妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします!分割版   作:tom200

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横浜騒乱編⑥

 

いつもの帰りのメンバーがエリカちゃん西城くんと入れ替わりで、花音先輩と五十里先輩となって8人で帰る。

話は当然平河千秋の話だ。

八つ当たりの復讐だという話に憤りを感じる面々と、少し落ち込んでいる花音先輩。

 

「きっとお姉さんのことが大好きだったんでしょうね」

 

美月ちゃんは感受性も豊かなのか彼女に同情しているが、果たして本当にそうだろうか。根底はそうなのかもしれないけれど――

 

「深雪」

「!大丈夫」

 

心配した声だとすぐにわかったから大丈夫とだけ答えた。

いけない。今はまだ皆と帰っている途中なのに自分の考えに没頭してしまっていた。

心配そうに見つめるお兄様にひらひらと手を振って何でもないのだとアピールして会話に戻る。

お兄様はいったん私のことを横に置き、自分の事情に巻き込む形になってすまない、と謝罪するけど、お兄様はどう考えてもただの巻き込まれた側だ。

しかも相手は彼女だけでもないし、とお兄様が言えば、吉田くんと五十里先輩ははっと、気づいたようだった。

犯人確保で安堵してたみたいだけど、彼女だけがこのコンペの妨害をしているわけではない。

周囲にサイオンの微かな揺らぎはありますからね。

そしてまた護衛をつけるべきかの話になるが、お兄様は再度断った。

単独の方が何かと動きやすいですしね。

ほのかちゃんがそわそわしてるけど、ほのかちゃんは守られる側だからね。じっとしてて。ヒロインだってこと自覚して。

駅で解散し、無言のままキャビネットで移動し、コミューターの中。

…この頃コミューターの中での触れ合いが多くないでしょうか、お兄様。

監視されてるんですよね?わかってるんですよね⁇

もしやそういうプレ…苛立ちを与える作戦です?

 

(いけないいけない。お兄様はそんなアレな趣味はお持ちなわけがない)

 

「俺がいるのに他の考え事かい?それは寂しいね」

 

なぜ膝の上に乗せられ、撫でられているのでしょうか。

というかいつの間に乗せられた?っていうくらい素早い動きでした。

 

「私の考えは、いつもお兄様のことばかりとわかっているでしょう?」

 

いつだって私の頭を悩ませるのはお兄様幸せ計画。つまりお兄様のことばかりなのだ。

私の言葉にお兄様は目をぱちくりと開閉させてから頭を抱え込むようにして引き寄せて、おでこにこつんと己のおでこを当てた。

 

「いったいどこでそんな言葉を覚えてくるんだい?」

 

どこ、と言われましても今ここで生まれましたが、とは言いづらい状況。

とりあえずくっついたままは気まずいので顔を離してからお兄様の頭を撫でて誤魔化す。

 

「実験が上手くいって何よりでしたね」

「失敗はしないと思っていたが、うん、よかったよ」

 

頑張ったね、と撫でればお兄様は気持ちよさそうに目を細めた。

 

「深雪に褒められるのは気分がいい。これのために頑張ったとも言えるな」

「まあ。それならもっとしっかり褒めませんとね」

 

嬉しいことを言ってくれるお兄様にはこうだ!と今度はこちらから頭を胸に抱きよせて後頭部を撫でる。

 

「お兄様の頑張りを私は誰より見てきました。お兄様は着実に夢へと一歩ずつ進んでいます。大丈夫、必ずお兄様なら成し遂げます」

 

過度な期待の押し付けに感じるかもしれない。

でもお兄様は一つ一つピースを集めてきた。あと少しで形ができるはず。

 

「よくここまで頑張りました。お兄様はすごいです」

 

いつの間にか腰に回された腕が少しだけ巻き付く力が強くなった。

自然に見えるけれど、お兄様だって落ち込んでいるはずだ。心が沈んでいるのが伝わってくる。

実験自体は成功していても自分を狙った学生がいて、しかもそれが4月の時のように背後にいる人物に操られている可能性まで出てきたなんて。

自分のせいで、とまでは思わないまでもきっかけが自分にあったなど思いもよらなかったことだろうから。

 

「大好きよ、お兄様」

 

流石にこの距離で心音が聞こえてないことはないだろう。

照れるけれど、それでも、伝えたいから。

 

「好き」

 

頑張っているお兄様に、元気になってもらいたくて。

応援している者がいることを知っていて欲しくて。

ありったけの気持ちを込めて。

お兄様は小さく「ん」とだけ答えた。

そのまま静かに時間は過ぎて、もう家の近くだった。

 

「――このまま時が止まればいい」

 

この時間の終わりに呟かれた言葉に、私はクスリと笑って、

 

「動いているから愛し合えるんですよ、お兄様」

 

最後に頬を摘まんで両サイドに引っ張った。

あらやだ。これが十代の肌。男子って肌荒れするものじゃない?強い魔法師美形説はこんなところにも影響を?

 

「あにすうんあ」

 

なにするんだ、ですね。変換余裕でした。

 

「だってあのままでしたら、私だけがお兄様に片思いしたままでしょう?」

 

そう言って手を離せばお兄様はきょとんとしてから一転、とても嬉しそうな笑みを浮かべて。

 

「片思いなものか。好きだよ深雪。俺だけの、妹」

 

コミューターから運ばれながら降りました。

というより家に着くまで足が地面に下りなかったのですが私は重病人でしたかね?

 

「もう、ハグは十分したではないですか」

「さっきのは抱っこ。これはハグ。別物だ」

 

玄関でももう一度ハグをしようとするので今日はもう十分なのでは?と伝えればそんな返答が。

屁理屈!

この後、部屋に着替えに行ったが、しばらくベッドの上で悶え苦しんだ。

明らかにお兄様の過剰摂取が原因です。

恥ずかしいことを言ったことと、返ってきた言葉の恥ずかしさに私の羞恥心バロメーターはとっくに悲鳴を上げていた。

バタバタと足をばたつかせて発散させ、冷静さを取り戻してから着替える。

制服の皺は、便利な魔法でちょちょいと直して。

もう、魔法無しではいられないなと茹った頭を冷ましながら改めて実感した。

 

 

――

 

 

夕食を終えソファで二人並んでコーヒーを嗜んで。

 

「『あの人』、か」

「もし大亜連合なら病院に襲撃の恐れがあるでしょう」

 

使い捨て出来る組織というものはそういう物だから。

これがUSNAだと回収して…あれ?末路はそんなに変わらない?でも襲撃して抹殺、なんて派手なことはしない。

 

「通常の工作員であればそういうこともあるだろうが、彼女がそんな情報を持っていると?」

「さて、そのあたりは何とも。私もまだ彼女と会ったわけではないですから」

 

正式には彼女を使っていたのは周公瑾で、大亜連合側ではあるけれど客人というか、また別グループ扱いの人であり、学生を使っていると知った大亜連合の工作員が気を利かせて…というより生意気な美青年の鼻を明かせたくて、プライドの高いおじさんが消しにかかっただけなんだけどね。

そっちの事情はどうでもいいです。

情報に関して言えば彼女は大した情報などもっていない。けれど一番重要な存在と関わっている。

 

(…彼女のことを思うと面白くない。腹がチクチクする)

 

「珍しいね、深雪がそういう顔をするのは」

 

お兄様は嗜めるわけでもなく、不思議そうに言った。

彼女がお兄様を攻撃――逆恨みして破滅させようとしたことは確かに許しがたいし、許すつもりもない。

でも私が何より彼女を許せないのは――。

 

「同じ妹として、彼女の行動は看過できません」

 

彼女の取った行動は、私には許しがたいものでしかなかった。

 

「お兄様にしようとしたことも許せないですけれど、自身の姉を傷つける彼女も許せないのです」

 

彼女は――お兄様のことで暴走しそうになる原作の深雪ちゃんと同じだ。

彼女の立場だったなら、抑えが利かなかったならこうなっていただろうというIFの私。

私が、なんの柵もなくて、今の通りお兄様が好きだったなら。

そしてそのお兄様が、不当な判断により名誉ある大会を辞退することになったのだとしたら、私は感情に任せてすべてを凍り付かせていただろう。

学校も、大会も全て許せない、とすべてを憎んで。

絶対零度の世界に閉じ込める。

でも、そんなことお兄様が望むわけもなくて。喜ぶわけもなくて。

しょうがないな、といつものように許してくれるはずもなくて。

 

「想像できたはずです。姉妹の悲しむ姿が」

 

やっぱり私にはわからないよ美月ちゃん。好きだからって、許せないからって行動を起こす衝動を、私は許すことができない。

それはしてはいけないことだと、私の心の奥深くに雁字搦めに縛り付けて封印した想いだから。理解してはならない。

してしまえばそれは――お兄様の不幸でしかない。バッドエンドにしかならないから。

 

(私が狂ってしまえばだれがお兄様を止められる?ストッパーがいなくなればお兄様は幽閉か、最悪処分される。叔母様だけではお兄様を守れない)

 

私というロックが正常に作動するから、お兄様は自由でいられるのだ。

 

(結局のところ、自分勝手に無責任に八つ当たりできる彼女がずるいと、羨ましいと思ってるんだ)

 

できることなら私だって、と。

 

(私は、こんなにも醜い)

 

「深雪は優しいね」

 

優しい言葉がかけられるけど、そうではないのだと、違う、と首を振る。

私ほど身勝手で我儘な人間はいない。

昨日だって今日だって、他人の不幸を見逃すようなひどい女なのだ。

けれどお兄様は優しいよと抱き寄せて。

 

「優しいいい子だよ。俺の自慢の妹だ」

 

お兄様の言葉に耐え切れなかった涙が一筋、頬を伝った。

 

 

――

 

 

達也視点

 

美しい宝石は彼女の頬を伝って服へと吸い込まれていった。

一瞬の、儚い宝石。

その軌跡を拭ってやると、深雪は俯いてしまった。

優しいと言ったことが、彼女を苦しめているのだろうとわかったが、嘘は言えなかった。

深雪は優しい。

俺ならば他人などどうでもいいから、――深雪以外どうでもいいから復讐に走るだろう。

深雪は傷つき心を痛めるかもしれないが、深雪を傷つける者に生きる価値はない。

深雪が止めるならその場は止まるかもしれないが、彼女が見ていないところでなら復讐を果たす。

彼女は聡明だから気づくだろうが、悲しむだろうが、彼女を傷つける者をそのままになど俺にはできない。

ごめんな、と心の中で謝る。

こんな兄貴ですまない、と。

俺は深雪に甘えすぎている。

彼女が、どんな俺でも許してしまうから増長してしまうのだ。

時が止まれと思う。

世界に俺と深雪だけになればいいと。

他に何もいらない。

けれど深雪は、――妹はそれを望まない。

その理由があまりにも愛おしすぎて、続く言葉が可愛らしすぎて。

一生深雪には敵わないのだろうと心の中で降参した。

 

「深雪、お前にとって悪い子であっても、俺にとってお前は最高の妹だ。可愛くて聡明な、優しいいい子だよ」

 

撫でて、抱きしめて。

 

「それではダメかい?」

 

耳元で囁けば、深雪は耳を真っ赤にして項垂れるように頭を押し付けてきた。

さらりと黒髪が左右に零れて項が露わになる。

うっすら血の気の通った、匂い立つ項から視線を逸らせない。

少し前に、深雪にポニーテールをしてみてはどうか、なんて話が出たがとんでもない。

精神を弄られ、兄妹愛しか残されていなかった俺が、本来妹に抱くことのない欲を感じているのだ。

俺でさえコレなのだ、他の人間がこの色香に耐えられるはずもない。

深雪がぎゅっと俺の服を掴んだことで、視線を外すことはできたが、自力では難しかっただろうなと頭の片隅で思った。

 

「今は、今だけは甘やかさないでください…」

 

小さな声で、小さく願う。

どうして今が駄目なのか。

なぜ甘やかしてはいけないのか。

――そもそも甘やかしてなんかない、ただ事実を述べただけなのに。

なんて、言わなかった。深雪が求めていないから。それだけはわかったから。

握る手に力が入っているからか、細い肩が震えている。

せめてそれだけでも止めてあげたいのに、深雪は拒んでいる。

こんなに傍にいるのに。慰めることも許されない。

これは、罰なのだろうかとさえ思えてきた。とてもじゃないが、腕の中で苦しむ妹に何もしてはならないというのは、どんな拷問より辛く堪えた。

数知れない拷問を受けた俺が言うのだから相当だ。

肉体的ならいくらでも、最悪気が遠のくくらいで済む。だが精神的な拷問というのはこんなにも辛いのか。胸が押しつぶされそうというのはこういう時に使うのだろう、胸が苦しかった。

――なぜこんな思いをしなければならない?

そもそもなぜ深雪がこんなにも苦しんでいる?

平河千秋が姉を思って俺を復讐するという、ふざけたことになったからか?

それを使ってレリックやら論文コンペやらをどうにかしたい連中が原因か?

それともまだ俺が知らない事実があるのか――?

 

(――気に入らない)

 

深雪の思考を占めているその存在が許しがたい。

正直どうでもいいと思っていた。

論文コンペも頼まれたから熟す、ただそれだけ。

レリックに関してはたまたま転がり込んできたが、解読した今、煩わしいものになりつつあった。

そして平河千秋の復讐など羽虫程度にも思っていなかった。

 

(それが、何故――)

 

もぞり、と腕の中で深雪が動く。

 

「ごめんなさい。お兄様には時間がありませんのに」

「深雪との時間はちゃんと取ってあるから。むしろこれが無いと俺は何もできなくなってしまうよ」

 

深雪は俺の原動力だから、と頬を持ち上げて――ああ、ようやく顔が見れた。

 

「それに論文はもう提出したんだ。家でできる作業なんて急ぎのものなんてもうないよ」

「…そ、うなのですか?でもレリックは」

「ほぼ終わったかな」

 

深雪は瞳を大きくしてまじまじとこちらを見ている。

確か興奮状態の猫はこんな感じで目を真ん丸にするんじゃなかったか、と連想したのは先日彼らと話したことが影響しているのだろう。

 

「今の深雪は確かに猫のようだな」

「ねこ?…ああ、エリカ達の」

「普段は犬っぽいと言っていたが、そうだったかな?あまり深雪を動物に例えることが無かったから」

 

深雪は深雪でそれ以外になりえないから考えたこともなかったが、…犬?

犬を例えに使うと言えば忠犬だったり猟犬だったりのイメージが強いのだが、…愛玩犬というのもあったか。だが、

 

「それは深雪というより、中条先輩の方が似合うな」

 

何気なく言った言葉に、予想以上に深雪は水を得た魚のように生き生きとし出した。

 

「わかります!小型犬ですよね。足元にじゃれついて来たり、きゃんきゃん吠えてて微笑ましくなるあの可愛さ」

 

なぜだろう…見えなくもないな、深雪の腰あたりにふわふわ動く尻尾が。

 

「それに猫と言ったら、エリカの方が猫っぽいです!あの気まぐれな感じとか、取った獲物を自慢げに見せたり、甚振るところとか」

 

なんなら頭にも三角の耳が見えるな。

 

「ああ、でも雫も猫ちゃんでしょうか。こっちは長毛種の血統書付きで」

 

ねこちゃん…、『ちゃん』ときたか。

 

「ほのかはワンちゃんですよね!意外に日本固有種の柴犬とか?ああでも柴は我が強いから秋田犬かしら。ふわふわ」

 

つられてかこちらもワンちゃんになっている。興奮状態で無意識なのだろう。狙ってないのが恐ろしい。

気付かぬ深雪はイメージでもしてるのか、手のひらで何かを持つ仕草をしている。

 

「深雪」

 

声を掛けるとぴたりと止まって次を待つ姿は確かに、犬っぽさを感じないこともない。

 

「お手」

「わん?」

 

右手を差し出すと迷いなく手を乗せてきたが、声は疑問形。

唐突だったというのに、間髪入れずに手を出したのは反射だったのか。

とりあえずよくできましたと頭を撫でると、嬉しそうに笑ってもう一度わん、と鳴いた。

 

「飼うなら首輪が必要だな」

「…ノった私が言うのもなんですが、思考が飛び過ぎじゃないですか?お兄様」

「やはり深雪には赤かな」

「首輪もリードもいりません!」

「それではお散歩に行けないじゃないか」

「お兄様!」

 

ちょっと調べてみるかと端末を取ろうとしたら先に奪い取られてしまった。

うちの子は賢いな。

 

「お兄様はお疲れです。もう期限ある作業がないのでしたら、ゆっくりお休みくださいませ」

「今の時間も休んでるようなものじゃないか」

「発言が怪しすぎます。その、…妹に首輪をつけるなんて発想自体が破廉恥です!」

 

……。

 

「すまなかった」

 

一瞬深雪の首元に赤いレザーの首輪を幻視してしまったことは黙っておこう。

深雪の言う通り破廉恥でしかなかった。今日は深雪の言う通りに早く休もう。

 

 

――

 

 

深雪視点

 

 

平河千秋が事件を起こした次の日、食堂にエリカちゃんと西城くんの姿がなかった。学校に来てないんだって。秘密の特訓中ですね。

というか最近学校は何処でもモーセのように道が開かれて歩きやすいですね。

…この間の選挙以降、どうにも皆に分厚いフィルターがかかったように思える今日この頃。

…知らないうちに威圧してるとかそういうことじゃないよね?四葉オーラ出しちゃってるわけじゃないよね⁇

 

「兄さん、お待たせ」

「お待たせしました達也さん」

 

雫ちゃんはペコっと軽く頭を動かして。

席にはお兄様一人。と、そこへ先に取りに行っていた美月ちゃんと吉田くんが戻ってきた。

交代でお兄様も立ち上がり四人で行くのだけど、原作のようにお兄様を囲んでいくのも周囲の目が気になるし、邪魔になるからお兄様の横はほのかちゃんで、その後ろに雫ちゃんと私が並んでいる。

さて、今日は何を食べようかな?こういう時はあまり自分で作らないものを、と選ぼうとしたらお兄様が振り返って、深雪はこれか?とピンポイントで当てられた。流石お兄様。私のパターンを完全に把握していらっしゃる。

正解、と頷くと周囲からおおっ、とどよめきが。

うんうん、すごいよね。お兄様の洞察力と推理力は。最近もうこの反応も慣れたものですよ。

背後から聞こえた「いいネタだな」、は演劇部部長ですね。これをネタに何を書くのか。そろそろ読ませてほしい。同人誌の方でもいいから。

そしてテーブルに戻って揃って食べ始める。

話題はこの場に居ない二人の話に。

もちろん私は理由を知ってるし、お兄様もそれとなく気付いているのだろうにそっち系のお話に。

お兄様も意外とこういう話抵抗ないよね。

仲いい男女が二人して休んでるってなればまあ、妄想が捗らないわけもない。

なんてったって皆思春期ですし。

お似合いのカップルでもあることだし、ね。

でも何よりその話題であわあわしている美月ちゃんと吉田くんも、初々しくていいよね。

大好物です。美味しい。

 

「深雪って酢豚好きだったんだ」

 

ほのかちゃんの発言に、自分がうっかりポロリしたことを悟ったけどそうなの、と誤魔化した。

お兄様からの視線を感じたけれど見ないふりです。

話をエリカちゃん達に戻すと、美月ちゃんは困り果て、吉田くんは彼らに限ってそんなことないと思うけど、と避けようとしたのだがお兄様がここぞとばかりに燃料を投下。

 

「そういえば昨日は二人で帰ってたな」

 

これは妄想も加速しますわー。スピードアップ。

お兄様もひどいことをなさる。

でも最終的に二人はきっと訓練でもしてるんだよー、とフォローで締めくくるのだから、何のかんのお兄様も二人のこと大事にしてるよね。

妹は楽しそうなお兄様の様子が何より嬉しいです。

 

 

 

その夜、お兄様からの大好物についての質問に追い詰められるのだけれど、向けていた視線の先が酢豚ではなく、美月ちゃん達だと気づいていたお兄様による意地悪だと判明。

わかってて聞くなんて…そんなに私を追い詰めて楽しいですかお兄様。

 

「お前の好物はすべて把握しておきたいからね」

 

…その閻魔帳に初々しいカップルが大好物って書かれるんです?それはちょっと勘弁してほしい。

そして夜が明けて日も昇らない頃、私たちは家を出た。

 

 

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