妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします!分割版 作:tom200
深雪視点
そこからは
猫だましはタネがわかれば対策立てられるからね。
今度こそ力でごり押し!これぞ深雪様!!っという感じで周囲を驚かせつつ快勝。
明日の本戦に全員駒を進めた。
その日の夕食の席でお兄様は女子から囲まれ質問攻めにあっていた。
お兄様のおかげで勝てたっていうのは誰の目から見ても明白だったから。
いいね、ちやほやされるお兄様見るのは。素敵なハーレムを築かれてますね、至福。
「これが後方彼女面?」
「雫、どこでそんな言葉を…?違うからね」
恐ろしい。一体誰がそんな言葉を雫ちゃんに教えたんだ。
「雫はあの輪に入らないの?」
「一緒にもみくちゃにされるのは嫌」
避難してきたんだ。ほのかちゃんは…お兄様の横キープしてますね流石です。
それより問題は、
「男子はまずいみたいだね」
「皆ももう少し声を抑えられたらいいんだけど…」
女子の成績は予想していたよりも高く、男子は思ったより成績が振るわなかったこともあって彼らの頭上には暗雲が漂っている。
これはフォローが必要なのでは、と立ち上がろうとしたけれど十文字先輩がこちらに気付いて首を振った。
先輩がフォローを入れるのかと思ったが、それよりも先に森崎くんが爆発して飛び出して行ってしまった。
…発破掛けです?ちょっと谷に突き落とすにも、この方法だとお兄様の印象が悪くなってしまうのですが…男子には男子のやり方がある?そうですか。口出し気を付けます。
「深雪って意外と周囲を見てるんだ」
「…私そんなに視野狭そう?」
「そういうわけじゃないけど、他に目がいかないのかと思ってた」
他に、とはお兄様にしか目が向いてないと思われてます?原作の深雪ちゃんならそうだっただろうけど、私もそう見えたってことはもしやお兄様に依存しているように見られてるのかしら?
そう思ったけど違うらしい。
「こっちの勝手な想像、かな。誰にでも優しいけどその時だけ、みたいな」
「それは…随分薄情な人ね」
「たぶん神格化してたんだと思う。殿上人?」
「……そんな風に思われてたの?」
「だって同じ人間に見えなかった」
ぐさっと言葉が刺さります。
悪気はないんだよね。わかっているけど。そうだよね。深雪ちゃん一人一線を画してるとか言いたいんだよね。
「深雪と友達になれてよかった」
「雫…。私もよ」
「好きだよ」
唐突な真顔の告白。やだ。きゅんとしちゃう。
「私からはちゃんと言えてなかったから」
「伝わっていたわ」
「でも言葉にしたかったから」
どうしよう。私の友達こんなに可愛い。抱きしめていい?いいよね⁇
「あのね、雫――」
「深雪」
「あ…どうしたの?」
ハグしていい?と聞こうとしたらお兄様がやってきた。どうやってあの包囲網から脱出を?
いえそれよりもなんだろう?
ちょっと怖い雰囲気?緊張感があるような。
「あとで話があるから部屋に来てくれるか?」
「わかった」
もしや無頭竜に進展あったのか。
とにかくこの後、部屋にお邪魔することが決まった。
夕食も終わり、明日は決勝ということもありすぐにお開きとなった。
いったん部屋に戻るかとも考えたが、用件は早めに済ませた方がいいとお兄様と共に部屋に向かった。
誰もいない、一人部屋なのに広さのある部屋は二人でも広すぎるほどだった。
どこに座るべきかと見回すと背後からお兄様に抱きしめられる。
「お、兄様?」
「ああ、深雪だ…」
抱きしめて、と言うより抱き込んで、という感じだ。
しかも溜息まで漏らされて何やらとってもお疲れの様子。ってそうだよねあんなにたくさん調整して作戦立ててってしてたら疲れるよ。
それにどこから狙われるかわからないから、常に気を張っていなきゃだもの。
「お疲れ様です、お兄様」
しかし悲しいかな。向かい合っていないので抱き返してあげられない。腕を撫でることと手を重ねることしかできない。
温かくて大きな手だ。この手に幾度となく助けられてきた。
「いつもありがとうございます」
「…それくらいなんともないさ」
なんてことないように言うけれど、お兄様でなければできないことだらけだ。
「見ていてくださいましたか?」
「もちろん。あの基礎中の基礎の振動系魔法で氷柱を崩すなんて前代未聞だと騒がれていたよ」
画面にどんな魔法が使われてるか解析が映りますからね。
まさかあの猫だましが魔法なんて見ただけでは気づきにくいでしょう。いくら魔法の大会とはいえCADに一切触れてなかったから。
「だが皆そんなことよりも深雪の美しさに圧倒されていた。もちろん俺もね」
「…お兄様ったら」
それ以外なんと返せばいいの?身動きもできないし、お兄様の熱を感じる以外何もできない状態です。当然逃げられるわけもない。耳元で囁かないでほしい。切実に。
自分の良い声をご存じないのですか?
「自慢の妹なのに、こんなに人に見せびらかしてしまうと盗まれてしまいそうで怖くなるよ」
「まあ。お兄様は私が攫われるのを、指を咥えて見ているだけではないのでしょう?」
「ああ。誰にも奪わせやしない」
ぎゅっと、盗まれないように強く抱きしめるお兄様だけど、落ち着いてください。ここには怪盗も泥棒もいませんよー。
「私も簡単には奪われませんから。安心してください」
更にぎゅっと強い力で抱きしめられた。
まだ上がありますか!?内臓が!さっき食べたものが大変なことになっちゃうのでそれ以上は勘弁を!
っていうか信頼無いですね。そんなに簡単に攫われそうですか?
「四月はついていっただろう?」
…信頼できない理由ありましたね。
お兄様が迎えに来てくれるのがわかってたから、のこのこ付いていってさっさとケリをつけたんだけど、だめでしたか。
「お兄様。そろそろ私にもハグさせてくださいませ」
「…はぐらかす気か?」
「はぐらかすも何も。だってお兄様が迎えに来てくれるでしょう?」
もうここは開き直る。
本当はお兄様に迷惑なんてかけないのが理想なんだけど、それは心配性なお兄様にはできないことだから。
「お兄様がいる限り私は無敵です」
それはこの世界の真理だ。
深雪はお兄様がいることで成り立ち、お兄様がいるからこそ最強である。
「…俺が敵に回ったら?」
「お兄様に付いていくので敵側に付くことになりますね」
お兄様が一体何の敵に回るのか意味が解らないけれど、そっちサイドに行くなら支援するよ?後衛は任せて。
顔が見えないのでお兄様が何を思っているかわからないけどため息が何度目か、耳をくすぐる。
「そんなにため息をこぼされると幸せが逃げて行ってしまいますよ」
「お前がいればすぐ帰ってくるさ」
お兄様は幸せを放し飼い派、と。
…このメモ必要?
「お兄様?」
「…わかった」
呼べばくるりと反転させられお兄様の胸にダイブ。
相変わらず固い胸板です。おでこで迎えるから顔は守られてますよ。
つかの間の休息。心臓は忙しないですけどね。
「おそらくだが仕掛けられるとしたら新人戦でも高得点のモノリスコードではないかという話になった」
「ですがモノリスコードはその…上位に食い込めるかは…」
森崎君たちのチームは一年生にしてはそれぞれの実力も高く、連携も形になっている。
だが、一年生にしては、のレベルであって一条君たちのチームには勝ち目はない。彼らは新人戦の枠を超えている。
他のチームとはそこそこ善戦はできるだろうが、地形によっては不利になる。
優勝は無理でもせめて二位に入れればいいな、というわずかな期待を寄せるくらいでは、というのが生徒会からの評価だった。
「流石に内部戦力まで知っているとは思わない。特に一年のはな。正直ピラーズブレイクを狙うにしても一人くらいだ。三人表彰台に立ちそうなのに一人狙ったところで旨味は少ない。なら同時に三人狙えて、今後まだ活躍する種目の残った一年を潰す方が一度で済む」
「…そう、ですか」
「風間さんたちがさりげなくフォローに入る予定だそうだ」
よかった。体から力が抜けたが抱き合ったままだったのでお兄様はしっかり支えてくれた。
「ここで確実に捕えられるかはわからないが」
「きっと最悪の事態は避けられます」
これで解決するかはわからない。まだCADへの細工がわかっていないのだ。
不安は残るが、彼らが動いてくれるなら何も変わらないということはないはずだ。
「明日は決勝だな」
「雫との対戦ですね」
私の中で雫ちゃんとの頂上決戦は確定事項だ。
お兄様はこのノリが理解できていないのだろう戸惑っている。
でもそれでいい。これは雫ちゃんと私の直感だから。
「お兄様は雫に付いていてくださいませね」
「…深雪はそれでいいのかい?」
「私、お兄様とも戦ってみたいのです」
はっきりとそう言うとお兄様は回していた腕をほどいた。
その胸を押して半歩下がる。
顔を見上げ、挑戦的に笑って。
「お兄様、勝負です」
人生初の兄妹の本気の試合。
きっとこんな機会でないとできないから。
「楽に勝たせないつもりだ」
「もちろん、全力でお願いします」
雫ちゃんとお兄様、この二人を相手に私は戦う。
油断なんてしない。大好きな二人相手にそんなことできない。
「最善を尽くそう」
お兄様も覚悟を決めた顔になる。
「送るよ」
もう言葉はいらなかった。
部屋を出て、扉の前でおやすみを交わすまで無言で歩いた。
けれどそれはけして嫌なものではない、空気のように自然な無言だった。
――
さて、そんなイベントもあったなと。
どこか他人事のように揃った面子を見て思い出した。
目の前に立っているのは一条さんちの将輝くんと吉祥寺さんちの真紅郎くんだった。
やあやあ。煌めいてるね。
でもどうして私がいるところで?お兄様を確実に捕まえるにはこれがベストってことだったのかな?
ちらりと視線を向けるとばちっと音が鳴ったかのように一条くんと目が合った。
目力強いの?そして反発力凄いの?勢いよく反らされた。…まあ気にしないけど。
そして視界を遮るようにお兄様の大きな背中が目の前に。あら、ごみが付いてますね、と取ったらお兄様が身じろぎした。あ、ごめんなさい。空気読まずに動きました。
「深雪、先に準備をしておいで」
はーい。わかりました。
あれ、自己紹介聞く前に退場?まあいいけども。
お兄様の意図をしっかり読み取った私は一瞥もくれずに控室へ。
はてさて。果たし状投げつけるのはいいけど、お兄様にははっきり書かないとただの暗号文に思われちゃいますよ。
戻ってきたお兄様は案の定、首を傾げていた。
鈍感系主人公ですもの。
思わず笑ってしまうとお兄様に名を呼ばれた。
「彼らはおそらくこの会場で誰よりも早く、お兄様の実力に気付き、警戒しておられるんでしょうね」
事実そうだ。彼らはいち早く凄腕エンジニアに気付いたのだ。その上選手でないかと疑いを掛けるほど警戒していた。
「知っているのか、二人のことを」
「女子には女子の情報網がありますから」
事実その名と姿は皆が教えてくれた。
絶対一目惚れされてるって!の言葉もついていたがこの場では割愛。
「そもそも一条ですから顔は資料で。若くして実戦経験があるとか」
キャラクターとしては知っているけど、四葉としてはあまり重要資料じゃないからあまり詳しくは書かれていなかった。
…むしろまだ出てきたことのないキャラクターの資料にワクワクしてしまった私です。ネタバレはしないよ!守秘義務守秘義務!
「…気になるか?」
「何がですか?」
たまにお兄様主語を抜きすぎますよね。手抜きですよ手抜き。
大抵は分かるんだけど、稀に全く読めない時がある。今がそれ。
「あー…、彼らが」
「三高は僅差ですからね。気が抜けません」
もしかしなくても気になるかどうかチェックです?ないない。
だって叔母様の候補に入って無さそうでしたよ。そもそも次期当主同士なんだから家から送り出すなんて…ってあれ?でも叔母様自身もあの事件さえなければ次期当主同士だった?…でもま、ないでしょうね。なんとなくですけど。
「そうだな」
お兄様はスルーすることにしたようだ。それでいいです。大事な試合前だから。
と、その大事な試合を一瞬で終わらせてしまった深雪ちゃんです。
いえ、いつも通りのつもりだったのだけど、相手が予想以上に委縮しちゃってて。威圧出しちゃった?ごめんね。
今日は謝ってばっかりな気がします。
そして他の二人も勝ち抜いて、天幕はお祭り騒ぎ。女子が皆決勝進出決定したからだそうです。
その天幕の前を通り過ぎ、私たちはミーティングルームへやってきた。――そう、ピラーズブレイク決勝リーグに一高の三人が決まったことでもらうポイントも決まったのだ。
あとは誰がどの順位でも同じ学校にしかポイントが入らないので試合をしたところでただの消化試合となる。
だからわざわざ試合をする必要性はないのだが――
「深雪」
「ええ」
私と雫ちゃんは燃えていた。
エイミィちゃんはコンディションが悪いので棄権するとのこと。
七草会長が戸惑っているけど私たちの視界には入らない。
「雫が好きよ。だから決着をつけましょう」
「私も深雪が好きだから、負けない」
私たちが闘気を燃え上がらせているのを、更に困惑した七草会長がお兄様を物理的に揺さぶっていた。
「ねえ!どういうことなの!?え、告白⁇二人って」
「落ち着いてください会長」
「なんでそんなに冷静なの!?二人の関係はお兄ちゃん公認なの?!」
「公認なんてまずしてませんし冷静に見えるのはただ自分も処理が追いついていないだけです」
「頭のいい達也くんが処理できないって大問題じゃないの!」
「だから落ち着いてください会長。思考がまとまりません」
(…思ってた仲良しの図とちょっと違うな)
でも二人の距離はとっても近いですよ。
頑張ってください七草会長。
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