妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします!分割版   作:tom200

84 / 265
来訪者編⑧

 

ということでリーナちゃんを連れて食堂へ。

入った途端すごいね。皆に注目されました。でもリーナちゃんも慣れたもので気にもしない。本当堂々としています。

自信に満ち溢れてるというのかな。自分は間違ってないわ!みたいな。

背後でほのかちゃんがたじろいでる。居心地悪そう。でもすぐお兄様のところに行くから頑張って。

迷うことなくお兄様の席に向かうと、皆ある程度予測してたのか、苦笑を浮かべているメンバーたちが。

ごめんなさいね。皆の元に有名人を連れていって注目されてしまうことを許してね。

何も言っていないのにもう一人分の席も確保されている。

お兄様は私の方をちらりと見つつ、自分に向けられた視線を受け止める為、リーナちゃんと対峙する形になった。

 

「ご同席させてもらっていいかしら?」

 

この時点でかなり日本語流暢だよね。女子高生はなかなか言わないよ、ご同席なんて。

同い年の日本人より日本語知ってるパターンの留学生です。すごい。

お兄様は対外的な笑みを浮かべて歓迎――するわけでもなはないけれど、気負わずフランクに返した。

普通こんな美少女に声を掛けられたら緊張の一つや二つしてもいいと思うのだけど、お兄様だからね。流石です。

周りもお兄様だしな、という空気が流れてます。

とりあえず皆の席にはすでに食事が並んでいるので私たちも急いで取りに行った。

混んでいる配膳カウンターの前に道ができる。…いいのかな?と思うのは一瞬だ。

むしろ早くしないと後がいつまでたっても続かない。ありがとう、と感謝を込めて微笑んで頭を下げてからリーナちゃんに使い方を伝授。

とはいっても今はどこでも導入されているシステムだ。食べたいメニューを選んで、あとは受け取り口で待つだけ。しかも時間はほとんどかからない。

自分の食事を持って席へ戻る最中もいつも以上の視線を浴びるけれど、今はそのことよりもどこに座ろうか、と思案する。

いつもならお兄様の隣なのだけど、今日はリーナちゃんを案内する立場にある。二人が話すことをメインにするならお兄様の前の席にリーナちゃんを配置して、運命の後押しをした方がいいかな。

初詣では私のせいで印象が変なことになってしまったから。

ほのかちゃんにはお兄様の隣に行ってもらってその向かいに座ったのだけど、皆なんでそんなに私に注目するの?そこまでおかしい席順かな?

 

「なに?深雪、達也くんと喧嘩した?」

「喧嘩なんてしてないけど、席のことだったら今日の主役はリーナ、彼女だから、紹介もかねて中央寄りに座ってもらったのよ」

 

お兄様の隣に座らなかっただけで不仲を疑われるとは。そして周囲から安堵の溜息がちらほら。

席が違うだけで不仲を疑われるの?…そんなに心配事ですか、私とお兄様の関係。

そう言えば演劇部部長の本は来月発売決定とのことで、校内で予約したか?と聞くだけで本のことだとわかる程度には認知されていた。

公然の秘密…秘密にもなっていないけれど、一応架空の設定であり、モデルは伏せられてはいる。緘口令も敷かれたそうだけど、校内ではいいよね、という謎ルールがあるらしい。ばーい美月ちゃん調べ。

この話に関してはエリカちゃんよりも美月ちゃんの方が詳しい。

とまあ、その話は置いておくとして。

ほのかちゃんがお兄様の横で張り切ってリーナちゃんの紹介をするのだけど、舞い上がっているほのかちゃんはお兄様にだけ紹介をするというミスをして、ほのかちゃんだもんね、と皆に温かい目で見られていた。

真っ赤になって困ってるほのかちゃんも可愛い。ほのかちゃんのフォローは雫ちゃんだったけれど、彼女のいない今、その役目は私がしっかり果たさなくてはね。

 

「じゃあ仕切りなおして。アメリカから来たアンジェリーナ=クドウ=シールズさんよ」

 

リーナちゃんは皆を見渡してから座ったまま綺麗な一礼。様になってることからも教養の高さが窺える。

…横から見るとすごいね。まつ毛長い!爪楊枝置けそうなレベル。

瞳は空の色をドームに閉じ込めたように澄んだ青。くるくる巻かれた金髪はリボンで両サイドにまとめられていて揺れ動くだけでキラキラ眩しい。

ほどいたらきっといい匂いがする…じゃなくて、私と同じくらいの長さかしら?いえ、縦ロールをのばしたらそれ以上長いんじゃないかな。

気付いたけど私の周り縦ロール率高いね。叔母様然り亜夜子ちゃん然り。

珍しい髪形だと思うのだけど。今度私も挑戦してみようかな。

外でしたら叔母様たちとの関連を疑われる可能性があるから家で、になるけれど。

 

「リーナと呼んでくださいね」

 

綺麗な笑みに見蕩れちゃってもおかしくないと思うのだけど、正面で食らったはずのお兄様は紹介された流れを受けてさらっと自己紹介をしてリーナちゃんと敬語抜きの会話権をさらりと取得。

普通男子高校生はそんな簡単に取れないですからね、美少女とのタメ口権利。

そしてテーブルの上で交わされる握手に内心きゃあきゃあ騒いでしまう。

だって、だってね。ただの握手じゃないのよ。リーナちゃんはただの握手のつもりで差し出した手なんだけどね?

お兄様ったらその手をそっと下から掬い上げるように持ち上げてきゅっと握るのですよ。

所謂貴婦人に接吻の礼を取る様にするっていう!アレです。

隣のほのかちゃんなんてひゃーって顔。わかる。ひゃーっ!だよね。美月ちゃんもきっと、と思って見ると予想に反して複雑そうなお顔。

なんで?いつもなら一緒にひゃーっ!だと思うのだけど?あ、ちらっとこっち向いた。

手を振ってみるとなぜか拳を握って小さく頷いて…何か決意でもしました?オタク、勝手に悩んで自己完結するイキモノだから。

 

「タツヤってもしかしてミユキのお兄さん?」

 

名字が一緒だし、さっき来る途中で話題に出したからね。リーナちゃん大正解!

お兄様もニッコリ笑顔…は、私の妄想です。対外用の笑みですね。ニコ、くらいかな。笑みを浮かべて頷いて返した。

でもお兄様にしてみれば結構なサービスだと思いますよ。良かったねリーナちゃん。

それからエリカちゃんを筆頭に自己紹介タイム。

こういう時特攻隊長のエリカちゃんがいると本当スムーズだよね。流石。

吉田くんが可哀想にあまり呼ばれたくない愛称で呼ばれることになってしまったけれど、概ね問題なく終わった。

だけどどうしてかファーストコンタクトのあった神社の話が出ない。リーナちゃんから振ってもおかしくないと思うのだけど、タイミング失ったのかしら。

西城くん言わないの?もしやスパイだって疑ってるから、余計なことを言って探られないように、とかそんな話になってたり⁇

それとも単に気づいてないのか。よくわからない。

美月ちゃんに至っては私が印象付かせたから気づいていてもおかしくないのだけど。さっきも様子がおかしかったから何かあったのかな。

ともかく自己紹介も終わったしようやくご飯が食べられる。

リーナちゃんはこの時間を見越してかな。短時間で食べられる蕎麦だった。箸の使い方上手。

だけど啜るはまだマスターできてないのね。…今度お手本に麺類注文してみようかしら?美少女にはぜひ啜ってもらいたい。

…だめだ。心のおじさんはお帰りください。邪なことは考えない。

麺を啜る唇ってキスする時の形になるよね、なんて本当によくない。最後のちゅるんが見たいなんてそんな。

 

「深雪」

「…なあに、兄さん」

 

そうだ、隣に座ってないのでした。お兄様の方を見れば心配そうな表情。

 

「食べる手が止まっているよ」

 

あらいけない。皆が楽しくおしゃべりしている時に手と口を休ませてしまった。

 

「手伝おうか?」

「…兄さんにとって私はいくつなの?一人で食べられるわ」

 

手伝うっていったい何をどうするつもりなのか。もしかして食べ足りないから分けてほしいとか?絶対違うね。

ほのかちゃんは羨ましがらないで。っていうか羨ましいかな?高校生になってまで食事の世話されるのって。

 

「タツヤって面倒見がいいのね」

 

リーナちゃんの発言に皆虚を突かれたように固まった。言われたお兄様も首を捻っている。

 

「あ~、リーナ。早めに知っておいた方がいいと思うから言うけど、達也くんのソレは深雪限定だから」

「その二人は重度のシスコンとブラコンなんだ。この学校では知らない奴がいないくらい有名な、な」

「西城くん、兄さんは重度かもしれないけど、私はそこまでじゃないと思うのだけど」

 

抗議の声を上げると、周りから残念なものを見るような目が向けられた。

な、何で!?そこまで私お兄様お兄様してないと思うのに!べったりくっついたりもしてないし。

 

「あ~、まあ…そうなんだけどな?」

「あの、達也さんの行動を受け入れちゃってる時点でその、判定が…」

 

美月ちゃん、なぜ照れながら?両頬を押さえて乙女なポーズ。可愛いけれど。

お兄様の行動を受け入れているだけでブラコン判定?

…ああ~、普通なら反発するか拒絶するかなのか…。エリカちゃんがそのタイプだね。でもエリカちゃんだってブラコンなのに。

私はお兄様が誰と付き合おうが文句を言うつもりはないよ。お兄様を大切にしてくれて、お兄様も受け入れているなら誰でも大歓迎。

 

「俺の行動はそんなにおかしなものか?」

「おかしい」

「過保護すぎる」

「甘いですよねぇ」

「特別なのはわかるけど、態度が違いすぎです!」

「達也は周りの反応を気にすべきだ」

「…やっぱり距離を置いた方がいい?」

「「「「「それはやめて」」ろ」あげて」ください」

「それだけはやめてくれ」

 

お兄様は重度のシスコン判定に疑問の様子だけど、それには全員が丁寧に否定。

そして私もついでとばかりにここぞと兄妹離れを提案するのだけど、こちらもリーナちゃん以外からすかさず却下のお言葉。

お兄様もですか。

でもシスコンっていうのはマザコンと並んで恋人出来なくなる要因ですよ。早めに無くした方がいいと思うのだけど、うまくいかないね。

 

「…よく、わかったわ」

 

リーナちゃんがちょっぴり胃の辺りを押さえた。胃もたれですか?

それから話の流れを変える為か、お兄様はリーナちゃんの素性、九島家との関わりについて触れる。

よどみなく答えるリーナちゃんは、きっとここまでなら想定済みだったんだろうけど、続くエリカちゃんの、自分からの希望ではない留学なのね、とのツッコミに動揺していた。

雫ちゃんは希望してという形だったから、エリカちゃんの質問はおかしな流れではなかったのだけどね。

エリカちゃんの特攻は見えないところからもやってくるから気を付けて。

 

ちなみに、どうして神社の話が出なかったのか後で確認したところ、あの恰好のことに触れるのは悪いかなという気遣いからでした。納得。

 

 

――

 

 

家に帰るとお兄様とのハグタイム。

 

「深雪は彼女を気に入ったのか」

「そうですね。警戒対象とわかっているのですが、どうにも印象がちぐはぐで」

 

優秀なのは座学でもわかった。

日本語の文章も問題なく理解しているし、解答もおかしなところもなく正解していた。

実力を隠して潜り込む、ではなく派手な容姿もあるから、むしろ下手に隠すことなくあえて注目を浴びて疑いの目を逸らそうとする作戦のようだ。

というよりそれしかないよね。彼女の容姿目立つもの。これで実力無いよう振舞ったら嘘に映る。そっちの方が疑ってくれと言っているようなものだ。

そしてこれからは実技の授業も組み込まれる。

きっと容姿に見合っただけの実力があるのだ、とすでに期待もされているから容姿がいいのも大変だ。

 

「ちぐはぐ、か。確かに彼女は隠し事が得意には見えなかったな」

「そういう演技の可能性もありますが、疑われている中ではあまり意味のない演技ですよね。工作が得意か不得意かなんて、結局のところスパイと思われた時点でただの警戒対象ですし、今更素人に見せたとしても、効果があるとも思えません」

「たとえ本人に工作員としての技量が無く、自身で考えるのが苦手であってもサポートがあれば十分使える、か」

 

辛辣なご意見。そこまでポンコツじゃないですけどね、リーナちゃんは。

内心ちょっとだけフォローして、ある程度意見の纏まったところで、いくらハグして密着していても玄関では寒いものは寒い。お兄様の背を叩いて中に入りたいのだけど…

 

「――初詣の時も思ったが、深雪はあの子に特別な思い入れがありそうだな」

 

ドキィッ!と古典的に心臓がはねた。…ええ。白状すると女の子キャラで一、二を争う好きなキャラでした。

可愛いよねリーナちゃん。争っていたのはお気づきの方もいるかもしれないが雫ちゃん。

今ではぶっちぎりで雫ちゃんだけどね。大好き。でもそれとこれとは別と言いますか、浮気じゃなくてね?キャラとしてファンというか。

お兄様が少しだけ体を離して頬に触れる。

 

「何か彼女に感じていると、そういうことかな?」

「そう、ですね。…でも彼女は私に、というよりも初めからお兄様を特別視しているような気がして」

 

それは事実。原作抜きにしても彼女の目は初めからお兄様をロックオンしていた。

今日のお昼もそうだし、初詣の時にはすでにお兄様しか見えていなかったように思う。

容疑者に私も含まれると言っても九校戦の資料でも見ていたら、あの戦略級魔法は私の魔法の可能性は低くもなるだろうから。

逆にお兄様の魔法は特殊に見えてもおかしくないし、何よりモノリスコードで魅せた動きは訓練をした人間のモノだと気付いてもおかしくない。

 

「お前と俺では未知数な分、俺が怪しまれてもおかしくないからな」

「初詣の際にはお兄様に一目惚れでもされたのかと思ったのですが」

「それはないよ」

 

速攻否定される。けれどね、あの時のお兄様魅力半端なかったですからね?釘付けにならないよう必死だったんですから。

 

「そうでしょうか?あの時のお兄様はとても素敵で、目を奪われても当然かと」

「そう言う口で、俺ではなく彼女を見つめていたのは誰だったかな?」

 

う、藪蛇だった。頬をするりと撫でられる。同時に背筋に何かが通り抜けた気がした。ぶるぶる。

 

「だが、そうだな。そこも引っかかっている。深雪と歩いていて俺だけを見るなど不自然だ。深雪のあの時の美しさは性別問わず皆を魅了していたからな」

 

褒められるのは嬉しいけれど、そうか。気にしてなかったけどリーナちゃんから見られた覚えはちらっとしかない。それは何か目的を持って観察していない限りありえない反応。

深雪ちゃんは視線収拾マシーンだからね。興味ない人間でも一度は目を奪われる。何か任務をしていない限り私に視線が向くのが自然だ。

 

「仕掛けられる相手が俺だけになったと思えば気が楽だな」

「…お気を付けくださいませ」

 

もう一度お兄様の体に寄り添うように押し付けてから今度こそ離れる。お兄様もすんなりと離してくれた。

 

「相手がどんな手を使ってくるかわからないからな。深雪も十分気を付けてくれよ。最悪お前が人質になんて取られた日には、俺は何をしでかすか」

「そんなことにならないよう努めます」

 

それだけはダメだ。そんな話はなかったなど考えずに気を引き締めねば。

原作の強制力があるからといって原作からいくつか道を外しているのだから――

 

 

 

 

なんて、まさかそれがフラグになっていたとは、予想もしていなかった。

 

 

――

 

 

「もう一回!もう一回よミユキ!!」

「わかった、わかったから落ち着いてリーナ」

 

実習室で向かい合い、皆が固唾をのんで見守る中、直前の興奮を抑え込んでリーナちゃんはカウントする。

 

「スリー、ツー、ワン」

 

ワン、のカウントで手をパネルに翳す。

 

「「GO!」」

 

私は指だけをそっと。リーナちゃんは手のひらを打ち付けるように。

眩い想子の輝きが二人の中心に押し寄せ、金属球の座標目掛けてぶつかり合う――のだけど、ハレーションが起こるのは一瞬。

リーナちゃんの想子が押し負けて、というより塗りつぶされて?金属球がコロリ、とリーナちゃんの元へ転がっていく。

…おかしい。手加減されているのではないかというほど手応えがあまりない。

いえ、生徒の誰よりも、それこそ七草先輩や渡辺先輩たちとも勝負をさせてもらったが、その時よりも抵抗はされた。

だが術式の発動も、お兄様には全力でとは言ったものの、初めは様子見がしたいと考えて、発動速度を抑えめにした状態で試したのだが、先制が取れてしまった時には実習中なのにポケっと気が抜けてしまった。

顔には出さないようにしたけれど、動きは止まっていたと思う。

更に干渉力では、まるで壁があるのではないかというほどリーナちゃんの想子がこちらに浸食することができないでいた。密度が高すぎたのか、押し返すのも難しそうだった。

リーナちゃんの魔法が完成する前に自身の魔法を発動させて主導権を握るか、リーナちゃんの魔法を完成するまで待ってから干渉力を強めて主導権を奪い取るか。

後者は時間が掛かったけれど、それでも余裕があった。

…これはもしかして原作がおかしくなってる?何か警戒させるようなことをして、探りを入れるために私に張り合うのではなく、下に見られようと抑えているのだろうか?

 

(だけど、その割には…眦上げて躍起になってるリーナちゃん可愛いね)

 

じゃなかった。こんな時でも煩悩が消えないの、本当にどうにかしないといけないと思うのだけど、そうじゃない。

どうにもこの悔しがっている姿に嘘が無いように見えるのだ。

クラスメイト達も、司波さんだからしょうがない空気が漂い始めた。彼らは教員も先輩たちも歯が立たなかったことを知ってるからね。

だけど、これは一体どういうことだろう?原作では拮抗していたはずなのに。なぜここで話が変わったのかさっぱりわからない。

警戒されていたのはお兄様だけだったのではなかったか?

 

「今のは危なかったわ。やっぱり先に発動されてしまうと難しいわね」

「…危ないって言うけどミユキはまだ余裕があったじゃない」

 

肩で息をするリーナちゃんの表情は悔しいと書いてある。はっきり。くっきり。

負けず嫌いなのかな。演技も混じっているとは思うけど本心も混ぜ込んでいるような、そんなリアルな表情が私を惑わせる。

 

「それは、この実習はもう一月もやっているのだから作戦くらい練るわ。正攻法で勝てない場合、搦め手くらい使えないと」

「ミユキの魔法力とサイオン量を考えたら正攻法だろうと負けなしよ!」

 

きゃっ、美少女に怒られちゃった。可愛い。じゃなくて、反省。

 

「ちょっとリーナ、深雪に当たらなくても」

「ぐ…そ、そうね。冷静さを欠いたわ。ごめんなさい。ワタシ、ステイツのハイスクールレベルでは負け知らずだったから。まさかこんな手も足も出ないだなんて…」

「深雪は別格だからね。…内緒だけど、実は先輩たちも敵わないの」

「ほのか」

 

それは一応口外禁止の公然の秘密だ。注意するように名前を呼ぶとほのかちゃんは肩を竦めたけれど。

 

「う、だって、このままじゃリーナが自信失っちゃうかもでしょ?先輩たちが敵わないんだもの。まだ一年の私たちが太刀打ちできなくても、しょうがないって思わないと。来年はもっと精進して深雪に追いつけるようにって、私も言い聞かせてるんだから」

「ほのか…」

 

やだ。ほのかちゃんが泣かせに来る。ほのかちゃんもこのところぐっと成長してきたモノね。特に精密制御なんて私よりもすごいんじゃないかしら?

横浜の時もすごかったけど、更に磨きがかかったような。努力家だよね。

嬉しくなってほのかちゃんの頭を撫でちゃう。

 

「ちょ、ちょっと深雪!」

「ほのかは本当に頑張り屋さんね」

 

いい子いい子。撫でているとほのかちゃんがどんどん小さくなっていく。

 

「も、もういいよ。ありがと!」

 

顔を真っ赤にしてほのかちゃんは自分の番きたから!と逃げるように実習のテーブルに向かった。

 

「リーナも」

「わ、ワタシは結構よ!」

 

リーナちゃんは慌ててに壁際に行ってしまった。もう一回対戦するか聞こうとしたのだけど、残念。

 

 

NEXT→

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。