妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします!分割版   作:tom200

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夏休み編④

 

 

「あ、おっひさー!時間ぴったり」

 

待ち合わせ場所には既に皆が揃っていた。

今日は皆で水着を選んでランチする日。

女の子四人に対して男子二人は若干居心地が悪そうだったが、お兄様は平然と近づいて言葉を返す。

 

「ぴったりじゃないと皆に迷惑をかけるからな」

「ん?どゆこと?」

「深雪の周囲にサークルができる」

「「「「「「ああ~」」」」」」

 

納得いただけて何よりです。

さっそく周囲の視線を感じたのか、慌てて建物に入った。

 

「…深雪、外出して大丈夫なの?」

 

入ってすぐ、視線を集中させてしまう光景を初めて見た彼女たちは、改めて私の異常さに気付き心配してくれた。優しいね。

 

「兄さんがいるからね」

「それにしたってここまでとは」

「女性男性関係のない所が、よりすごいですよね」

「深雪の魅力に性別の壁はない」

「確かに…。温泉すごかったもんね」

「「温泉?」」

「その話はやめない?悲しくなる…」

 

ほのかちゃんの持ち出した話題は止めさせてもらう。

あれは私にとっては悲しい思い出。大浴場ボッチ事件である。

エリカちゃんは聞きたそうにしていたが、あの時の打ちひしがれていた私を思い出したのか、二人は曖昧に濁してくれた。

因みにこの時お兄様たち男子は、後方で何やら楽しそうに盛り上がっていた。主に話しているのは西城くんだけど。

 

(…よかった。温泉の話はお兄様に聞かれてない)

 

あまり聞かれたくない話なのでそっと胸を撫で下ろしていると、会話はもう明後日の方向に飛んでいた。

 

「九校戦もあったせいで今年は夏休み短いよね」

「わかる」

「来年もきっとこんな感じになるんだよね」

「来年はエリカが選手になってたりして」

「えー、ないない!」

「エリカちゃんの実力なら十分選ばれそうですけど」

「今年の種目はエリカには相性が悪かったけど、来年はマジックマーシャルアーツみたいに魔法と格闘両方が必要になる競技が増えそうじゃない?」

「どうして?」

「兄さんと一条さんの試合とか、――九島閣下のお話でも出たけど、このところの九校戦も大技が凄いみたいなのが主流だったけど工夫次第では結果が変わることもあるって証明されたでしょう?なら、大会内容も見直されるんじゃないかって。ただの勘だけど」

 

来年は確かに種目が総入れ替えになる。

それはこれから起こる大事件が原因だけど、多分元々一つくらいは今言った理由もあるんじゃないかなと思ったり。

 

「…なんか深雪が言うとありえそう」

「あの試合、すごかったもんね」

「でもあの試合っていえば、深雪どうなのよ?」

「え、何が?」

「一条くんよ。踊ってたじゃない後夜祭。連絡先くらい交換したんでしょ?」

「一条くん、深雪さんに一目惚れしてましたもんねぇ!」

「深雪の試合の時の一条くんの顔!スクリーンに映っちゃってさ。あれってイケメンじゃなかったら許されない顔だったよねー」

「深雪と踊ってた時も顔が赤かった」

「そ、それでどうなの深雪!夏休み連絡きた?!」

 

おおっと、女子の勢いが前のめり。

皆恋バナ好きですね。私も大好き。他人のならば。

何で試合で一条くん?と思ったらそんなことがあったのね。一条くん顔が良いから観客席から抜かれたんだろうけど、油断してたのかな。

というよりなんで交換してるの前提なの?

 

「連絡先の交換なんてしてないわよ。そもそも本当に一目惚れなんてあったの?皆言ってたけど話してても全くそんな風に感じなかったし」

 

全くっていうのは嘘です。

めっちゃ好みの容姿だったんだろうなってくらいには見つめられてました。

でもねぇ、そこに恋が付くかはまた微妙じゃない?話したのもあのちょっとの間だけだし。

 

「深雪本気で言ってる?」

「容姿については見られたのは分かるけど、他の人と反応一緒だったような気がするわ」

「…え、そういうこと?」

「つまり周りと同じ反応だから特別何かを感じなかった、と?」

「…これ深雪じゃなかったら鼻持ちならない話になると思うんだけど…」

「深雪さんクラスならむしろ当然という気がしますね」

 

何やら納得されたけどなんか思っていたのと違う気がする。

一条くんの反応って、一目惚れして緊張っていうより、女子慣れしてないのかな?っていうような緊張振りに思えたんだけど。皆にはどう見えてるんだろう?

私以外の皆がわかり合ってるのが羨ましい。ここでも疎外感。

 

「もしかして一条くんヘタレとか?」

「モテすぎて自分からいったことがないのかもしれませんね」

「深雪に気後れするのはしょうがないけど」

「そもそも達也さんに負けた時点でチャレンジ失敗」

「「「ああ~」」」

「何に納得してるの?兄さんとの勝負って関係ある?」

「あるある」

「大いに」

「むしろ最大の壁ですね」

「越えなければお付き合いは認めません、みたいな」

 

あ、ああ…そういう。

な、なんか一条くんごめんね。居もしないのに勝手に盛り上がってしまった。しかも、残念な感じにオチを付けて。

なんだろうね。彼には不憫が似合うというか…ってこれも失礼な話か。お詫びもかねてこの夏何かいいことがありますように祈ってます。

 

 

 

そんなことを話していたらあっという間に目当てのお店に到着。

うーん、女性物9割に男性物1割。水着売り場に酷い格差を感じる。

まだオープンしてそんなに時間が経っていないこともあって客はいなかった。貸し切り状態だ。

店員さんがこちらを見て固まるのはいつも通りなので気にしない。

 

「思ったより種類あるね」

「こっちは今年の流行みたいだけど、…今年って派手目なのが多い?」

「できれば体型があまり出ないものがあるといいんですけど」

「美月この間の服とかすっごく開放的だったじゃない」

「ふ、服と水着は違うじゃないですか!」

「…ほのか。攻めるならこっちのブース」

「ちょ、ちょっと刺激強いんじゃないかな!?もうちょっと大人しめで!」

「そんなんじゃ印象に残らない」

「えーでもぉ」

 

いいですね。女子の華やかな会話は聞いているだけで若返る心地です。若いのですけど。

女の子たちがキャッキャと選んでる姿はそれだけでもう眼福だ。

さて私も選ぼうか、としたところで店員さんが近寄る気配…。商品おすすめとかあまり今のご時世無いはずなんだけど。

そっと離れるべきかな、と踵を返そうとしたらすぐそばにお兄様が。

流石、すでに察知されてましたか。動きが早いですね!

 

「どういうモノがいいんだい?」

「えっと、あまり肌が多く見えないものにしようかと」

 

そうか、と言うとお兄様は店員とは逆の方向に案内してくれた。

連れがいることで店員も無理に追いかけては来なかった。

 

「このあたりか?」

「そうね」

 

そして着いたところは私が選ぶ予定でいた、体のラインを隠すようなフリルのついた水着売り場。

的確ですお兄様。

 

「兄さんは二人と選ばなくていいの?」

「というより男三人で水着を選んでもな。どうせならお前に選んでもらうか、お前のモノに合わせるかの方がいい」

 

…水着を合わせるとは?あ、差し色とかそういう⁇兄妹にペア感必要ですかね?

プライベートビーチなら見る人はここにいるメンバーだけだと思うのだけど。もしかして別の機会を想定されて?

まあお兄様がいいならそれでいいのだけどね。

 

「困ったな。深雪にはどれも似合うから選ぶのは難しい」

「…この間みたいに二十着も試着はいやよ?」

 

念のため釘を刺すとわかってると苦笑された。

 

「それに今回は皆で買いに来てるしな。時間が限られてる」

 

つまり二人きりであればこの間の再現になっていたわけですね。

皆と買いに来て正解だった。

 

「おーい、深雪は――って達也くん自分のは?」

「後回しだ。店員が深雪に目を付けたからな」

「え…マジ?」

「マジだ」

 

ボディーガード中です、と答えると非難の目があっという間に驚きに変わる。

ごめんね、こんなのばっかりで。

そして憐みの視線を向けられた。

 

「深雪アンタ、本当に大変ね」

「…心配してくれてありがとう」

 

それしか、返せなかった。

結局お兄様と水着を選ぶことになり、今年の流行も取り入れて大きな花柄の水着をチョイス。

でもなんで流行のモノを?と訊ねると、来年新しいのを買えるだろう?とすでに来年のことまで計画しているお兄様は流石だなと思いました。策士は日常も策を練っている。

そしてお兄様の水着はすぐに決まった。

 

「深雪―!もう試着した?」

「まだよ。皆は?」

「これから。皆で水着チェックしよ」

 

これは魅力的なお誘いだ。

横のお兄様も行っておいでと背を押してくれた。

今やその場で洗浄除菌滅菌できる時代。試着トラブルが起きにくいので水着も試着自由なお店もある。

ここも一応その設備があるらしいのだけど、店員さんを見る限りあまり質が良いとは思えないんだよね。後で皆の分は私の方で何とかしましょ。

試着室を交互に使い、各々着替えて披露する。

トップバッターはエリカちゃん。派手な原色ながらシンプルなデザインが彼女のプロポーションの良さを引き立てていた。かわいい。

続いて雫ちゃんはフリル多めの少女デザインでありながら、本人の魅力のせいでちょっと怪しいおじさんたちを引き寄せる危険さがあった。ギャップが最高、すき。

美月ちゃんは水玉のセパレートタイプの水着でビキニほどの露出度はないものの、その…大きさのおかげも手伝って胸のあたりがですね、怪しからん状態に見えるわけでして。とってもグッドだと思います。えっちぃ。

そして最後はほのかちゃん。同じくセパレートながらワンショルダーにパレオとぐん、と大人っぽさのある組み合わせ。隠しているようで実は大胆!なデザインはそこに視線を集めますね。それにメリハリあるぼでぃー。たまらんです。

…心のおじさんにはお帰り願おう。友達を変な目で見るの、いくない。

とてもかわいかったです。幸せな時間。これをリゾート地で味わえる?お布施はいくらですか?

 

「深雪は、なんというか保守的なんだけど、その」

「ボディラインをぼかしている分、…すごいね」

「人間離れした美しさってこういうことを言うんですねぇ」

「可愛いよ、深雪」

「…ありがとう雫」

 

唯一雫ちゃんだけが純粋に褒めてくれました。

人外ですかそうですか。

後方にはお兄様たちが気まずそうに立っています。皆感想聞いてたもんね。吉田くんなんて真っ赤です。

私?聞かないよ。そんな時間をこの恰好のまま過ごしたら人垣形成しちゃうからね。ただでさえ今でもエリカちゃん達のおかげで人が止まっていたというのに。

あ、そろそろ本格的にまずそう。着替えないと。

人が動けなくなるほど人だかりができそうな気配に急いで試着室に戻り、着替えて念のためこっそりCADを起動してちょちょっとクリーンに。皆の分も纏めておいてもらっていたから全部一気にきれいきれいします。

戻ればお店は大盛況。この中の何人が買うかわからないけどね。さっきのあの子のデザインはどれ?とか。視線は商品とこちらを行ったり来たり。長居しすぎたかな。

 

「そろそろいい時間だし、ランチ行こっか」

 

エリカちゃんの号令により商品を購入した私たちはレストラン街に向かった。

 

 

――

 

 

賑やかなはずのレストラン街に訪れる静寂。どうもどうも。私が喧噪泥棒です。楽しい時間に邪魔してごめんね。

 

「ほんと、スゲーなお前の妹」

「自慢の妹だ」

「…達也、わかってて言ってるね?」

 

男子もわいわい楽しそうですね。

気を取り直してお店選び。

と言っても基準は簡単。八人で座れるところが希望だったので選択肢が絞られすぐに見つかった。

ファミリー向けの店なので種類も豊富。

男子も女子も満足できる品ぞろえだ。

メニューを選んで注文も店員ではなくタッチパネル方式なのも楽でいい。

選び終えてひと心地着いたところで話題は今日の出来事へ。

 

「改めてだけど、深雪の美貌って、いちいち外出もままならないわね」

「…視線、すごかった」

「九校戦の時もそうだったけど、外だとよりはっきりわかるね」

「だから達也の観察眼が優れてるのかってくらい反応早かったよな」

「ああ、売り場での出来事だね」

 

吉田くんあえて水着を抜いたな、とは茶化さない。

いいんです。これくらい慎みを持つべきなのですよエリカちゃん。

水着売り場でのというのはおそらく店員さんのことかな。どういう声掛けをする気だったのかわからないけれど、友達連れで来ているのに一人の時を狙ってくるあたり、あまりいい気はしない。

 

「だからはじめ、女子だけで買い物に行くと聞いたときは肝が冷えたな」

「あ~、水着買うくらいなら大丈夫かなって思ったんだけど」

「見通し甘すぎましたね」

「私たち、いつの間にかに深雪に慣れ過ぎてたんだね」

「初め傍に寄るのにも緊張したのに」

 

え、雫ちゃんでも?それは初耳。

ほのかちゃんはバリバリ緊張してたのは覚えてる。大抵の人がその反応するだから慣れてるけど。

 

「もう、いいじゃない私のことは。兄さんが守ってくれるから大丈夫ってことなんだから」

 

私の開き直り発言に一同唖然としたけど、すぐにお兄様を見て納得。そんなもんです。

 

「深雪の安全は俺が守るからな。お前は好きにしたらいい」

 

微笑むお兄様。コーヒーを追加注文する仲間たち。

慣れたね、皆。

そして食事が運ばれ、エリカちゃんと西城くんが中心となって盛り上がり、途中分け合いっこする私たちに無言のコーヒーアピールをされたりと(分け合いっこといってもお皿に互いの頼んだものを乗せあっただけなんだけど。雫ちゃんとは直接お皿に手を伸ばし合ったりしたし、こっちの方が親密じゃない?)賑やかな時間はあっという間に過ぎていった。

 

 

――

 

 

「んじゃ、今度会う時は海ね」

「楽しみ!」

「またね」

「気ぃつけて帰れよー」

 

次の約束をして解散するメンバーを見送ってまだ日が傾く前にお兄様と帰宅。

 

「楽しかったかい?」

「ええ、とっても」

 

初めての経験ばかりだった。

友達とお買い物に行くのも、皆で街中を歩くのも。とっても新鮮な出来事で、楽しい時間だった。

二人の外出もいいけれど、二人とは違う良さがあった。

 

「お兄様、お忙しい中時間を作ってくださってありがとうございました」

「深雪が気にすることじゃないよ。俺も十分楽しんだ」

 

お兄様にとっても今日は充実したお出かけだったみたいだ。

その言葉にほっとした。

 

「ところで深雪」

「はい、なんでしょうお兄様」

 

「温泉、とは何のことだ?」

 

……ほっとしたところを突き落とされた。

 

「え、と?」

「ほのか達と話していただろう?」

 

聞かれていた!

何の反応も無かったから安心してたのに。

 

「それは、その」

「何か悲しい出来事があったのだろう?俺はそれが心配だ。深雪、いったい何があったんだい?」

「そんなに、その…アレな話ではなくてですね…」

 

どうしよう、うまく言葉が出てこない。

 

「焦ることはないよ。時間はたっぷりあるからね。お茶を飲みながらゆっくり話を聞こうか」

「そんな時間は――」

「深雪、時間はひねり出そうと思えば出るんだよ。だから心配はいらない」

 

それって身を削って出すものですよね?心配しかないのだけど。

冷汗が背中を流れる。

逃げ場がどんどん狭められていく。

 

「紅茶にするか?それともコーヒー?」

 

選択できるコマンドに逃げるがない。

楽しかったお買い物は恐怖の尋問と言う名のティータイムにより遠い記憶となり仕舞いこむことになった。

 

 

 

「…深雪を前に理性など持つわけもなかったか。しかし女風呂では俺が守るわけには」

 

特殊な事例ですのでそんな真剣に対策を練ろうとなさらないで!こんなことに貴重な時間を使わないで!

お兄様に懇願するように訴えて、ようやくお兄様は落ち着いた。

 

 

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