妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします!分割版 作:tom200
お兄様としょっちゅう一緒にいると思われている私だけど、この九校戦はさほど一緒に行動することはない。
今日も別行動でエリカちゃん達と雫ちゃんとミラージバットの応援と、午後からはモノリスコードといろいろ忙しい。
ちらちらと視線は受けるが、友達と仲良くしているのを邪魔しようという輩はほとんどおらず、出てきても西城くんと吉田くん、そしてエリカちゃんが撃退していた。
エリカちゃん強い。
新人戦でも花形のミラージバットは人気が高い。可愛い女の子たちが可愛い恰好をして空を舞うのだ。それは見る。男子だけじゃない、女子だって注目しますよ。
おかげで観客の入りがすごい。
「とはいっても雫と深雪の試合はこんなもんじゃなかったけどね」
「そうなの?こっちも随分満員みたいだけど」
「なんて言うか人の質?可愛い子を見たいってだけじゃなくすごい魔法を見たい!って感じ」
「確かに新人戦であんなに観衆多いの初めて見た」
過去と比べる雫ちゃんはちょっと眠そうだ。昨日遅くまで家族と電話してたんだって。
一高の選手の応援をしつつ、時間はあっという間に午後になるところだった。
「モノリスコードの前にちゃちゃっとご飯食べていきますか!」
そして午後一番、着いた会場で私たちは目撃する――森崎くんたちのいた建物が見えない力で叩き潰されるのを。
天幕はもう半狂乱だった。
七草会長たちは森崎くんたちに付いていてまだ来ていない。情報としては命に別状はないとのことだったけれど怪我の詳しい様子は入ってこないようだ。
(…間に合わなかったのか)
もしかしたら事前に防げるのでは、と期待をしていただけにこの結果が起きてしまって落胆する。
勝手だな、と思う。押し付けておいて都合のいいことだけを考える自分に嫌気がさす。
今後の展開を考えて動かなかったことを割り切らねばと思うのに、心がそれを拒む。
もっと何かできたのではないか。知っていたのだから人に任せるだけでなく自身も動けばよかったのではないのか。
(――私は責められるべきだ)
そんな思いに捕らわれる。
だけどそれを表に出すことは許されない。
目的を見失ってはいけない。
「皆、遅くなったわ」
「「「会長!!」」」
走ってきたのか七草会長の肩は弾んでいた。
「派手な攻撃の割にひどい怪我にならずにすんだわ。軍用の防護服だけなら正直命も危ぶまれただろうけど、ヘルメットと立会人の人が展開した魔法が間に合って、全治一週間、一日は絶対安静だけど、次の日には動いてもいいそうよ」
ほっと安心した空気が流れる。
(…風間さんたちが、救ってくれたんだ)
原作では重傷で、見るに堪えない怪我だったと言っていた。
だが七草会長の顔を見る限り、そこまでの悲壮感はない。
「ですが安心するにはまだ早いです」
「そうね…。今十文字君が掛け合いに行ったけど」
「掛け合い、ですか?」
「ええ――」
と、そこへ何も知らないお兄様が天幕にやってきた。
疲労の色が薄く見えるのは少し休めたからか。
朝からずっと調整等サポートをしていたのだから疲れているはずなのに、そんな素振りを見せない。
七草会長が事情を説明する間、私はお兄様に近寄るのを避けた。
お兄様は鋭いから、私が情けないことを思っていることに気付けばそちらに集中してしまう恐れがあったから。
モノリスコードフリークの雫ちゃんに寄り添う形で何でもないよう自然を装った。
実際雫ちゃんはかなり興奮している。あんなのは事故じゃない、と四高を非難する口ぶりに七草会長がストップをかける。
――そう、原因は四高ではない。彼らはただ利用されただけ。
だからこそ、ルールすれすれな救済措置が取られるのだ。
私が黙っていても話は滞ることなく進む。
森崎くんの怪我の具合、使われた魔法、――棄権をするか否か。
「ねぇ達也くん、少し、相談したいことがあるんだけど」
そして七草会長は強請るような甘い声でお兄様を連れ出す。
いつの間にお兄様は七草会長にあそこまで甘えられる――信頼できると思われるほど親密になったのか。
…え、本当いつの間に??
(知らないうちに関係が変わってる!流石お兄様!ラノベ主人公!!)
さっきまでのマイナスに振り切れていた気持ちがぐん、と一気に逆転した。
思わず見つめてしまったのをお兄様は見咎めていると勘違いしたのか、ちょっとばつの悪い顔。
ああ、そんなつもりはないのに。しかし訂正するのもおかしな場面だ。黙って顔ごと反らした。
そのせいでよりお兄様の表情が曇ったのだけど、背けてしまった私は知る由もない。
「深雪、達也さんに不満あった?」
「全くないのだけど、やっぱり何か勘違いさせるようなことしちゃったかしら」
「…ないの?」
なぜか雫ちゃんにまで、お兄様を七草会長に連れていかれたことに不満を抱くような妹だと思われてた?そんな変な顔してたかな。
「不満どころか、…ちょっとわくわく?かしら」
正直に言ったら目を見開いて驚かれています。
初めて見るお顔ですね。パシャリと心のシャッターを一枚。
「でも流石に妹に…の色恋沙汰を見守られたりしたらいやじゃない?だから顔を背けたんだけど」
兄さん、と呼ぶにも達也さんと呼ぶにもおかしいのでぼやかして言うと、雫はなぜか難しい顔でだんまりしてしまった。
何か言葉を掛けようにも何を考えてるかわからないうちに言ってしまうと拗れる可能性があるので、ここは口を出さないようにします。
他に視線を巡らせると、皆不安そうな表情をしていた。
(そうだよね。事故じゃないのでは、なんて考えたら、余計不安になるのは当然だ)
狙われている、巻き込まれている、どちらにしても不安でしかない。
お兄様のロマンスの気配にときめいている場合じゃなかった。
さっきまであれだけ森崎くんのことで落ち込んでいたはずなのに、私はなんて薄情なんだろう。
せめてこの空気を何とかしよう。それくらいしか私にできることはないから。
「これがもし事件であればモノリスコードどころか九校戦自体が中止になるかもしれない。でももし、ならなければ、――今十文字先輩が交渉に行っているけど、これがもし通るなら、大会側のミスということになるのでしょうか?」
誰に言うわけでもなくそう口にする。
まるで今考え付いたことをそのまま口に出したように。
そして私は知っている、この後十文字先輩の言い分が通ってモノリスコードが行われることを。
「…そうね、その可能性はあるわ」
「そうだな。もしこれが妨害だっていうなら、相当危険な行為だから何の罰則もないわけがないもんな」
先輩たちはいい感じに誘導に従ってくれたおかげで、ほかのメンバーたちにも伝播して暗い雰囲気が晴れていく。
人間信じたいモノを信じるから、そこに何らかの根拠っぽいものが添えられたら更に乗っかるよね、というあくどい手口です。皆さん注意しましょうね。
いい感じに皆の不安が和らいだところに、お兄様と七草会長が戻ってきた。
お兄様の表情がなぜか釈然としない、といった風なのは気になるが、まあそこは鈍感系主人公様なので。
その後、一年生女子を中心にお兄様の調整参観――ではなく、決勝に向けての調整をしてもらった。
森崎くんの事故もあって、まだ多少の不安はあるみたいだけど、お兄様が黙々と作業をしているのを見て、いつもと何も変わりない姿に安心したのだろう。落ち着きを取り戻していった。
特にほのかちゃんの態度は顕著で、お兄様がちょっと心配するほどだった。
その心配が更に彼女の想いを加速させて、心をがっちり捕えちゃうんだけどねー!いいね、青春!
――
次の日のミラージバット新人戦はワンツー独占でお祭り騒ぎ!…とは問屋が卸さなかった。
本来はお兄様だけがミーティングルームに呼ばれたのだが、なぜか私も連れて二人で行くことになった。
役員持ちの先輩たちが固い表情で勢ぞろいしているのを見て、独占を喜ぶ空気でないことは分かった。特に十文字先輩の圧はすごかった。
そもそも森崎くんたちが怪我をした時点でそんなに喜べる状態ではなかったのだけど、それにしても重苦しい。
けどそれもこれも、不必要な戦いにお兄様を巻き込もうとする先輩たちの緊張感が原因なのだけどね。
だって新人戦のモノリスコードの試合なんて、最悪放り投げてもギリギリ総合優勝狙える計算ですもんね。
ただ欲を出した、それだけ。
本当なら蹴ってもいいのに、お兄様は十文字先輩の言葉に焚き付けられ、それに見事に乗っかった。
あの、他人に興味もなく、自分の評価など気にしないというお兄様が。
懇願され、発破をかけられ、逃げずに立ち向かうと――お兄様が自身でお決めになったのだ。
それがどれほどの出来事かここにいる誰もが知らない。
これからのことを話し合う十文字先輩とお兄様をじっと見る。
(できることならば、この感動を分かち合いたかった)
母が恋しい、と初めて純粋に思えた気がした。
お兄様は物事を合理的にしか判断できなかった。
徹底的に無駄を省いていた。
唯一の例外は私に関してだけ。
だけどどうだろう。
お兄様は今こうして不必要と思われる試合に、目立つことを避けようとしていたにもかかわらず、友人たちを巻き込んででも、参加しようとする。
――そこに、私のためにという理由はない。
やはり九校戦に参加したのは正解だった。お兄様の成長に、このルートは必要だったのだ。
「――ゆき、深雪」
「ごめん、なにかしら?」
お兄様がこちらに向いたのに反応しきれなかったのは、潤む目を見られないよう閉じていたからだ。
ゆっくり開くとうまい具合に涙は引っ込んだ。
超一流の俳優は汗さえコントロールできるというが、深雪ちゃんの体はその才能も持っているようです。
「俺はこれからレオ達と作戦会議をするが」
「なら私はほのか達と合流するわ。きっとまだお祝いしていると思うし」
「そうか、ではそこまで送ろう」
「そんな時間はないでしょう?大丈夫よ」
送ろう、というお兄様に大丈夫だと断ると、お兄様は複雑な表情と共に何か口を開きかけたが、音を出さずに閉じた。
お兄様の様子がおかしいのは分かったけれど、無頭竜のことではなさそうだし、はっきりとしない。
きっと無頭竜のことならば場所を変えてでもお兄様は言う。だから違うのだとわかるのだけど、どうしたのだろう。
「…すまない」
「謝らないで。大丈夫。…大変だろうけど無理はしないで。絶対応援するから」
頑張ってとは言わない。
お兄様がやると言ったらやり遂げることはわかっていたから、余計な言葉は言わなかった。
「終わったら二人の時間が欲しい」
珍しいお兄様からのお願いに私は二つ返事で返した。
――
別れて皆の元へ向かう途中、見覚えのある生徒たちが座って項垂れているのを見かけた。――一年生男子だ。
モノリスコードの代理で選ばれてもおかしくなかったのに、お兄様が選ばれたことで漏れてしまった子たちだ。
技術も高いし魔法力もある、将来有望な卵たち。
けれどこの非常時、先輩に指名されたのは自分たちに劣っているはずの、心のどこかで落ちこぼれと見下していた二科生で。
更に他のメンバー二人も選手候補にも選ばれていない二科生ときた。
優等生の彼らの不満が爆発するのも無理はないだろう。
まあ落ちこぼれの二科生と言う言葉を、今の彼らは妄信しているわけではない。
実力を目撃した生徒も中にいるだろうし、エンジニアとして凄いということも先輩たちの話を聞いているのだが、同じ一年同士、まだ信じたくない気持ちの方が勝ってしまったのだろう。
思春期特有の反抗心、とでも言うべきか。
「皆さん、お疲れ様です」
「!司波さん!お疲れ様、――ピラーズブレイク優勝おめでとう」
「ありがとう。応援してくれてたよね」
はったりである。正直応援席など見えるわけもない。だが来ていなかったとしても応援はしてくれてたよね、と圧も込めて聞けば皆顔を赤らめてコクコクと頷いた。
もう一度感謝を込めてありがとう、と言えば皆不満でいっぱいだったことも忘れて喜んでいた。
「…森崎くんのこと、心配ね。私も会場で応援に行ってたから目撃したけど…衝撃的だった」
そう言うと空気は一変。お通夜モードに。一年生のリーダーみたいなところあったしね。
「二科生の彼が、代わりに出るって聞いたけど、もしかして皆は嫌だったんじゃない?」
「っそれは、」
一応お兄様とは言わずに態と二科生と強調して言った。
十文字先輩じゃないけどこういう発破の掛け方は時に有効だ。
「君の兄だってことはわかってる。新歓の出来事だって俺はその場にいたからすごいのだって知ってる。っだけどこれは!森崎の仇は俺たちが討ちたかった!」
一人が叫ぶように言うと、続いてほかの男子も俺も、と続く。
森崎くん思ったより慕われてる!…お兄様への反発が仲間意識を強くさせた、なんてことがないことを祈るばかりです。ほぼそれが理由な気がひしひしとしますが。
「一緒に頑張ってきた仲間だもの、そう考えるのもわかるわ」
ここで否定はしちゃいけないよ。逆上させるだけだから。
「渡辺先輩の時も、皆一丸となったものね」
はっとしたように顔を上げる。
そう、あの時も皆庇って倒れた先輩の無念を晴らそうと躍起になって――ペースを乱されたのだけど、そこはお口チャックです。わざわざ言わなくても彼らも思い出したようだ。
「彼はエンジニアスタッフだからマークもされてない。だからこそダークホースとして十文字先輩は選んだんだと思う。
皆は競技にすでに出ていたから偵察班にチェックされていただろうし。その点も考えるなんて流石連覇を成し遂げた先輩よね」
「…そうか、彼は得意魔法が見られてない」
一年生に使える魔法は限られる。
まだ入学して4か月。数字持ちでない限り、家の教育として本格的に魔法を教わること自体なかなかないのだ。
つまりほかの競技に出場した場合、対策を立てられている恐れがあった。
「そして他の二科生については彼が連携を取れそうな人が他にいなかったから。一緒に授業を受けない限り皆の魔法がどういったものかなんてわからないもの」
そのくらいの理由はわかっていただろうが、私に指摘されるとまた違って聞こえたのだろう。
すんなりと聞き入れてくれた。
本当、素直ないい子たちなんですよ。
「皆、元気出た?せっかく皆一緒に優勝目指しているんだから、最後まで応援しましょう!そして優勝を森崎くんたちにもプレゼント、なんて」
流石に恥ずかしいこと言ったかしら、とおまけで笑えば全員がぶんぶんと横に首を振る。
皆そんなに首振って大丈夫?縦運動と横運動忙しいね。私のせいだけど。
「ちょっと早いけど、おやすみなさい。皆もちゃんと休んでね」
よい子の皆はおやすみ!と大きな声で返事してくれました。
はい、みんないい子いい子。
こうやって草の根運動はするんですよ。いい子は気づかず眠ってね。
地道な活動が一科と二科の、というかお兄様への悪感情を取り除く一歩に繋がるのです。
大抵4月に無くなってはいたんですけどね。この九校戦で女子たちがきゃあきゃあしちゃったから面白くなかっただろうから。
嫉妬は悪感情を生みやすい。芽は早いうちに摘んでおきましょう。
私のできる暗躍はこういった地味な活動くらいだ。
四葉の、あんな息を吸うように何でも調べられちゃう諜報活動なんてやり方さえわからない。…今度勉強に盛り込んでもらおうかな。
「司波い、…ってまだ作戦って続いてんのか。もう効果もないだろうからいらないだろ」
「桐原先輩こんばんは。まだ終了の指示がありませんので」
誰か見てるなーと思ったら美人彼女ゲットでお馴染み桐原先輩でした。
私もお兄様と恋人設定終わっていいと思うけど、そもそもこの作戦お兄様の虫よけのため――を建前にした秘密会議と護衛のための作戦ですからね。大会終わるまでは無理じゃないですかね。
「しかし、あんがとな。アイツらあのまんまじゃただクサるだけだったからな」
「私はただ通りすがっただけですから」
特別なことはしていない、と言えば先輩は肩を竦めて何も言わなかった。
うーん。余計なことは言わない、後輩思いのいい先輩ですね。
「明日はアイツが出るんだろ?間に合うのか?」
「間に合う、がどの範囲までを指すのかわかりませんが、何とか形にはできるくらいまではいくんじゃないでしょうか」
「…それも十分とんでもねぇことだがな」
「そうですね。とんでもねぇことです」
先輩の言葉をそっくり繰り返したら虚を突かれた先輩は一拍のち、噴出した。
「お前、アイツに似ず面白いな」
「彼は十分面白いですけどね。ちょっとわかりづらいだけで」
「…それ絶対ちょっとのレベルじゃないだろ」
身内判定ですからね。がばがばです。
ニコニコしていたら、先輩はだんだん顔色を変えていった。
なんだろう、なんか気まずそう。
頭をガリガリ掻きながら、たどたどしく尋ねる。
「あー、なんだ、その。…兄妹仲はうまくいってんのか?」
「?ケンカしたことは一度もないですね」
「まああんだけ仲良かったらできないか」
「何かあっても私に甘いのですぐ折れてくれるんです」
時折押しが強すぎることもあるけれど、それもじゃれ合いであって喧嘩ではない。
本気で嫌がることをお兄様がすることはないのだ。
……めっちゃ困らせてくることはあるけどね!
目の前の先輩は私の答えに満足していない様子。
「先輩は何を心配されてます?」
「んー、仲の良すぎるとこ、か?」
原作ほどべたべたしてないはずなのに、なんでそんな心配が?
でも世の兄妹と比べたら確かに仲の良さは異常かもしれないが、事情が事情だし普通の勘定にはもともと入れない。
「もしかして将来を心配されてます?二人ともそんなに仲良くて結婚できるのか、とか」
ぐっ、と詰まる先輩。どうやらこれが正解らしい。
まあ女子にそんな質問下手したらセクハラだもんね。
しかし先輩優しすぎない?後輩の、しかも彼女が惚れた相手にそこまで心配します?
もしや壬生先輩を救ってもらったとかで恩義感じてる?だとしたら相当面倒見いいですね。一皮むけばモテ要素満載とか。よかったですね壬生先輩。結構お買い得でしたよ。
「心配いりませんよ先輩」
「なんで言い切れんだよ」
「だって彼、今空前のモテ期ですから!」
そう断言すると先輩はおめめぱちくり。このところ人を驚かせすぎている気がする。
びっくりさせるの好きだから楽しいです。
「…それで?」
「え?モテ期がきたんですよ?年内か、最悪高校卒業までに彼女ができてもおかしくないですよね」
「…お前、それ本気で――本気か」
むしろなぜ疑われるの?
「お前に取っちゃ兄貴は恋愛対象外か」
「血の繋がった兄とは結婚できないですよね?」
おっとここでまさかの原作がぶち込みですか。
だけどねぇ。私はお兄様の幸せは願っているけれどお兄様と結ばれたい、は範疇じゃないんですよ。
お兄様が万が一にも選ぶならまあ?もともとあるルートですし。
けどそんなこと、深雪ちゃんに望まれない限り常識に拘るお兄様が選ぶわけないんですよね。
妹から異性として愛されていると知ってようやく愛に目覚めるお兄様ですから。
自らの選択だけであれば選ばないはずの選択肢なんです。
本人もいたってノーマルみたいだし。
これだけ心を成長させてきたお兄様だから、そろそろ女の子にアタックされたらそういうことだとわかって恋に恋することも可能だと思うんだよね。
確かどこかでそういう想いに気づけないほど枯れてないとか言っていたはず。性欲自体は普通にあるみたいだしね。激しい衝動がないだけで。
だからこちらから動かない限りお兄様にとって私は論外なのだ。
せっかくの桐原先輩の心配は無用、なのだけどなんでそんな困った顔をされてるんです?
「あー。お前の考えは分かった」
「はぁ」
ぼそっと安心はできねぇけどって聞こえましたけどなんで?
あ、聞こえたって言っても音じゃないです。唇読みました。淑女教育上級編で学んだ。結構便利。
だけどこういう時は不便よね。聞き返したりしたら聞かれないはずの言葉をなぜ知ってるってなるし。
もやもやしますが問いたださず、そのまま先輩ともおやすみを言ってお別れしました。
…なんだったんだろ。
ようやく合流したほのかちゃん達はまだ盛り上がっていた。よかった間に合って。
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