妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします!分割版   作:tom200

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横浜騒乱編⑯

 

それから五十里先輩と花音先輩や、桐原壬生ペアだったり千葉兄妹だったりのラブを感じながらも、警戒を怠らずに待っていると吉田くんの精霊レーダーに引っかかるものが。

わあ!さらに可愛げのなくなった、動きの気持ち悪い直立戦車が現れた。

可愛くないものはとっとと凍らせちゃおうね~、と問答無用で凍らせる。

お兄様の封印に使っていた力が解放されたからだろう、化粧のノリならぬ魔法のノリがいい。

今なら余裕でここら一帯の敵を屠れるだろうが、現在『皆で』協力して倒している最中だ。自重すべきだろう。

成長の妨げはよくないからね。

相手の足を止め、銃火器を黙らせる。これだけでも十分手助けになるだろう。

動き出す彼らを見守りながら、頭の中にあるのはこの後の流れ。

この後私たちは足止めを喰らい、駅のシェルターでは七草先輩の存在に気付いた敵による、市原先輩人質作戦が実行される。

原作知識なんてないはずなのに、先の先輩の名推理には脱帽だね。

予測されていた事態。当然阻まれるのだが、問題はそのあとだ。

ゲリラとはそもそも人の油断を誘っての奇襲作戦のこと。

誘拐作戦もそうだが、渡辺先輩たちが敵の殲滅をし全員脱力、安心しきったところの隙を突いて、この後桐原先輩と五十里先輩は重傷、重体となる。

これはお兄様の力がどれほど異常なものか、お兄様がどれほどの代償を支払ってその魔法を行使するかを同世代の少年少女たちと共有する場面でもある。

だが――

 

(果たしてそれを知る意味はあるのか、と考えると、知らなくても問題はないと思う)

 

軍として戦っているだけで十分じゃないか。16歳で大人たちに交じって敵を最前線で殲滅するなんて、それだけで十分畏怖の対象だ。

血飛沫をまき散らしながら敵を屠る姿、戦況を読み、敵に飛び込む胆力。どれをとってもただの高校生ではない。

それでも彼らは、お兄様が戦っている姿を見ても遠巻きにするでもなく一緒に戦うことを選択してくれた。ただ守られるんじゃない、心配もしてくれている。

だから――いいじゃないか。このままで。

 

(私はこの運命を捻じ曲げたい)

 

お兄様が皆の前で神のごとき力を揮うことなく、自分たちだけで解決させる。――お兄様にこれ以上痛みを感じさせないためにも。

新たに現れる直立戦車を凍らせて、銃火器を黙らせて、エリカちゃん達の見事な魔法剣に見惚れながら指針を定めた。

ある程度敵を屠って敵が近くにいないことを確認してから、綺麗に残骸が残った、西城くんの攻撃した直立戦車の前に集まる。

 

「機械的なコントロールだけで動いていたわけじゃないと思うんだ」

「つまり、何らかの術を併用していたということですか?」

「ええ、そうです」

 

ところで吉田くん、なんで私だけ敬語なんだろう?

私が先に敬語使ったからか。ついうっかり。でもそれにしては緊張されてない?

ほのかちゃん達にはそんな風に緊張してなかったと思うんだけど、…威圧、出てます?

変なことを心配しながらも、いろいろ考察は進み、最終的に、

 

「たぶん剪紙成兵術の応用だ」

「陰陽道系の、人型使役の術ですか?元は道家の術だとか」

 

吉田くんは感心してくれたみたいだけど、大亜連合関連の魔法は一通り勉強したからね。そのうちの一つにあった。傀儡系の術がたくさんあるよね。本当、覚えきれないくらいありました。

それから術式から見ても大亜連合の手の者だと思われるという結論が出たところで、確証を得るため美月ちゃんと合流することに。

本当美月ちゃんは大活躍だね。そして唐突に始まる吉田くんとのラブストーリー。

エリカちゃん冷やかす視線を向けているけれど、あまり揶揄っちゃダメよ。私はぐっと我慢しつつ。

 

「もちろん吉田くんだけじゃなく私たちも精一杯カバーするから」

 

揶揄いも時と場合を弁えないとね。

美月ちゃんと合流してからも敵はちょこちょこやってくる。

私たちのところだけじゃなく、花音先輩たちのところにも行っているはずだ。

干渉力に物を言わせて凍り付かせる。

確かあの直立戦車にはブースターとか言う、無頭竜が独占して作っていた技術の結晶が搭載されていて、どんな魔法も太刀打ちできないが売りだったはずだけど残念だったね。

私の魔法の前にはそれさえも意味を無くしてしまう。

攻撃のできない敵は怖くない。エリカちゃん達の技量は凄く頑丈な金属も切り裂き押しつぶす。

あっという間に敵国産のとてつもない額のかかった最強兵器は沈んだ。

 

「美月、先輩たちの様子はわかる?」

「えっと、…場所は変わってないです。交戦中かと」

 

やっぱり。すでに敵は次の目的に動いている。

私たちを足止めしてでも人質を取れれば黙らせることができると、そう思われているのだ。

普通一般生徒ならそうだとしても、七草先輩もそう思われるって――随分日本最高の魔法師、十師族を舐めてくれるよね。それとも女子高生だから甘く思われてるのかな。

もしくはそう思わせてしまう材料が彼らにあるのか。…十師族だったら日常生活から監視対象になっててもおかしくはないのかもしれない。

どこもかしこもウチみたいに高校までは出自を隠すべきなのではないかな。

四葉の事件があったのだからそれくらい警戒してもいいと思うのに、あえて晒してるのはなんでなんだろう?

これも十師族の責務?皆の盾となれと⁇いや、どちらかと言えば権威を示しているのか。すごい次代が育っているぞと。

 

「どしたの深雪?今更考えこんじゃって」

「…足止めをされてる気がして。直接敵がわざわざ私たちを狙う理由なんてないでしょう」

「それは、私たちが邪魔だから倒して、…はないか。これだけ壊されてるんだもの」

「つまり彼らの目的が変わった…?」

 

真相にたどり着きそうになった時、美月ちゃんが顔を上げ、吉田くんの精霊が反応を示した。

新たな敵の襲来にCADを全員が構えた。考える時間を与えないつもりらしい。間違いなく足止めだね。

直立戦車も装甲車も破壊し、小さな落雷の乱舞が歩兵を打ち倒したところで七草先輩から連絡が入った。

市民の救助とは別のヘリで私たちも回収してくれるらしい。

何も言われなかったけれど、恐らく市原先輩人質事件はあったんじゃないかな。

それが失敗した時点でこっちに送り込む作戦がプランBに変更になった、と。

そもそもあんな大金のかかった兵器も無尽蔵に出てくるわけもない。船で運ぶにも限度があるし、何よりもこちらはなりふり構わず落さねばならない重要拠点でもない。これ以上の大物兵器もそろそろ打ち止めのようだ。

敵も近くにいないので、今度こそ一息ついた彼女たちは気を抜いておしゃべりに興じはじめた。

エリカちゃんのこの切り替えは凄い。美月ちゃんの顔色も戻るし、男の子たちの滾っていた闘気もするすると消えていく。

一種の才能だね。

そこへ小さなローター音が。

ヘリコプターの気配を感じるものの、普通の肉眼で目視ができない。

しかし目を凝らせば空に不自然なサイオンの動き。美月ちゃんにはもっとはっきり見えているのだろうな。

着信を告げた端末を耳に当てると場所が狭いので降りられない、ロープを掴んで上がってくれとのこと。

まるでスパイ映画のエージェントの気分。こんな時だけど胸が騒いだ。

そして五本のロープが降りてきた。同時に五人上がれるってすごいよね。魔法ってすごい。

そしてこのロープも陽炎のように揺らいでいる。光学迷彩がロープにも?!ほのかちゃん、芸が細かい!

褒めてあげたいけどヘリの中についてから気づく。彼女はコントロールでいっぱいいっぱいだった。褒めるのはお預けだね。

向かうは渡辺先輩たちの戦場。悪あがきのように景気よくドッカンドッカンやっているようだ。

千葉警部の姿は見えないが、彼はこんなところで倒れるような人ではない。どこかですっぱすっぱと敵を斬り斃していることだろう。

上空からは洗浄が良く見晴らせた。

猛攻を掛けているゲリラ兵に向けて、見えないヘリから七草会長からドライアイスの弾丸が強襲する。

敵が一掃され目に見えるほとんどが制圧、というところで私はエリカちゃんの肩を叩いてにっこり笑って手を振ると――

 

 

ロープを下ろす側のドアを開けてノーロープバンジーを決行した。

 

 

――

 

 

――「え!?深雪?!」

――「深雪さん?!」

 

背後から聞こえる悲鳴のような声に返すことなく私はCADを――触れることなく重力を操作し降り立つ。

意識するだけで魔法が行使できる。制御こそ難しいものの、それだけのサイオンと制御力が今の私には満ちていた。

突然降ってきた私に渡辺先輩たちは驚いていたが、構わず今度は右手を正面かざす。

敵はこの時すでに動き出していたのを空から捕捉できたから。

空に向かって銃を撃っていた第一陣は七草先輩に打ち取られている。

その第二陣、周囲が片付いたと安堵して警戒を解こうとするところだった渡辺先輩たちを奇襲せんと動く男たちが、空から降ってくる私に気付くまでに時間がかかったのは幸いだった。

空中であろうが魔法は行使できるし、この魔法に限って言えば細かい制御も必要ない。

息を吸うようにできる最も体に馴染んでいる魔法――系統外・精神干渉魔法「コキュートス」。

肉体は凍り付くことはない。ただ精神だけが凍り付く魔法。

見た目だけなら生きている。だが死ぬことが許されていないだけであって二度と彼らが目を覚ますことはない。

――精神が凍り、肉体に死を命じることもできず、その精神も死を認識することができない。

殺戮と呼ぶにはあまりにも静かだ。だから勘違いしそうになるが、彼らは二度と動くことはない。

これが死でないというならなんだというのか。私は一瞬にして彼らの命の活動を止めた。そのことは確かだ。

私が何をしたかわからなかっただろう、地上の先輩たちは周囲を見て自分たちが狙われていたことだけは気付いた。

転がった男たちが構えていたものを見たのだ。銃を、ナイフを。

気を抜きかけた自分たち。

それを空から降りてきた下級生に救われたのだと彼らが理解するには、私の魔法は静かで規格外すぎてなかなか結び付かなかったことだろう。

見て調べただけではわからない戦闘員たちの死。肉体は死んでいないのだから気づきようもないのだけど。

かといって説明するわけにもいかない。コキュートスを理解されては私が何者かと特定される恐れもある。

本当は別の魔法がよかったのだけど、七草先輩の魔法の最中にすでに動き出していたと思わなかったのだ。

間に合わせるには最も得意な魔法を使うしかなかった。

忌避されても仕方ない。この魔法を恐れる気持ちはよくわかる。

最も綺麗に人の生を止める魔法。畏怖しない方がおかしい。

戸惑って動けない先輩方に、控えめに微笑んでヘリコプターの到着を――と思っていたのだが、離れた個所にもう一人、こちらを狙っているのを感知した。

視線を向けないように、だが照準を合わせるためにさりげなく周囲を見渡すふりをして見えない角度でCADを持つ。

今度はワンホールショット。銃器だったらこちらでも十分対応可能だ。照準を合わせなくても打てなくはないが、合わせた方が発動は早い。

タイミングを見計らっている男の銃身が固定され、いつ撃たれてもおかしくない状態。私もいつでも返せるように指を滑らせて――

 

「司波さん、助けてくれて――」

 

呪縛から解かれたのか、花音先輩が動き、つられて五十里先輩も渡辺先輩も動き出してしまった。

 

(しまった!敵にばかり気を取られて先輩たちに意識を向けてなかった!)

 

このままでは弾道に花音先輩たちが入ってしまう。これではワンホールショットでは無理だ。

魔法を破棄して結局コキュートスで仕留めようと手をかざしたタイミングで、五十里先輩が振り返った。

立ち止まって、しまった。

もしかしたら察知したのかもしれない。だが場所が悪すぎた。

先輩の体が衝撃でぶれる。

何が起きたのかわからなかったに違いない。驚いた表情の後に苦痛を浮かべて。

だが悲鳴が上がるよりも早く、先輩の倒れた先にいた銃を撃った男が一瞬陽炎となって消えた。

――それが誰が放った魔法によるものかなんて考えるまでも無かった。

 

「、兄さんっ!!」

 

反射だった。

あの陽炎を生んだのは間違いなくお兄様だ。私がお兄様の魔法を見間違えるわけがない。

駆けだして五十里先輩の、お兄様が着地するだろう近くに寄って。

黒づくめの見たこともないスーツでも、バイザー越しでも間違えるはずがない。

花音先輩が叫んでいるが、私はお兄様の腕にすがりついて。

 

「お願い!」

 

降り立ったお兄様は左腰にある銀色のCADを抜いて五十里先輩に向けて引き金を引く。

腕から伝わるのは痛みに耐える緊張した強張り。

一瞬だ。ボウっと先輩の体が霞んだように見えたが、次の瞬間その体に流れた血も空いた穴も消えていた。

そしてお兄様はCADを腰に戻すと無言で抱き寄せられた。

耳元に唇を寄せ、囁くたびに耳をかすめる唇が「よくやった」と吹き込まれる。

ここまでたった5秒もかからず、二歩ほど下がってお兄様は飛び立って行った。

誰もが何が起こったのかわからない。

そんな顔をしていた。

それからどれくらい時間が経ったのだろう。

誰も何も言わない、動かない。

そんな中、背後からとん、と足音が。

気配は消していなかったので敵ではないことはわかっていた。

大太刀を担いだエリカちゃんだった。

 

「お疲れ。すごかったね、あの魔法」

 

自然に話しかけられた言葉に、けれど私の心は後悔に塗れてうまく笑えた自信が無かった。

 

「…そうね。すごかった」

「ん?達也くんもだけど私が言ってるのは深雪の魔法。あんな風に敵だけ狙い撃ちにするなんてすごいじゃない。流石深雪ね」

 

そこには純粋な称賛があり、私の魔法に対する忌避は見えなかった。

 

(お兄様の顔は見えなかったはずなのに、言い当てられるんだ)

 

それが何より嬉しくて。

だから、私も今度は安心して笑う。

 

「――ありがとう」

 

エリカちゃんはやっぱりすごいな、と改めて感心した。

 

 

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