妹転生?!ファンとしてお兄様を幸せにします!分割版 作:tom200
そんなこんなで、それぞれがそれぞれの思惑を掲げ動き出してた二月上旬、世界中に凶報が行き渡った。
――ついに来たか、と私はニュースに釘付けになりながらも拳を握り締める。
センセーショナルなニュースだろう。
要約するとこんなところ。
合衆国政府による、とんでもない失策、失態に非難は免れない。
昨年十月三十一日、朝鮮半島南端で使用された日本軍の秘密兵器に対抗する手段の開発を魔法師に命じた。
魔法師たちはダラス国立加速器研究所において、科学者の警告を押し切りマイクロブラックホール生成実験を強行。これにより次元の壁に穴を空け、異次元からデーモンを呼び出した。
魔法師たちはデーモンを使役することで、日本の秘密兵器に対抗しようとしたのである。
しかし彼らはデーモンの制御に失敗し、身体を乗っ取られてしまった。
昨年末より巷間を騒がせている吸血鬼の正体は、デーモンに憑依された軍の魔法師であり、犠牲者に対して軍は――
と、ここからは軍部への非難になるのだけど。
まあよく考えられた世論の印象操作だこと。
勝手に強行したという魔法師非難も当然なのだけど、そもそも日本の秘密兵器とかね。ちゃっかり日本も悪感情が向くように仕向けられてる。
しかもデーモン?パラサイトを自分たちの意思によって呼び出したような発言にも引っかかるよね。
ただ莫大なエネルギー変換をしようとしただけの実験で、どうしてそれが、偶然巻き込んだモノを『召喚』して『使役』なんて発想になるのかね。
結果的に彼らを招き入れてしまったからって、理由をごちゃまぜにして都合良いようにまとめ上げるなんてひどいシナリオライターもいたものだ。脚本粗すぎますよ。
――だけど、だからこそドラマチックでわかりやすく、浸透しやすいのだろうけどね。
「…雫が教えてくれたお話と似通っているようですが」
「ああ、随分と脚色されているがな」
お兄様も違和感に気付いているようだった。というよりこれは気付くだろう。
ニュースの最後の締めくくりも魔法師を統率しきれなかったことと、超自然的な力を利用することが国益にかなっているか改めて考え直すべき時が来たのかもしれない、などと煽るような文句が散りばめられていた。
「これは、荒れるでしょうね」
「魔法師排斥運動の旗印にこれほどのニュースは無いな。それよりもニュースソースが気になるな」
ニュースでは内部告発だと言っていたけれど、当然そんなわけがない。内部ならばデーモンなんて言葉を使うはずがない。リーナちゃんはすでにパラサイトを知っていたのだから。
デーモンとは、彼らにとって忌むべき隠語のようなもの――やはり、この情報を漏らした人間は大亜連合と関わりのある人間であることは間違いない。
(あー、本当に嫌になるったら)
暗躍大好き黒幕気取りのおじさんめ、とちくちくいやらしい攻撃に苛立ってしまう。
お兄様に気付かれないようにコンソメスープを飲んで落ち着かせている間、お兄様は電話機のコンソールに手を伸ばすものの、取ることは無かった。
ということでお兄様と共同作業です。駅でリーナちゃん捕獲大作戦。
にっこりお兄様の笑顔(妹視点)を前に逃げ出すとは、リーナちゃんどういうつもりです?なんてわかっているけれどね。ごめんね。これも様式美だと思ってね。
後でお詫びのフィナンシェ渡すから。
最近お菓子ばかり作っているけれど、ストレスがあるのでね。しょうがない。
食べることもいいけれどお菓子作りもいいストレス発散です。付き合ってください。
お兄様も、二日に一回パンにしてごめんなさい。資料に目を通す度にイライラがね。
本当人の国で何をしてくれているんですかねぇ?!っていうくらい入り込んでるんですけど。挨拶も無しに土足侵入良くないと思いますよ。
まだ何をしているかわからないから泳がせているところが多すぎて、人手が足りない。
っていうか七草!十文字家もだけど横須賀の警備もうちょっとどうにかなりませんかねぇ!?
がばがばだよ。むしろ一般人の、あの船なんだろう?って写真の方が有力情報ってどうなってるの?それを拾ってくるうちの子凄い。えらい。
そしてそれをちゃっかり一般人ジャーナリスト使ってリークしてる辺り暗躍上手。
なんか、有志による自警団とか作りそうで怖い。無理はしないで。多分だけどあなた達魔法使えない一般市民でしょう。心配。
見ず知らずの人たちだけど、日本のために、皆を守ろうと活動してる人は応援したくなっちゃう。
目の前ではお兄様とリーナちゃんが並んでイチャイチャ…ではなく、平然としているお兄様とキャンキャン噛みつくリーナちゃんの図ですね。可愛い。
話は今朝のニュースがどこまで真実かってことだけど、彼女にとってはほとんど嘘っぱちに思えただろうね。
事実脚色部分はほぼ創作ではあるのだけど、軸が間違ってないので、ね。
そこでお兄様がちょっとだけ踏み込むと、リーナちゃんは『七賢人』の存在を明かした。
彼女にとって彼の行動は有益な情報源ではあっても、愉快犯にしか思えてないからいい印象なんてないんだろうな。
不機嫌そうに答えているのがその証拠。リーナちゃんのような真面目な子にはレイモンド君は気に入らないんだろうね。
だんだんヒートアップしてきたリーナちゃんは気を逆立てた猫のようにお兄様に食って掛かった。
可愛い。
「だから正体がわからないって言ってるでしょうが!」
フシャア!と威嚇してますね。
「リーナ、可愛いけれど落ち着いて。兄さんに当たっても何も解消しないわ」
「な!?カワっ?!な、なにを言ってるのよ!」
あら、怒りの矛先がこちらに。でも怒った顔もそーきゅーと。
「毛を逆立てた猫ちゃんみたいだったわ」
「私は猫じゃないわよ!」
「怒らせちゃった?ごめんなさい。でも可愛いは撤回しないわ。リーナは美人さんだけど可愛さも持ち合わせているのだから」
確信をもって言えば、リーナちゃんはわなわなと体を震わせて口をつぐんでしまった。
「深雪、お前が可愛いモノが好きなのは知っているが、あまり口に出しすぎると相手が困るから抑えた方が良い」
おっと。お兄様から忠告が。リーナちゃんを困らせるなだって。
…リーナちゃん、可愛いって言われ慣れてるはずでは?日本語で言われ慣れてないからかお耳真っ赤だった。肌が白いとよくわかる。
っていうか話途中だったわよね。中断させてしまった。お兄様にそっと視線を向けたら意図を読み取ってくれて話が再開。
リーナちゃんも話が変わって落ち着いたのか、人間主義者と七賢人の繋がりを否定した。
けどまさかその七賢人の内一人が煽って扇動しているなんて思いもよらないだろう。組織名を名乗られたらグループだと思うのもしょうがない。
七賢人の一人しか接触してないで愉快犯グループと思われる彼らも彼らだ。それでいいのか七賢人。
「最後に、一つだけ聞かせてくれ」
お兄様は問う。パラサイトを招いたのは意図してのことなのかと。
彼女は即時否定した。
怒りに体を震わせながら。
「ワタシは四人も感染者を処断しているのよ。これが誰かの仕業だというのなら、ワタシはソイツを許さない」
怒れる彼女は、瞳に強いきらめきを宿らせて。
(やっぱりリーナちゃんは美しい。そして、カッコいい戦士なのね)
彼女はただ綺麗なだけのお姫様ではないのだと、改めて見惚れた。
――
真実よりも虚像を愛する人間は、瞬く間にこのセンセーショナルなニュースを受け入れた。
遠い海の話であっても、その大陸を揺らす大波は、揺れて返してこの遠く離れた国にまで届くのは時間の問題だった。
待ちに待った藤林さんとのお茶会は、残念なことにただお茶会だけを楽しめる内容ではなかった。
本当に残念でならない。なぜおじさんとおじさんによる狸とキツネの化かし合いの音源を聞かされねばならぬのか。
いや、結構な情報なのですけどね。必要なのもわかるのだけどね?
私は悲しい。
簡略式でしかお迎えできないことが無念で仕方がない。
テーブルクロスは華やかに。ティーポットも花柄の描かれた物をチョイス。
あまりお腹に溜まるものはよくないかもしれない、と軽く手で摘まめる程度のマカロンと一口タルトを。タルトは甘いものもしょっぱいものものせられるから融通が利いてとっても便利。彩にもなるしね。
「突然の訪問だったのに、これ、手作りでしょう?すごいわ」
そう言ってマカロンをパクリ。
美女とマカロン。似合う。素敵。
だけど気を使わせてしまっただろうか。美女に褒められたおかげで気分が一気に振り切れて私はハッピーだけれど。
カットフルーツ盛り合わせの機会もまた訪れるかもしれないと思えば。
連絡きたの今朝でしたものね。びっくりはしましたが、そういえばお宅訪問のお話あったなと思い出しました。
確かお兄様が私に世界情勢のお勉強をさせようとしていたと記憶しています。が、お兄様、私の口で言わせるよりもするっと自身で解説なさってました。
まるでお前もわかっているだろうが、みたいな。
実際その手の情報は集めておりますのでそれなりに見えているつもりです。
今回の音源も、お兄様に関わるお話でしたからね。ただ、やっぱり直接持ってきた理由は――
「ハイ、二日早いけど義理チョコよ」
帰り際、ハンドバッグから取り出したのは綺麗に梱包された薄い小箱。
うーん、実にスマート。慣れていらっしゃる。大人の女性の余裕を感じます。憧れますね。素敵です。
「義理ですか」
お兄様ご不満ですか?と言葉だけ聞くと心がウキウキしちゃう展開を期待したいところだけれど、お兄様は面白がっているだけの模様。
「義理じゃ不満?」
そして魅惑のお姉さんの悩殺スマイル!直撃していないのにクラっと来ますね。麗しい。
これにはお兄様も動揺を――しないですねぇ。…やっぱりちょっと席を外せばよかったかな。妹の前では見せられない姿ってあるよね
荷物を取りに行く振りをして、とか。でも用意周到な私はうっかり準備してしまっていたわけで。
「いえ、まったく」
バッサリ否定するお兄様に噴き出す藤林さんは、でしょうねぇ、と笑っていたけど、いったい何がでしょうね、なんだろう。
「あの、藤林さん。こちらを受け取っていただけますか?」
気になるけれど、帰ってしまわれる前に私も渡さねば、と取り出したのは藤林さんの小箱より厚みのある、けれどサイズとしては小さめの箱。
「いつも兄がお世話になっておりますので、お礼のチョコです」
「え、私に?」
「お礼もあるのですが、憧れの女性にお渡しできる機会なので。もちろんお返しは不要です。受け取っていただけますか?」
言いながらちょっと恥ずかしくなって俯き加減で見上げながら小箱を差し出す。
視界に入る藤林さんの手が一瞬受け取るのを躊躇したように止まったけれど、受け取ってもらえました。良かった。
「ありがとう。私チョコを貰うの初めてだわ」
先ほどまでの悪戯な笑みではなく微笑む藤林さんは美しかった。これだけでご褒美です。
嬉しさのあまり真っ赤になった頬を押さえて、控えめに恐縮です、と返してお兄様の後ろに下がった。
「…ですから、あまり妹を誘惑するのを止めていただけませんか」
「あら。今日誘惑されたのは私の方よ。素敵なおもてなしを受けて、帰りにはこんな可愛いサプライズされて。
深雪さん、もしお兄さんに困らせられたらいつでもお姉さんに相談してね」
「俺が一体深雪をどう困らせるというのですか」
「自覚ない?」
「…なんのことやら、わかりませんね」
なにやら先ほどまでと雰囲気が変わってバチバチ音が聞こえそう。静電気です?
しかしそこは大人なお姉さん。くるっと表情を変えてじゃあね、と藤林さんは颯爽と帰っていった。
心の中では大ぶりに、表では控えめに手を振って見送って。姿が見えなくなるとお兄様が振り返り、ぽんぽん、と頭を軽く叩かれる。
「準備お疲れ様。喜んでもらえてよかったな」
「はい!」
「まだ食べるものが少し残っていたね。チョコも頂いたことだし、もう少しお茶を楽しもうか。今度は、二人きりで」
「まあ。そのチョコレートはお兄様が頂いたものでしょう?」
「貰ったのだから、どう食べてもいいだろう?それに、藤林さんが選んだからにはきっとおいしいチョコレートのはずだ。興味あるだろう?」
そう言って手に持っていた小箱の角を口元でちらつかせるお兄様。魅惑的なお誘いに、私は陥落した。
大変美味しゅうございました。
――
次の日、月曜日の学校は午後から浮足立っている女子の姿が目に付いた。早く帰って準備したい組だね。可愛らしい。青春って感じがとってもグッドです。若いって素晴らしい。
授業の終わりと共に立つ姿は、定時に帰るパートのママさんを彷彿とさせる。懐かしいなぁ。
仕事できるママさんの手際と効率の良さよ。…あと残業なんてしてたまるか、の気迫ね。
一時間前から流れる、追加の仕事持ってくるなオーラ半端ないもの。圧が凄かった。
彼女たちにはそんな気迫なんて微塵もないけどね。純粋に早く帰って準備したい、というぴゅあっぴゅあな心しか感じない。
早くおかえり。そして明日はイベント楽しもうね。
ばいばい、と手を振って生徒会室にお仕事へ。今日はリーナちゃんも一緒です。
このところパラサイトの動きが急に落ち着いたらしい。
…うちのおじ様がお掃除してくれてましたからね。しばらくあちらも警戒して何も出てきません。
この間にゆっくり休んでね。言えないけど。
意外なことに、と言っては失礼かもしれないけれど、リーナちゃん事務仕事覚えるのがとっても早かった。
総隊長ってこういうことも熟しているのかな。大変だ。彼女の職場からはブラックな香りしかしてこない。早く何とかしてあげたいね。
しばらく仕事をしていたのだけれど…うーん、ほのかちゃん焦ってますね。空気が駄々洩れです。
そしてちょくちょく響くエラー音。恋する乙女のピンチです。
中条会長が体調不良を心配して声を掛けるけど、会長、明日が何の日かわかってますよね?
…もしかして先輩はあげるより餌付けされる側だったり?友チョコでキャッキャしてそうでもあるけど。
ほのかちゃんがお兄様ラブなことは誰もが知っている事実だと思うのだけど…でもそうね。ほのかちゃんの今の様子だけ見ると、心配になる気持ちもわからなくもない。
うむ、ならば手を差し伸べてあげようじゃないか。
「ほのか」
「!!な、なに?深雪」
…そんなにビビらなくてもいいのに。
私ってそんなに怖いかしら。
「今日はリーナも手伝ってくれてるし、今日一日休んでもこっちは何とかしてみせるわ。だから、行ってほのか」
こっそりと、耳打ちをする。
「い、行くって」
「兄さんに挑むのに、万全の態勢じゃなきゃ本気も出せないでしょう?――恋は戦争なんだから。ここは任せて」
混乱しているほのかちゃんに言葉のマジックを。戦場で一瞬でも気を抜いたら出し抜かれることがあるからね。
ここは任せて先に行けって、言ってみたい死亡フラグだよね。死なないけど。
肩を叩いて発破を掛ければ、ほのかちゃんは勢い良く立ち上がって。
「すみません!後日必ず埋め合わせはしますので!お先に失礼します!!」
体調不良なんてことは無かった。彼女は風のように去っていった。
お兄様という強敵、難敵を相手にするのだからそれ一点に集中しないとね。ひらひらと手を振ってお見送りします。
「み、深雪さん…?」
どういうこと?と中条先輩が困惑気味に尋ねるけれど、いくら周囲にまるわかりであっても乙女の秘密を大声で言うわけにもいきませんからね。
「彼女は現在患ってますので、今日はお休みしてもらいました」
「え…元気そうでしたけ、ど…あ、そういう///」
わかっていただけて何よりです。さあ、残った人たちで頑張ってお仕事片付けましょうね。
中条会長はこの後ちょこっとエラー音を連発していた。はわはわしている会長可愛かったですけど何を妄想してました?
五十里先輩はいつも通り。だけどさっき苦笑を浮かべてましたね。
リーナちゃんは疑問符一杯。だけど仕事はちゃんとこなしてる。すごい。
ほのかちゃんがいない穴埋めを何とか処理しきった私たちは、いつもと同じ時間に帰宅することができた。
「ん?ほのかがいないね」
「ほのかは今日諸事情により早く帰しました」
きっぱりはっきりそう言うと、お兄様は口を閉ざした。
代わりに開いたのはリーナちゃん。
「ねえ、さっき言ってた患ってるって何なの?ホノカはどこか悪いの⁇」
いろんな日本の言い回しを知っていても、その裏までは難しいよね。日本に馴染み過ぎていたからすっかり忘れてました。
お兄様はお察しなので横を向いている。
「日本では古くから、恋は病とされているのよ」
「え!?そうなの?…ん、恋⁇」
混乱しているリーナちゃんかわゆい。
「明日はバレンタインでしょう?海外では男性が贈るのが主流だと聞くけれど、日本では女性がチョコレートを渡す日という認識が強いのよ」
「知ってるわ。ジャパンカルチャーは私たちの国でも広まってるから。ってことは何?ホノカは明日タツヤにあげるチョコレートについてあんな風になっていたというの?」
「だから、病なのよ」
恋煩いはどんな薬も効かない厄介な病なのですよ。
というか、リーナちゃんはっきりとお兄様がお相手だってわかってますね。自分からほのかちゃんが言うわけもないから、観察して気づいたんだろうけど。
ほのかちゃん、態度に出過ぎてたから、注目しなくても気づくか。
「恐ろしいビョーキね」
「…兄さんが病原体じゃないんだから、そんな目で見ないであげて」
何故、怖いと言ってお兄様をジト目で…?は!も、もしやリーナちゃんもお兄様にドキッとしたことが!?もうタネが蒔かれて今にも芽吹きそうになっていたりして?!
やだ。どうしよう。胸がドキドキしちゃう。
「み、ミユキこそどうしてそんな目で私を見るのよ!」
「リーナは誰かにチョコをあげるのかしらって気になっちゃって」
確か原作ではお兄様にあげようとしたけど結局渡せないで帰っちゃったのよね。
アレもリーナちゃんの良さがよく出るシーンだったけど、今回は渡せるかな。
「ミユキまでそれを聞くの?」
あらぁ。綺麗なお顔に皺が。たくさん聞かれたのね。その気持ちはよくわかるけど。
「誰にもあげる予定は無いわよ」
「そうなの?なにも本命だけじゃなくても義理チョコあげるのも楽しいわよ。真剣にイベントを取り組む人もいるけれど、基本的にはお祭り騒ぎが好きな日本人だから、便乗して配って楽しむのもこのイベントの面白い所ではあるわね」
「…でも、ワタシが誰か個人に贈り物をするのは、色々問題があるから」
「大変なのね。まあ、これは別に強制されるイベントではないから。あ、でも男性側はそうではないわね。貰ったら来月のイベントに強制参加させられるわ」
そこでリーナちゃんと私の視線がお兄様に向く。
お兄様は、強制と聞かされて苦笑した。男性側には拒否権もあるけれど、そんなことしたら学校中から非難が行くだろうね。モテ男への当たりは強い。特に目立つお兄様には。
「そういうミユキは、誰にあげるの?」
おや。矛先がこちらに。でも本命はお兄様?な質問が来ない。と思ったら。
「タツヤ以外に」
との文言が付いた。そうですか。お兄様にあげることは彼女の中で確定なのですね。正解だけども。
「あら、それは当日のお楽しみよ」
人差し指を口元に立てて思わせぶりに。まあ、やったところで意味なんてないのだけれどね。
…どうしてリーナちゃんはいいの!?みたいな反応でお兄様を見たの?
お兄様もお兄様で目つきを鋭く私を探ろうとしないでくださいませ。何も出てきませんから。
その日の晩、キッチンに立って作業をする時間、ずっと視線を感じていたのは気のせいだと思いたい。
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