妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします!分割版   作:tom200

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九校戦編⑰

 

皆お祭り騒ぎだ。

お兄様もこの試合で仕事が終わり、実質私たちの大会はここで終わった。

もちろんモノリスコードの応援はするけれど。雫ちゃんが大好きだしね。一緒に観戦する約束をしています。

しかし残す競技が一つとなり、それ以外のメンバーは全員手空きになっている事実に浮かれ、プレ祝勝会としてお茶会をすることになった。

明日出場予定の十文字先輩も許可していることもあり、遠慮なく皆カップを掲げた。

そこには怪我をした森崎くんたちもいる。

ばつが悪そうだが、周囲の一年生男子が盛り上げてくれているので居心地はそこまで悪くなさそうだ。

傍にいたほのかちゃん達にちょっと断りを入れて森崎くんのいるテーブルにやってきた。

すぐに周囲の男の子たちが気付いてくれたのでちょっと手を振って挨拶する。

 

「森崎くん、二人も怪我の具合はどう?」

「心配してくれたって聞いたよ、ありがとう。見た目は派手だけど痛みはもうほとんどないんだ」

「そうなの?よかった。あのね、ここの皆と一緒に森崎くんたちに優勝をプレゼントしようねって話してたの。プレゼントできてよかった」

 

ね、と男子の方を振り返れば皆顔を赤くして縦にぶんぶん振っている。

あれ?あの日の再来です?

前を向けば森崎くんたちも真っ赤です。あ~恥ずかしいこと言ってるもんね。素直に受け取りづらいかも、と思ったけど森崎くんはどもりながらもお礼を言ってくれた。

ほんと、皆いい子。

 

「深雪!」

 

ちょっと離れたところでエリカちゃんの呼ぶ声がする。

それじゃあ、と皆に手を振ってエリカちゃんの待つテーブルへ。

 

「ちょっとぉ。いーの?達也くんがいないところでそんなにふらふらしちゃって。てゆーかあいつら顔真っ赤になっちゃってたじゃん。一体何したの?」

 

エリカちゃん達は選手じゃないし本来はここにはいないはずなんだけど、七草会長が無礼講って言って無理に誘い、抵抗するエリカちゃんに食事代も浮くしいいじゃない、と庶民的なお誘いをしたらそれもそうね、と手のひら返してあっさり参加。

お金には困ってないだろうに。でも来てくれて嬉しい。

 

「何したって、ただの退院祝い?」

「ただのって…それだけであんなに赤くなる?」

 

怪しいと見られても本当にそれだけです。

きっと思春期なんです。

 

「達也くん寝てる場合じゃないんじゃないの?」

「そこは寝かせてあげて。ここ最近ずっと忙しかったんだから」

「それは分かるよ。達也はモノリスコードでも無茶してたし、耳だって怪我してたのに、そのまま働きっぱなしだったんだから」

「西城くんたちも疲労は取れた?」

「俺たちはほとんど観戦だからな」

「あ、あの!深雪さん優勝おめでとうございます!すごかったです!深雪さんが本物の妖精さんに見えました!」

「あ、ありがとう美月」

 

美月ちゃんの、圧が、すごい!

知ってる。これはオタクの圧。興奮すると止まらない奴です。

 

「ひらりひらりと舞う姿が美しすぎて!まるで夢の中にいるみたいで感動しちゃいました!でも途中あまりに儚すぎてこのまま人間界を去ってしまうんじゃないかって心配になるくらい」

「みーづーきー。ちょっと落ち着きなさい。周囲から見られてるわよ」

「はう!ご、ごめんなさいいい」

 

声がだんだん大きくなっていったからね。注目も浴びます。

それもついさっきの試合だから興奮も冷めやらない状態だものね。

他の人たちも集まって、俺もそう思っただの、綺麗だったよ!だの男女問わずいろんな方から声がかかります。

返事をする前にどんどん声が増えていき、さてどうしようかなというところで救いの女神が。

 

「私なんてその妖精さんの横を飛んだのよ?羨ましいでしょ」

 

小早川先輩だ。

一瞬どう反応するか迷う人たちに、今度は平河先輩も混ざる。

 

「むしろ感心するわ。よく気力だけで飛びきったわね」

「もちろん私だけの力じゃないことくらいわかってるわよ。ありがとう」

「どういたしまして」

 

すると周囲から、――あ、エリカちゃんだ――から拍手が送られ伝播していく。

もちろん私もそれに参加した。

 

「よく間に合わせたね」

「皆飛んだ時やばかった!鳥肌立った!」

「やっぱり最後は根性か、流石小早川」

 

どういう意味よー、と応戦しに行く先輩に陰りはない。

後輩に負けて悔しいだろうに、そんな素振りは一切ない。

 

「悔しいだろうけど、やり切ったからね」

「平河先輩」

「優勝おめでとう。私は司波くんに対して悔しい気持ちは抜けきってないけど、それでもすごいって思う。もちろん貴女も。突然の本選だったのに優勝しちゃうだなんて、すごいわ」

「ありがとうございます」

 

先輩は肩を叩くと小早川先輩の元に行った。

――恵まれてる、なぁ。

優しい人たちに囲まれている自分は本当に恵まれていると思う。

 

「深雪」

「雫、ほのかも」

「すっごい囲まれてたね」

「ほのか達だって」

 

彼女たちも優勝者だ。

見えてはいなかったが囲まれていたのは分かる。話し声は聞こえていた。

 

「達也さんは、部屋で休んでるんだよね…」

 

残念そうなほのかちゃんに言える言葉は少ない。

 

「明日はきっとすっきりした顔に戻ってるわ」

「そ、そうだよね!あんなに大変だったんだもん」

「でもその表情の変化気付けるの、どうせ深雪だけでしょ」

「え?わかりやすいでしょ?」

「「「「それはない」よ」」です」

「それはねーよ」

 

あらま。そんなに見分けつきません?つかねーよ、のレスポンスが早くて笑いが起きた。

楽しい夜は早く更けていく。

 

 

――

 

 

ちゃーらーちゃーらーちゃっちゃっちゃー。

昨夜はお楽しみでしたね?なんて聞いてくる宿屋の店主などおらず。

私は雫ちゃん達とホテルを出た。

お兄様はちょっと遅れるとだけ連絡があった。

おそらく後片付けのお話だろう。

ほのかちゃんはご不満そうだけど、私で我慢して、と言えば抱きつかれた。雫ちゃんも便乗。

うん。我らが一年A組は仲良しです。

そしてエリカちゃん達も合流。こうなったら皆揃って応援席で観戦だ!と九校戦メンバーとして一団に加わってもらった。

そろそろかな、と後ろを振り返れば、こちらに真直ぐ向かってくるお兄様の姿が。用事は済んだらしい。

 

「間に合ったか」

「おはよう、兄さん」

「え?深雪もう作戦良いの?」

「今日で大会はお終いだからって先輩方が」

「…一人じゃないところに皆の疲労が見えるわね」

「俺は終わるまで必要だと思うんだがな」

 

お兄様の発言に、皆が呆れた視線を向ける。

お兄様はなぜそんな反応を向けられるのか納得がいかないようだ。

しかし誰も説明をすることはない。すでにしても意味はないと悟っている。

皆がお兄様を理解してくれていて妹はとても感謝の気持ちでいっぱいです。

これからもよろしくね。

 

 

 

そして楽しいスポーツ観戦。

わあ。服部先輩がオフェンスで輝いてますね。

魔法が鮮やか。複合魔法も繊細で乱れもない。高校生とは思えない素晴らしい威力。

これだけ使えれば、確かに二科生に勝つことなんて目を瞑っても余裕と思い違いを犯すのも無理はない。

単純な魔法力だけならば、お兄様よりもはるかに上だ。

会長たち十師族ほどとは言わないが。

あれは規格外ですからね。しょうがない。

 

「すごいわね。これが本当のモノリスコード」

「…おい、俺たちがどんだけ頑張ったと思ってるんだ」

 

うーん。両者の意見がよくわかる。

確かにこれを見てしまうと、アレがいかに邪道な戦い方だったか。

でも勝負って邪道も王道もないのが現実だ。きっといい勉強になっただろう。

魔法科に通う生徒にとっての理想はこちらの試合だろうけど実戦だとどっちも必要な力。

来年はもっと複雑化するかもしれない。創意工夫が大事って身をもってわかっただろうしね。

閣下じゃないけど楽しみです。

 

「見ごたえあった」

 

試合が終わり、雫ちゃんがぽつり。

静かに大興奮でしたね。可愛かった。

 

「んー、昼までに時間あるしなんか買ってくるか?」

「暑いしアイスでも」

「賛成!」

 

じゃあ皆で、と思ったら人が混雑しているだろうから俺らが買ってくる、と立ち上がったのは西城くん。

やっぱり彼がモテないのはおかしい。

と思っていたら背後で女の子たちがきらりと目を光らせている。やっぱり!?そうだよね。

じゃあ男子だけで行こうとお兄様と吉田くんも立ち上がる。

――本来はここでお兄様は、私とほのかちゃん雫ちゃんと共にアイスを買いに行って非難を浴びるのよね。お兄様にとってただ妹とその友達に付き添っただけなのに。不憫。

でも西城くんのおかげでその非難は免れました。感謝。

 

「なぁんか、夏を満喫してるって感じするね」

「そうですね」

「帰ったら宿題三昧か~。自業自得だけどしょうがない、よね」

「ああ、エリカたちは免除じゃないものね」

「こっちでも多少は消化してるんでしょ?」

「ちょっとは。でもほとんど残ってる」

「大変ね。特に西城くんたちは出場してるんだから宿題免除されてもいいと思うんだけど」

「正式なメンバーじゃないからね。たぶん認められない」

「ですよね」

「だったら夏休みの宿題手伝う?」

「え!?」

「いいんですか?!」

 

私の提案が意外だったのか。美月ちゃんもエリカちゃんもひどく驚いていた。

横を向けばほのかちゃん達も驚いている。

 

「だって、陰でいっぱい手伝ってくれてたじゃない。それに夏休みだもの、学校以外でもおしゃべりしたいなって」

「!それいい!」

「それだったら私も参加したい!宿題じゃなく勉強道具持ってく!」

「深雪に教われるなら頼もしい」

「いいわね。それも楽しそう。場所はどうしようかしら?」

「――ねえ、それなら海水浴も一緒にしない?」

「「「海水浴?」」」

 

話が急に飛び首を捻ると、ほのかちゃんがぽん、と手を叩く。

 

「小笠原の別荘ってこと?」

「うん、そう。まだ父さんと詳しく日程は決めてないんだけど、今年も行くことにはなってるの。友達も呼んでいいって。どうかな?」

「別荘…」

「スケールが大きいわね」

「しかもプライベートビーチだよ」

「「「ぷらいべーとびーち」」」

 

聞きなれない言葉だけど、そういう意味、よね。流石お金持ちの社長令嬢。

 

「十人くらい余裕だから皆で行けたらなって思った。達也さんたちも来てくれるかな?」

「兄さんの日程は聞いてみないとわからないけど」

「…あ、そっか」

「え?」

「ついうっかり。深雪と達也さんいつも一緒のイメージだったから」

「「「あーたしかに」」」

 

そんなに一緒のイメージだろうか。

今回も学校も一緒にいることってお昼とか登下校くらいなんだけど。

 

「確かに考えてみたらそんなに一緒にいないですね」

「ほんとだ。なんで一緒のイメージなんだろ」

「たぶん四月の件じゃない?ほら、二人を引き裂いちゃってた期間があったから、それを無くしたから一緒にいるんだって錯覚した、みたいな」

「それはある、かも」

「達也さんが過保護のせい、もありますよね」

「あるある」

 

「――何があるんだ?」

 

姦しく女の子同士で話していたらあっという間に時間が経っていたのかお兄様たちが戻ってきた。

アイスを皆に配っている間に搔い摘んで海に行くことを提案した。

 

「日程か。おそらく二三日くらいなら何とかなると思うが。すまん、帰ったら確認する」

「いいよ。思い付きの話だし。もし達也さんがいけなければ深雪だけでも」

「何が何でも時間は作るからそれは無しだ」

 

ばちばちとなぜか火花を散らす二人。

 

「…なんかあったのこの二人?」

「さあ…。ピラーズ終わったあたりからなぜかあんなことに」

「雫、深雪とかなり親密になったから、達也さんの気が気じゃないってことかなって思うんだけど」

「えーと、雫ってソッチの趣味があるとか?」

「ちょ、エリカちゃん!」

「そ、そそそれはないんじゃないかな!?」

 

ほのかちゃん、その動揺は誤解を招くよ。

そして男子たちよ。なんだか無駄にドギマギさせてすまない。何にもないから。

アイスをぱくり。おいしい。

 

「深雪、こっちも食べるか?」

 

流石お兄様、味が違うのを買ってきてくれたのね。しかも両方私の好きな味。好みもしっかり把握されてます。

 

「ありがとう。こっちのも食べて」

「ああ。もらおうか」

 

お家ではないので食べさせ合うのではなく互いのアイスをつつき合います。それくらいのTPOは持ち合わせてますので。

でもこれでも仲良し認定されちゃうの?皆の目が生暖かい。

 

「そういえばさっきまで何話してたかってことだけどさ」

 

エリカちゃんが端折った私たち兄妹のイメージの話を広げる。

閉じたままでよかったんだけど。

ままならない。

 

「あー、確かに達也たちって一緒にいるような気がするな。教室だって違うのに」

「…それって達也が原因じゃないか」

「俺が?」

 

お兄様も初耳みたいな顔してます。

しかしお兄様が原因とはこれ如何に?

 

「ほら、クラスでも当然のように彼女の話が出るじゃないか」

「ああ、深雪は~ってやつ?」

「言われてみれば確かに」

 

ちょ、ちょっと待って。クラスでいったい何の話してるの!?

 

「ほら、深雪って有名人じゃない?だから結構クラスでも話題になったりするのよ。そうすると達也くんの深雪自慢が始まるわけ」

「自慢って…心当たりがないのだけど」

「こういう謙虚なところは十分可愛いだろう」

「ほら、こういうの」

 

しまった!変に水を向けてしまった。そしてそれにひょいっと乗っかるお兄様。

いたたまれない。…あいすおいしい。

 

「こうやって恥ずかしいのを誤魔化そうとするのも可愛いだろう」

 

おっとまずいぞ。これは揶揄いモードが展開されようとしている。

でもね、お兄様すでに周囲はお腹いっぱいの顔してます。まだお昼食べてないのに。

 

「兄さん、それ以上揶揄うなら私にだって考えがあるわ――帰ったら一時間部屋から出ない」

「すまない。俺が悪かったからそれだけはやめてくれ」

 

ハグもお茶も無しと言っているのが言外に伝わったのか、お兄様は速攻で謝った。

 

「やっぱり家ではいつも一緒なんじゃない」

「せいぜい夕食とその前後くらいよ。ずっとじゃないわ」

「それ以外はお互い部屋にいるからな」

 

プライベート空間はきっちり分かれてますと言うとこれまた驚かれる。

だからなんで。

家族ってそんな四六時中一緒にいるものじゃないでしょ。

釈然としないままお弁当を食べ、午後の決勝戦が始まった。

先ほどと似た戦法かと思いきやディフェンスで動かなかった十文字先輩が前進していた。

これは――一条くんと似た圧倒的力でねじ伏せる作戦か。

一条くんと違うのは、息もつかせぬホラー映画じゃなくてタイムアタック系ゲーム。あの壁が迫ってきて何もできなくなる奴。

本来のファランクスとは用途は違うように見えるが絶望を見せるにはいい手法かもしれない。

何をしてもかすり傷一つ付かずに迫ってくるって恐怖よね。

これぞ十文字、これぞ十師族という見せしめの試合だった。

そしてちらりとこちら、――これはお兄様かな?に意味ありげな視線と笑みを浮かべる先輩。

あれ、二人って何かありましたっけ。…ああ~、そういえばお兄様この後そういうお話が来るのか。

YOU、十師族の誰かと婚約して十師族になっちゃいなYO、のお誘いですね。

お兄様の強さに気付いたならそう思うのも無理ない話だ。ついでに私の魔法力もそう思われても仕方ない。

婚約者あてがわれる前にまず恋人募集なのでそういうのはちょっと。でもそこから意識するってのもありかしら?

優勝に沸く応援席でぱちぱち手を叩いて友達と喜びを分かち合いながら、大会競技はすべて終わった。

 

 

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