妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします!分割版   作:tom200

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ツケと清算③

 

兄妹でお家デート、とは?

お兄様も流石に驚きで目を丸くしてましたが、すぐに笑顔になって了承してくれました。

結構支離滅裂だったはずなんですが、なにも指摘されず。それが逆に怖い。

でもリストに書いてあることって『家でできる簡単なこと』が主だったからいいかなって。

リラックスするんだからお家でするものが大半でした。

夏休みに誘われたデートの仕返し、じゃないけれど、いつか私からも言ってみようと思ってたからいいんですけどね。お兄様驚かすのは大成功!

そんなこんなで放課後。

生徒会のお仕事を休んで二人きりで帰宅。こんなの入学したばかりの時以来だ。

エリカちゃんたちは部活。ほのかちゃんは生徒会のお仕事。

…よくお兄様ラブなほのかちゃんが納得したな、と思うのだけど、それだけこの異常事態を早く何とかしたかったんだね。

いったいお兄様は何を言ったんですかね?

思い出しただけで真っ赤になって雫ちゃんに支えられてた。

恋する乙女には刺激が強すぎた模様。

そんなことでは日常生活耐えられないよ?学校では抑えられているけれど、お兄様は妹相手にも褒め殺しをしてきますから。

恋人になんてなった日には毎日あまぁい言葉を掛けられ続けるんじゃないかな。

ほのかちゃんもそうだけど七草先輩も耐性のレベル上げ頑張って!

 

「こうして二人だけで帰るのも久しぶりか」

「皆で帰るのが当たり前になっていたからね」

 

放課後、駅までの帰り道。

同じく下校途中の生徒たちからの視線を感じるけれど被弾するのが嫌ならば逃げてねー。

このお兄様は弾薬をまだたくさん抱え込んでますので。

 

「深雪を独り占めできるのはいいな」

「そんなこと言って。家ではいつも独り占めでしょう?」

「うん。それでも嬉しいのさ」

 

するりと私の髪を撫でつけ、ひと房持ち上げると口元へ運ぶ。

 

「今この瞬間のお前を独り占めできるのが俺だけなのだと、それが重要なんだ」

 

うんうん、こいつぁやべぇ。うっかり前世の語録が顔を出すレベル。

周囲?被弾して人っ子一人いなくなったよ。

一撃必殺。

そしてキャビネットからコミューターで二人きりになると、いつもより密着して座る。

 

「お兄様?」

「デートだろう?」

 

おっと、すでに始まってたのね。

正気に戻った時、この間のゾンビよりひどくなりそうだな、と思いながらも、その前に私が生きていられるかが心配になった。

握られた手は恋人つなぎだし、お兄様はいつにも増して輝いた笑顔だ。

ちょっと年相応というのか、ともすれば幼ささえ感じられて、先ほどから胸は高鳴りっぱなし。どうしよう。やっぱりお兄様より先に倒れそう。

 

「緊張しているね」

 

くすくすと、指に絡めた髪をくるんと巻き付けながら笑われているけれど、残念!これはお色気溢れるお兄様です。

揶揄いが、揶揄いモードがよかった!

 

「…近いんですもの」

「ハグをするよりは遠いよ」

 

それはそうなんだけど、それとこれとは別じゃないでしょうか。

 

「お兄様は誰にでもこのようなことをなさるのですか?」

「そんなわけがないだろう」

 

お前にだけだ、なんて軟派な男が言う常套句なんですけどね。

 

「そんなことを言って。学校では皆を困らせたのでしょう?」

 

するとお兄様は心外だ、とばかりに否定する。

 

「ありえない。愛を囁くのも、こうして触れるのもお前だけだ」

 

頬を撫で、二人きりだというのに耳元で直接吹き込むように囁く。

 

(………はっ。今魂がどっか行ってた)

 

危ない。戻れなくなるところだった。

夏のあの時のように失神するかと。

ちょっとお兄様、発言がどんどん夜のお店で疲れ切ったお姉さま方を癒す職業の方のようになってますよ。

私が寝ている時お仕事に行ってたりします?貢がれてません?

私も貢がないと。お高いボトルを注文すればいいんでしたっけ?

 

「深雪?」

「…お兄様の発言は刺激が強すぎます」

 

混乱した頭で非難を込めて言えば、お兄様は少しだけ色気を引っ込めてくれた。少しだけど。

 

「すまない、舞い上がっているようだ。最近互いに忙しかったからな」

 

どう舞い上がったら妹相手に口説き文句を連射するというのか。

でもお兄様も自身の疲れを認識していたようだ。

 

「私はお兄様ほど忙しくはありませんよ」

「そうか?遅くまで部屋に明かりがついているだろう」

 

夜なべして服作ってましたからね。でももうほとんど出来上がったので、私が夜更かしすることはもうない。

 

「心配かけてごめんなさい。それはもう昨日でほとんど終わったので、今夜はぐっすり眠れると思います」

「そうなのかい?」

 

触れたままの手が、親指が目の下を撫でる。

隈は無いはずだけど、疲れているように見えていたのだろうか。

 

「ええ。私のことよりお兄様はどうなのです?先ほどの話では私よりも遅い時間に寝ているのでしょう?」

 

遅くまで明かりがついていることを知っているということはそれより遅い時間に眠られているということに他ならない。

その上私と同じくらいには起きているのだから、睡眠時間がより短いはず。

けれど日常でお兄様があくびをしているのを見たことがない。というより非日常でも見たことが無い。

…そもそもお兄様ってあくびするのかな。ちょっと見てみたい。

 

「…お兄様は、私の前でもあまり気を緩ませてはくれないのですよね」

「ん?どうした、突然」

「いえ、ふと気づいたのです。お兄様が私の前でだらけた格好をして見せたり、あくびをしたりと、気の抜けた姿を見たことがないなと」

 

いつもきっちりしているお兄様。

もしかしなくてもそれは、四葉での教育の影響かもしれないけれど。

 

「わがままかもしれないですけれど、お兄様のリラックスした姿を見てみたいです」

 

家でくらい、気を抜いてもらいたい。なんて、常に私を守ってくれているお兄様に言える立場ではないのだけど。

そうお兄様を見上げて言えば、お兄様はちょっと困った顔をしていた。

 

「…自分ではそれなりにリラックスしているつもりなんだが」

「ですが、いつだって背筋は伸びてますし、常にかっこいいお兄様しか見たことがありません」

 

時折可愛いお兄様を見ることもあるけれど、そんなものは本当に稀だ。

 

「――それならきっと、俺は無意識に、深雪には格好いい兄を見せたいのだろうな」

「え…?」

「俺だってあくびくらいするさ。だが、言われて見れば、深雪の前でしたことはなかったかもしれないね」

 

お兄様も今気が付いた、らしい。

けど、その気持ちはわかる。私もお兄様の前では、部屋でしていることなんてできないからね。

恥ずかしすぎて悶える姿とか、ぬいに着せる服を着せて愛でてる姿とか。…見せられるわけがない。

 

「お兄様は何をしていても、素敵なお兄様です。あくびを見たとして、気を許してくれているんだと、嬉しく思うこそすれ、格好悪いななんて思うことはございません」

 

ドンドン素のお兄様を見せていただきたい!そう熱望するけれど、お兄様は浮かない表情だ。

やっぱり難しいのかな。…あまり気が抜けすぎると支障が出たり、とか。

 

「…深雪を喜ばせてやりたいが、難しいな」

 

そうだよね。お兄様にはお兄様の立場があるもの。

そして私にだって、弁えなければならない立場がある。

 

「ご無理を言って申し訳ありません」

 

そう頭を下げようとしたのだけれど、頬に添えられていた手がするりと顎に回り、止められるどころか上向きにされてしまう。

途端に見えるお兄様の切なそうな顔に、胸が苦しい悲鳴を上げた。

 

「深雪が謝ることじゃない。俺のちっぽけなプライドのせいだから。…情けない姿ならこの前も晒してしまったからな」

「…ありましたか?そんなこと」

 

情けないお兄様なんて見た記憶がない。

目を開閉させてお兄様を見つめると、お兄様は観念したように口を開いた。

 

「ハロウィンの、帰宅直後に」

 

ああ~、あれか。あの、お兄様が私を抱きかかえたまま寝ようとした件ですね。

今でも思い出すと頭が痛くなるのか、顎から手が外れ、自身の頭を押さえている。

だけどあれって情けない姿?おかしな姿だと思うけど、私の想像する情けない姿ではない。

 

「その、覚えてはおりますが、あれは情けない姿なのですか?」

「……藤林さんに嫉妬した、なんて情けないにもほどがあるだろう」

「……はい?」

 

…え?どういうこと?お兄様が、嫉妬⁇

そしてお兄様は私の反応に、しまったなと苦い顔。

 

「…気づいてなかったのか。余計なことを言ったな」

「お兄様が、嫉妬を?しかもお相手が藤林さんなのですか?」

 

どうしよう。頭の中がぐるぐると未知の言葉が回ってます。

ちょっと頭を整理しましょう。

あの日、お兄様が帰ってきて、新妻風にお出迎えして、ハグをして。

甘い匂いがするというお兄様に、いつか藤林さんをお呼びした際のためのフルーツカッティングの練習をしていた、と伝えて――あ。

 

――「今日は俺と二人でハロウィンだろう?」

 

(つまりお兄様は、藤林さんのためにりんごを切っていたのが…面白くなかった、と?)

 

「子供っぽいだろう、母さんの時みたいで」

 

ああ、そうだ。なんとなく懐かしい気持ちになったのは昨年までのお兄様を彷彿とさせたからか。

お兄様はよく母に、お母様に嫉妬というか、お遊びで取り合いのような態度を取っていたものだ。

間に私を挟むことでじゃれ合う二人独特のコミュニケーションの取り方だった。

 

「お母様と藤林さんでは、立場も何も違うでしょうに。お兄様が嫉妬することなど何もないでしょう?」

「そうでもないさ。深雪の憧れる、尊敬する大人の女性だろう」

 

う、好みがばれてる…。確かに弱いですね、大人の女性にも。

でも。

 

「お兄様だって私には尊敬の対象ですよ」

「――母さんのような美人にも弱い」

 

ううっ、なんか、ここぞとばかりに責められてる!?好きですけども!

 

「あと、可愛いものに目がない」

 

…そこはかなりのウィークポイントです、はい。

 

「…いつか俺に目が向かなくなるんじゃないかって不安になる」

「それはないですよ、お兄様」

 

さっきから弱い所ばかり責められてるな、と思ったけどお兄様は気付いていないのか。

お兄様は自身に向けられる感情に鈍いというか、自己肯定感はとびきり低いから。

一番の弱点を知られても困るのだけど…でも不安にさせたいわけではないから。

私の羞恥心くらい、お兄様の為ならば我慢しようではないか。

後のことは考えない。今、お兄様の心を晴らさずにいることの方が問題だから。

 

「お兄様に目が向かなくなることなんて絶対にありえませんよ。

先ほども申しましたが、お兄様は尊敬してやまない存在です。お兄様の凄さは私が一番、知っているつもりです」

 

専門的な知識はないので、真に理解できてはいないけれど、誰よりも間近で見てきた。

どれほど逆境が向かってきても前に進む姿を見てきた。

尊敬しないわけがない。お兄様ほど頑張ってきた人を、敬愛しない理由がない。

 

「お母様のような美人に弱い、というのも正しいですが、その美しいお母様の表情を思い出す時、私はお兄様を見て思い出す時が多いのですよ。顔の造形は似ていないかもしれませんが、お二人のシンクロした表情をどれだけ見たと思います?特に、二人が仕方ない、と笑ってくれた時の顔は、瓜二つです」

 

とても好きな顔だった。愛されていると思える瞬間だった。

どんな馬鹿なことをしても、受け入れてくれる二人の許してくれる表情が、大好きだった。

 

「それに、私にはお兄様は十分美しいのです。この瞳も、いろんな色を映して変化する様は宝石のよう。冷たい輝きから陽だまりのように温かな輝きまで、私はいつも見惚れてしまいます。あと…以前にも申しましたが、お兄様の鍛え抜かれた肉体は芸術作品のようで…、はしたないですが、目が離せなくなってしまうのです」

 

(…流石に、かなり恥ずかしい告白だけど、これもお兄様の不安を払拭するため!――だけど思っていた以上に恥ずかしい!!)

 

特にあの夏を思い出すと、顔が熱くなる。

まさかお兄様の体に見蕩れてぶっ倒れるとかどこの変態です?恥ずか死ぬかと思った。

 

「そして可愛いものに目がないのは事実ですが、その…時折見せてくれるお兄様の可愛い姿に、私は胸が締め付けられるほどときめいています。いつも隠すのに必死なのですよ?お兄様の言うように、私はわかりやすいですから」

 

お兄様の年相応の表情なんて見た日にはもうね、キュンキュンして苦しいほどだった。たまに甘えてくれる時なんて、某動物王国の名物おじさんのように撫でまわしたくなるけれど、それをしたらいけないことくらいわかっています。

淑女は慎みを。――って、この告白って慎み全くもってないね。顔も赤いと思うし、感情を隠せてない。

途中から恥ずかしすぎてお兄様に視線を向けられない。

…どうしよう、沈黙が…辛い。

今もなお繋がったままの手が汗ばんでる気がして離したいけれど、このタイミングで外したら拒んでるようにならない?

 

「……とりあえず、俺は脱げばいいか?」

「やめてください死んでしまいます!!」

 

何がどうしてその結論に至ったのですお兄様!!

耐え切れなくて手を外して両手で顔を覆った。

 

「すまない。混乱した」

 

でしょうねぇ!お兄様が壊れたかと思った。

もしかしなくても私が最大のストレスを与えたのかと。

 

(うわあああ。心臓が、バクバクで、口から飛び出そうっ…)

 

想像したわけじゃない!そんなはしたないことしてないけど、お兄様の発言だけで胸が、苦しい!!

コミューターが止まった。家に着いたのだ。

…よりによってこのタイミングで?神様に恨まれてます?…恨まれることはしているな。現在進行形で。でも何もこんな罰ってないと思うの…。

 

「あー、深雪?悪かった」

「…いいえ、お兄様は何も悪くありません」

 

お兄様の発言がトドメだったとはいえ、告白したのは自分だ。

それにお兄様はお疲れなのだ。思考が鈍っていて受け答えがおかしくともお兄様に非があるわけがない。

ゆっくり降りてお兄様と家に入る。

この状況でハグはなかったが、互いにただいまの挨拶だけはした。

 

「…それで、どうする?このまま続けるのか?」

「あ…」

 

最後の爆弾ですっかり記憶が無くなっていたけど、そうだ。元々はお家デート、という名のリラクゼーションが目的だった。

 

「お兄様がよろしければ続けたいと思うのですが」

「そうか。なら着替え終わったらリビングでいいか?」

「はい」

 

 

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