妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします!分割版   作:tom200

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来訪者編⑩

 

 

リビングは地下室より幾分暖かく感じた。

広い空間というだけで詰まっていた息が吸いやすくなる。

いつものようにコーヒーを用意してお兄様の前に差し出す。

ここでいつもなら「ありがとう」と微笑むお兄様の横に座るのだが、今日は十分にお兄様成分を浴びたので向かいの席へ。

お兄様は不思議そうな顔をするけれど、ニコッと微笑んで躱して座る。

これ以上お兄様に中てられては具合が悪くなる可能性が高いからね。

 

「さっきの話だけど、高い確率でリーナは『アンジー・シリウス』だと思う」

 

高い確率、というけれどお兄様の中では断定に近いのだろう。正解です。

普通あり得ないと思うけどね。あんな綺麗なのに可愛くてちょっと抜けてる女の子が、USNAが誇る最強の精鋭部隊の総隊長だなんて。

魔法師に年齢なんて関係ない。実力がものをいう世界。

その彼女が直々に三か月そこそこで正体不明の戦略級魔法師を探し当てろと命令されているなんて、使いどころを間違えたと思わずにいられない人選だ。

…もしかしてだけど、これってやっぱりお兄様を対象とした誘惑作戦だったんじゃない?

リーナちゃん本人には知られずに、恋させて連れ去るつもりだったのでは?…とは流石に夢見がち過ぎたね。

でも誘惑して聞き出すくらいはあったのかもしれない。それだけ彼女は魅力的だし、彼女の立場が漏れたところで同情を誘うことだってあり得る。

 

(実際お兄様はリーナちゃんの環境と境遇に同情を抱く。優しい彼女には、仲間も冷酷に処刑しなければならない総隊長の役割など似合わない、と)

 

現段階であちら側は日本に吸血鬼が、パラサイトが来ているなんてまだ気づいていないはず。

ならばなぜ、彼女がこうして不得意な任務をさせられているか――上層部からの嫌がらせ、か。

自国がてんてこ舞いだというのに、馬鹿なことだ。これも黒幕の暗躍した結果なのかもしれないね。

確か黒幕はパラサイトを日本に送り込んで場を荒らしつつ、横浜騒乱の際にいくつかつぶれてしまった拠点を置くための工作していたとかなんとか。

七草が周と接触を図るのもそろそろだったはず。…どうしようかな、本当に。色々考えることがあり過ぎる。

 

「…ショックかい?」

 

気が沈んでいることを見抜かれたのか、お兄様から心配そうな声がかかる。

 

「ショック…ええ、それもあるのだと思います。まだ15,6歳です。それなのにリーナも、お兄様も…」

 

大人だからって過酷な環境に耐えられるってわけでもないけれど、彼らはまだ未成年で、親の庇護下にあってもいい年齢だというのに。

ただ魔法が使えるというだけで当然の保護を受けられない人もいる。お兄様たちのように責務を負っている人もいる。

全く。ままならない世の中だ。

 

「優しいね、深雪は。…優しすぎて心配になる。想いに潰されてしまうんじゃないかと」

「私はそんなに弱くありませんよ」

「弱くなんて。お前は強いよ。ただ儚く見えるから勝手に俺が支えてやりたくなるんだ」

 

じっと見つめられる瞳には強い思いが込められていて、嬉しい反面、ちょっと落ち着かない。お兄様目力が強い。

離れているのに熱を感じる。

 

「…リーナの話に戻るのですが、彼女はあまり自身の素性を隠すのが上手くないですよね」

 

恥ずかしくなる前に話を逸らそうと元の流れに戻す。

リーナちゃん、ごめんね。でも貴女は本当に嘘を吐くことが下手だと思う。

 

「というより隠す気が無いんじゃないか?神社でもあれだけ目立ってこちらを窺っていたわけだし」

 

違うんですお兄様。彼女は自身の行動が裏目に出ているだけで、あえて気付かせての駆け引きなんて考える子じゃないんです。

とは、現段階で言えないのだけど。

 

「俺の正体を探るためだけに切り札ともいえる『シリウス』を投入するなど考えにくい」

「『シリウス』は大物過ぎるということでしょうか」

「そのとおりだ。ただのスパイ活動であれば、彼女ほどの戦力は必要ないはずだからな」

「では何か別の目的がある、と」

「そう考えるのが自然だろう」

 

誰の策だか知らないけれど、すごいよ。お兄様を真の目的から目を逸らさせるなんて芸当なかなかできるものじゃない。

勘違いが勘違いを生じさせている。リーナちゃんのポンコツ力が推理を混乱させるってことか。

総隊長すごい。無意識にすごいことをやってのける。でも風間さんの時みたいにしびあこにはならないなぁ…。

 

「今の段階で気にする必要はないだろう。せっかく深雪にとって手応えのある相手を送ってきてくれたんだ。色々試したいことを試せばいい」

「そう、ですね。色々と策を練ってみたいと思います」

 

対等なライバル関係とはならなかったけれど、初めて抵抗力を感じた相手ではある。

リーナちゃんもただやられるわけでもなく、きっと策を講じてくるはず。最後の方は攻め方を変えてたしね。臨機応変な対応もできるところは流石だ。

 

「さて、まじめな話も済んだことだし――深雪」

「はい?」

「おいで」

 

ぽんぽん、と隣の席を叩くお兄様。首を傾げる私。

 

「これから恐らくリーナが仕掛けてくるだろう」

「ありえますね」

「その場合、一人の時を狙われると思われる」

「探るならその方が適していますものね」

「ということでハグの前借りをしたい」

 

あ~、ストレスがこれから来るのか。…でもこの前借り、意味あるかなぁ?

論文コンペの時あまり役に立っていた気がしないのだけど。それともアレで抑えられていた方だとでも言うのか。

 

「だめか?」

 

…首を傾げるお兄様可愛いね。さっきまであんな色気を放出していた人と同じとは思えない可愛さ。

 

「だめじゃないです」

 

しかたないね。私のライフくらい削れたところでお兄様が回復するならいいじゃない。

お兄様の過剰摂取で毒のようにHPが減っていくけど、お兄様の笑みを見れば小回復もするというもの。…減る方が多いけど、寝るまでにはわずかに残っている計算だ。大丈夫、問題ない…はず。

 

「温かいね、深雪は」

「…お兄様は少し薄着なんじゃないですか?」

「もしこれが、深雪に温めてもらうための策だと言ったらどうする?」

「……お兄様に服を贈ります」

「それもいいね。でも届くまでは寒いからこのまま湯たんぽでいてくれ」

 

大至急!お兄様に似合う暖かな服を選ばねば。

けれどお兄様の拘束が解けるのは、私がそんなことも考えられなくなるくらい蕩かされた後だった。

 

 

――

 

 

さてさて。そろそろ暗躍のお時間です。

ということでアメリカの噂が日本のオカルト掲示板を俄かに騒がせ、上司に睨まれた記者がうっぷん晴らしで日本の怪事件を載せ始めた頃、すでに四葉は動いていた。

叔母様がやんごとなき方々から依頼を受けた時期とどちらが早いかわからないけれど、と思っていたのだが、ちょっとの差でウチのセクションの情報が早かったらしい。

葉山さんからお褒めの言葉を頂戴したとのこと。すごいね。あの葉山さんから言葉を頂けるなんて相当のことだ。

 

「葉山さんも感心していたわよ。魔法が無くてもこんな戦い方があるなんて、と」

「お褒めに預かり光栄です、皆も喜びます」

 

ふふふ、ほほほと叔母と姪の会話とは思えない応酬。秋の一件からお姉さまと呼び辛い空気だったのだけれど、

 

「かわいい妹分が褒められて、私も鼻が高いわ」

「真夜姉さまにも喜んでいただけたのなら幸いです」

 

一応表面上元に戻った。しかしながら以前にはなかった、叔母様からの妙なプレッシャーを感じるようになった。

以前は面白いおもちゃ扱いで、たいして相手にされていたような気はしなかったのに。…やっぱり母の置き土産あげたからかなぁ。

でもその話題に触れられてこないんだよね。こっちから聞くこともできないし。どうしたものか。

 

「達也さんの方はどう?うまくやれてるかしら」

「スターズはすでに的を絞って狙いに来ている様子ですが、どうにもあちらに隠す気が無いらしく…もしかしたら自分から正体をばらして要求をしてくる作戦なのかもしれませんね」

「正体を見破ったからには、ということかしら。それは…あまりにも杜撰な策ではなくて?」

 

私もそう思うのだけど、結果そうとしか思えないんだよね。リーナちゃんの体当たり作戦って。

あちらの国としては仮に正体がばれて処分することになっても日本の優秀な魔法師を潰すことになるのだから、目的の人物じゃなかったとしても利にはなるから。

…結構な国際問題だと思うのだけどね。どっかの大国とやってること一緒だよ。大義名分――この場合絶対機密事項のシリウスの正体を知ってしまったため、とかいうふざけた理由だけど――を掲げているだけで。

 

「こちらの件ですが、ただのUSNAだけの案件でもないのかもしれません。――吸血鬼はどのように日本に来たのです?」

「横浜から上陸したようね――やだわ。また彼らが関わっているというの?」

「今や横浜は大亜連合の拠点跡地が残っている状況。すぐにその巣穴を再利用しようとする者が現れてもおかしいことはないでしょう。混乱に乗じて手を広げるのは彼らの手法ですから。姿かたちは違えど、操る人間が同じであれば、癖が出てくるというもの。――横浜から上陸したのは、見つからずに中に招き入れる手段がそこにあったからに他ならないのでは?」

「大亜連合の動きを『寛容』にも見逃していたUSNAですものね。繋がりがあってもおかしくないということね」

 

その繋がりが一方的な利用だったとしても。

しかし、叔母様の悩まし気な溜息ヤバいね。持てる全てを献上してでも愁いを晴らしてあげたくなる妖艶さ。…恐ろしき美魔女です。

 

「深雪さんは人間主義者の動向に注目されているようですし、私の方でも気にしてみようかしら」

 

…恐ろしき美魔女は恐ろしき地獄耳もお持ちですね。そちらは水面下で密かに動いていたはずなのに。

でも動いてくださるなら心強い。喜んで献上させていただきます。

淑女モードの私は動揺を見せていなかったと思うのだけど、叔母様はニッコリ笑顔。…ばれてる気しかしない。どこでばれたかな。それともハッタリか。

 

「そういえば、お正月はとてもきれいな振り袖衣装を身に纏っていたのだとか」

「全く同じ柄とはいきませんが、羽織袴の方はできるだけ再現するつもりです」

 

手抜きなんてできるわけがない。すでに生地は用意しているので後は縫うだけ。だけど和装っていつもと違うから難しいんだよね。

それっぽく見えるも大事だけどどれだけ本物に近づけるか、も重視していきたい。…こだわるとめんどくさいタイプのオタクです。

いつものように発注を賜って通信を切る。

大きなため息が零れそうになるけれど壁に耳あり障子にメアリー。どこに潜んでいるかわからないので呑み込んで。

お兄様はただ習い事をしているだけだと思っているはず。この建物も四葉の物ではないしね。こんなところでやり取りが行われているなど思わないだろうから。

私も初めて部屋に通された時は何が起こるのかとびくびくしたものだが。隠れ蓑が多すぎるよ四葉。

とはいえほんの10分程度の休憩時間に抜け出しているので実質休憩なしでレッスンに戻らないといけない。

とんでもないスケジュールだね。でもこんなこと前世で履修済みだ。問題ない。…別にブラック企業に勤めてたわけじゃない。ただ世の中それが普通だっただけで…やめよう。この話は言い訳すればするほど闇が深くなりそうだ。

できるだけ優雅に、それでいて早足で教室(・・)に戻って続きから。お嬢様も楽じゃないね。

 

 

――

 

 

お兄様がリーナちゃんから熱烈ラブラブアタックを受けた週明け。

学校内は怪事件で持ち切りだった。

え?熱烈ラブラブアタックとはって?お兄様は詳しく教えてくれなかったけれど、概要をちょこっとだけ。

でもそれだけで何の話かはピンときましたがね。お兄様風紀委員じゃないから花音先輩から案内を頼まれる流れは無かったはずなのに。

放課後リーナちゃんに誘われて校内を案内して回ることになったお兄様。この時点でおかしいね。

私とほのかちゃんで必要個所は案内したのだけど、と思ったらクラブ活動や放課後の活動を見学したかったそうな。

風紀委員の活動とかもその対象らしく、そのため人気のないところまでいろいろ見て回ったんだって。

放課後デート(校内イベント)だね。そして襲われるお兄様。きゃーえっち。

だけど残念、二人の間に流れるのは殺伐とした空気だけ。ま、まだ好感度上がってない状態でデートしても失敗するのはあることだから。…とふざけるのもほどほどに。

お兄様から聞いたのは、一科生と二科生の違いを知り、予備としての扱いをされていることに違和感を覚え、どれくらい反応できるか仕掛けられた後、どうして実力があるのにこんなところに燻っているのかという疑問と、不満があれば一緒にアメリカに行こう、とのお誘いがあったのだとか。怒涛の攻めですね。

これはデートじゃなくてその先の未来の話でした?すごいよね。あんな綺麗な女の子にそんなこと言われたらその気になって付いていっちゃってもおかしくない。

普通の男子ならそんな未来もあったかもしれない。

とまあ、色気のほとんどない――だってどんな形でもお兄様はリーナちゃんを押さえつけたのだから、ボディタッチはあったということよね。それつまりちょびっとはあったと判定しますよ――デートはそのあとすぐに解散してしまったそうな。好感度が無ければそんなものです。

次のデートのお誘いが楽しみですね。…次はシリウスと、になるのかな。ヘビーになりそう。

で、だいぶ話が逸れちゃったけど、A組のクラスでも連続猟奇殺人事件の話題をそこかしこでしていた。

センセーショナルなニュースだからね。血液を抜き取られた傷のない死体だなんて。

憶測が飛び交うけれど、ニュースの影響かオカルトチックな話が多い。いくら同じ都内の事件と言っても他人事だからこんなもんです。

 

「深雪はどう思う?」

「そうね、もしオカルトだった場合、古式魔法の家の出番なのかしら?」

「え?」

 

ほのかちゃんの頭にクエスチョンマークが。

わかりづらかったよね。話飛ばしちゃった。

 

「ニュースがどこまで本当のことを言っているのかわからないけれど、人の体に穴をあけずに血だけを抜くなんて、一般の人にはできないと思うの。もしそうなら犯人は道具を使って血を抜き取らない者、未知の魔法か噂のような吸血鬼みたいな架空の存在か、じゃない?できれば魔法じゃないことを願うけどね。また魔法師への当たりが強くなってしまうかもしれないから」

 

私の発言にクラスは暗い顔になってしまった。皆そんなに私の言葉を真剣に耳を傾けて聞かなくていいと思うのだけど、皆素直だね。

 

「で、架空の存在って言ったけど、吸血鬼じゃなくても日本にだって古くから血を吸う妖怪や妖魔の伝承があるでしょう?実際に見たことも聞いたこともないけれど、吉田くんが精霊魔法を使っているのだから、そういった存在もいるんじゃないかしら。そうしたら古式魔法師の人たちなら対抗策があったりするのかな、って。魔法がまだ信じられてなかった頃からそういった物語があるのだから」

「ああ、陰陽師とか悪魔祓いとかその典型だよね」

 

具体例が出たからかイメージがしやすくなった。

フィクションの中に真実が紛れ込んでいたのはよくある話だ。

 

「それよりリーナ、遅いわね」

「ああ、今日はお休みなんだって。なんでもお家の事情?とかで」

「あら、そうなの?だから教室がちょっと暗く感じちゃうのかしら。リーナは太陽みたいに明るいから」

「深雪ってリーナのこと好きだよね」

「ええ好きよ。でもほのかも大好き」

 

ほのかちゃんに告白すれば真っ赤になってしまった。…というかクラスの皆もね。ニュースの話はどうしたの?もう授業の時間ですか。私たちも着席しましょう。

 

「…深雪ってそういうところ達也さんの妹だよね」

「兄さんの無自覚と一緒にしないで」

 

私は意識的にやっている愉快犯です。

 

 

――

 

 

お昼になって食堂に行けば、皆すでに揃っていた。私たちも終わってすぐ来ているのだけどね。大抵私たちの方が遅い。

 

「リーナはいないのか」

「お家の事情でお休みなんですって」

 

端的に説明すると不思議そうなお顔がいくつか。まあ気になるよね。留学早々お家の事情とは。でも詳しい理由も聞かされてないので答えようもない。この場はさらっと流れた。

 

「そういえばさ、雫は元気でやってるのかな?」

 

エリカちゃんの視線は私とほのかちゃんに向かった。

ほのかちゃんはしょっちゅう電話しているので詳しく状況を語ってくれた。

ちなみに私は電話ではなくメールをちょいちょい、と。お互い時間を気にせずやり取りをしたいよね、とこの方式に。

ほのかちゃんとは近況を話しているようだけど、私たちの間では内容のないものしか送り合っていない。

雫ちゃんがいなくて寂しい、とか、こっちは寒いけどそっちはどう?、とか。雫ちゃんからも、私も、とかかなり寒い、とか。内容なんてない、ただお互いを感じたいだけの短い会話文のみ。…遠距離恋愛のカップルのやり取りかな?と思わなくもないけど、詳しい話はほのかちゃんとしてるだろうから重複したら大変かな、とも思うわけで。

 

「『吸血鬼事件』のニュースには雫もびっくりしてた。なんかね、アメリカでも似たような事件が起きてるんだって」

 

この話題にはお兄様も驚いた様子だ。目に見えてわかりやすい反応をしたお兄様の様子に、関心が引けたことでほのかちゃんが舞い上がっている。健気だねぇ。恋する乙女って本当に可愛い。

でも残念なことにその可愛い顔を向けられているはずのお兄様の目は強い光を宿していた。

 

(とっかかりを見つけた、というところかな)

 

西城くんを見る。

いつも通りすでに食べ終えてリラックスした状態で皆の話に耳を傾けていた。

――もし、私がここで何かアクションを起こしたら、彼はパラサイトに襲われることはないのだろうか?苦しまずに済むのだろうか?

 

(お兄様の心の成長のために、彼には犠牲になってもらう…なんて、そんな酷いことってある?)

 

死なないのはわかっている。これでエリカちゃんとの関係も深くなることも、彼自身の成長にもつながることも知っている。

原作と全く同じ結末になるなんて、ズレが生じている時点で妄信はしてないつもりだけれど、それでもこの世界の神はこの軸をずらすことはない。それだけは確かだ。――確かな、はずだ。

そっと深呼吸して心を落ち着かせる。視線も逸らして食事を再開させるが、先ほどまで感じられていた味がしない。美味しく、ない。

けれど表情におくびにも出さない。それくらいの芸当はできた。――できないといけないと強く思った。

 

 

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