妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします!分割版 作:tom200
そんな話をした翌々日、七草先輩より生徒会室へと招集命令を受ける。
中条会長、生徒会室が私物化されてますよ。注意しないとまた火種生まれますよ~。
え?問題が重症化する前に何とかしないといけないって、いったい何が問題なんです⁇
中を見渡せば七草先輩、中条先輩のほかに渡辺先輩、ほのかちゃん、雫ちゃん、五十里・花音ペアが揃っていた。
女性陣は顔を赤く染まっている。花音先輩は一人肩を怒らせて、が付くが。
「至急、達也くんのストレス解消の作戦を実行してください。ここにストレスへの対策法はリストアップしておきました」
まさかのこのご時世で貴重なペーパーでのリスト。上から下までびっしり書かれてますね。
書いたのは五十里先輩かな。書記はほのかちゃんのはずなんだけど…綺麗な字ですね。
ええっと何々?
「なんなのあの男は!ストレスだか何だか知らないけど迷惑極まりないわ!!」
大変ご立腹の花音先輩がキャンキャン吠える。怒った顔も可愛いですね?
え、もしやお兄様、お相手がいる方にまで手を…?
嫌な考えが頭を過ったが、五十里先輩が察知して否定する。
「誤解無いように言っておくけど、花音が何かされたわけじゃないからね。花音は場の収拾に呼ばれてるだけだから」
…よかった。
っていうか予想通り、やっぱりそういったトラブルが起きましたか。
お兄様、別に所かまわず言うような人ではないのですがね、疲れているとぽろっと反射で出てしまうというか。
疲れている時くらい反応を返さなくてもいいと思うのだけどね。お兄様、自分を冷たい人間だと思っているけれど、こういうところで返事を疎かにしない時点で十分にお優しいですよ。ただし、その返しがちょっとアレなだけで。
「自分から構いに行かなければ、被害はないと思っていたのですが」
その言葉に二人がさっと顔をそむけた。
二人は構いに行ったのですね?そして返り討ちにあった、と。自業自得でしかないね。
何言われたんだろう、耳まで赤くなってますね。ぷるぷるもしてるね。
「…それを知った人たちが、遊び半分で話しかけては撃沈させられてるのよ」
「聞き耳を立ててる人も倒れるっていうんだから、相当だな」
歩く災害よ!あの男は!!とキレ散らかす花音先輩。…もしかしてだけど、今回使われたんですかね快楽点。心なしか、涙目なんですけど。口説かれてはいないけれど何もされてないわけじゃない可能性が微レ存。
…被害件数は思ったより多かったみたい。皆チャレンジャーだね。
「ちなみに男子も被害に遭ってるわよ」
「え!?」
どういうこと?!お兄様にソッチの趣味はなかったはずだけど。
「直接口説かれることはないけれど、そのことを揶揄ったら、女の子の口説き方をレクチャーされて自信喪失、みたいな」
……お兄様、何をやっているのです?
っていうかちょっとまって。口説いてるの!?一高ハーレム化計画でも始まってる?!
「この学校は治外法権で、一夫多妻制認めてられてましたっけ?」
「貴女まで壊れないで頂戴深雪さん!!貴女だけが頼りなの!」
おっと、思ってもみなかった状況にトリップして変なことを口走ってしまった。
いけないいけない。
どうやらお兄様の暴走が思っていたよりも酷いようだ。
風紀委員としても、学校の秩序を守る生徒会役員としても、どうにかしなければならない問題だという話になりこうして呼び出されたらしい。
ぺらり、とストレス軽減の方法を書かれている用紙を手に取った。
いくつか重複しているようだけど、…ううん、結構やっているものも多いな。
「片っ端から試して、少しでも減らしてほしいの。このままじゃこの学校は終わりよ」
そんなばかな。
お兄様が片っ端から女の子を口説いて逆上せさせ、男の子たちの心を折るくらいで学校って終わるの?
しかし元会長は真剣な顔だ。
ほのかちゃんどころか雫ちゃんでさえ頷いている、だと?!
…でもこれ一つ言わせてもらっていいかしら?
「私、生贄ですか?」
なんか、生徒会室貸し出すから、お昼は二人きりでここで食べてほしいとか書いてあるのですが。名目上は家のようにリラックスしてもらうため、とあるけど。隔離をお望みで?
「貴女しかいないの」
耐えられる人が、って言うけど残念!私だって耐えられるわけじゃないんだから。
これではまるで生贄の巫女になった気分だ。
生贄を奉げますので怒りを鎮めたまえ~、って?
ほのかちゃんもそれでいいの?視線を向ければ首をぶんぶん振られた。
…耐えられないんだって。頑張ろう?きっとそれを乗り越えたら恋が始まるかもしれないよ?
その前に心臓が壊れちゃう?私も鋼鉄でできてなんかいないのだけど。
耐性があるでしょ!って?…まあ、皆より多少は。でもほんとに多少だよ?
「ということで頼んだわよ。学校の平和は貴女にかかっているのだから」
あれ?勇者になった⁇
そんなわけで勇者なのか生贄の巫女なのか、私は荒ぶるお兄様を鎮めるため人々の期待を一身に背負い、生徒会室を出るのであった。
――
…なんて、ただ授業に出るだけなのだけど。
教室にほのかちゃん達と戻ると、何か違和感。ちらっと見ては逸らされる。
女子は顔を赤らめて、男子は気まずそうに。
一科生でもチャレンジした人いたのね。森崎くん、その様子じゃ君もやられたのか。チャレンジャーだね。
とりあえずお兄様にお昼は二人きりで生徒会室で食べたい旨の連絡を。
エリカちゃん達にも今日は二人で食べると送れば感謝のメールが速攻で返ってきた。これはやったな、エリカちゃん。
(でもおかしいな。家でも登校中でも、お兄様そこまで変な行動してた?)
確かに、思い返せばこのところお疲れで、変な行動自体はあった。
コーヒー淹れてる横で一緒に並んで立っていたり、ソファで隣に座れば何の脈絡もなく髪に触れてきたり。
だけど皆が言うように口説いてきたりとか、恥ずかしくなるようなこと…は言うけど、そこまでおかしかったかと言われれば…あれ?
(もしかして私マヒしてない…?お兄様と距離感間違えてない⁇)
このところ互いが忙しすぎて触れ合う時間が減ったから、その分その時間を大切にしようという気持ちはあった。
そしてお兄様がお疲れなのはよく知っていたので、触れ合いの時間が増えたのも当然だな、と受け入れていた。
(…とりあえずそのことは圧迫面接を終えるまでは棚上げにしよう)
今しなければならない最優先事項はお兄様のストレス軽減だ。
ストレスがお兄様をおかしくしているのだから、それが解決すれば距離感だって元に戻る、はず。
問題は、どうやってそのストレスを無くせるか、である。
もう一度もらった紙を見る。
ここに書かれていることはどれも一般的な対処法。だけどいくつかやっていないものもある。
そんなことを考えていたらあっという間にお昼です。
もちろんしっかり勉強もしていましたよ。疎かにしたら皺寄せが来るからね。
そんな余計な時間は掛けられない。
端末を片付けて立ち上がると、周囲が全く動かない。あれ?皆お昼に行かないの?と思ったら皆の視線の先にはお兄様が。
淑女らしくすっと立ち上がってスカートの裾が乱れない程度の早足でお兄様の下に。
「兄さん、もしかして迎えに来てくれたの?」
「早く終わって、と言えればいいんだが。二人きりで食べられると思ったら気が逸ってしまってね」
待ってられなくて来ちゃったんだって。
そんな、初々しいカップルでも言わないような言葉に、周囲の女の子たちは声なき悲鳴を上げて顔を覆い、男子は足早に教室を後にする。
あーうん、これは早く何とかせねばならない。
表情は無表情に近いけど、私の目にはちょっと照れているお兄様に見えるので心臓がぎゅっと掴まれた。
私の心臓も危ない。
「なら早く行きましょう」
ごめんね、この危険物は私の方で回収しておくので皆はゆっくりお昼を楽しんでおくれ。
少しでも足早にこの場を離れよう、とお兄様の手を引けばちょっと目を見開いて、
「深雪に手を引かれるのは新鮮だ」
「いつもは兄さんが引いてくれるものね」
「そんなに急いでいるなら俺が運ぼうか?」
「そうしたら一緒に歩けないでしょう」
一緒に、を強調すればお兄様はそうか、と微笑む。
…流石に何度も校内を抱っこで運ばれたくないです。
こう見てるとお兄様、ご機嫌なんだけどね。この行動がストレスから来てるなんて思いもよらないだろう。
到着して誰もいない生徒会室に入り、机に寄らずすぐに注文画面を開く。
「今日は何を注文しますか?」
「そうだな、深雪はどれがいい?」
うーん、近いですお兄様。何故背後から囲うようにパネルの端を両手で押さえてるんですか?身動きが取れないのですが。
これは壁ドン床ドンの亜種ですか?距離感バグってますね。
ときめきよりも逃げ場がない恐怖のドキドキ感。
でもそんなこと悟らせないよう淑女の仮面をばっちり被る。
…今のお兄様には一分の隙も見せられないから。
「魚にします」
「なら俺は精進にしようか」
あら珍しい。お肉じゃない。
言われた通り注文をして腕をぽんぽん叩く。すると改札機のように腕が下りて外れました。そのあと流れで一緒にお茶を用意しに。
「座ってお待ちいただいてもいいのですよ?」
「二人しかいないのだから一人だけ動くのもおかしいだろう。一緒にやった方が早い」
いえ、この場合二人の方が時間かかるのだけど…一緒に何かしたいのね。
困ったね。親鳥についてくるひよこみたい。可愛い。お兄様が可愛く見える。
「ではこちらを」
お兄様の分のコップを手渡して、二人して席に戻る。
ほどなくしてお弁当も届いたので食べ始めるのだけど。
「それで、深雪は何を頼まれたんだい?」
「お気づきでしたか」
急にここで二人で食べることの理由を察知されていた。
しかし、どう説明すればいいのか。
お兄様が無差別に口説くので周りが困ってます?
思春期男子が、お兄様の手腕に自信喪失しています?
…本人にその気がないからなぁ。なんて言おうか。
「そんなに困りごとなのか?」
「困りごと、うぅん、どうなんでしょう。多分風邪みたいなものでしょうし」
「風邪?」
「流行病と言いますか。――昨日やたらと人に話しかけられませんでしたか?」
その質問に心当たりがあったお兄様は少し眉間に皺を寄せた。
「あったな。中には初めて話すような人もいた」
「どんな話をしたか覚えてます?」
「…覚えてはいるが、実のない話ばかりだったぞ。髪型を変えようかと思う、と聞かされてどうしろと?とは思ったが」
適当に返したそうだけど、その適当が問題なことにお兄様は気付かない。
「その返答が面白かったみたいですね。一種のゲームのようにお兄様の元へ押し寄せたようですよ」
「娯楽扱いされてたのか…。そんな面白みのある答えなんてした覚えないんだがな。さっきの答えも、今のままでも十分似合うと思うが、切っても似合うだろう、とどっちつかずの無難な答えだった」
それは確かに無難な答えですね。この質問って髪形だけでなく服やバッグでもあるけど女子は基本どっちかを選んでほしいわけじゃないから。
どちらか一方を選んでも納得しない質問に、見事的確に最短の回答を導き出した形だ。
だけどそれを、今のお兄様語に変換すると、
――「今のままでも素敵だと思いますが、貴女なら短くても十分魅力的だと思いますよ」
くらい言ったのではないだろうか。…有り得る。
それは勘違いも起きるだろう。そして聞いていた男子たちが打ちひしがれるまでがセットだ。
「それでお疲れなのですね、お兄様」
「別に何があったわけでもないから深雪には話してなかったのだが、まさかお前にまでこの話が行くとはな」
「お兄様にはただの日常的なことだったかもしれませんが、校内では結構な騒ぎだそうですよ」
「日常的ではなく、些事だと思っただけなんだが」
お兄様、害がなければ気にしないからね。
でもストレスは感じないわけでもない。知らない人たちからよくわからない声掛けをされるわけだから。
そのまま無視してもいいのだけど、学校生活で波風を立てないために対応したんだろう。
だから一層ストレスが蓄積された、と。
「それで風紀委員と生徒会の皆さんからお願いされまして。お兄様を休ませてあげて欲しい、と」
「…?ちょっと意味が解らないんだが、どういうことだ?」
「責任を感じているみたいですよ。お兄様にいろいろ任せすぎて疲れているんじゃないかって。論文コンペもそうですが、九校戦には予定にない試合にまで選手として出場させましたからね」
「…九校戦に関しては、もう三か月も前の話だろうに」
「でもお疲れだろう、と。私もそう思います」
そう言い切ってお兄様に体を向き直る。
「そういうわけで放課後生徒会をお休みするよう言われております。お兄様、放課後私とお家デートしませんか?」
NEXT→