妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします!分割版   作:tom200

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来訪者編⑨

 

 

そしてお昼。今日は一週間ぶりにリーナちゃんも一緒です。

彼女は本当に社交的に活動していて、クラスメイト達と仲を深めるだけでなく、あちらこちらからかかる誘いにきちんと応え、できる限りたくさんの人と交流していた。

…本来総代の私もこうあるべきだったのよね。私はクラスメイトだけで精いっぱいだったけど。それに遠巻きにもされてたからお誘いはあまりなかった。

あの時はちょっとピリピリしてたから近寄りがたかったのかな。4月の事件以降はお兄様と食事することができるようになってからは、誰も誘いに来なくなったけど。

 

「大人気ね、リーナ」

 

エリカちゃんの裏表ない賛辞にリーナは謙遜することなく受け取って返すのが新鮮だった。やっぱり国民性がちがうんだなぁ。

日本人だったら絶対謙遜しちゃうから。でも謙遜もし過ぎれば失礼にもつながるから気を付けないとね。

 

「でもリーナって予想以上に凄かったんだね。そりゃあ選ばれて留学してくるくらいだから、相当な実力者だろうと思っていたけれど、まさか深雪さんの相手が務まるとは」

 

食事は進み、話は直前までの授業のことに。

吉田くん感心したようにリーナちゃんに話しかけたのだけど、初めて私の名前を呼んでくれた気がする。ちょっと嬉しいけどセリフが変わっちゃってますね。なんですか、私の相手が務まるって。

それに何よりリーナちゃんとおしゃべりする方がフランクってどういうことだろう?私には敬語だったり、ですます口調だったりするのに。

…私ってそんなに親しみ難いのかな。

 

「驚いてるのはワタシの方よ」

 

吉田くんの称賛にリーナちゃんは驚いて見せてからちょっと拗ねたように返した。

 

「これでもステイツのハイスクールでは負け知らずだったんだから。なのにミユキに全く歯が立たなかったのよ?ホノカにも総合力では負けないけど精密制御じゃ負けてるし。さすが魔法技術大国・日本ね」

「リーナ、実習は試合じゃないわ。あまり勝ち負けなんて考えない方がいいと思うけど」

「競い合うことは大切よ。たとえ実習でもせっかくゲーム性の高いカリキュラムなんだから、勝ち負けには拘った方が上達すると思うわ」

 

おおう、これが異国文化交流。ここまで正面切って言葉を返されたのは経験がないので目をぱちくりさせてしまった。

でもそうね。確かにモチベーションのためにも勝ち負けというのはあった方がいいのかもしれない。負けることで成長することは多々あるからね。成長への起爆剤だもの。

 

「やっている最中は競争心を持つのも大事だろう。でも、終わった後まで引きずる必要はないんじゃないか?実習はあくまで練習で、評価に結び付く実技試験とは違うのだから」

 

お兄様の意見に、リーナちゃんは落ち着きを取り戻した。熱くなり過ぎたと反省を見せる。

…よかった。リーナちゃんとピリピリしたままは嫌だったから。お兄様ありがとう。

 

「熱くなることは悪いことじゃないさ。深雪も新たなライバル登場でモチベーションを上げているからな。その点、リーナには感謝している」

 

リーナちゃんは前半の言葉には納得したようにうなずいたけれど、後半の言葉には表情を曇らせた。

 

「ライバルって…さっきも言ったけど全然歯が立たないのよ?」

 

拗ね拗ねリーナちゃんリターンズ。お口尖らせて可愛いね。

 

「さっき幹比古も言ったが、深雪の相手が務まるだけ十分すごいことだからな。深雪は少し世間知らずなところがあるから、自分がどれだけ能力が高いかイマイチ理解ができていない。だからリーナがいてくれると深雪の勉強になる」

「兄さん!その言い方はリーナに失礼よ。それに私も、…そんなに世間知らずじゃない、と思うのだけど」

 

自信が無くなって尻すぼみになったのは、お兄様たちをはじめ、皆が言っていたことが正しかったからだ。

原作に目を曇らせていたのか、はたまた別の作用が働いたのかわからないけれど、あまり認めたくないが私の力がリーナちゃんを現時点で上回っているようなのだ。

原作では拮抗して良きライバルの関係だったけど、ここではリーナちゃんの前にそびえたつ壁になってしまっている。

アンジー・シリウスになった時の実力は不明だから、おかげで先読みが難しくなってしまった。

 

(これから流れがどう変化するのかわからない…)

 

どうしようと俯くとすっと横から手が伸びて頭に置かれた。

 

「そうだな。リーナ、悪かった。だが、リーナがいてくれるから深雪が実力を出せるというのは事実だ。これは兄として感謝させてくれ」

「え、ええ。そこはあまり気にしてないから大丈夫、だけど…」

 

リーナちゃんの目がね、私の頭の上に注がれている気がする。自分のことよりもこっちが気になりますか。

 

「深雪も、そう落ち込まなくていい」

「兄さん」

 

お兄様の方に顔を向ければちょっと困ったような笑みを浮かべていた。

 

「お前は十分に頑張っている。だからその成果が出ているんだ。誇りこそすれ、落ち込むことなんて何もないよ」

 

…お兄様が言うのだからそう、なのだろうけど。だめだ、これからのことを思うと心の整理がつかない。頭を切り替えないと――

 

「困ったな、そんな顔をさせるつもりなんてなかったのに」

 

頭から頬へ手が滑り降りて、また下がってしまった顔を持ち上げられる。

途端周囲からBGMと化した悲鳴が聞こえ、リーナちゃんが驚いてきょろきょろしているのが視界に入り、そちらに目を向けようとしたのだが、もう片方の手も添えられ両手で挟まれてしまえばお兄様にしか見れなくなっていた。

 

「ダメな兄貴だな、俺は。いつだってお前に笑顔でいてもらいたいのにこうして落ち込ませるなんて」

「…違うの。兄さんは悪くない。私が、見えていなかったから」

「なら、これから知っていけばいい。お前のペースで、ゆっくりと」

 

…そうだ、立ち止まってなどいられない。考えなきゃならないことは増えたけど、その分凝り固まった思考を柔軟にして選択肢を増やせばいい。

目的は最初から変わらない――すべてはお兄様の幸せのため!

曇っていた目が晴れたように、今は真直ぐお兄様が見える。…見えるね。しっかり見つめ合って微笑まれてるのが。

 

「気分が浮上したかい?」

「も、もう大丈夫だから」

 

離して、と伝わっているはずなのにお兄様は手を離してくれない。

 

「今日も深雪は可愛いな」

「兄さん!」

 

恥ずかしいセリフ禁止!!やめて!いろいろ考えなきゃならないことがあるのに、お兄様でいっぱいになってしまう!

こうなれば実力行使!と挟んでいる手を掴んで引っぺがす。そしてこれ以上悪さしないようにぎゅっと握る。

 

「もう落ち込んでないから意地悪しないで」

「意地悪なんてしてないよ。本心だ」

「その割に笑ってるじゃない」

「お前が可愛くて堪えられないだけなんだがな」

 

だから~!もうやだ。このお兄様誰か止めて。ご飯がいつまで経っても食べられない!

 

「……兄妹、じゃないの?」

「兄妹らしいよ」

「嘘でしょう?!兄妹のものじゃないでしょ、今のやり取り!日本じゃ兄妹はこんなことするのが当たり前なの?!」

「「「「それはない」」よ」です」

「達也さんと深雪はちょっと特殊っていうか」

「ちょっとじゃないでしょほのか。留学生に誤解を与えちゃダメよ。はっきり言って異常!最初に言ってたでしょ。この二人は重度のシスコンとブラコンなんだって」

「…確認だけど本当に兄妹、なのよね?」

「似てないけど、兄妹なんだって」

「似てないけど、偶にそっくりな時あるよな」

「ああ。わかる気がする」

「達也さんも深雪さんも常識あるようでいて、抜けているところとかも似てますよね」

 

皆楽しそう。私もそっち行きたい。

手を離すと、お兄様はもう何もしないよ、というように両手を振ってから前に向き直って食事を再開した。

…今日も命拾いしました。ごはんおいしい。

 

「そういえばリーナ、大したことじゃないんだが」

 

お兄様のセリフに、ここは原作通りだ、とこっそり安堵しつつ見守る。

流れは変わりない。アンジーと呼ばれたリーナちゃんは一瞬動揺したように見えた。微かな反応。気にしていなければ気づかない程度の不自然に見えない反応だった。

お兄様は気付いただろうにそんな素振りも全く見せない。…当然リーナちゃんも気づくはずもなかった。

 

 

――

 

 

想子波測定装置内蔵のベッドから起き上がると、無表情を固めたような顔のお兄様がガウンを手に近づいて、ふわりと広げて着せてくれる。

きっちりと前を整えしっかり締めて――…一人でできるのだけど、お兄様の方が私より手際が良くてスピーディーなのが不思議です。

慣れてます?ここ以外でお兄様に着替えを手伝ってもらう機会なんてないのだけど。

 

(っていうよりいるかな手伝い?!そんなに私の下着姿は見苦しいですか!?早く隠したいですか?!)

 

ここに引っ越してきた初日のような失敗はせず、背伸びをしていない年相応の下着を身に付けているはずなのに、お兄様は毎度私の下着姿に一瞬警戒する。…まあ、私が悪かったんですけどね。初手をミスった私のせいです。反省。

と、そんなことよりお兄様だ。

着せ終えたお兄様の顔には微かな憂慮が浮かんでいる。…確かに、何も知らなければ自分が何かやらかしたのではないかと思ってしまうかもしれない。そんな不安を掻き立てられる、お兄様の珍しい表情だ。

 

「…何か至らぬ点でもありましたでしょうか?」

 

そっと控えめに訊ねれば、お兄様は安心させるように微笑んでから、落ち着かせるように頭を撫でてくれる。

 

「違うよ。お前に至らぬところなんてあるはずもない。至らないのは俺の方だ」

 

自責の念を抱いたというように、後悔を浮かべる顔にきゅっと胸が締め付けられる。

 

「魔法式構築規模の上限が予想を超えてレベルアップしている。そのせいでCADの処理能力がお前の魔法力についていけてない。余裕を持たせて設定していたつもりだったが、読みが甘かったな」

 

うう…お兄様は悪くなんてないのに。でもここで謝るのもおかしな話だし…。

言葉にできないのでお兄様の撫でる手を掴んで下ろし、胸の前で握りしめる。

気持ちがちょっとでも伝わったのか、苦笑に変わった。

 

「冬休み、師匠のところでだいぶ鍛えられた時も格段に上がっていたから、学校では緩やかに上がると思っていたのだが…このところの深雪の成長は著しいな。もちろん、魔法力だけじゃなく美しさも磨きがかかって、兄として誇らしいが、同時に目が離せなくて困ってしまうよ」

 

握らせた手をそのままに、空いていたもう片方の手で髪を耳にかけるお兄様はそのままの流れで頬に触れる。

更に近づく顔に、先ほどの言葉もあって赤らむのが止められない。顔が熱い!

 

「お、にいさま」

「俺以外に、そんな無防備な顔を見せてはいけないよ。俺は兄だから耐えられるけど、今の深雪の前ではどんな人間でも勘違いしてしまうから」

 

(無防備って!お兄様相手に何を警戒すればいいの?!というか勘違いって何!?)

 

お兄様の言っていることが何一つ理解できない。おかしい。深雪ちゃんの頭脳は優秀で、お勉強だってたくさんしてきたのに何の役にも立ってない。

言葉はすべてわかるのに意味が分からないってあるんだね。

脳が沸騰しているから思考なんて纏まるはずもない。冷却すればいい?魔法使えば正常に戻る⁇

お兄様は謎の忠告をして満足したのか顔を離し、頬の手を滑らせてから離れていった。

うーん、お兄様行動や仕草がいちいちえっちくさい。やめて。妹誘惑よくない。

怖くなって掴んだままだった手を離せば、お兄様はその手でもう一度私の頭をぽん、と撫でてから口を開く。

 

「少なからずリーナがクラスに編入したことが刺激になっているのかな」

「そうですね。確かに、彼女は私が関わってきた中で一番強いです」

 

もちろん学内で、とは付くけれど。

冷静さを取り戻して答えると、お兄様は頷いて返した。

正確な数値など原作で出なかったから比べようも無かったのだけれど、どうやら私はリーナちゃんに会う前にレベルを上げ過ぎたらしい。基礎能力が上回ってしまっていた。

てっきりリーナちゃんが手抜きをしたのだとか、何らかの事情で実力を行使できないでいるのかとの可能性さえ考えた。

でも考えてみたら、原作の深雪ちゃんは箱入りお嬢様で、蝶よ花よと大事にされ、与えられた訓練と、お勉強で己を磨いていたのだ。

私のように、魔法楽しい、面白い、こんなこともできるの!?なんて楽しむことなく、魔法とはこういうもの、と受け入れてお兄様の為だけに実力を磨いていこうと決めて、ただそれだけを目指していた。

そして何より、優秀過ぎないように、決して出しゃばってお兄様を上回ることのないように、お兄様からできるだろうと提案されたCAD二台持ちも、簡単な調整もしなかった。

すべては『お兄様の為に』。

深雪ちゃんの行動原理。これが時に枷になっていたのだ。お兄様より目立たぬように、と。お兄様に嫌われないように、と。

無意識にセーブしてしまっていたのだ。――お兄様は深雪ちゃんが強すぎたって、コンプレックスに感じたとて、嫌うことだけは絶対になかったはずなのにね。

彼女は恐れ過ぎたのだ。お兄様が大好き過ぎて。お兄様よりできることが多ければ多いほど、お兄様が離れていってしまう可能性に怯え、恐れていた。

だとしたら、現状、その深雪ちゃんより基礎能力が上がってしまった私は、彼女よりお兄様を好きではないのだろうか――それは否だ。断じて否。

私だって私なりにお兄様をお慕いしている。幸せになってもらいたいと、心の底から願っている。

その為なら私もどんなことでもするだろう。その覚悟はある。原作の深雪ちゃんにだって負けない強い想いがある。

 

「ところでお兄様、お昼のご質問はやはり」

「そうだ。リーナが『シリウス』だと考えている」

 

…まあ、あれだけ動揺されたら気づくか。リーナちゃん、可愛いポンコツさんだから。

未成年という情報もあったし、スターズが動いているという叔母様の助言に、このタイミング。ただ――

 

「その、彼女はやっぱり実力を隠して近づいてきたということでしょうか?」

「そんな風には見えなかったぞ。単にお前との差は実力の差だと判断している。彼女も俺と同様制限があるのだろうがな」

 

制限、の言葉にはっとした。

そうだ。リーナちゃんも得意な魔法が使えない上、体に馴染んでいない道具に苦戦を強いられているのかもしれない。アメリカとは当然仕様が違うはずだし。

 

「そう、ですね。全力を出せるはずもないのでした」

 

ちょっと安心。対等とは思えない力量の差について納得できる理由にようやく出会えた。

 

「…それでもお前を打ち破るほどの魔法力があるかは別だぞ?」

「お兄様、USNA最強の特殊部隊の総隊長ですよ?お兄様のように特殊な隠し玉がたくさんあるに違いありません」

「それはそうだが」

「何より私は実戦不足です。彼女やお兄様の足元にも及びません」

 

どうやらお兄様は、魔法力も彼女に勝っていると思っているようだが、流石にそれは大国を舐めすぎだと思う。

そもそも平和な日本で大した実績もない箱入りの私と、実戦経験豊富な彼女とでは比べられるわけもない。ステージが違う。

 

「お兄様とて、私相手に戦うことになれば魔法力は敵わずとも倒す術をお持ちでしょう?」

「深雪を倒すことを考えるくらいなら俺は倒そうとするすべてを破壊する」

 

おっと、お兄様の目からハイライトが消えた!例えを間違えたか。えーと、えーと。

 

「…だが、言いたいことはわかった。確かに深雪にはまだまだ隙があるからな。そこを突かれればいかな深雪でも押し切ることはできないかもしれない。――そんなことにはさせないが」

 

お兄様、お目目怖いですよ。ちょっと塞いじゃいましょうね。物理で。

 

「深雪?」

「お兄様。居もしない敵を見据えることなどありませんよ」

 

だからそんな目をしないで、とお兄様の目に手を翳す。

 

「大丈夫です。お兄様の守護がどれほどのモノか、私が一番わかっています。私にこれほどの安心を与えて下さるのはお兄様だけなのですから」

 

お兄様が傍に居て、深雪ちゃんが傷つくことなどないのだ。それはこの世界のルール。

…絶対とは思わないよう気は引き締めるけどね。今回みたいに、どんなイレギュラーがあるかわからないから。

 

「深雪…ありがとう。その言葉があるから俺は報われている」

「お礼を言うのはこちらの方です。いつもありがとうございますお兄様」

 

手を下ろせば、お兄様は穏やかな目に戻っていた。よかった。魔王様は去ったのだ。

 

「深雪が一番わかってくれる、か。シリウスの件もそうだが、深雪に隠し事などできないな」

「それはもう!私は今までずっとお兄様を見てきていましたもの」

 

これからもずっとお兄様を見ていたいけれど、きっとそれは私でない誰かに譲らなければいけないから。

だけど今ならばまだ、私が一番お兄様を見てきたと言える。

たぶんお兄様は私に隠し事なんていくらでもあるだろうけれど、無邪気な妹としてそこは気付いてはいけないところだ。その辺は弁えていないと。

ちょっと原作とは言い回しは違うけど、ここでお兄様は笑い飛ばしてくれるのよねー、とそう思っていたのだが。

 

(…んん?あれ?なんで…お兄様、どうしてこの場面でそんな婉然と微笑まれるのです?)

 

反応が違いますね。一気にこの暗めの室内が未成年お断りのお店に見えてきましたよ。あれれ?私はクラブに来ていましたっけ?入ったことないけど。

 

「深雪はいつでも俺を喜ばせてくれるな」

 

喜ぶとお兄様は色気が溢れる仕様ですか?危険極まりない。

 

「深雪が俺を見てくれるというのなら、俺はどんなことだってお前の期待に応えるよ」

「お兄様は十分に、応えて下さってます。これ以上望むものなど――」

 

何とか躱そうとするのだけれど、見えないスイッチ押したかな?なんで色気マシマシ⁇するりと頬を撫でる手が壊れ物を扱うほど丁寧なのだけれど、その触り方は擽ったい。なんかぞわぞわする。

 

「もっと俺を望んでくれ。

 

――俺はすべてを与えてやりたいんだ」

 

……お兄様、それ絶対妹に言う言葉じゃないです…。一生を掛けて守る相手に言うセリフ…。あー、でも現段階で好感度高いのは妹か。そういうこと?困ったね。

 

「…お兄様のすべては私には大きすぎて受け止め切れそうにないですね」

 

とりあえず笑って流せないかなー、とくすくす笑ってお兄様の胸に額を押し付ければ、お兄様は頬から手を下ろし、肩をぽんぽんと叩く。

 

「すっかりここに長居してしまったな。体が冷えてないか?」

「!いつまでもこのような恰好で申し訳ありません。着替えてきます」

 

お兄様の言動のせいで寒さなど感じる余裕もなかったけれど(むしろ熱いくらいでしたけど)、意識をすれば途端に寒く感じるのだから現金なものだ、と思いながら急いで着替えに行く。

慌てなくてもいいからね、とお兄様の声。

でも慌てないわけないよね。こんな防御力のない恰好でいつまでもお兄様と同じ空間にいるのは、私の心臓が持たない。

急いでお兄様が着せてくれたガウンを脱いで服を身に付ける。

…深雪ちゃんのような攻めた格好じゃないよ。普通の、冬の暖かい普段着です。見える見えないの絶対領域のおみ足なんて出しません。いくら家の中でも寒そうな恰好良くないと思うので。

 

「お待たせしました」

「行こうか」

 

お兄様に手を引かれて階段を上る。お兄様の手はいつも通り温かくてホッとさせてくれた。

 

 

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