妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします!分割版   作:tom200

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切りが悪いので短めです。


入学編
入学編①


 

 

目まぐるしい中学時代でした。

前世、のらくら生きていた人生を一気に濃縮したとて、これほどの濃さはないというくらい濃厚な、濃密な時間だったといえるでしょう。

お兄様を幸せにするためにどうすべきか、私なりに考えた結果、とりあえず持てる力は何でも持っていた方がいい、と四葉家次期当主候補として学ぶべきことを学ばせてほしい旨を本家に直談判したところ、まさかのラスボス女王…御当主様とご対面する羽目になったり。

せっかく深雪ちゃんなんだから自分磨きにも力を入れようとステータス向上に励んでいたらラスボス女王…御当主様から手厚い教育をとスペシャリストを派遣していただいたり。

お兄様を見下す世界が許せなくて、けれどそれを真正面から潰したらただ顰蹙を買うだけだと、こういうのは裏工作が重要だと四葉掌握げふん、改造…改革計画に努めようとしたらラスボス――この時点でおかしいと気づく。

ラスボス御当主様との遭遇率高すぎやしませんかね?!

あれ、おかしいな?と思っていたら気づけば叔母様ではなく真夜姉さまと呼ぶ間柄になっておりました。

 

(どういうことだってばよ?!)

 

いえ、わかってはいるのです。

オタクは知っています。

これはあれです。いつの間にやら『おもしれー女』認定が発動したようでした。

うん、なんのこっちゃですよね。

私もそう思いますが、どういうわけかいつの間にかそんなことになっておりました。

おかげでまだ正式発表されていませんが四葉次期当主は私に決まっているそうです。

あれ?もうお兄様を囲わねば離反しちゃう!みたいな話になったんですか!?と思ったらそうではなく、ほぼ初めから決定されていたようです。

原作はもっと前から狂っていたってことでしょうか?

というかラスボ、真夜姉さまは私の目的『お兄様幸せ大作戦』を薄々感づいているようで、けれど邪魔する気はない、というスタンスらしい。

まあ、原作上息子だと思ってますものね。

己の願いの具現だと。

四葉を裏切られたら困るけど、ウチにいてくれるなら守ってあげるスタンスでしたもの。

 

(本当、四葉って複雑怪奇だけど根底はしっかり愛!だよね。理解はされないだろうけど)

 

ちなみにここまでの話、お兄様にはオフレコです。お兄様は何もご存じありません。

叔母様を真夜姉さまと呼び合うような関係であることも、表以外の四葉の教育を受けていることも。

なぜならこれらはあくまで、お兄様が幸せになる選択肢を増やす布石としての行動であり、もしもお兄様に知られたら、お兄様が自身で選ぶはずの選択に無用な影響を与えてしまうから。

――お兄様の行動はすべて妹ありき。

妹が進むと決めた道を陰から支えるつもりなのだ。

まずはこの意識を変えねば!とこの三年近く奮闘してみたのだけど…正直芳しくはない。

 

 

お兄様はあれから変わった、と思う。

まず四葉に関連しない場では兄妹として接してくれるようになった。

ならばさっそくステップアップ。家族愛を深め、お兄様に愛とは何かを教え、感情の幅を増やし、豊かにしていけたらと私なりに行動をしてみたのだ。

時間があれば他愛ない話をし、染み入るように好意を伝えておやすみと一日を終える。

忙しいお兄様のことだからストレスもあるだろうと、ハグなどスキンシップも投入。

30秒のハグはストレスを発散させると、現代でも文献にちゃんと記載してあるストレス軽減法だから問題ないはず。

はじめはだいぶ恥ずかしかった。お兄様も居心地が悪そうだったけど、人は慣れるもので今ではお兄様の方から求めてくるようになった。

人間慣れるはず、とは言ったけどなんで私はまだ恥ずかしいんでしょうね?内心いつもドッキドキですよ。顔に出ないのは淑女教育か帝王学の賜物です。

 

(淑女は分かるけど帝王学っている?…まあ無いよりかはいいんだろうけども)

 

後は料理かな。

現代では料理をするから愛情が深い、なんて考えはない。

けれど作ってもらえれば特別、という気持ちはあるもので。

原作でもやっていたこともあって料理を作ることにした。

だが気取った料理ではなく家庭料理に力を入れた。

家族での食事にナイフやフォークと肩ひじを張っていたら話も弾みにくい気がしたのだ。

記念日などは張り切ったりもするけれど、家で形式ばった食事ばかりするのも面白みがない、とジャンクフードの代表ハンバーガーを作ったりしてみた。紙ナプキンは使うけど手掴みで。

大口を開けて食べた日には二人して笑ったものだ。

その週末訪れた病院で母に話したらずるいと言われて、家に滞在中に何度か作ってあげた。

流石淑女の鏡のお母様は大きな口が開けられなくて悪戦苦闘していたけれど。

美女の戸惑う姿はただただかわいい。私はその度母の虜になった。

そして大抵そのあとお兄様と母の間に火花が飛び散りマウントの取り合いに発展する。

――そう、この二人、どういうわけか母と息子と書いてライバル?になっていた。

二人には分け隔てなく愛情を注いでいたつもりなのだけど、…うん、二人が揃うと母親を奪い合う子供たちになってしまうのだ。

あれ?私子育てならぬ母育てと兄育て間違えました?

とはいえあれも二人独特のコミュニケーションの取り方だったんだろうけど。

歪だった家族は、多少形は変わっていても家族として纏まったと思う。

幸せに包まれた家族だった。

 

(だから最期をあれだけ笑顔で看取れたのだけど)

 

幸せだった。

理解し合うことができずにただその日を暮らすのではなく、穏やかで温かな暮らしだった。

できることなら高校の制服姿を見せてあげたかったけれど、こればかりは原作の壁を越えられなかった。

お兄様は悲しむ私にずっと寄り添ってくれた。

「お兄様も悲しいはずなのに」と言えば「俺は兄だから泣けないんだ」と。

「代わりに泣いてくれる優しい妹に恵まれて、母には感謝だな」と、そう言って抱きしめてくれた。

あれが精いっぱいのお兄様のお母様への感謝の言葉だ。

面と向かっては言えないお兄様とお母様。

私を介して間接的に伝えるしかできなかったけれど、それでもちゃんと二人とも受け取っていた。

ひねくれた似た者親子だ。本人たちは認めないけれど。

とまあこの時点でどれほどお兄様が変わったかは伝わっただろうか。

深雪ちゃんの時ほどラブラブベタベタ兄妹にはなっていないけれど、仲のいい兄妹の枠にちゃんと収まっていると思う。

原作みたいに限度を超えた兄妹ではない。

ちょっと心配症で甘やかしが趣味のお兄様と、それを窘めるしっかり者の妹。

 

(…の、はずなんだけど)

 

なぜだろう、天国の母が呆れた視線を向けている気がする。

ともあれいろいろ端折った中学奮闘記。

それも今日でおしまい。前哨戦はここまでだ。

私たちはこれから東京へと引っ越す。

もう数日経てば高校生編がついに始まる。

 

「深雪、忘れ物はないか?」

「はい。大丈夫ですお兄様」

 

お兄様を絶対幸せにして御覧に入れますとも。

 

 

――

 

 

久しぶりに帰ってきた実家はどう見ても豪邸でした。

おかしいな。以前住んでいた時にはなんとも思ってなかったけど、これどう見ても外観普通って言うけど豪邸だよね。

四葉本邸としか比べる対象が無かったから気づかなかった。

しかし今ならわかる。広いよ。大きいよ。お金持ちの家だよ。

ちなみに外観普通とわざわざ言ったのは中身が魔改造されているから。一般の家にないからね、研究室だの工房だのは。

 

「深雪?」

「久しぶりに見ると、大きかったのだな、と」

「そうか?」

 

…考えたら生活はともかく、お兄様も生まれながらのお坊ちゃんですものね。というか気にしてなかったというべきか。

 

「だがそうだな。これから二人で暮らすにはちょっと大きいかもな」

 

お兄様もそう思いますか。だけどちょっと価値観にずれがありますね。

これはちっともちょっとではないと思います。

考えたところでここに私たちが住むことは決定事項なのだから、気にしたところで何にもならないのだけれど。

 

(アニメで見たお家です。これも聖地巡礼になるのかな。ありがたやー)

 

ご利益なんてないけれど、オタクはノリで生きているので。

とりあえず約三年ぶりに帰ってまいりました。ただいま実家。

 

「そういえば深雪。随分荷物が少なかったようだが」

「え、ええ。私も高校生ですから思い切ってほとんどの衣服を処分してきました。新しい服は注文しておきましたので今日届くはずです」

 

流石お兄様、自分だけじゃなく妹の荷物までチェック済みだった。

反応がちょっと遅れてしまったが隠すことでもないし素直に答えると、お兄様は微笑んで頬を撫で――

 

「そうか、新しい深雪の姿も楽しみだ」

 

殺し文句を囁いた。

――この程度で動揺してはいけませんよ深雪――

イマジナリーお母様が厳しい視線を向けてくる。

そうです、この程度の攻撃で淑女は怯んではいけないと何度も母は指導してくださいました。

内心だというのに敬語で考えているあたり、とっても混乱しているのがわかる。

でもしょうがない。

お兄様にとって今の言葉は殺傷能力抜群の殺し文句ではなく、ただ妹を褒めたい、甘やかしたいという目的による発言なのだ。

深い意味はない、動揺するほどのことじゃない。

ちなみに、深雪ちゃんの魔法構築の処理速度はとんでもなく速く、それすなわち頭の回転も同様に早いということで。つまり何が言いたいかというと、ここまでの思考だって現実時間では一秒も経っていない!はず。

 

「ご期待に添えるかはわかりませんが、届きましたらさっそくお兄様にお見せしますね」

 

やられっぱなしもよくない、と反論するようにっこり笑えば、お兄様は顔が触れ合うんじゃないかというほど身を寄せ、秘め事のように囁く。

 

「あまり兄を誘惑してくれるなよ。いつだってお前には理性を試されているんだから」

 

(衛生兵!衛生へーい!!内なる深雪が重傷、瀕死状態であります!!)

 

15歳ですよねお兄様!?高校生にもまだなってもいないのですよねお兄様?!

いくら妹を褒めることに余念のないお兄様だからといって、いったいどこでそんな言葉を覚えるというのです?

っていうかそれって誉め言葉?!

 

(実は軍で学んでいるのはホスト力ですか?!もしやお兄様ハニートラップ要員に?!)

 

流石に至近距離による爆撃は避け様がなかった。

身に着けたはずの淑女教育もお兄様の前では紙装甲もいい所だ。

 

「深雪は肌が白いから、赤がよく映える」

「~~~もう、勘弁してくださいませお兄様」

 

追い打ちをかけるお兄様に白旗を上げる。

少し前まで対等に応酬できたのに、今では言い負かされることが多くなった。

特にこの色男モードになったお兄様には一度も勝てた試しはない。

たまにお兄様が口では負けたというけれど、あんなの痛み分けがいい所だ。

…でもこれで高校入学の下準備はできたと思う。

高校でのお兄様無双は目前だ。

全女子も、全男子もこのお色気大魔王の手に堕ちてしまうがいい!

 

 

 

 

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以下おまけ



『と、いうわけで三回目にして司会進行役に戻ってまいりました作者です!ゲストは深雪ちゃんですー』
「まあ、生きていらしたのですね」
『…生きてないとイチャラブが書けませんからね、生かす方向で許されました…』
「それは…」
『ということで近日深雪ちゃんが困るような恥ずかしい…じゃなかった、甘い話を書くという約束を交わすことで命拾いした話は置いておくとして、前回から一気に話が飛びましたね』
「たいっへん聞き捨てならない言葉があったような気がするのですが、話が進みませんから置いておくとしましょう。そうですね、一気に話が中学から高校入学直前に飛びました」
『真夜様との関係性が気になるのですが』
「私もなんで興味を持たれたのかさっぱりで。あの頃は知識を詰め込むことに必死でしたから」
『お兄様の為に色々勉強しなくちゃ!で頼みに行ったんでしたっけ』
「というか次期当主の予定なのに遠く離れた地で暮らして、一族のお仕事ノータッチ。本家に関わるお仕事はお兄様が熟していた状態では色々とまずいのでは?と」
『全く知らないわけでは無さそうでしたけど』
「でもお兄様のお役に立つためにはもっと必要でしょう?ってことで色々手を伸ばしたらいつの間にか――」
『真夜様に目を付けられちゃった、と』
「まさかの展開でした…。この段階で「候補とは名ばかりで次期当主だから」と言われた時は盛大にやらかした感が半端なかったです…」
『そして真夜姉さま呼び(笑)』
「笑い事じゃないですよ。何が起こったのかと思いました」
『しかもその後でお兄様にそのことを責められる未来が待っていますからね。うん、確かに笑い事ではなかった』
「…言う機会なんてそもそもなかったですけどね」
『暗躍しているわけですから言えるわけないですもんね。それにしても高校入学前にお兄様がその、ある種完成されちゃってますけど』
「そうなんですよねぇ。一体どこであのようなセリフを身に付けられたのか。…軍で先輩方に女性の口説き方を教わったりしているのでしょうか…?」
『嬉しそうですね深雪さん』
「そう考えるとワクワクしません?」
『軍で大人との付き合い方や社交を教わっていそうというのは同意です。だから出てくる軽口もちょっと未成年には返しが難しいモノばかりでしたからね』
「そしてあのお色気オーラですよ!…本当妹を口説こうとしているのかと勘違いしそうになる、あの言動の数々…立ち向かうのも大変なんですから」
『実際よく頑張ってたと思いますよ。というかお兄様この時点で無自覚とか恐ろしい。でもラノベ主人公の無自覚たらしと言われればこれも仕方がないのか、と』
「本当、ラノベ主人公あるあるですものね。しかもお兄様の場合妹相手に甘い言葉を述べるのが初期装備でしたから」
『知ってるからこそ疑問に思い難い、ということですね』
「無理ですよ!妹を異性として見るなんてありえないことだとばかり思ってたんですから」
『だからこそ最後やけくそのように誰もかれもお兄様に~、に繋がるわけですか』
「あれだけ甘い言葉を掛けられれば誰だって勘違いも起きるというものです」
『まあ、早々に若干二名程オチるわけですからねぇ』
「私の計画は完璧だったはずでしたのに…」
『いえ、初っ端から狂ってましたよー』
「え!?」
『それはそうでしょう。お兄様幸せにって誰の愛情も注がれてこなかったところにたっぷりと与えたらそれだけで満足しますから』
「で、でも妹相手だから、」
『それがただの妹であれば執着だけで終わったかもしれないでしょうけど、とんでもない最高傑作の美少女で、自分に尽くしてくれて、唯一衝動を覚えられる相手となったら流石に妹相手でも…ねぇ?』
「………つまり?」
『初めから計画は破綻していたんですよねー。無駄な足掻きでした!』
「……(スッ)」
『あ、ちょっと!無言でCAD構えて一体――』
「暑いですからね、氷像でも作って涼もうと思いまして」
『いいんですか!?私を凍らせると次回ッ――(キンッ)』
「はい、涼しくなりました。これで恥ずかしいお話も書かれずに済みますね。でもなんでしょう。とっても不穏な言葉を言いかけていたような…?」

―深雪が退室しました―


――


時間軸をすっ飛ばして入学直前の二人の生活から描かせてもらいました。
番外編の中学生編をこの時は知らなかったので全く想像もつかず原作軸へ。
でも知らなくてよかったかもしれません。…この二人にはちょっと参考にならなかったので。あとグダグダしたでしょうから。いつかそのネタを書いてみたいものです。
座談会は次回お兄様が出てくるようです。深雪成主は果たしてどうなってしまうのか(笑)
この時点ですでにお兄様無自覚に口説いてるんですよね。
本人にはその気は全くなく軽いジョークのつもりでしょうがお兄様ジョークでも妹には嘘をあまり言わなそう。本心交えて言ってそうなイメージ。
他所では普通に心に無いこと言えるんですけどね。
深雪成主の計画は初めから破綻しておりました。
いくらお兄様であっても献身的に尽くされ、家族として愛情を注がれ、幸せをたっぷり満たされれば見え方も変わってくるという。
もう手放せないほどに愛おしい存在になっていました。
何度も言いますが、自覚、していないんですけどね。

という裏話でした。
お粗末様でした。
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