妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします!分割版   作:tom200

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入学編⑦

達也視点

 

 

生徒会長というのは余程他人の迷惑を考えないものなのか――いや、これは生徒会長というより彼女自身の問題か。

とにかく目立つ彼女は自分の影響力を気にせず、登校前の生徒たちの視線を浴びながら俺たちの元にやってきた。

 

「達也くんオハヨー、深雪さんもおはようございます」

 

俺は名前呼びを許可した覚えはないが、随分とフレンドリーさが滲んでいる。それに俺に対してだけ馴れ馴れしいのも癇に障る。

 

「「おはようございます会長」」

 

声が揃ったのは偶然だが、気にするほどじゃないのに会長は目を見開いて、けれど入学式の深雪の態度を思い出したのか茶化すのはやめたようだった。

賢明だな。こういった空気は読むのか。

 

「深雪さんと少しお話したいこともあるし、ご一緒してもいいかしら?」

「それは構いませんが、生徒会のことでしょうか?」

「ええ、そうなの。一度ゆっくり説明したいと思って。お昼はどうするご予定かしら?」

「食堂でいただくことになると思います」

「達也くんも一緒に?」

 

正直この質問は無神経でしかない。

学校の差別文化を知っていて、俺たち兄妹の差を知っていて聞いているのだから。

 

「兄とはクラスも違いますので」

 

深雪が俯き加減で、更に低い声で返したが、会長にとってここは攻め時だったのかめげることなく畳みかける。

 

「あ~、変なことを気にする生徒たちも多いですものね。なら生徒会室で一緒にどうかしら?ランチボックスでよければ自配機があるし」

 

どうやら学校の一設備にダイニングサーバーが付いているらしい。

生徒会とは思っているより過酷な職場なのか?だったらあまり深雪にさせたくないんだが。

妹の成績上そうもいかないことは分かっていても、思わずにはいられなかった。

 

「――兄には兄の付き合いがあります。生徒会のお話でしたら二科生の兄には関係のない話でしょうから、私だけで問題ないのではないですか?」

 

朗らかな会長に対して凍てつくような深雪の声に、春の陽気が一気に冷え込んだ。もちろん錯覚だが、そんな空気が満ちた、と言おうか。

生徒会のことは入学前から調べている。

二科生が関わるものではないのは会長も知っているだろうになぜ俺を誘おうとする?何か別の目的があるのだろうが、深雪が先回りして止めた。

深雪は俺が利用されることを極端に嫌う。

自身が使うことだって嫌がる。

お前になら何を命令されたって喜んで遂行するのに。

俺の意思でなく、させられるということが気に入らないらしい。

――とても、愛おしいと思う。可愛い、大事な俺の妹だ。

 

「そ、そうね。確かに達也くんには達也くんの付き合いがあるわよね、失礼したわ」

「気を使っていただいてありがとうございます」

「じゃあお昼、よろしくね」

 

これで話は終わったとばかりに生徒会長はそそくさと校舎に向かっていった。

向かうところは一緒なのに、相当居心地が悪かったのだろうな。

俺たちは黙って連れ立って歩く。

心地が悪いなど、感じるわけもなく。

ただこの距離感と温度を感じられない空いた手を寂しく思いながら登校した。

 

 

 

クラスに行くとなんとも微妙な顔をしているクラスメイトの顔が三つ。

 

「お前さんの妹の影響力ってのはすげえな」

「おはよう達也くん。さっそく学校中彼女の噂でもちきりよ」

 

深雪の影響力がとんでもないのはわかっていた。

昨日の今日だというのに彼女の前では差別発言は禁句として耳に入れないよう緘口令が敷かれたらしい。

それでも常に、ではなく彼女の前では、というところにまだ根強い文化が窺い知れる。

 

「そのおかげか、あまりその単語自体を耳にすることが減った気がします」

「ま、一時的かもしれないけどな」

「でも残念なことに良い噂だけじゃなくて、聞く?」

「そこまで言われたら、な。教えてくれるか」

 

二科生には聞き心地の良いことを言っていたが、実際は口先だけで、結局は二科生を毛嫌いしているというモノだった。

 

「その噂が立つのもわかるがな。兄に対しての態度もだけど昨日の俺たちへの態度も影響してるらしい」

「あと速報で、生徒会長との会話?ってのもさっき聞こえたわね」

「ああ、そういえば会長と話した後走っていく生徒がいたが、あれか」

 

噂が駆け巡るのが早い。

俺らは気にしてないけどなー、とはレオだけで他の二人の女子はそうでもないらしいが口に出すほどではないようだ。

 

「ふぅん」

「ふーん、ってそんなもん?」

「俺たち兄妹のことは俺たちがわかっていれば十分だしな」

「あれ?案外兄妹仲悪くねーの?」

「…アンタ無遠慮すぎるんじゃない?」

「そういうエリカは深雪に同じこと聞いていただろう」

 

あはは、と笑う彼女は、しかし特に否定するつもりもないらしい。

 

「ああいうのはノリとテンションよね」

「そういうのはよくわからんが。悪くないぞ」

「「え、そうなの」か?」

 

美月もびっくりしているが、そんなに悪そうに映ったか?一緒に帰っていたのは見ていただろうに。

 

「いや、そんな意外って顔されても」

「どう見たってあんま仲良さそうじゃなかったぞ」

「でも確かに、妹さんは否定されてましたね」

「いやいや、否定の言葉は言っていたけどあの態度はそうは見えなかったでしょ」

 

順調に騙されてくれているようで何よりだ。

これで深雪の計画は先に進める。

――早く終わればいい。こんな彼女の負担になることは。

深雪は相当ストレスを感じているのか、家に帰ればハグをして、キッチンに立てば一心不乱にパンを捏ねていた。

しばらくうちの食卓にはパンが並ぶことだろう。

嫌いじゃないが、あの子の作る和食は温かな味がして特に好きだ。

洋食ももちろん美味しいし、中華も美味い。

だが、

 

「…白米が恋しい」

「え、まだ朝だよ達也くん」

「朝ごはん食べられなかったんですか?」

 

誤解を解く前にチャイムが鳴り、各々席に着く。

まだ三日だというのに俺はかなり我慢が利かなくなったらしい。

 

 

噂の影響かちらちらと向けられる視線を感じながらも、特に俺が何をしたわけでもないので声を掛けられることもない。どちらかというと綺麗な妹に嫌われて可哀想という同情的な視線を浴びながら、帰り支度をして深雪を迎えに行くか、と途中まで一緒に行こうというレオ達を引き連れて廊下を歩いていると前方からざわめきが。

深雪だ。

後ろには前に見たクラスメイト達がついて歩いていた。

 

「兄さん、ちょっと」

「もしかして生徒会か?」

「書記になったの。だから適当なところで時間を潰してて」

「わかった。時間になったら連絡を」

 

いつもの優し気な雰囲気のない、用件だけの会話をして去っていく妹。

そのあとに続く男子生徒は前回こちらを睨みつけていたはずだが、今日は見向きもしない。

妹の説得が効いたのか、はたまた余裕ある方がかっこいいとの言葉に感化されたのかわからないが。

 

「…もっかい聞くけど本当に仲、悪くないのか?」

「俺にとってはどんな深雪も可愛い妹でしかないな」

「もしかしなくてもシスコンだったのね」

 

本心で答えたらエリカにげんなりされた。

若干視線に別のモノを感じるがそれが何かまでは俺にはわからない。

 

「美月、なんか喜んでない?」

「え!?いえ、なんか達也さんの発言シスコンだとしてもすごいなって」

 

なぜか少し頬を赤らめている美月にも疑問を抱きつつ。

 

「そんな変わったことを言った覚えもないんだが」

 

深雪が可愛いのは事実だ。

そう返すと三人は顔を見合わせて肩を落として首を振る。

これが疎外感というやつか。

 

「なんつーか、お前って相当変わってんな」

「そんなことはない」

 

否定をしたが、三人は諦めたように首を竦めただけだった。

 

 

 

学校に通う理由の一つが図書室での閲覧だったこともあり放課後はここで時間を潰す。

深雪は俺にこの時間をプレゼントするために生徒会長から遠ざけたのかと思うと、よりこの時間を大切にして妹に感謝しようと片っ端から手に取った。

時間は有限だ。有効に使わねばならない。

集中していても時間の感覚は忘れない。

そろそろか、と思う頃端末に連絡が入る。ちょうどのタイミングだった。

深雪を迎えに行けば彼女は一人で、何でも今日は初めてだからと早く帰れるのだとか。

周囲には部活動の帰りなのかまばらに生徒がいる。

寄り添うことはかなわず、一定の距離を保つ。

これはある意味慣れている距離だ。

あちらの家ではこれが当たり前だから。

けれど、妹が悲しんでいることが背中からも伝わる。

今すぐ抱きしめてあげたいけれどそれを今望んでいないことも解っている。

早く誰もいないところへ。

この一生懸命我慢している妹を早く解放してあげたかった。

 

その解放が思ったより早かったのは予想外であったが。

 

 

 

次の日、放課後同じように図書室へ行こうとしたらエリカにクラブ活動の見学に誘われた。

あまり興味があるわけではなかったし入るわけでもないが、ある意味名物らしいので付き合ってみることにした。

 

「思った以上に激しいな」

「お祭り騒ぎがいつ血祭り騒ぎになってもおかしくないわね」

 

物騒な物言いだが俺も同意見だ。

校庭ではいくつかテントが立っており、人がひしめき合っていた。

エリカなどその見た目で目をつけられたのかもみくちゃにされ動けなくなっている。

CADも無いので体術をこういったことに使うのはどうかとも思ったが、これも人助けと人垣を掻い潜って彼女を救出するハプニングも起こった。

…実際ハプニングと呼べるものはそのあとに起きたのだがここでは割愛する。

そんな彼女の希望で次に向かったのが闘技場と呼ばれる第二小体育館だった。

剣道部や剣術部の違いなどの蘊蓄を教わりながら、学生にしては見事な体裁きの演武を見ていた。

エリカはその中央で演技する先輩を知っていたらしく詳しく解説までしてくれたまではよかったのだが演技が気に入らなかったらしく不満顔だ。

それも先輩――壬生先輩というらしい――を尊敬していたかららしい。

その理由はなんというか、微笑ましいものだと思って会話を続けたのが悪かったのか、今度は彼女の容姿に見惚れたのではと揶揄いに転じる。

負けん気が強いのがよくわかった。

そんな時だった。

事が――動いた。

乱入者が現れ、高周波ブレードで壬生先輩を切りつけ、乱闘が始まったのだ。

乱闘が始まるとまるで祭りが始まったかのように人が集まってきた。

その中にこういった事態を収めるための風紀委員が登場したが――あれは確か深雪のクラスメイトの森崎、だったか?あともう一人先輩が付いているようだが、すでに事が大きくなりすぎて乱闘騒ぎになってしまい、これはなかなか収拾がつきそうにない。

他に応援も駆けつけるが人混みがすごくて中心に辿り着くこともできないでいるのが上から見てよくわかった。

 

「これ、相当まずいんじゃない?」

「下手すると怪我人どころじゃすまなくなるぞ」

 

たかが学生の乱闘騒ぎではない。魔法とは武器にも兵器にもなる。ここはそれを制御するための学校でもあるはずだが頭に血が上った生徒に冷静な判断などできるはずも無い。

CADを取りに行くかとエリカと移動し始めた時だった。

生徒会のメンバー数人が到着したようで、生徒会長、という言葉が耳に入る。

確認すればそこには生徒会書記として深雪の姿もあった。

おそらくこれも勉強の一環としてなのだろうが――こんな危険なところに深雪を呼ぶなんて、と思い切り眉をしかめていたら、こちらに気付いた深雪が小さく口を動かした。

 

「(先にCADを)」

 

読唇術で読んですぐに留まろうとしたエリカの手をつかんでその場を後にした。

 

「え、達也くん心配じゃないの!?」

「心配だからこそ行くんだ」

 

それ以上の問答は必要ない。

人をかき分けながらただ目的地を目指す。

正直深雪が怪我をする心配はしていない。

たとえCADがなくても彼女が魔法で傷つけられることなどありえず、肉弾戦であろうとも護身術に関して達人の域に手が届きそうな深雪をどうこうできるとも思わない。流石に銃火器でもあればその限りではないがそんなものを学校内で用意できると思えない。

だが、いくら物理に強くとも彼女の心が傷つかないとは限らない。

――もしそうなった時、俺は自分を止められる気はしない。止める気も、ない。

 

 

――

 

 

深雪視点

 

 

その場は戦場さながらだった。

怒号が飛びかい、魔法も飛びかう。

本当に学生が起こしているのかというほどの、もうただの喧嘩とは言えないほどの威力のものも混じっている。

風紀委員が制止しようとするが、全体を止められるほどの威力は見られない。

壇上から見える光景に目の前の生徒会長はいったい何を思うのか。

止めないと、と何か指示を飛ばす生徒会長の声もなかなか聞き取れない中、耳に飛び込む叫び声。

 

「ブルームだからって偉ぶりやがって!」

「ウィードは身を弁えろよ!」

「どっちにしたってお前らはしょせんスペアなんだよ!」

「実力も下なくせに口先ばっか言いやがって楯突いてんじゃ――」

 

ああ、おかしい。

 

「――力もない…?おかしなことを」

 

皆、現実が見えていない。

それを私は哀れに思った。

 

 

NEXT→

 




おまけ


『というわけで引き続き、お二人にお話を伺っていきたいのですが』
「会長がお兄様を待ち伏せしていたシーンですね!」
「…なぜそう目を輝かせるんだ」
『お兄様的には余り嬉しくないことだったんですか?』
「余りどころか。はっきり言って迷惑だと思った。二科生との軋轢を何とかしたいと思うのは勝手だが巻き込まれるのは迷惑だ」
「(チラッチラッ)」
『(詳しく聞けってことですね)朝一から深雪ちゃんを除いて学校一番の美少女に話しかけられたことはお兄様にとって喜べない話だったんですか?』
「そんな美少女に話しかけられてもただの厄介事だろう。こっちは容姿も成績もさえない二科生だぞ?トラブルを引き寄せるようなものだ」
『お兄様カッコいいんですけどねぇ』
「世辞はいらん」
「お兄様は!カッコいいです!!」
「ありがとうな」
「(…信じてもらえないぃ…)」
『(なぜか会長もさえない容姿、と最初思っていたようですしね…。まあ話としては平凡な容姿の方が妹との差が出るんでしょうけど、あの両親から平凡が生まれるわけが…)でも、美少女というのは認めるんですね』
「事実だろう。容姿が整っているのは誰もが認めることだ」
『そこから良いな、と思ったりは?』
「深雪がいるのに?」
『アッ、ハイ(圧が、強い!)』
「もう、お兄様ったら」
「お前が隣にいて誰かに見惚れることなどありえるわけがない」
『すみません、二人の雰囲気出されると話が進まないのでご遠慮ください。で、お昼を誘われるわけですが深雪ちゃんはお一人で参加する旨を伝えられたんですよね』
「生徒会入りを勧められるのだとわかってましたから。そこにお兄様を連れて行ってなんになります?」
『まあ、風紀委員に勧誘する理由も無いですからねぇ』
「なぜそこで風紀委員に?二科生は役職に就けないはずだ」
「『(原作ですから、とは言えない)』」
『二科生の実力が一科生に及ぶこともある、というのを証明するために異例に抜擢される可能性があったのでは、と』
「実際一人で訪れた際に、ちらっと優秀な学力を持つ二科生なら生徒会で仕事をしてもらいたい、との話はありました。プロモーションとしてお兄様を、その…利用したかったのではないかと」
「そのために入学式に声を掛けてきたのか」
「それは、偶然かもしれませんが、二科生の中で協力者を探していたのはお兄様の成績を記憶されていたことからは明らかかと」
「それを断ってくれていたのか」
「…お兄様には大事な研究がありますもの。余計なことに時間を割かれて欲しくなかったのです」
「ありがとう。いつも俺はお前に支えられている」
「そんな…もったいないお言葉です」
『…話が進まないのでこの流れも切らせていただきますよ?さっそく妹の工作によりエリカちゃんたちが盛大に勘違いしてくれたわけですが』
「正直、あれしきのことであのような噂が広まるとは思わなかったが」
『それだけ深雪ちゃんが注目されている、ということと、裏でその深雪ちゃんを利用する輩が現れたたことが原因ですね』
「その流れは私への助力にもなりました」
『お兄様は妹に悪い印象がついたことに不満は無かったのですか?』
「無いわけではないが、それをひっくり返すつもりでいたのは分かっていたからな」
『でも黙って聞いていられなくて兄妹仲は悪くない、と主張されたわけですね』
「深雪のことで嘘を吐くのはどうもな」
『おかげで早々にシスコン認定貰ってましたね』
「シスコンと言われてもな…あまり実感はないんだが」
『ご安心ください、普通のシスコンではないので実感できないかと』
「ここでも普通でないと言われるのか…」
「お兄様はご自身を平凡や没個性と思われているようですが、まったくもってそんなことございませんからね?」
『お兄様が普通…かけ離れたお言葉ですね。それにしても、深雪ちゃん…自分で立てた計画なのに寂しくなっちゃったんですか?』
「!寂しい、ではなく悲しかったのです!なにが悲しくてお兄様に冷たく当たらなければならないのか…。自分が立てた計画でしたが、そこの部分は思いの外厳しかったです」
「おや、寂しいとは思ってくれなかったのかい?俺はあの他人の距離を寂しく思ったんだが」
「そ、それは、…えっと…私も寂しいと…///」
『思ったんじゃないですかぁ(にやにや)』
「もう!ここは引っ張るような話ではないでしょう!お兄様はエリカに誘われてクラブ見学に行かれたのですよね(チラッ)」
『エリカちゃんに誘われたんですか?』
「そんなところだ」
『…二人きりで?』
「何が言いたい?」
『いえ、何かトラブルにでも合われたんじゃないかと(それこそビッグなラッキースケベが発動したのでは?!)』
「(ドキドキ)」
「トラブル…そうだな。エリカは何処の部にも勧誘されていて揉みくちゃにされていた。それをたまたま助けた縁で、だな」
『揉みくちゃ…それは、あの制服でそんな目に遭えば乱れたでしょうねぇ…』
「ああ、一発頬に食らったな」
「『!!』」
「ああ言う時は避ければ後々禍根を残すことになるから大人しく受けたが」
『…何でそんな淡々とお答えに?ここは狼狽える場面では⁇』
「俺にやましい所なんてないからな(ドンっ!)」
『……堂々としたところで見ちゃったものは見ちゃったんですよね?』
「それが?」
『…完全に開き直ってますね…。もし深雪ちゃんだったら――』
「ちょ!」
「……それを聞く意味はあるか?」
『はい!失礼しました!ですのでどうか腕を下ろしてくださいませ!!』
「学校のクラブ見学でデート扱いにされても困る。ただの行事の一環だろう」
「エリカは学年でもトップクラスの美少女なのですから、周囲からは勘違いされてもおかしくなかったのでは?」
「深雪までそんなことを言うのかい?酷いな。俺にはお前しかいないのに」
「お、お兄様!」
『すぐに妹を丸め込もうとなさらないでください~。で、壬生先輩と桐原先輩の事件が勃発したんですね』
「風紀委員が来るならまだしも、生徒会迄こんなことに駆り出されると思っていなかった。CADなんか取りに行かずに深雪の傍に駆けつけたかったが…」
「申し訳ございませんでした。あの時はまだお兄様の特殊性を見せるわけには」
「わかるよ。お前はいつだって正しい。形だけでもCADを持たないことには周囲に怪しまれる」
『でもずっと守護はされていたんでしょう?』
「当然だ。…だから、深雪に嫌な視線が向けられていることにも気づいて急いで駆けつけた」
「ご心配おかけしました」
「学生程度が相手では深雪をどうこうできるはずがないと分かっていても気が気じゃなかった」
『まあ、このままでは謝罪が続いちゃうでしょうから口を挟ませてもらいますが、実際深雪ちゃんの手元にはCADがありますし、生徒会長が居て生徒が怪我をするようであれば大問題でしょうからね、どうあっても深雪ちゃんが怪我をするはずがない状況でした』
「…私の干渉力を破れるような力のある人は生徒会長くらい、でしょうか」
「いや、あの人でも瞬時には難しいだろう。それなら深雪が先に場を整えれば深雪の肌を傷つけることもできなかっただろう」
『…あの時にはすでにそれだけの力量の差があった、と?』
「深雪は無自覚だったが、入学時点で学校最強の魔法師は深雪だった。流石に力を制限されたままでは十文字先輩のファランクスに対抗することは難しかったかもしれないが、それでもそこそこいい勝負はできたんじゃないか?」
「……それは、流石に」
「俺の分析結果が信じられないか?」
『…深雪ちゃん、ゲーム感覚で基礎値上げまくってたから…(でもそこまでだったとは…)それがわかっていても、心配だったわけですか』
「当たり前だ。妹を心配しない兄はいない」
「お兄様っ…!」
『うーん、理屈じゃないってことですね。と、ここでお時間が来てしまいました。続きはまた後日』

つづく


――

お兄様にとって朝の真由美先輩のお出迎えは歓迎できなかった事態だったようです。
一挙手一投足目立つ方ですからね、注目を浴びたくないお兄様にとって先輩の行動は不都合だったのでしょう。ただでさえ目立つ妹とも一緒ですからね。
でも、その中には妹がいるのに声を掛けられることへの不満や、妹がそわついたことにも神経質になっていたのかもしれないです。無自覚にも好きな妹の前で美人の先輩に話しかけられるのは勘違いされてしまう可能性に感づいていたのかもしれません。
実際妹は先輩が寄ってきたことに恋の予感を感じて浮かれていましたから。…そんなもの、欠片も無いのですがねぇ。
先輩側からしたら興味ある男子だったかもしれませんが、お兄様サイドがどうしても。
妹はお兄様に風紀委員の仕事を振られないようこの場に呼ばなかったため、フラグがぽっきり。
…のはずが、何故か原作通りに進む不思議。きっと強制力に似た何かが働いた。先輩たちの好奇心かな。
遠ざけようとして結局ちょっかいを掛けられてしまうお兄様。妹としてはその方が恋のチャンスが!と期待するのですが…ゼロに何掛けてもゼロなんですよねぇ。ちょっとずつ+方向には進むものの、恋愛方面には向きませんでした。
お兄様視点で見ると、踊らされている人たちが憐れに見えます。エリカちゃんたちは良く踊ってくれました。
まだ妹のことを知らないですからね、仕方ないです。でもこの時点でお兄様がおかしいかも、とは気づき始めているという。いい仲間たちです。
お兄様はちゃっかりラッキースケベの恩恵を授かっていましたが、さらっと流しました。
妹程の動揺は無かった模様です(…そっちの方が問題では?)。
そして事件発生。お兄様にとって妹が誰かに傷つけられるとは到底思えなかったけど、向けられる害意に怒り心頭。もう一歩踏み込む視線があったならマテバも辞さない。皆ナイナイ()されちゃうところでした。危なかったね。お兄様の衝動は歯止めが利かないので。
妹は「いいぞーもっとやれ!」精神だったことは絶対お兄様には内緒。

お粗末様でした。

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