零れたところで収まらないらしく、何度か繰り返してようやく戻った。

魔法を使えばどうにかできただろうが、目の前で魔法を使われれば深雪も目覚めてしまうかもしれない。

大して流れなかったので赤くなることも無いだろう。

そのまま温もりを抱きしめ、撫でながら幸せに浸り続けた

流れ落ちた水分がほとんどシーツに吸い取られ、残る分も乾いた頃、腕の中に囚われている眠れるお姫様が瞼を震わせる。

焦点の結ばれていない瞳はまだ夢を追っているのかわずかに左右にさ迷う。

きゅっと握られた服に、探していたのは俺だろうか、と考えるのは流石に都合が良すぎるか。

だが、そんな夢見がちになるほど有頂天の為、調子に乗って口づけを落す。

もちろん、眠っている時より強く抱き寄せることも忘れない。

ぴたりとくっつき唇以外にキスをしていると、徐々に覚醒してきた深雪が驚きで目を見開き、頬に朱を走らせるが、視線は惑っても逃げ出す様子は見せなかった。

恥ずかしがってはいるし、びくびくと怯えてもいるようだが、今朝は何もするつもりはない。

…つもりはなかったが、こう、そんな可愛い反応をされると欲が刺激されてしまうな。

落ち着け、と深雪の髪を撫で、キスを落すことだけに専念する。

この「落ち着け」の言葉は深雪に対してではなく自分に対してだ。何かに集中すると意識を逸らすことができるのは以前と変わらない。

深雪の顔は小さいのですぐにマーキングが終わってしまいそうだ、と考えているうちに、深雪の顔色が赤から白へ、そして青く染まっていくのが面白くて声を掛けた。

 

「朝から百面相だな。赤くなったり青くなったり忙しそうだ」

「……お兄様は機嫌がよろしいようですね」

 

恨めしそうな声に、ついに笑いが漏れる。

 

「もちろん。今は最高にいい気分だ」

 

こんな可愛い妹と幸せな朝を迎えられてどうして喜ばずにいられるか。

何もするわけではないが、ちょっとした悪戯くらいなら許されるだろうか、と背中に手を滑らせると昨夜の余韻も残っているのかただくすぐったいというだけではない反応を見せる。

 

「お、お兄様!」

 

焦る深雪の声に、俺もこの辺で止めておかないと、とポンポンと軽く叩く手に変える。

 

「そんなに怯えなくていい。お前の体が大事だからな。これ以上は控えるつもりだ」

 

俺には体の痛みは取り除くことはできても疲労感は残ったまま。取り除くことはできない。

それに、その後の風呂場でも無理をさせてしまったのだ。これ以上の負担などかけさせるわけにはいかない。

だが、俺は相当信用を失ったらしい。

深雪の警戒はすぐに解けなかった。

恨めし気な視線に苦笑してしまうのは、深雪が本気で嫌がっているわけではないからだ。

 

「そこまで警戒しなくていい、と言っても難しいだろうな。すまなかった。俺もだいぶ余裕のない真似をした」

 

揶揄うのをやめて真面目に謝罪する。

全面的に悪いのが自分だと十分自覚していた。

だが、深雪が気になったのはそこではなかった。

 

「…信じられません。お兄様に余裕がないだなんて」

「それは誤解だ。俺にそんな余裕はない。特にお前に関してだけは」

 

余裕なんて全くなかった。もしそう見えたのだとしたらそれは兄としての矜持が取り繕っていただけに過ぎない。

 

「深雪のことに関して余裕なんてあるわけがない。――お前が俺の傷跡をなぞる様に触れた時、血が沸騰するという慣用句が浮かんだほどだ」

 

深雪が俺の体に目を奪われることは以前にもあったが、まさかこのような場面でも繰り返されるとは思わなかった。

直前まで追い詰められて息も絶え絶えに乱れていたのに、傷跡が目に入った瞬間息を止め、手を伸ばしてきたのだ。

それも、見たことのない恍惚とした表情をして。

あれで自身のブレーキは壊れたといってもいい。

 

「こんな傷だらけであっても、厭うことなく触れてくれるお前が愛おしくてたまらなかった」

 

醜い傷を、深雪はためらいなく撫でる。

痛まないとわかっていても、その傷を癒そうとするように、何度も何度も。

 

「お兄様を厭うことなど、どうしてできましょうか。これはお兄様が努力した証です。生きることを諦めなかった、襲い来るモノに抗おうとした結果です。それをどうして、愛おしまずにいられるというのでしょうか」

 

改めて愛おしい、と語りかける瞳を潤ませながらパジャマ越しに手を添えられ、なぞるように動くその手をそっと掴む。

この、少し力を籠めたら手折れそうな細い手にどれだけ癒されてきただろう。

 

 

「俺は、生まれながらにすべてを破壊できるだけの力を持って生まれた」

「生後すぐに魔法が解析され、世界を破壊する力を秘めているとの可能性が示された」

「過ぎる力は身を亡ぼす。そんなものを身内に抱えては四葉も同じ末路を辿ると危惧することはおかしなことではなかった」

「だからこそ徹底的に兵器として力を制御させようと、心を無くし暴発させないことで生かそうとした先代の決断は、存在自体を危惧していた連中にとっては疑念を抱くものだっただろう。どんな兵器でも暴発が全くないわけではないことを彼らはよく知っていたのだから」

「その疑念を払うためにも、彼らに身内殺しをさせないためにも俺は徹底的に扱かれた」

 

思いついたままに口を開いていた。

淡々と、整理をするように言葉を紡いでいたら深雪の表情が曇っていく。

そんなつもりではなかったのに。お前を悲しませたいわけではないんだ。

 

(俺は、ただ――)

 

「――、ああ、すまない。お前に辛い思いをさせたいんじゃないんだ。俺のために悲しませて悪いと思う度に喜んでしまう俺を許してほしい。お前に想ってもらうだけで、救われるんだ」

「何が言いたかったかと言うと、これまでの俺の人生を客観的に見れば絶望を抱くほど過酷なモノと呼べただろう。だがな、俺はそれを逆転させるだけの強力な切り札があった」

 

「それが、お前だ、深雪」

 

俺はただ、お前のおかげで救われたのだと伝えたかっただけなんだ。

 

 

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