妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします!分割版   作:tom200

45 / 265
生徒会選挙編
生徒会選挙編①


 

 

なんというか、あけすけな女子トークって男子がいる場合、するのは避けるべきではないかな?

お兄様が大変居心地悪そうです。

 

「先輩方、妹の教育上よろしくないので、そのような会話をなさるなら我々は別のところに移動しますが?」

 

あ、違った。

居心地も当然悪かっただろうけど、私に聞かせたくない方が勝ったらしい。もしかしたらただの口実かもしれないけれどその割にね、表情がね。とっても嫌そう(妹視点)。

はっきりしているのは夏休みを経て、お兄様の過保護がレベルアップしました、ということ。…なんで?何かあったかなと考えるも思い当たることがない。

ガールズトークは時に勉強になるから聞いておくのも大事なんですけどね。

…こういった話は前世とは擦り合わせようがないし。

でも結構生々しいね。知った先輩たちの口から聞くと余計に。

渡辺先輩は彼氏の話だからいいけどその他は、ねぇ。

誰がどうとは言わないけれど、モテるって大変ですね。

これ、もしかしてお兄様へのモテて大変!アピールなのか、はたまた女の子も大変なのよアピールなのか、もっと直接的な早く手を出せアピールなのか…は流石に無いか。ともかく大変だね。

 

「過保護にするのもいいが、こういうのは知っておかないと彼女の場合対処が大変だろう」

 

もっともらしく言ってますが、渡辺先輩の目は揶揄いに満ちている。

悪い先輩の顔だ。

七草会長もお揃いで、親友同士仲良しですね。

 

「お兄ちゃんとしては知りたくないお話かな」

 

まあ妹の性事情を聴きたい兄というのは世の中存在しないと思う。

特にシスコンであれば余計に嫌がるのではないだろうか。

なので自他ともに認めるブラコンである私も援護射撃をば。

 

「先輩方、私ひとりでしたらいいでしょうが、男性がいるところで話す話題ではないことは確かでしょう?それとも、もしかしてこの場で享楽に耽るおつもりでしたか?一人の男性に対して、とはなかなかなご趣味だと思いますが、先輩方は仲がよろしいのですね」

 

にっこり微笑めば先輩たちは固まった。

深雪ちゃんがこう言った話に突っ込んでくるとは思わないだろうからね。しかも反撃も加えるなんて思ってもいなかっただろう。

お兄様から鋭い視線が飛んできますが私は引きませんよ。お兄様を揶揄おうとしたのですから、相応の報いは受けてもらいませんと。

 

「後輩を揶揄うのも、相手を見てからの方がよかったようですね」

 

ため息をつくのは市原先輩。

話にはほとんど加わってはいないものの、会話に参加していたのに注意する側へ回ることで切り捨てましたね。変わり身が早い。かっこいい。

中条先輩はずっとわたわたして顔を赤らめていたので、どっちかっていうと被害者のようだけど、実は結構へーと感心して聞いてもいたから同罪なんですがね。可愛いので許しちゃうよね。

 

「先輩方もこれから受験ですものね。ストレスも溜まるでしょうが、揶揄うにしても慎みはあった方がいいと思いますよ。兄さんだからこの程度で済んでいますが、他の男性で逆上でもされたら問題ですから」

 

いくら強い先輩方であっても学校でそういったトラブルに巻き込まれるなんて、噂でも広がったら良くないからね。だからこの話はここでお終い、と諭せば先輩たちは反省したように頭を下げて、この話を終わらせた。

これでいい?とお兄様を見れば若干不服そうだけど治めてくれたようだ。

 

「受験、もだけどその前に引退があるわね」

「そういえば会長選挙は今月でしたね」

 

今月、という割に焦りがない理由を市原先輩が説明する。

要はほぼ出来レースなんだそう。

新入生総代を務めた人間がやった方が、トラブルもなく皆が認めてもくれるだけの成績、実績もあるからケチもつきにくい。

だから例年通りすぐに決まると思っていた――ようだけど、見通し甘すぎませんかね?

総代が中条先輩なことわかってましたよね?彼女の性格を知っていて楽観視していたのは、服部先輩の可能性もあったからかな。

せめて九校戦の祝勝会で意思の確認をしていればよかったのに、とは後の祭りか。

案の定、中条先輩は現段階で生徒会長になる気はないようだ。

話は流れ、生徒会長にはならなくても来年の九校戦は選手として中条先輩も出なくてはならないことを告げられ、先輩は泣きそうになっていた。

 

「中条先輩にとって生徒会長とは七草会長のように素晴らしい人なんですね」

「え…ああ、そうですね。やっぱり会長というからにはしっかりした人の方がいいと思います。だから服部くんがやってくれた方が皆も納得すると思いますし」

 

うん。理想があるなら自分なんか、って考えるのもおかしいことじゃない。

今これ以上私が何か言うのは、ただの追い打ちになるだろう。

 

「そういうものなのですか」

 

まだよくわからない、と不思議そうに見る私を中条先輩はニコニコ先輩の顔をして見守っていた。

 

 

――

 

 

原作と違い、お兄様は風紀委員ではない。

だけどお兄様はどうあってもこの世界の主人公なのだな、と思うのは騒動の渦中にどうしても巻き込まれてしまうということだ。

 

「服部先輩は部活連の会頭になるそうだ」

 

話を聞くと桐原先輩と花音先輩が口論しているところに出くわし、仲裁したところ、学内ニュースで一番ホットな話を持ち出されて立ち話が始まり、服部先輩から直接聞いたのだと桐原先輩が噂話に特ダネを放り込んできたらしい。

なんというか本当に面倒見いいですよね、桐原先輩。

そして先輩たちの立ち話に参加させられるお兄様って…。

もう一つ気になることといえば――お兄様は今朝、八雲先生に教わったんですかね?『快楽点』。喘がしちゃったんですか?花音先輩。

確か原作では二人の争いを穏便に止めるためにツボを突いたと記憶していますがどうやって止めたんだろうね。聞けないけど。

 

「ではお二人の立候補者が消えた、ということですか」

「このまま何事もなく終わるということは」

「ないのでしょうね」

 

お兄様も嫌な予感を覚えたのだろう。

顔を見合わせて二人してため息を吐いて。

 

「幸せが出て行ってしまいましたね」

「ならすぐに補充しないとな」

 

補充というよりこれはたぶん前借りになるのだろうな。ハグをしつつ頭を働かせる。

さて、私はどうしようか。本編通りに事が進むことのほうが都合がいいのは事実。

七草会長との特大恋愛フラグはここが分岐点ですからね。あまり逃したくないイベントではあるのだけど、そのためには私だったり、お兄様だったりが候補者に祀り上げられそうになったりするわけで…。

だけど原作と決定的に違う点がある。

お兄様は二科生どころか一科生にも嫌われてはいないのだ。

九月の登校から、皆お兄様に気さくに話しかけるようになった。九校戦が影響していることは間違いない。

今まで私や会長からの贔屓だとか思惑が、とか言っている人たちは少数ながらいたはずだが、あの試合を見て見方を変えた者だったり、運動部の部活内で話題になって実力は本物であると太鼓判を押す者が現れたことで、マイナスイメージがほぼ消え失せたのだ。

凄いね九校戦。

どうして原作では同じだけの活躍をされたのにこんなにうまく事が運ばなかったのか?…たぶん私が過剰に反応したり、褒めたたえるのが女の子たちばっかりだったから反感しか買わなかったんだろうな。

ハーレムではやっかみしか売ってないからね。

とはいえ原作から変化があったとはいえどう動いたものか、とあまり本腰入れて考えられないのは、原作の流れを変更することにメリットを感じないからだ。

私やお兄様のような一年生が生徒会長になるなんて、生徒会長としての一番の旨味とされる絶大な権力と将来の知名度、貢献度を得られる人が一枠減るということになる。

恨まれるとまではいかないまでも、面白く思われない可能性も出てくるだろう。やっかみをわざわざ買う必要などない。

中条先輩にとってその一枠が必要かはわからないけれど、持っているのといないのでは将来的に影響に大きな差があるはずだ。

 

(――つまり下手に動かず流れに身を任せての静観して原作通り中条先輩が会長になる、がベストか)

 

違う点があろうとも原作強制力が働くはずだ。

流れに身を任せる、という結論に至った。

 

 

 

お昼に生徒会室ではなく、食堂でみんなと食べていると、ここでも話題は生徒会選挙だ。

どうやらさっそく生徒会が改革の旗頭的に一年の二科生を生徒会長に選出するのでは?と噂が流れているようだ。

お兄様のことですね。

お兄様はすでにその話を聞いていたのか、ちょっとうんざり気味だ。お疲れ様です。

クラスの皆は賛成ムードなのだそう。でもお兄様は当然乗り気ではないのでちょっぴり不機嫌に。

ほのかちゃんは応援します!と張り切ってるけどよく見て。本人嫌がってるから。

 

「兄さんは皆の期待の星になってしまったのね」

「…勘弁してくれ」

 

参っているお兄様というのも珍しい。

本当に高校に通うと珍しい、見たことのないお兄様に出会える。それが嬉しいのだけど、お兄様にとっては不幸なのかしら?

 

「深雪?」

 

笑っているのを見咎めたのか、低い声で名前を呼ばれるけれど、頬は戻らない。

 

「ごめんね。打ちひしがれる兄さんも素敵よ」

「…複雑だ」

 

あらま。素敵と言われて喜びたいけど、打ちひしがれてることにそう評されるのは納得がいかない、と。

困った。笑いが止まりません。

このままじゃご飯が食べられない、と困っていると一人の見覚えのある生徒が近づいてきた。

直接かかわってはいないのだけど、ある種私たち兄妹の影響で有名になった人――演劇部の部長さんだ。

 

「司波兄妹に話があるんだが、いいかな?」

「あれ?演劇部の部長さん、だよね」

 

エリカちゃんが真っ先に気付いたけれどお兄様はピンと来てないようだ。

 

「ああ、あのプリンセスとナイトの!」

 

その美月ちゃんの言葉に他のメンバーも思い至ったみたい。

 

「あーあれかー」

 

そんなのあったなー、とは西城くんで、吉田くんは見に行ってないけど噂で聞きかじった程度だそう。

因みにほのかちゃんと雫ちゃんは見に行ったらしい。

演劇内容としても面白かったんだって。

第二弾まであるとは聞いていたけれど私も見たことはないので噂どまりだ。

 

「その、演劇部部長がどのような御用でしょうか」

「すまない。ここでは少し話しづらいことなんだ。放課後でいいから少し時間をもらえないかな」

「俺は大丈夫ですが――深雪は?」

「私も少し遅れても問題はないかと」

「なら演劇部の部室とは別の準備室があるんだけど知っているかな?――ここ、この部屋で待っているから来て欲しい」

 

どうやら内密の話らしい。

お兄様と顔を見合わせて、頷き合うとお兄様が了承を伝えた。

去っていく先輩をしばらく見つめながらなんだろうね?と話してお昼は終わった。

 

 

――

 

 

あっという間に放課後。

お兄様と待ち合わせて部屋に行くと、先輩は私たちの姿を見て立ち上がると勢い良く頭を下げた。

 

「まずは君たちに謝罪させてほしい」

 

思い当たることのなかった私はお兄様を見たのだけど、お兄様は何かを察していたのか、険しい顔で見下ろしていた。

 

「――頭を上げてください先輩。まずは説明をお願いします」

「そう、だね。まずは二人とも座ってくれ」

 

椅子は全部で6脚あった。お兄様が引いてくれた椅子に腰かけ、お兄様もその隣に腰かけるのを静かに見ていた先輩は、大きく息を吸い込んで自身も座ってから話し始めた。

 

「俺は元々あまり創作が得意でなくて、うちの部の伝統で新歓は部長の創作でショートを作ることになっていたんだが俺の手に余っていてな。だから部員に頼んで去年のモノをやろうとしていた。部員たちは納得はしていたがあまり乗り気でなくてな。もしかしたら伝統ある我が部も新入部員数が定数割れする恐れもあった。

部長として部も纏められず焦っていた時だ、――君たちを見たのは。

衝撃だった。雷が落ちると表現されるがあれは本当なんだな。スパークが頭で弾けた」

 

滔々と語り始める先輩に、私は思った。

 

(先輩、創作苦手なんじゃなくただ好みの題材が見つかってなかっただけだよ。でなきゃそんな表現できないもの)

 

確実に創作できるオタクです。ようこそこちら側の世界へ。

要約すると、先輩は四月の騒動でインスピレーションを受けて台本を書きあげることができ、それが評判となり続く作品も調子がよく人気が出たのだとか。

恐れていた部の内部分裂も避けられ、新入部員は過去最高。

そこで更に自信をつけた先輩はこの作品を製本、この夏某所のイベント会場にて販売したらしい。

どう聞いても同人即売会ですね。百年経っても廃れない文化、素晴らしき煩悩。

一次創作は初めての場合そこまで売れることはない。先輩は特に告知もしなかったのでほどほど売れたらしいのだが――そこで事件は起きた。

まさかの買ってくれた少数の人の中に出版社の人間がいて、その本に目を付けたのだとか。

今の時代にこの類の小説は珍しい着眼点だ、と。今時代はこれを求めずにはいられないだろう、と熱烈なオファーに先輩は――疑心を抱いたらしい。こんな旨い話があるはずがない、と。

危機感がちゃんとあって安心しましたよ先輩。

だが調べると出版社も本物で、本人もちゃんとその会社に勤めていて、何より日本でも有数の出版社が詐欺まがいのことをするかと慎重に慎重を重ねて確認していった結果、どうやら本当に出版を熱望してくれていることが分かった。

そうなると問題が一つある。

いくら創作物であってもこれが私たちを題材にして生まれた作品だということ。しかも今まで許可を取らずにやっていたこと。

それらをきちんとしなければと思った先輩は、こうして場を設けたのだそう。

 

「…お話は分かりました」

「勝手なことを言っていることは承知の上だ。もちろんこの話は君たちの許可がなければ俺は出すつもりはない」

 

さてどうしたものか。

本を読んでいないので肖像権がどこまでのものかわからない。

が、たとえわからないように書かれたとしても一高生徒なら気付くし、それを表立って言ってしまうことは避けようがない。

私個人としてならぜひ出版していいよと手放しに応援したいところだが――あ。

 

「先輩、出版社の方の名刺って見せていただいてもよろしいですか?」

「え?ああ、それならこれだ」

 

差し出された一枚の名刺。

そこには――有名出版社と担当者の名前。どこにでもある普通の名刺にしか見えない。

お兄様ものぞき込んで思案顔。

 

「このお話、いったん持ち帰っても?」

「あ、ああ。すぐに答えは出ないだろうからこちらはいくらでも待つよ」

 

ありがとうございます、と言って立ち上がる。

同時に立ち上がったはずなのにお兄様はすでにドアの横にいて開いて先に出た。

そのあとに続いて出ようとするが、先輩の目は不安に揺れ――ではなくキラキラと素敵なものを見たように輝いていた。

 

「君たちは自然に姫と騎士として暮らしているんだね」

 

オタク、感動するとすぐ感想口にしちゃう。お兄様の目が厳しくなってるので気を付けて。

まだ許可を出してないのに次回作練るのはちょっと早いです。

気持ちはわかりますけどね。きっとすぐ創作活動しちゃうんだろうね。オタク溜まったものを放出しないと爆発しちゃうから。

部屋を後にして私は生徒会室へ、そのあとお兄様は図書館へと向かわれた。

 

 

NEXT→

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。