妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします!分割版   作:tom200

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来訪者編⑫

 

 

お昼になった。向かう先は生徒会室。今や昼に使っている人は繁忙期でもない限りいないので貸し切り状態だ。

ご飯を食べて落ち着いた頃、雫ちゃんからの連絡が。今なら電話ができるらしい。

さっそくほのかちゃんが繋いでくれて、モニターに雫ちゃんが映る。

久しぶりの雫ちゃんの姿はたったひと月だというのにちょっと大人びて見えた。アメリカの風土がそうさせるのか、はたまた誰も知り合いがいない環境がそうさせているのかわからないけれど、そんな彼女がお兄様と私を見てわずかに表情を緩ませた。――可愛い!

久しぶりに顔が見えただけでも嬉しいのに、レアな表情に内心きゃあきゃあ叫んでる。雫ちゃーん!可愛いよー。ファンサありがとー!!

お兄様は時間を無駄にはしないのでさっそく吸血鬼の話を切り出した。

アメリカで起きていること、日本で起きたこと、――西城くんの身に何が起きたのかということ。

雫ちゃんもそれには驚いたのか、表情を強張らせた。ただの噂話のつもりがまさかの仲間内にまで被害があったのだ。驚くなという方が、無理がある。

お兄様もあまりショックを与えないようフォローを入れるけど、雫ちゃんの表情は晴れない。

雫ちゃんは無表情に見えるけど無関心な子じゃない。更にフォローを重ねるお兄様に、雫ちゃんは少しだけ緊張をほどく。

お兄様は不器用だけれど、こうして相手を思いやってくれる優しさがある。それがわかるから雫ちゃんもほのかちゃんもお兄様の言葉に耳を傾けてくれるのだ。

理解の早い雫ちゃんはアメリカで何が起きているのか、何があったのかを調べると気合を入れ、お兄様は反対に慌てたように無理をするなと心配して忠告を。

アメリカの出来事が事の発端だと思っている、との発言がより一層雫ちゃんを駆り立ててしまったのだろう。

もっと真剣に聞いておけば、と後悔しているのかもしれない。雫ちゃんに責任なんてあるはずないのに。

お兄様も雫ちゃんも、そしてその二人をハラハラ見守っているほのかちゃんも、本当に優しい。

優しい人たち。

 

「深雪」

「雫。兄さんも言ったけど、無茶はダメよ。貴女まで倒れたりしたら、私――」

「大丈夫。深雪に心配かけないって約束する」

「ほんと?」

「うん」

「わかった。約束」

 

画面越しに小指を立てて指切りをする。

 

「ところで、ほのかから今日深雪からクッキーを貰ったって」

「ええ」

「なら、約束守ったら私にも作って」

「わかったわ。たくさん焼いてあげる」

「ん。楽しみ」

 

心配だ。心配だけど約束をくれた。だからきっと無事に戻ってきてくれる。

 

「雫、大丈夫かな」

「ほのか。きっと大丈夫。雫は強いもの」

「そうだよね。雫は打倒深雪で頑張ってたもの」

 

ほのかちゃん?それは私に言っていい言葉かな。いいけどね。雫ちゃんの努力は知ってるから。

こうして名残惜しくも電話は終わってしまった。

寂しいな、と思っていたらお兄様が机の下でそっと手を繋いでくれた。こうやってすぐに気づいてくれるお兄様に笑みで応えて残り僅かな昼休憩を過ごした。

 

 

 

 

多少焦げてしまったクッキーを齧りながらのコーヒーブレイク中、端末が震え、お兄様は血相を変えて(と言っても他の人なら見逃すほどの変化かもしれないが)、家を出ようとしたので、ブルゾンを羽織るお兄様に念のため、と女性が羽織ればひざ丈くらいになるコートを丸めて手渡した。

 

「これは?」

「使わなければそれはそれでいいのですが」

 

問答する余裕もなくお兄様はとりあえず受け取ってバイクを走らせて行ってしまった。

乗り物を用意はできないけれど、この分なら上着を追いはぎされずに済むだろう。吉田くん、頑張って。強く生きてほしい。

その間に机を片付けて、することを済ませて待っていると、思ったよりも早くお兄様が帰宅した。

 

「おかえりなさいませ」

「深雪、悪いんだが叔母上に連絡を繋いでくれるか?」

「…かしこまりました。先に着替えてまいります」

「ああ。そうだな」

 

言葉少なに用件だけを伝えるお兄様に、聞き返すことなく了承を返して用意していた服に袖を通す。

どれだけ早く着替えてもダークスーツを身に纏うお兄様には敵わない。女性の服って大変だね。

なによりお兄様の姿がかっこいい。これで誉め言葉も言う暇がないというのだからひどい話だ。心の中で大声で叫んでおく。

私のお兄様が!世界一カッコいい!!

ふう、すっきり。

ということで圧迫面接をテレビ電話越しにしましょうかね。

出てもらえるかは確率低いはずなんだけど、深雪ちゃんの幸運が引き寄せてくれるのか結構高い確率ですぐに繋がります。ありがたいような、ちょっと抑えてくれてもいいだよと思わなくもない、ような。

今回に限って言えばお兄様のお役に立てるので繋がってくれたことに感謝だけどね。ホント、現金な私です。

画面に映る美女とその後ろにひっそり控える老執事。もうね、完璧な構図だよね。好き。画面だけ見れば。身内でなければ。圧力が無ければなおのこといいんですがね!

挨拶を交わし、社交辞令のような会話が流れた後、お兄様へとバトンを渡す。

瞬間、叔母様の目が細くなるけど、私知ってる。あの目はぬいの新作をちらっと見せた時の興味津々の表情だ。つまり、好感触なのだけど。それが伝わりづらいのは四葉クオリティ。勘違いを生んでこその四葉と思ってしまう程伝わらない。…おかしいね。なんでこうなるんだろう?誰か通訳を呼ぶべきでは⁇

ということで未来の親子の会話を私が通訳するとこうなる。

 

「達也さんが相談したいって?いいよ。聞いてあげる!」

「実は教えてほしいことと、お願いしたいことがあるんだけど」

「遠慮しないで言ってちょうだい」

「九島家の『仮装行列』ってどんな仕組み?」

「それ一応秘術だから知っちゃいけないことになってるの、わかってるよね?」

「一時期教え子だったんだから魔法式自体は知らなくてもどんなものかは知ってるはず」

 

…だめだね。めちゃくちゃ違和感。そしてこんなフレンドリーな会話してないね。もっと薄い氷の上に立って会話してる感じ。

でも実際のところ叔母様お兄様に甘々だよね。お兄様のお願いをできる限り聞いてあげるスタンス。

そうは見せないからこっちとしてはハラハラしてますよ内心。こんなふざけていてもね。

表面上は二人の会話に心配、て感じだけどね。全く表情出さないのもおかしいから。淑女って大変。複雑なことをこともなげにやってのける。

途中、パレードにお兄様のミスト・ディスパージョンの狙いが外されたり、誤魔化されるはずのないお兄様の眼が正体を見破れなかったということに驚愕しつつも、さりげなく叔母様はヒントを与え、お兄様はそれなりに解答を得たところで、手が足りないことを訴え、叔母様は軍との接触を解禁してくれた。

…お兄様は当たり前のようにこの要求が通ると思っていたようだけど、お兄様じゃなかったら多分通ってないよね。

表向き叔母様の面白いおもちゃ感覚だからこそ、通ったように見える。

当然別の思惑があったからっていうのが一番の理由だけどね。お兄様たちがかき乱してくれたら裏で動きやすいから。かき乱してくれる前提での許可って信用されてるってことだけど残念ながらそのことはお兄様には伝わらない。…というか叔母様のことを知らないとわからないのだろうね。きっと背後に控えている葉山さんならお気づきのはず。

お兄様は駆け引きが得意というより、引き際も弁えつつ他の案もあるから、もし今回だめでも他の手で、という余裕が自信あるのかもしれない。

まだ高校一年生ですよ。…前世にこんな営業マンがいたら何でも要求呑みそうで怖い。

ともあれこうしてお兄様は塞がれていた『耳』を取り戻した。

これで動きやすくなるだろう。

 

 

――

 

 

翌日、お兄様と二人で駅に向かうと、美少女が待ち構えていた。

そっと半身お兄様の陰に隠れる。お兄様はちらり、とこちらを見たけれど特に何も言うことは無く、美少女へと視線を戻した。

注目されてます。七草先輩。恋に新展開?!みたいな展開?と期待していたのだけど、周囲の反応が思っていたのと違う。

「またナイトにちょっかい掛けてる」「この間返り討ちにあったのに勇者か」「返り討ちはかわいそうだよ、あれは誰でもヤられるよ…」「でも今はプリンセスもいるのに」「当て馬になる気か」「三年生だしね。思い出作りかもよ」

 

(…なぜこのヒロイン張っていてもおかしくない先輩が当て馬扱い?ライバルが妹なんて不毛では⁇ラノベだったら年上ヒロイン枠だよね?年下に見えなくもないのにお姉さんの魅力を兼ね備えたカリスマ会長なのに)

 

実に美味しいもりもり設定。キャラが立ち過ぎる頼れる先輩だというのに、どうして周囲から残念そうな視線が向けられているのだろう?

二人の耳には彼らの囁きが入っておらず、待ち合わせを決めて先輩は足早に離れていった。

このまま一緒に学校に行ってもいいはずなのに。

会話は聞こえていなかったけど視線や雰囲気が居心地悪かったかな。

 

「深雪はどうする?」

「どうする、とは?」

 

お兄様の質問の意図がわからない、と返すとお兄様はちょっと困ったように笑って。

 

「一緒に行くかい?」

 

まさかの二人きりの密会へのお誘いでした。

 

「先輩は兄さんだけに用があったみたいだから、私はいつものように生徒会室で待ってる」

「…そうか」

 

んん?ここって確か原作では無理に付いていこうとしてお兄様にあしらわれるんだよね?ケーキバイキングに付き合う約束を取り付けることで大人しくなるっていう。

…お兄様にいつケーキバイキングなんて行く暇が?そもそも深雪ちゃんボディがいくら食べても太らない体質であってもそんなに入らないよ。ケーキバイキング行くくらいならカフェで十分なのだけど。

何種類も食べたかったのかな。

じゃなくて。どうしてお兄様はちょっと苦笑気味に?何かおかしかっただろうか。

 

「深雪はいつも聞き分けがよすぎて、な。時折俺だけがお前を好きなんじゃないかと心配になる」

「そっ!?な?!」

 

急に爆弾放り込まないでほしい!何!?お兄様ストレスありましたか⁇

周りの人たちもきゃあああ!じゃないんですよ。今何が起こってるの?この状態で頭を撫でないで。そのまま背に手を滑らさないで。エスコートするように歩き出さないで?

 

「混乱させてしまったかな?」

「…しないわけがないでしょう。もう」

 

わき腹を突いてもお兄様には何のダメージにもならない。悔しい。

 

「…好きじゃないわけないじゃない」

 

だから少しひねくれたように、お兄様にだけ聞こえる声で呟けば背中に回っていた手が腰を引き寄せて。

 

「あまり可愛いことを言うものじゃないよ。俺もいつまでも自制できるとはかぎらないからね」

 

…腰を抱き寄せている時点で自制とは?なんだけど、お兄様の基準は難しいね。これはお兄様的にはセーフでも、世間様はそうじゃないようですよ。この悲鳴聞こえませんか?

朝からとんでもない仕打ちを受けて登校したことで、しばらく頭から熱が引かなかった。

 

 

――

 

 

今日は土曜日なので授業はお昼まで。

なので七草先輩の放課後とは正午を回ってすぐのことになる。

 

「リーナ、ちょっといい?生徒会から相談があるから生徒会室まで一緒に来てもらいたいのだけど」

 

昨日も大変な任務だっただろうに、リーナちゃんは笑顔でいいわよ、とついてきてくれた。

…なんだろう、キラキラ笑顔に社畜の香りがする。心がチクチクしますね。

歩きながら話すのはあげたクッキーの話だ。

 

「あのクッキーとっても美味しかったわ。本当にミユキの手作りなの?お店のモノでなくて?」

「皆のには見栄えのいいものを入れたから。家でちょっと焦げたのもちゃんと食べたわよ。でも嬉しい。ありがとう」

 

お礼を言うとリーナちゃんは笑顔で受け取ってくれた。感想とお礼が言えるなんていい子。優しい。本当に食べたかなんてわからないけど、彼女の心遣いが嬉しい。

そうして到着した生徒会室で、ほのかちゃんにお茶を頼んで私は鞄から、今朝焼いたドライフルーツのたっぷり入ったパウンドケーキを取り出しひと切れずつ皿に持ってフォークを添えて机に並べた。

 

「え!?もしかしてそれも手作り?」

「ええ。ほら、今日はこれで授業が終わりだから小腹が空くかなって。リーナはそんなに時間もないだろうからひと切れだけ付き合ってくれると嬉しいわ」

「…このままミユキに胃袋掴まれそうで怖いワ」

「ふふ、どうぞ。召し上がれ。ほのかも座って。皆で食べながら話しましょう」

 

本当は生クリームも添えたいところだけどね。生は危険です。

先に毒見もかねて一口食べると、うん。食べ応えのある、腹持ちよさそうなケーキです。ハイカロリー。

消費カロリー多そうだからね。なんとなくだけどやつれたような感じだし。

少しでも心の栄養になるものを食べてもらいたいと思って作りました。リーナちゃんの口に合うといいんだけど。

 

「「おいしい…」」

「よかった」

 

ほのかちゃんとの二重奏のおいしいいただきました!やったね。

 

「それで、生徒会からの話なんだけど。リーナ、今クラブの勧誘が大変でしょう?」

「ありがたいことにいろんなところから声を掛けてもらうわ。でも」

 

困り顔のリーナちゃん。うーん、可愛い。

 

「リーナも留学してきて色々慣れない環境で大変なのに、クラブ活動までするのは難しいだろうからって、学校側から提案があったの。臨時の生徒会役員にならないかって」

「え、でもそれは…」

「生徒会に入れば勧誘は無くなるだろうということみたい。優先順位があるから」

 

どっちも放課後に時間取られるから悩んでるのかな。

提案に戸惑っているようだけど、クラブ勧誘よりはマシだと思うよ~、と進めてみる。

 

「そういうこと。それにここならリーナの都合も融通できると思うの。留学生なんだもの。私たちよりも勉強しなきゃならないことも多いだろうから、放課後ずっとここで手伝ってもらうってことはないはずよ。ただ断った生徒たちの手前、生徒会のお仕事を手伝ってもらうことにはなるのだけれど」

 

リーナちゃんは考え込んでしまった。

そうだよね。放課後にそんな時間の余裕はないはずだから。でもこのままクラブの勧誘を断り続けるのも得策じゃない。

すでに火種となって部活連の服部会頭が動くレベルだ。変な暴動が起きてもおかしくない。

 

「今すぐ決めなくていいわ。ただクラブの勧誘がしつこくて躱すのが難しくなったら、こっちに避難してくれたら守るからって提案なの。せっかく留学してくれたのに、嫌な気分にさせたくないから」

「ありがとう。ちょっと考えさせてもらうわ」

 

そう言ってリーナちゃんは綺麗な所作で最後の一口を紅茶で流し込むと微笑んで一言。

 

「美味しいお茶とケーキをありがとう」

 

お茶会慣れしているお嬢様感がある。美人さんだから余計に似合う動作。素敵。

立ち上がる姿も優美で、この時間を楽しんでくれた返礼だろう、上品な一礼。…好きになっちゃう。もうすでに好きだけど。

バイバイ、と手を振って彼女が扉から出ていくのを見送ると、一瞬だけお兄様の姿が見えた気がした。っていうか見えたね。ばたんと閉まる直前に見切れてた。間違いない。

ほのかちゃんは、まだ気づいてないね。

 

「リーナ、忙しそうね」

「入ってくれたら守れるのだけど、こればかりは本人次第だから」

 

ちなみに生徒会からの話という割に中条会長たちがいないのは、リーナちゃんを緊張させないためだ。

…中条会長に緊張する生徒はなかなかいないと思うのだけどね。仲のいいクラスメートだけの方が気も楽だろうという気遣いです。ありがたく受け取ります。

リーナちゃんとのやり取りを終えただろうお兄様が入ってきた。すごいね。全力疾走とまではいかなくても結構飛ばしてきたはずなのにもう息が整っている。

ほのかちゃんと一緒に立ち上がってお兄様を出迎えて、お昼の準備。

土曜の食堂は数が限られているから、この時間だと混雑している上、食べられない可能性もある。

多分深雪ちゃんのことだから誰かに譲られる可能性もあるけど、そうしたらその誰かは食べられないわけで。それなら大人しくここのダイニングサーバーを利用させてもらう。その方が安全です。

…誰が渡すかで争うとかあり得るからね。争いの火種はない方がいい。

 

「今朝のパウンドケーキはリーナのためだったのか」

 

ほのかちゃんと私の席に残っていたケーキを見てお兄様の名推理。ご明察です。

お昼を用意している間、お兄様がリーナのカップを片付けに来てくれた。手伝わせてしまった、と後悔するより先にお礼を。

お兄様も手持無沙汰で待つよりも、何かしている方が気がまぎれるのかもしれない。

 

「彼女はきっとこの後すぐ帰宅するだろうから、ちょっと空腹を紛らわせるものを、って。余計なお世話だったかもしれないけど」

「いや、さっきすれ違った時機嫌がよさそうだったから喜んでいたと思うよ」

「だといいのだけど」

 

お茶を用意している間お兄様が横に張り付いてます。もしかして運ぼうとしてくれてるかな?

 

「座って待ってて。すぐに用意できるから」

「わかったよ」

 

すんなり戻ってくれたけど、もしかして七草先輩たちとのやり取りで何かあったのかもしれない。家に帰ったら聞いてみよう。

お茶を淹れ終えて、テーブルに向かうとほのかちゃんも用意ができていた。早いねー。科学の力ってすげー、です。科学っていうより技術だけど、ほら、そこは様式美ってやつです。

 

「それで、リーナは一体何の用だったんだ?」

 

ほのかちゃんと顔を見合わせ、お兄様に説明する。

ただちょっと言いづらいよね。うちのおバカな男子生徒たちがリーナちゃん写真集作ろうとしているなんて。しかも自分たちで楽しむだけでなく売りさばこうと考える輩までいるとか。

いや、わかるよ。リーナちゃん美人さんで綺麗で可愛いから写真に収めたくなる気持ちは。

新体操の服着せて(軽体操部も競技は違えど同じ衣装だ)あのしなやかな肢体を眺めたい欲もわかる。

けどね、本人未承諾でそういったことをやるのはマナー違反だし、そもそもれっきとした部活動のコスチュームをそんな視線で見るものじゃありません。選手に失礼。

ほのかちゃんもご立腹です。

 

「なるほど…確かに絵になりそうではあるな」

 

おお。お兄様も男の子ですね。と言いたいけど、多分これただの客観視だよね。美人さんなら男も女も関係なくそう思うし…あれ?でもお兄様から男の人褒めてるところ、あまり聞いたことないな。

やっぱりリーナちゃんだからそう思った?

このままこのセリフを放置するとお兄様がスケベ心を持っていると思われてしまうので。

 

「七草先輩とかもそういった話が出たのかしら?」

「え?」

「今兄さんが言ったようにリーナは美しいから撮影したくなるなら、先輩たちだってこれまでにそういう話は持ち上がったんじゃないのかな、って」

 

七草先輩、九校戦であれだけの恰好していたのだから、写真集くらい誰か作りそうなものだけど。制服だけでも体のライン出てるしそのままでも十分映えるんじゃないかな。

勝手だけど先輩の場合、ポーズをやたら取っているイメージあるから写真慣れしてそうだし。

 

「この学校美人の方が多いから、被写体に選ばれる人も多いのかな、と」

 

強い魔法師は美人さん、は定説ですからね。エリートともなれば見目麗しい人もいるわけで。

そうなるとこのトラブルってリーナちゃんの時だけじゃなくて毎年起きていることなんじゃないの?

そういえばエリカちゃんなんてクラブ勧誘凄かったらしいし。そういう目的で入部を頼まれて、もあったんじゃない?

 

「あの人の場合、生徒会を理由にクラブは断れただろう」

「クラブ活動を理由に撮るならそうかもしれないけど、学校一の美少女を撮るのに理由なんていくらでも作れるんじゃないかしら」

「だとしても七草の家が怖くてできないんじゃないか?」

 

そういうものかな。でも先輩自身乗り気じゃなかったら断るか。

 

「そういう深雪はそういった話は無かったの?」

「ないわよ。あったらこんな話しないわ」

 

笑って答えるとほのかちゃんはほっとしたようだけど、お兄様の目がちょっと鋭くてですね。

…たぶんだけど、そういった視線は感じたことがあるけどそのたびに、次の日には視線が消えてたから…お兄様何かしたのかな?お話し合いがあったのかな?とか思っていたり。

真相は闇の中だ。

 

「このまま生徒会に入ってくれたらトラブルは治まると思うけど」

「リーナの意思はどうなんだ?」

「んー、放課後時間を取られるのを嫌がっている感じでしたね。だからクラブ活動を断っているのもそれが理由かなと思いました」

 

時間ないものね。放課後まで学校に拘束されるなんて、夜中に駆けずり回っている彼女には断りたい案件だろう。

…ううう、とんでもない社畜感…。かわいそう。

それ以上本人不在でリーナちゃんの話が広がることもなく、雑談に切り替わってお昼を済ませ、食後のデザートに残ったパウンドケーキもちょこっと食べて帰宅した。残った分はまた後日皆で食べられるとイイな。

 

 

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