妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします!分割版 作:tom200
「そういうことで、もうよろしいかしら?」
これ以上は付き合いきれない、と深雪が話を切り上げた時だった。
今まで大して動きを見せなかった雫が前に出た。
婚約の理由を聞きたい、とのことだが真実を話せば事態はややこしくなるのは明白。
「家庭の事情だ」
「つまり、無理やり婚約させられたってこと?」
強制的ではあったな。それも、生まれた時からすでに計画されていたという。
この計画の為だけに一体どれだけの労力と資金がかかったのか知らないが、途方もない計画だ。
今となっては断る理由などないが、もし兄妹としてしか関係を築いていなかったとしたら、俺は何としてでも四葉を抜け出す算段を考えていたかもしれない。
妹の幸せに、兄との結婚など入るわけがないのだから。
「当主のご判断ですので」
「四葉の決定に、ケチをつけたところで得などないと思うが」
とはいえ俺にとっては千載一遇のチャンス、これ以上この件に触れてほしくはなかった。
彼らにまで邪魔をされることは無いとどこかで思っていたのだが、それが甘い考えだったというのなら俺は彼らを――
「――恋が、損得で簡単に割り切れると思わないでください!」
思考を断ち切ったのはほのかの悲鳴にも似た悲痛な叫びだった。
周囲の視線が彼女に向かう。俺でさえ気づく彼女の恋心は生徒間でも有名であった。
だからこの数日間、彼女に向けられた視線は誰よりも居心地の悪いものだっただろう。
その不満ごと一気に爆発させたかのような声だった。
だが、深雪はそれをほのか個人の事情とバッサリと切り捨て、更に俺にこの場に残ってけじめを付けろと言って水波を伴い去ろうとするが、ほのかは俺にではなく深雪に食って掛かる。
「深雪!私には貴女に聞かなきゃならないことがある!貴女は達也さんのことどう思っているの!?」
この問いかけに深雪は次期当主の司波深雪の顔をして答えた。
「将来結婚するお相手。――これでよろしいかしら」
「よ、よくない!それは結果でしょ。どう思っているかを訊きたいの!」
「具体的に好きか嫌いか、はっきり言って」
まるで望んではいないように聞こえる言葉に傷ついてもいいはずなのだが、ぞくり、と身体が震えて高揚しそうになるのは何だろうな。
答えるだけ答えて去ろうとする深雪だったが、雫からの援護射撃もあり引き留めることには成功した。
深雪は気分を害するも突き放すのは言葉だけ。
「それこそプライベートなことなのでお答えする謂れは無いと思うのですが?」
「じゃあ、ずるい言い方をする。ずっと騙されて利用されてきたんだから、それくらい教えて」
雫の踏み込んだ言葉に、深雪の心が揺れたのを感じた。
一体何を思ったのか、それは俺にはわからない。だがなんとなく喜びに震えたように感じられた。
深雪にとって雫は特別な友人のようだった。だからだろうか。彼女の言葉に揺れ動いた事実が面白くない。
「お慕いしております――これで解決かしら」
「それは、お兄さんとしてじゃないの?」
その言葉は俺の心にあった棘を深く押し込んだ。
深雪にとって俺はまだ、兄でしかないのかもしれない、と。
好かれていることはわかる。愛されていることも十分理解している。
日々彼女に俺を求める色が宿りだしていることがわかっても、まだ決定打となる言葉を貰ってはいない。
「――達也様は従兄であり、婚約者です」
温度の無い声が、先ほどまでは平気であったのに心を乱す。
「でも深雪はずっと兄だと思ってた。…深雪も、達也さんも知らなかったんでしょ」
誰よりも兄妹であることがわかっていて婚約できるなんて未来を知るわけがない。
「確かに、俺たちは兄妹として育った過去は変えられないな」
そして兄妹という事実は不変、生涯繋がったままだ。
「深雪はそれでいいの?」
それは深雪を案ずる言葉。
深雪はしばし黙った後、単刀直入に彼らの目的を訊ね、その真意を知る。
「深雪、アンタ達也くんに騙されて婚約させられてんじゃないかってこと」
「………意味が、分からないのですけれど」
大丈夫なの?と心配だと声を掛けられ、予想外の返答を食らった深雪は戸惑っているようだ。
だが、続けられた言葉に、年末の食事会が過る。
「ずっと達也くんが誰と恋をするのか楽しそうに見守っていたアンタのことだもの。どうせその相手が自分になるだなんて思っても無かったんでしょ」
――そんなことを思っていたなど知らなかった。
年末の晩餐会でも勝成さんとの婚約を考えていたこともそうだが、深雪が如何に俺の幸せを願って四葉から出すためだったとしても、深雪にとって対象外と言われているようで気分は良くない。
普通に考えて兄は恋愛対象外であることくらいわかっている上に、そもそも俺の願いを知らず、俺自身も自覚していなかったのだから、外で幸せな家庭を築くことが俺に幸せにつながると考えても無理もないことなのだろうが。
…その辺りあとでしっかり話し合う必要がありそうだな。
「深雪が、達也さんのことを大事に思っていたことは知ってる。いつだってお兄さんのことを第一に考えてたのも。…私はずっと見てたから」
わざわざ兄と言い直す雫の発言も引っかりを覚えるが、何よりもずっと見ていたとの言葉の方が重要に思えた。
深雪にとっても特別な親友のように、雫もほのかとはまたベクトルの違う友情を抱いていたようだ。…それは本当にただの友情だろうかと疑いたくなるのだが。
「その見ていたものは虚像だった、と理解されたらいかがです?」
今までが演技だったのだと突き放すように言う深雪だが、これに対し即座に否定とその理由をそれぞれ述べられていた。
「「「「「「それは無理」だ」です」よ」だよ」」
「深雪さん、いつもあんなに楽しそうだったじゃないですか。幸せだって、言って、笑っていたじゃないですか」
「あんな嬉しそうにされて嘘でしたー、なんて、信じられるわけないでしょ」
「たとえ深雪さんが演技してたんだとしても、達也はそんなに器用なやつじゃねぇよ」
「興味の無いことには取り繕うことさえしない達也が、深雪さんのことになると表情が豊かになるのは皆が知ってることだから」
「達也さんが深雪を大事にしていたように、深雪も大事にしていたの、ずっと見てきた。苦しかったけど、親友と好きな人が幸せそうだったから、嫌って言えなかった」
誰もが確信をもってありえないと断ずる。
しかし、根拠に自分を上げられるのは複雑だが、俺にそんな器用さが無いのは事実だ。
「――だけど、深雪の言うことも嘘じゃないんだよね」
この言葉に、今まで堪えていた深雪がピクリと反応した。
「深雪はこんな時でも嘘をついてない。誠実であろうと真実だけをしゃべる。…そんなところも好きだから、秘密にしてたけど、約束を破るよ。
――お兄様、なんでしょ。深雪はあの日、教えてくれた。いつもそう呼んでるって」
『あの日』がいつのことを指しているのかを知らないが、兄さんと呼ぶことを徹底していた深雪にとってそれは秘密の告白に他ならない。
そんな秘密の約束を交わすほどの間柄だったことに、こんな時だとわかっていても雫が羨ましく思う。
俺は兄であって、父親代わりになることはできても、
イレギュラーで婚約者となり、いずれ恋人に成れたとしても、
――けして友にはなれない。
俺にとって深雪は庇護する対象であり、対等に並び立つことは無いのだ。
重大な秘密を打ち明ける特別な関係。
そんなもの、初めから共有しているのだからわざわざ打ち明けられることではないとわかっていても、それでも雫に羨望を、そして嫉妬心を抱くのを止められない。
「あの時は言葉の意味がさっぱり分からなかった。でも、深雪が達也さんのために頑張っていることだけは伝わってた。だから今回の通達の内容を聞いて、真っ先に深雪が言いたかったのはこのことだったんだって繋がった。
――ねえ、教えて。深雪の努力は報われた?達也さんは救われたの?」
その秘密を打ち明けられたのがいつのことで、何を話したのかわからない。
最近の話ではないのだろうことは分かる。
そんなに前から雫と――と考えたのを切り替えて今導き出すべきことはそんな頃から深雪は布石を打っていたということ。
雫の口が堅いことを見込んで秘密の保持者に選んでいた、と。
(見ていなくても伝わってくる。深雪の心の揺らぎが)
自身の計画が思い通りにいっていないから答えに詰まっているのか。はたまた彼女にとってまだ俺は救われていないことになっているのか。
(そんなこと、あるはずないのにな)
深雪にははっきり言わないと伝わらないのだろう。
「――雫が深雪から何を聞いたかは知らないが、俺はとっくに救われている」
息を詰めて振り向く深雪と視線が合った。
先ほどよりも大きく反応してもらえたことが些細なことだが嬉しい。
「深雪が努力をしてくれたから、俺を気にかけてくれていたから、俺は今十分すぎるほど幸せだ。これ以上望むことなどない最良の結果だ」
とっくの昔に救われている。
深雪がいてくれたからこそ俺は生きてこられ、深雪が寄り添ってくれたから満ち足りていた。
そしてこれからもずっと一緒にいられる未来が開いた。
現段階でこれ以上幸せなことがあるだろうか。
「…そりゃあ、達也にとったら最良の結果だろうさ」
「最愛の妹が実は兄妹じゃなくて従兄妹で、その上自分の出自上婚約を許される立場だった、なんて出来過ぎでしょ」
「夏の同人誌の内容そのままではないですか」
「シナリオをそのまま使ったんじゃないだろうね」
深雪と見つめ合い、このままキスくらいできるのではと手を伸ばそうとする前に邪魔が入った。
だが、なるほど。ようやく合点がいった。
彼らが何を危惧し、糾弾しに来たのかを。
彼らは深雪が四葉の思惑に嵌められて思ってもいなかった婚約をさせられ担ぎ上げられているのではないか、と心配していたのだ。
そしてそこに元から恋心を抱いていた俺が便乗しているのではないかという疑いをかけて。
(すごいな。思い描かれているものに違いはあるだろうが大枠は合っている)
ただ、そこに俺たちがそこまで不満を抱いていないというだけ。
深雪の描いたシナリオは崩れたが、一番の目標達成には一気に近づいたのだから。
(実質目標などとっくに達成され俺はずっと幸せだった)
そこに一生添い遂げる約束を、大手を振って交わすことができるようになったことが追加されたことで、次の目標まであと数年で達成できる予定だ。
(どんな困難が待ち受けようが、必ず守り通して見せる)
だからまずは、この状況を治めよう。
深雪の守りたいものもすべて、守ろう。
「皆がやたらと深雪から聞き出そうとしていたのは、深雪を心配して、ということだな」
俺には深雪のように演技はできない。だが、話の誘導くらいはできる。
「つまり皆はこう言いたいわけだ。深雪が俺に騙されて本人の意思に関係なく無理やり婚約を結ばされているんじゃないか、と。俺が裏で秋の件で褒賞として深雪との婚約を勝ち取ったのではないか、と。それを当主の命だということで仕方なく、従っているふりをしている。そういうことだろう?」
「達也くんの普段の策略っぷりを見てるとそれくらいやりそうってね」
俺の策略くらいで深雪と婚約できるならどれほど楽な一族だろうか。
だが、そう思わせておくことで四葉を侮ってもらえるなら黙っておくか。
恐怖が油断で薄まることは、以前深雪と見たホラー映画で学んだ。あの時の深雪は一つ一つの演出に怯えて可愛らしかった。
「…無理やりも何も、何度も言いますが達也様との婚約は四葉家当主の意向です」
次期当主の婚約に本人の意思が尊重されるというのは珍しいのではないだろうか。大抵家の意向が絡むはずだ、と深雪は考えているのだろうが、今話しているのはそこではない。
どう伝えたらいいんだろうな、と悩む間はなかった。
「あのね、深雪。落ち着いて聞きなさい。達也くんはね、重度のシスコンだと思い込んでいたようだけれど、ずーっと、深雪のことが好きだったのよ」
俺が如何に深雪を好きで、深雪の意思を無視してでも策略を仕掛けそうなくらい執着していると見られていた、と。そういうことだろう。
流石に俺も師匠、風間さんに続き三回目ともなれば分析もできるというもの。
どうやら自覚していなかっただけで周知の事実だったようだ。
エリカの指摘に、深雪は言葉を失い固まってしまっている。
先ほどまでの冷え切った空気も和らぎ、いつもの雰囲気が戻ってきた。
「やっぱり、分かってなかった」
「結構あからさまでしたよね」
「隠す気なかったよなー」
「俺たちは兄妹だぞ、ってどの口が言ってるのかと思ってたよ」
「…私は、その言葉だけに縋ってたんだけど、どう見ても達也さん、深雪のことしか見てなかったから…」
「深雪にはいくら注意しても兄さんだから、で流された」
「…まさかここでもそう思われていたとはな」
師匠でさえはっきりと言わなかったことを彼らは遠慮なしに暴露した。
見透かされていたことを二回も正面切って言われれば近しい彼らにも、と可能性は考えていたが、だからといって具体的に指摘されて冷静でいられない。
そんなにあからさまだっただろうか、と複雑な心境だ。
「…達也様?」
深雪が心配そうにのぞき込む。今この場で俺の心配してくれるのは深雪だけだ。
「一応ここでも弁明させてもらうが、俺が深雪に対しての想いを認識したのは年明けの数時間前だ」
この言葉にエリカたちは沈黙し、鳥の声が聞こえるほど静かな時間が流れた。
ここにはほぼ全校生徒が揃っているのに衣擦れの音さえ聞こえない。
いい天気だな、と空を見上げると、絶叫が響き現実に引き戻された。
全員が信じられないような顔をしているが、心境はこちらも同じだ。信じたくなかった。そんなに俺の気持ちとやらはバレバレだったのだろうか。
「俺は隠すも何も自覚さえしていなかった」
もう一度静寂が訪れたが、今度は先ほどより短かった。
はあああ!?との叫び声が上がるが、周囲の生徒たちのどよめきもあって一度目よりも小さく聞こえた。
「嘘だろう!?」
「自覚、してなかったって、あれだけ独占欲をむき出しにしていたじゃないか!!」
「仕方ないだろう。俺たちは兄妹として育ったんだ。兄が妹を、なんて普通じゃないだろう」
「「達也が普通を語るな!!」」
レオと幹比古が非難の視線で訴えてくるが、常識を説いたら怒られた。
人は正論をぶつけられると逆ギレをするというが、それか?…何かが違う気がする。
「え?嘘ですよね、本当に自覚なかったんですか?」
「じゃあ、どうやって婚約にこぎつけたって言うのよ」
「何度も言っているが、当主の意向だ」
「…息子の恋を叶えてあげたいって親心?」
「そんな甘いことを考える家だと思うか?」
四葉が子供の恋を叶えるためだけに戸籍改竄まで協力すると思うか?
そんな家、どこを探してもないだろう。
「……じゃあなんだってそんな達也くんに有利なご都合主義が起こってんのよ」
「そんなこと聞ける立場でもないから知りようもない」
全てが仕組まれた通り、のはずがない。
いくらあの人の計画通り遺伝子操作ができたとしても、戸籍が改竄できても俺たちの感情までがあの人の思い通りになっているなど、あり得ない。
特に、俺の感情については母深夜の魔法の影響により他の干渉を受け付けるはずがないのだから。
唯一残された兄妹愛が変異することなども本来ありえなかったはずなのだ。
それしか残されていなかったはずで、それ以上になるなどありえないことだった。
「深雪、大丈夫…?」
雫の指摘に全員はっとなって深雪を見るが、もう、彼女の仮面は剥がれ落ちているところだった。
「なにが、なにやら…。皆さんは、私たちに聞きたいことがおありだったのではないですか?」
「ええ、そうよ。でも聞きたいことっていうか、正確には文句ね。――深雪をだまくらかして手に入れてゴールしようとしてるんじゃないわよね!って達也くんに」
「…私を、糾弾するつもりでは…?」
深雪の計画では自身を糾弾させて、と入学時の二番煎じを演じる予定だったのだろう。
だが、その目論見は大いにはずれだったようだ。
「なんでよ。そもそも深雪を糾弾なんてする必要ないもの」
「どうしてです?私はあなたたちを騙していたのですよ?文句の一つや二つくらいは覚悟していたのですが」
全く。深雪は本当に優しすぎる。
人はこれを甘いというのだろうが、そこが彼女の愛おしい所だ。
そしてエリカは深雪の考えていることなど見破っていたこと、婚約した事情は深く知ったらまずそうだから聞かないと言い、深雪もそれがいいと肯定した。
こういうところの危機察知能力の高さは一級だと感心する。
「四葉四葉って。いい?私たちの友人は司波達也と司波深雪であって、四葉の次期当主や当主の子息なんかじゃないの」
「肩書を無視できる年齢はもう過ぎましたでしょう?」
「年齢?知ったこっちゃないわね。私はしたいようにするわ。利用できるものは何でも利用するし、都合の良いように見ない振りもする」
「そんな勝手が許されない世界だと知っていて、そのような戯言を?」
「もし災難が降りかかるなら自分で払うまで。私はそうしてきたし、これからもそうするつもり。――だから、いいのよ」
そう言って、エリカは一歩、また一歩と深雪に近づいた。
背後で水波が動きかけたが、それを制す。
「アンタが急に四葉家次期当主らしく振舞ってるのだって、ウチの生徒を守るためでしょ、四葉に怯えて可哀想な一般生徒ってことにしておけば無駄に四葉を恐れている周囲に同情を向けられて四葉関係者のように見られないようにするため。
前の状態じゃ、慕っているように見えて四葉の傘下に入ろうとしているように見えるから周囲から異端視されることを危惧したんでしょうけど」
「想像力が豊かですこと。妄想も大概になさったらいかが?それは勝手な思い込みというものです」
再度被り直した仮面は罅だらけで脆かった。
「演技だって根拠を教えましょーか?――達也くんよ」
「……どういうことです?」
「だって達也くんが、深雪が傷ついてるのを守ろうとしないなんておかしいもの」
「私は、傷ついてなんか――」
深雪がここで初めて嘘を吐こうとして言葉を詰まらせた。
いや、認めたくないのだ。俺にだって傷ついたなんて言わなかった。――大丈夫、計画通りだ、と頑なに傷を見せようとはしなかった。
ただ、疲弊していたことは隠さないでいてくれたので素直に甘えてくれただけ心を許してくれていたのだが、悲しみだけは見せてもらえなかった。
傷ついたと認めれば、こうして立っていられなかったのかもしれない。
「深雪が達也くんを避けることはできても、達也くんが深雪を無視することなんてできない。ましてや、深雪が孤立していることを静観しているなんて、まるで入学したての時のように、深雪が一人で奮闘しているのを応援しているって考えるのが自然じゃない」
違いない。
俺に深雪を無視することなどできるはずも無い。
それから美月、雫、ほのかも参加して深雪を包囲していく。
なぜ、クリスマスに手紙を渡したか。
なぜ、四葉と発表されて態度を変えたのか。
四葉の魔法による影響下にないことの証明まで小さな逃げ道も潰していく。
「四葉は恐ろしいわ。私たちはその世代じゃないから実際に怖さを知っているわけじゃないけど、親の世代がビビってるのは知ってるし、警戒しているのも知ってる。何をしでかすかわからない、って。アンタッチャブルなんて呼んで。魔法師と国を守る十師族に名を連ねていながらその両方から恐れられている、なんてどう考えても異常だもの。
だけどね、司波深雪を知っている私たちにあなたを恐れる理由は無いの」
「貴方達が見ていたものが虚像であっても、ですか」
先ほど否定されたことを忘れたわけではないのだろうが、もう気力が尽きたのだろう。
エリカの間合いが深雪を捉えた。
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