妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします!分割版   作:tom200

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来訪者編②

 

バイクの振動とお兄様の背中からの熱を感じながら…なんとなくだけど思い出してきました。

沈めるってあれか。お兄様沼の話か。お兄様にはわからないよね。ごめんなさい。そして説明できない。するわけにはいかない。

そして思っていたより、前回よりもとんでもないことぺろっとしたね。

…好きなのに更に好きにさせようとする、とかとんでもない告白だね?信じられない。無かったことにしましょう。私の心の安寧の為にもこのまま有耶無耶に。

 

「深雪」

「…はい」

「お前が覚えてなくても、嬉しかったよ」

「~~~~~~、そうですか」

 

時間差で追い打ちを掛けてくるお兄様。

このタイミング、まさか思い出したこと気づかれてる?

…抗議の意味も込めてちょっと腕に力を籠める。なにか続けそうだったお兄様のお口チャックすることには成功した。けれど同時に何か失った気もする。

なんだろ?羞恥心が増したから、その分汗かいて体重でも減ったかな。

でもそんなバカなことを考える時間は長く続かなかった。

トンネルを抜けると、すごい光景が広がっていて目を奪われたからだ。

 

「わぁ!すごいですねお兄様!」

「ああ。見事だな」

 

鮮やかな色彩が目に飛び込んでは流れていく。

そして紅葉の先には目的地の湖が。

 

「綺麗…」

 

風が今は止んでいるのか、湖に紅葉が反射して美しい絵画のよう。

こんな素晴らしい光景を今、たった二人だけで独占できるなんて。

 

「気に入ったかい?」

「とても!」

「それはよかった」

 

お兄様も感動しているのか、声が柔らかい。

バイクを止めた先は人の手入れがない、整地されてない湖畔だった。こんなに素敵な場所なのにまるで隠れ里のよう。

それでいて湖は濁ることがないということは、常に湧き出る水源があるからなのか。

私たちが近づいたことで、がさがさと、生き物たちが去っていく音がしたから動物たちの生活圏なんだろうけど、ごめんね、ちょっとだけお邪魔します。

ヘルメットを外してお兄様と顔を見合わせ、私はCADを取り出した。

思い出すのは前世好きだった牧場経営のゲームだ。

荒れた土地を開拓するところから始まるあのゲームは、木の枝や石ころを集めるところから始まる。

だが、ここは魔法のある世界。一つ一つ手や道具を使うことなくかき集め整備する方法があった。

小規模のサイクロンを起こして掃除機のように集めて一か所にまとめ、山を築く。これを何回か繰り返して。

続いてはぼうぼうと生えている草を、下から5センチ残して草刈り機のように刈り取っていく。

魔法はイマジネーション、…だけだったらよかったんだけど、ここでは理論も必要なのよね。

そこがちょっぴり不便に思えてしまうのは前世のアニメの影響だ。

風魔法とか精霊にお願いして~、っていうのが定番だよね。異世界魔法あるある。

カットした草もひとまとめにすると、今度はお兄様が魔法を発動。

草の山はきれいさっぱり分解、除去されました。

整えられた芝生…というにはちょっぴり野性味があるけれど、自然っぽいと言えば自然っぽい。

お兄様がその上に持ってきたシートを敷いて、バスケットを下ろし――今日の目的、ピクニックの準備が整いました。

草を刈ったばかりなので青々とした匂いが残るけど、嫌いじゃない。都会で感じることの少ない緑のいい香りだ。

庭の手入れくらいじゃここまで青々とした匂いは感じられないからね。

腰を下ろしたお兄様に手招きされてバスケットを挟んで座る。

いつもと違う環境に、気分も高揚して頬が緩んだ。

お兄様もリラックスできているのか、表情がいつも以上に柔らかい。

無言だけれど、心で通じ合っているような、そんな優しい時間が過ぎる。

高いところで鳴く鳥の声、草木を揺らす風の音、目の前の湖がさざ波を起こし日の光を反射してキラキラと輝く。

最高のリラクゼーションだ。

 

「素敵なところですね…」

「ああ」

 

お兄様の相槌は短く簡潔だったけれど感情が入って聞こえ、この景色に癒されているのかな、と窺い見れば、目が合った。

…いつからこちらを見られてたのか。それともたまたま偶然今のタイミングで合ったとか?

 

「深雪がこんなに喜んでくれるなんて、たまにはこういう遠出もいいな」

 

…ずっと見られていた疑惑が確信に変わる。恥ずかしい…。

 

「もう、お兄様ったら。私なんて見ずに景色をご覧になったらいかがです?」

 

せっかく来たのに何故こちらを見られているのか。

 

「最高に美しい景色を眺めているんだよ」

 

そう言って手を伸ばし、頬を撫でてくるお兄様。なぜ恥ずかし気もなくそんなことを言えるのか。

立膝で座る珍しいお兄様なんて、雑誌の表紙を飾ってもおかしくないくらいかっこいいのに、私の口からは上手く賛辞の言葉が出てこない。

どうやったらお兄様みたいにするっと言えるようになるんだろう。

 

「…お兄様だって、写真に収めてずっと眺めていたいくらい素敵ですよ」

 

自分にはこれくらいが精いっぱいなのに。

 

「深雪に素敵なんて言われると照れるな。だが、お前にならいくらでも構わないぞ。その分俺も深雪を堪能させてもらうから」

 

…間に挟んだバスケットが唯一の防波堤。だけどお兄様はそんなもの軽々と乗り越えて身を寄せてくる。

頬を撫でていた手が髪の間を通って後頭部に回された。引き寄せられる頭。触れ合いそうなほど近づく顔。

 

「深雪」

 

甘い声に呼ばれてしまえば、体から力が抜けてしまう。

見つめ合ったのはどれくらいの時間だろうか。一瞬のようでもあり、永遠のような時間。

お兄様の瞳に優しさが滲み、細められたところで後頭部に回されていた手がするりと髪を撫でおろして離れた。

 

 

「これ以上見つめてしまうと深雪に吸い込まれてしまいそうだ」

 

 

「…それは私のセリフですお兄様」

 

…危なかった。よくわからないけどたぶんとっても危なかった気がする。

心臓が動くことを思い出したかのように超特急で早鐘を打つ。

…こんな至近距離でお兄様と見つめ合うなんて!

っていうかお兄様すべての言動が破廉恥です!なんか、こう、手つきとか!表情とか!フェロモン垂れ流してましたよ!!えっちぃ!やっぱりお兄様はえっちぃですよ。

どうして妹を誘惑しようとするの!やめて。心はとっくに陥落してるから!さっきバイクで話したでしょう?!お兄様も記憶を無かったことにしました?

 

「そろそろ美味しそうな匂いのするバスケットを開けようか」

 

どうしてお兄様はそうあっさりいつも通りに戻れるのです!?こっちはまだパニック中なのですが!!

まだピクニックを楽しむ余裕がない!

そんな私の混乱をよそに、お兄様はバスケットから水筒とおしぼりを取り出し、コップの準備まで始めている。

…って!お兄様に準備させてる!

 

「あ、ありがとうございます。ごめんなさい、ぼうっとし過ぎですね」

「偶にはいいじゃないか。いつも頑張ってくれている深雪に俺もしてやりたいんだ」

「…そんなに甘やかさないでくださいませ」

「もっと甘やかしたいくらいなんだがな」

 

お兄様が、攻撃の手を全然弛めてくれない。

何?大自然がお兄様に力を与えているの?いつもよりも開放的な発言が多い。

こんな風に甘やかされていたらお兄様の傍から離れられなくなってしまうじゃないか。

切実にやめてほしい。箱庭生活は人を堕落させます。

せめて、とお皿とお箸を用意して、お弁当を開く。

途端広がる唐揚げの香り。

明らかにサンドイッチとかが詰まっている!と思われるバスケットに、開けてびっくり和風弁当を敷き詰めてみました。

定番も定番、ド定番を詰め込んだ、ピクニック弁当です。

唐揚げを中心に、俵型のお結び。食べ応えのある肉巻きおにぎり。だし巻き卵にきんぴらごぼう。プチトマトとピーマンの煮びたしは彩として。そして筑前煮ね。お野菜も食べたいので。

デザートには牛乳寒天という、昭和レトロを彷彿させるお弁当のラインナップ!

まあ、この時代昭和も平成もまとめて昔懐かしのレトロなのですがね。境界線なんてありません。一緒くたです。

時代変われば見方も変わる、だね。

 

「美味そうだ」

「どうぞ、召しあがってくださいませ」

 

原作の深雪ちゃんなら取り皿にとってあげたりするかもしれないけれど、ここはお兄様の好きに食べてもらいましょう。

バランスよく、も大事だけど何が好きかも知りたいところ。

そしてお兄様の一口目は唐揚げ。

流石お兄様、わかってらっしゃる。冷めても美味しい唐揚げはお弁当のザ・王道ですからね。

 

「ん。美味い」

「お口に合ったようでなによりです」

 

お兄様の目元が細くなった。お口に合った模様。内心ガッツポーズです。やったね。

私も続いて食べ始める。うん、卵もいい感じにできてますね。外で食べるとまた一味違うよね。美味しい。

 

「この肉巻き、初めて食べるがいいな。甘辛いのが絶妙だ」

 

あら嬉しい。

気に入ってくださいましたか。

 

「今度朝のお勤めの際包みましょうか」

「ぜひ頼む」

 

まあまあ!思ったよりも高評価。先生とのお弁当と別で包みましょうね。

お兄様の好物リストにまた一つ増えましたね。この調子でバンバン増やしていきましょう。

お茶も注いで、のども潤しながらまた次のおかずに手を伸ばす。どれもこれもお兄様は美味しいと言ってくださって、なんて作り甲斐のある!と心が喜んでおります。

お兄様ったら褒め上手。

あれだけあったお弁当が見事に空です。残してもいいようにタッパー用意していたんだけど使わずに終わりました。

 

「お兄様苦しくありませんか?」

「問題ないよ」

 

一体このスリムなボディのどこに入っていったのか。後でバイクに乗る時抱きついたらわかるかな。

食後のデザートも平らげて、お茶を啜る。

このまま至福の時を静かに過ごしてもいいのだけれど、戻ってからのこれからを思うとそうも言ってられない。

――これからまたお兄様は忙しくなるのだから。

 

来訪編が、始まる。

 

お兄様の戦略級魔法の調査と、吸血鬼――パラサイト事件。USNA最強のスターズトップのリーナちゃん襲来。

そして我が四葉の敵である顧傑、ジード・ヘイグ、黒顧大人、呼び名は様々だが迷惑な亡霊の存在を知ることになる。

本来ならば大漢崩壊の際に共に滅びていておかしくない存在。

ただその前に大漢から追放されたことで命が助かったくせに、今は無き大漢を恨み、大漢に復讐を果たす前に潰した四葉を憎んだ、怨念の成れの果て。

自己中心的にしか物事を考えられないくせに、黒幕を気取って世界を操っていると錯覚している哀れな男。

こんな男の撒いた種のせいで、魔法師が窮地に追い込まれることになる。

第三次世界大戦が汚染物質塗れにならずに済んだのは、死の星にならずに済んだのは当時の魔法師たちが結束し、終決させたからだというのに。

そのヒーローという存在を悪とし、滅ぼそうというのか――。

 

(なんで、自分勝手で愚かな争いばかりするのだろうね。皆漫画やアニメで学ばないの?日本のロボットアニメで行われている戦争の結末に何も思わない?あれこそ戦争への教訓のちりばめられた教科書でしょうに)

 

上も上だけど、一般の人たちだってそう。

正義が悪落ちする理由の大半は一般市民が原因になるんだってなぜ気づかない?

だけども、ヒーローのピンチを救うのだって同じ一般市民だったりするわけですよ。オラに力を!ってね。皆の応援が力になる、は王道でしょう。

できれば皆さんにはそちらに進んでもらいたい。おすすめですよ。

あの作品もパワーバランスおかしくなってたけど、お兄様自身も一人パワーバランスおかしいからね。つまりお兄様は〇イヤ人?いいえ、私のお兄様です。

話が脱線しまくりましたね。めんどくさい大人の事情なんて考えるから変なことになるのです。一旦置いておこう。

 

「雫の留学ですが、目的は交換留学生という形で怪しまれずに本国の人間を日本に送り込むこと、ですよね」

 

タイミング的に無関係とは思えない、派手ではないが大きな動きだ。

既に四葉から帰ってきたその日のうちに話のすり合わせは済んでいる。

スターズがお兄様を探していて、私たち兄妹が容疑者としてリストアップされていることは共有済みだ。

まああちらの国にして見れば優先事項よね。正体不明の戦略級魔法師がいるなんて。

核爆弾隠し持ってます、なんてレベルじゃないから。

 

「まさか違うとは思うが、アンジー・シリウスは未成年だというのは有名だな」

「…流石にそんなビッグネームが一高になんて…」

 

いきなり出た名前に動揺してしまうけど、お兄様ビンゴです。大当たり。景品は何がいいかしら。

とりあえずびっくりしながらお茶でも、とお兄様のコップに注いだ。

 

「総隊長、しかも戦闘員が来るなんてことはないだろう。こういったことは普通諜報担当だろうからな」

 

お兄様それフラグです。おっきいのが立ちました。

でもそう思いますよね。本当、ありえないですよね。

スターズの総隊長が遠路はるばる日本までやってきてポンコツ諜報活動させられるなんて。

若くして総隊長なんて職について忙しい毎日なのに慣れない仕事まで押し付けられて可哀想すぎる。その裏では追加で粛清活動させられるんですよ?忙しすぎて精神分離しない⁇

未成年の少女の背負う、過酷すぎる運命を憂いてしまう。

大人もっと頑張れ。仕事して。

 

 

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