妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします!分割版   作:tom200

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ツケと清算④

 

部屋に戻って制服を脱ぎ、いの一番にベッドに飛び込んで、1バタバタ。

ここで少しでも発散しないとやばいので。

でも1バタバタで済ましたのは時間がないから。

急遽決まったお家デート。服はどうしよう?

いつもの服でもいいのだけど、テーマがあるわけだし…。

この後予定としては映画を見て、音楽聞いて、お兄様の好きなものの話とかして過ごす予定なので、いつもの服だとかっちりしすぎている気がするのだ。

時期は秋。肌寒いといってもセーターを着るにはまだ早く、でも肌を見せるような恰好は寒く映るだろう。

スポーティー?はお寺に向かう時の服装を連想させるから向かないし、オーバーサイズシャツ?…お兄様相手にそれはちょっと狙いすぎてはいないかな。というかそもそも持ってない。オーバーのトレーナーならあるけれど…これにする?

と、手に取ったところで、その下にあるものが目に入った。

 

(あ~、お兄様がいない時に着てるルームウェアねぇ。触り心地抜群で可愛いけど…これもある意味狙いすぎ⁇でも可愛さはこれがダントツなのよね)

 

ふわふわでもこもこ。どこか羊を思わせる可愛らしいルームウェアだ。短パンなのもいい。すらりと伸びた足がエロい。いかにも食べてと言わんばかりの…

いやいや、何を考えているんだ私は。入学前のアレの二の舞をするんじゃない。

鉄板のキャミソールの上にカーディガンで、下はロングのギャザースカート。これでいこう。

…危ない。私の趣味で、またお兄様の不興を買うところだった。

でも胸元のレースもアウト判定になったりする?いつもは重ね着するからここまで大胆に開けないのだけど、カーディガン羽織ってるしセーフ、よね。

時間もないし、と着替えてリビングへ。すでにお兄様はソファで端末を操作していた。

 

「お待たせしました」

「いや、待ってなど――」

 

恐らく「いない」、と続く予定だったのだろうが、お兄様は顔を上げたまま止まってしまった。

正確には私の服装を見て、だと思う。視線的に。…やっぱりおかしかっただろうか。

 

「あ、の。着替えてきましょうか」

「そのままでいい」

 

しょうか、と言うより早く、お兄様はかぶせてきた。着替えなくていいそうです。

すっ、と立ち上がったお兄様は、端末をソファに放り投げ、私の前に立つとてっぺんからつま先までまじまじ見つめると、自身の顎に指を掛けて思案顔。

 

「しまったな。こんな事なら俺ももう少し気合を入れるべきだったか」

「いいえ、今日の目的はリラックスですので気合はちょっと。それにお兄様は十二分に素敵です」

「可愛いね。うん、どれも見たことのある服なのにコーディネートを変えるだけでこうも雰囲気が変わるのか」

 

流石お兄様、そこに気付きますか。着こなしを褒められるとは思わなかった。

 

「肌寒くはないかい?」

 

首元がいつもに比べて開放的な格好ですからね。お兄様的にそっちが気になりましたか。

ちょっとホッとした。ですがここはお家ですから。

 

「寒ければブランケットがありますから大丈夫です。その、お気に召していただけましたか?」

「こんなに可愛い深雪を外に出さないで独り占めしていいのか。家でデートと聞いた時は何をするのかと思ったが、こんな楽しみがあったとは」

「わ、お兄様!」

 

長い腕が体に巻き付いたと思った途端、ふわりと抱き上げられ、くるりと回るとソファの上へふわっと下ろされた。お姫様扱い。

一体どこでこういうことを身に付けられるんです?四葉、じゃないだろうし、軍、でもないよね?ドキドキしすぎて変なことが気になってしまった。

その間にさっと隣に腰を下ろされ、頬を両の手で包み込まれたことで現実に引き戻される。

 

「うん、いいね。そのリップも自然でいい」

 

お色気モードリターンズ!もう帰ったはずじゃなかったの?!あの、頬が熱いのはお兄様の手が原因、だけじゃないのは添えられてない頬も熱くなっているから。

っていうかよく気づくね本当に。ナチュラルでもメイクまでしてしまうと気合が入りすぎにも見えてしまうかな、と淡い色のリップだけ引いたのに。ピンポイントで当てますか。

こちらが驚いていることに、笑みを深くするお兄様。こういう、追い詰めるところがSって言われるんですからね。

 

「それで、これだけでも俺は十分に楽しいんだが、何をすればいいんだ?」

「映画を見ようと思います。一つは私がセレクトしますので、もう一つはお兄様が選んでくださると」

 

そう言って端末を差し出しラインナップをお兄様に見せると…指の動き早いですね。それで選べてます?

 

「深雪はもう決めているのかい?」

「ドキュメンタリーです」

 

映画を見ると決めてからピックアップしていた。

時代は変わっても、世界は変わってもその可愛さと人気は変わらない、猫ちゃんである。世界の猫ちゃんを、猫ちゃん専属カメラマンが自然体の姿を映すドキュメント。

お兄様犬派だったらどうしよう?犬の映画も大好きだけど、感動モノだったり悲しい結末だったりが多いので今回は除外したのだけど…その時はその時だね。

 

「ゆっくりお選びくださいませ。その間に飲み物と軽食を用意してきます」

 

立ち上がって飲み物を。アイスコーヒーがいいかしら?それとも炭酸系というのもアリかな。

ジンジャーシロップも作ってあるからジンジャエールなら作れる。ハニーレモンもあるからレモンスカッシュもありだ。

ポップコーンは用意が無いので作れないけど、フレンチフライみたいな油物の方が合うかも。

揚げ物はHARに任せてドリンクを用意。血流をよくするならジンジャエールかな。

お兄様は辛口で、私の分はハニー多めで。

出来立てのいい香りに、つまみ食いしたい気持ちを我慢してお盆に乗せて運ぶと、お兄様はまだ画面とにらめっこしていた。

意外だ。大抵のことはスパッと決めてしまうのに。

 

「候補は絞れましたか?」

「こういったシチュエーションで見る定番はホラーか恋愛ものらしい」

「恋愛ものでお願いします!」

 

そうだった。お兄様は悩んでいたのではない。調べていたのだ。お家デートなんて未知のモノだものね。どういうものなのか気になった、と。

そうだね、定番だよ。ホラーなんてカップルが引っ付くのにおあつらえ向きだもの。

暗い部屋で二人きりで見たら雰囲気倍増で、お兄様に終始しがみついてしまうこと間違いなし。

よくない。そんなものを見ては休めないですよお兄様。

 

「深雪はホラーが苦手なのか」

「…大抵の女の子は苦手だと思います」

 

特に魔法科の女の子たちは苦手な子が多かったかと。

 

「困ったな。深雪がどんな反応をするのか見たくなってきた」

 

出た!ドSお兄様!!そんなに恐れおののく姿が見たいですか!?お顔がとてもセクシーなのとホラーの恐怖で心臓が痛い。

 

「冗談だ。今日の目的は深雪を怖がらせることではないからね。またの機会にしよう」

 

…あ、これ第二弾確定ですね?ホラー映画見る気満々だ…。

ジャパニーズホラーは嫌だなぁ。あのねっとりした湿気ある恐怖って言うのかな?苦手なんだよ…。まだ洋画のびっくりさせる系の方がマシ、ではあるんだけど、あっちはあっちでお色気が入ってたりするからお兄様と見るのは気まずいような…。この時代のは違うのかな。

ということでもう片方の定番、恋愛モノを見ることになった。

ド定番ではあるけれど兄妹で見るものかな?感動系の王道ストーリーとあるのでハンカチタオルを準備。お兄様はいらないそうです。

カップルシートよろしく、密着するほど近い距離で座っているが、肩を抱かれたり、腰を引き寄せられていないので密着はしていない。

部屋の明かりをシアターモードの薄暗いものに落としていざ観賞。

物語は結婚間近の恋人たちが事故に遭い、スポーツ選手の彼を庇った彼女が頭を激しく打ち、重傷の上記憶を失うところから始まる。

幸せが一転、どん底にまで落ち、彼の成績も振るわず解雇寸前まで行くが、仲間たちから彼女の怪我を無駄にするなと諭され奮起。復活を果たし、彼女の病室へ行くが彼女は記憶が戻らず他人の距離がもどかしい。

だが諦めきれない彼は、過去のことを一旦封印し、これから関係を築けばいいと一念発起。見事彼女を振り向かせ、新たな生活を始めた頃、ふと記憶を取り戻しハッピーエンドのエンドロール。

王道だ。これ以上ないテンプレだけど、テンプレに外れ無し。

思い出せなくてもいいけれど、やっぱり思い出してほしいもんね。

ほう、と息をついているとお兄様の手が頬に当てられ、目の下を撫でられる。

 

「もう濡れてませんよ」

「上映中に触れると邪魔になるから我慢したんだ」

 

だから今、触れるのだと。…拭うものありませんよ?っていうか泣いてるの、気づかれてたのね。

横から視線は感じなかったと思うのだけど、音かな。鼻は啜ってなかったはず。涙がそこに到達する前にタオルに吸い取ってもらったからね。気づいた瞬間なるべく速攻で抑えたからね!

 

「どうでしたか?」

「よかったんじゃないか」

 

うーん、付き合いで見た、って感じですね。特に何も、ってところかな。

お兄様元々、物語とか創作物で感情が動きにくいだろうから。

そう考えると映画鑑賞自体失敗?と思うかもしれないが、目的は映画を見る、じゃなくて仕事のこととか作業のこととかを考えない無為な時間を過ごすことなので。

部屋を明るくして、飲み物を一口。冷めたフレンチフライも美味しい。

 

「休憩挟みます?」

「このまま続けて一気に見てしまおう」

 

そういうことなので今度は部屋を明るくしたまま鑑賞。動物ものに没入感はいらないので。

そして始まった猫ちゃんの猫ちゃんによる自然体の生活風景。

 

(あああ~かわいい~。美しい。美人さん。あ、あくび。きゃわわ。うーん、人に撫でられてもつれない姿。たまらないね。ああでも、撫でてもいいのよっていう懐の深いにゃんこ様も尊い。すき。ここには好きしかない。かわいい。すき)

 

パラダイスだった。

語彙力なんて猫を前にして残るはずがない。

途中ハラハラする場面があったりしたけれど、ここは猫を中心に回っている世界。人間も優しい。困った猫を手助けするなんて当たり前の世界だった。

よかったよー。川に落ちた子猫救出出来て。子猫は好奇心旺盛だし周りが見えてないからね。危ないことも平気でしてしまうから目を離しちゃいけないのですよ、母猫さん。気を付けて。

そしてエンドロール。やばい。泣く場面なんてないのに涙が。ただ子猫たちが草むらで戯れてるだけなのにね。尊いものを見ると涙って自然に流れちゃうものだから。

 

「可愛かったですね」

「ああ」

 

お兄様を見れば、おお!慈愛に満ちた笑みを湛えております。お兄様にもお分かりになりましたか、お猫様の尊さが。

 

「抱きしめていいか?」

 

本物は抱きしめられないですからね、私が代理でいいのかわからないけれど、精いっぱい務めさせていただきましょう。

 

「どうぞ」

 

そっと抱きすくめてから、頭を撫でられ、髪を撫でつけられる。

 

「ふふ、くすぐったいです」

「そうか」

 

もぞりと動く私に、お兄様は宥めるようにぽんぽんと背を叩く。

その様はまるで映画の中の子猫と母猫のよう。

 

「子猫になった気分です」

「そうだな。目が離せないという意味では、俺にとっては子猫みたいなものかもしれないな」

「まあ。私はあそこまで好奇心旺盛ではないですよ」

「そうかな?いろんなものに目移りするところなんてそっくりだ」

「ならお兄様は母猫ですか?」

「俺が母猫なら常に首根っこを掴んで離さないだろうな」

 

過保護ですね。

 

「それじゃいつまでたっても成長できないですよ」

「いつまでも俺の元に居ればいい」

 

…ちょっと、離れましょうかねお兄様。耳元で囁かないでほしい。その低音ヴォイスは心臓に悪い。

さっきまでほのぼのな雰囲気だったのに、セリフと声で一変してしまった。

 

「もう、お兄様ったら」

 

冗談もそれくらいにしてほしい。と、ゆるい拘束から体を離し、水分補給のジンジャエールを。うん、甘い。下の方にハニーが固まってしまっていた。

 

「甘すぎたならこっちを飲むか?」

 

差し出したのは自分の分。せっかくの好意を拒否するのもあれなので、ちょっとだけいただく。ストローだから間接キスなどにはならない。自分の分のストローを差して飲ませてもらう。

すっきり。でもちょっと辛い。

 

「俺にはちょうどいいんだがな」

 

それは何よりです。お兄様のお口に合えば作った甲斐もあったというもの。

 

「少しはリラックスできました?」

「ああ。よく深雪が可愛いものは癒しと言うが、本当だな」

 

可愛かった、と反芻するお兄様。お兄様もお猫様の魅力を満喫できた模様。

 

「また今度一緒に見ようか」

「はい!」

 

よかった。お兄様のストレス軽減にアニマルは効く!これで今後の対策は立てやすいね。

猫だけじゃなく、今度は別の動物ものも見てみよう。

 

 

――

 

 

「次は好きな音楽を聴く、というリラックス法みたいですが、お兄様は好きな音楽とかございますか?」

「音楽はほとんど聞かないからな」

 

そうですよね。私もあまり現代の音楽を聴かないけれど、学校で話題になるものくらいはチェックしていた。女子の話題には必要ですからね。あとは教養でクラシックくらい。

 

「ああでも」

 

お兄様は腿に肘を置き、拳に顎を乗せる考える人のポーズから顔を上げて。

 

「深雪の鼻歌ならいくらでも聞いてられるな」

「それは…音楽としてどうでしょう?」

 

…気が抜けるとうっかり自然と出てきてしまうんだよね。あと機嫌が良い時とか。

でもそれを音楽というのはちょっと違うのでは?

 

「メロディがあるのだから音楽だろう。まあメロディが無くとも、お前の声はどんな名器にも劣らない楽器と言っても過言ではないからな」

 

過言も過言、とんでもない大過言ですお兄様。

いや…声優さんと思えば過言じゃない⁇透き通るような綺麗な声ですものね。うんうん、自分の声と思わなければ確かに素晴らしいお声ですけども。

先ほどからお兄様が仰ぐように下からこちらを見つめるから、ドッキドキで思考が纏まらない。

もうちょっとその、期待する目を弛めていただけないものかしら。

 

「それで、聞かせてくれるのかい?」

「…鼻歌は歌おうと思って歌ったものではないですから」

 

その時々に出てしまうだけだから、何を歌っていたかも覚えていない。しかも前世の曲が多かったと思う。猶更歌うに歌えない。

 

「無理に聞き出すものではないからね。いいよ。無理に歌うことはない」

 

う…。こういう時、甘やかされているな、と実感する。

お兄様は自分の都合より私に合わせてくれるから。嬉しいけれど、我慢させてるようでいたたまれない。

 

(きょ、今日くらい、私が恥ずかしいのを我慢すればいいじゃない)

 

とても、とてつもなく恥ずかしいけれど。お兄様のリクエストを叶えなくて何がブラコンだ(?)。

やって見せようじゃないか、と気合を入れて立ち上がるとソファの背もたれ側に回ってお兄様の後ろに立つ。

何もしないで鼻歌を歌うなんてできないし、顔を見られるのは恥ずかしいので苦肉の策として。

 

「か、肩を揉んでたら自然に出た、体でお願いします…」

 

設定が無いと出来ない私を許してほしい。

肩を揉んだり、体に触れることはリラックス効果があるからね、一石二鳥だね!と誰が聞くわけでもないのに内心言い訳をして肩に触れる。

デスクワークをするお兄様だけど、運動、柔軟もきっちりしているので肩が凝って張っているということはない。

私の握力でも揉めるくらいのしなやかな筋肉。

 

「痛くないですか?」

「ん、もう少し強くてもいいくらいだ」

 

これくらい?それくらい。と求められたのはちょっと力を入れたくらいの強さで。

 

「気持ちいいよ」

 

本当かどうかわからないけれど、お兄様の声は優しくて、嬉しさも含んでいることも分かるから良しとする。

お兄様が喜んでくれている、それが全てだ。

なんだかこれはお家デートなのかただの兄妹の休日なのかわからなくなってきた。

二人きりで家で映画を見る、なんて初めてではあったからいつもの休日とはまた違った過ごし方ではあるのだけど。

それにしてもさっきの映画はよかった。

見るだけで癒される可愛さ。お兄様さえ虜にする愛くるしさ。素晴らしく魅力の詰まったいい作品だった。

あ、それならさっきの映画のメインテーマのインスト曲とかいいかも。初聞きだけど耳に残るメロディだったのよね。

さっそくハミングしてみるとお兄様はすぐに気づいたらしい。

 

「さっきの映画、相当気に入ったんだな」

「ええ。とても可愛らしかったです。お兄様はいかがでした?」

「俺も気に入ったよ。だが外では見られないな」

 

あら、もしやお兄様相好が崩れるほどでしたか?それはちょっと興味ある。今度観ている間のお兄様もチェックしないと。

 

「映画館は暗いですよ?」

 

それに一般的な席ならば没入できるよう一人用の席になっていて、隣と距離がある。周囲の目など気にすることなく映画鑑賞ができるのだ。

 

「誰かに見られる危険はない方がいい」

 

危険…。まあお兄様のイメージが崩れる危険はあるのかな?むしろギャップがあっていいと思うのだけど。見てないからどうギャップがあるのかわからないが。次回チャレンジだね。

 

 

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