TCG世界と元現代人は価値観が噛み合わない 作:クロマ・グロ
学校での一日が終わった
どんな授業があるのかとか色々と見てみたがやはり授業関係でも黒デッキや黒のカードはあまり歓迎されていないのが確信出来た
そして学校のチャンピオンズの授業の種類を聞いた時に一つおかしいと思ったのが黒カードに関する授業だけが無いことだ
まぁ単純に黒デッキを使うまともな人が少ないのが原因で人員不足ってだけなら納得も出来るし理解も出来る、だが俺はそっちの線だけはないと思っている
何故なら単に人員不足というだけなら最低限教本なりを用意して他の先生が兼任するなりすれば良いだけの話だからだ。
そして授業そのものが無いという時点で学校としては教える気そのものが無いという話になる
つまり学校も学校でまともに見えるがそれは取り繕っているだけで実際の所は黒カードに対する偏見があるということだ
俺はこれを理解した時点でこの学校に対する信用を大きく下げた
やっぱり自分一人でどうにか生きる術を見つけて強くならないと……
学校での生活が始まってから一月が過ぎた
色々と周囲の反応を伺って何がダメなのか等を検討してみたがやっぱり黒デッキ使いというだけで色眼鏡で見られている。
まぁ別にクラスメイトや同じ学年みたいなガキ共にどう思われようとも正直な所どうでも良いというのが本音だ
だが俺としては教師陣の態度がどうにも気に食わない
俺のクラスの担任をやってる赤城先生はまだ許せる。
あの人は黒に対する偏見はそこまでないしある程度の理解もしてくれているからな
まぁとはいってもちょいちょい心配してくるのがしつこいが心配してくれるだけありがたいと思うとしよう
だが他の教師陣は明らかに俺を避けるか黒デッキを止めるように説得しようとしてくるような連中ばかりだった
黒デッキの何が悪いのやら……《生贄》も《犠牲》もちゃんとしたカードとしての効果でメリットも大きい。
それに《復讐》との噛み合わせも素晴らしいの一言に尽きる。
さらに言えばこれらの効果を発動すればするほど強力な能力を発揮できるような切り札"たち"だってある。
これらを軸にしていくことの何が悪いと言うんだ全く……
俺は自室でデッキに入れていたエースカードとも言えるカード達を取り出して眺める
レアリティ的にはこいつら全員が実体化しても可笑しくはない存在なんだが今のところその様子は無いんだよなぁ……
その癖バトルで引く度に自分を使えとばかりに訴えかけてくるようなイメージが頭に流れ込んでくる
こいつらは強力だが序盤よりも後半や終盤でこそ活躍する切り札みたいなカードだからそうポンポン使えないんだがなぁ……
『狂気の邪神 ナイアールラトホテップ』*1
『異端の戦乙女 ジャンヌ・ダルク』*2
『復讐の邪龍 カオスボーンドラゴン』*3
この三枚は俺の最後の切り札と言っても良いカードであり、どれも圧倒的過ぎる性能を誇る
『異端の戦乙女ジャンヌ・ダルク』なんかはぶっちゃけ黄カードでもおかしくなさそうな印象を受けなくもないが、カードでの彼女は返り血をかなり浴びており、とても神聖とは程遠いような雰囲気を出していた
よくよく考えて見れば俺の前世での歴史でも元々彼女は異端審問で魔女として殺された上に戦争なんかで活躍していた人なんだったな……それに戦争みたいな人の争いって言うのは基本的に兵士たちやそこに生きる人々の《犠牲》の上で成り立っているのを考えれば黒でも案外妥当なのかも知れないな
ちなみに『復讐の邪龍 カオスボーンドラゴン』のように本来デッキに入ってない二枚目をデッキに増やすみたいなデッキに入っていないカードなのだが、実はチャンピオンズでのデッキは普通のカードデッキだけじゃなく白紙のブランクカードだけで出来たデッキも必要になる
このブランクカードは少し特殊でいろんなカードショップでも売られているのだが、基本的にはなにも書かれていない白紙のカードだがチャンピオンズで本来デッキに無いカードを増やす際に起動して絵柄が現れてデッキに混ざったり通常の手札とは違うEXハンド*4に加わったり、場に出てきたりする訳の分からないメカニズムで出来た便利なカードだ
これらはバトルが終わった際にブランクカードへと戻り、自動的に回収されるようになっているために色々と謎が多いカードでもある
まぁこの手のTCGの謎技術に一々突っ込んでいてもキリがないのでやめにしよう
あれから学校には通い続けているがやはり偏見が酷いの一言に尽きる。
最近は何故か悪者扱いされて喧嘩を売られたり*5やたらと正義感の強そうなマジメバカが突っかかってきたりするので鬱陶しいことこの上ない
というかTCG世界の主人公系のキャラでこういう正義バカみたいな奴って結構多いイメージがあるが実際に出会すとなんというか……見ててキツいものがあるな
ただまぁこいつだけは何回ズタボロに負かせても懲りずに突っかかってくるから俺としてはデッキ調整にしやすくて助かるんだがな……
最近は複合属性の他に黒以外の色のカードも少しずつ揃ってきたし複合色デッキによるシナジー効果も考えている
レアリティの低い複合色カードも何枚か手に入れているのでそれらを軸に組んだ場合どのようにデッキが化けるのか少し楽しみではある
俺としては注目しているのが黒の破壊と赤のダメージや攻撃力の複合による攻撃的なデッキ、それと黒の《犠牲》と緑の《回復》によるシナジーも悪くないと思っている
それ以外には黄の《復活》系による墓地からの復活と黒の《生贄》なんかも相性が良さそうだ
何でこんなに便利なカード達に見向きもしないのか理解に苦しむよまったく……
そんなこんなで日々を過ごしていると最近まで俺と目を合わせる度に顔を背けて怯えていたようにも見えた高坂が俺の所にやってきた
「なにか用?」
「っ……あの……不死宮君はさ……その……なんで黒デッキにそんなにこだわるの?」
「俺の適性がこれに極端に偏ってるのもあるが純粋に俺が使ってて一番扱いやすいから。
それと別に拘ってる訳でもない、複合色も考えてるし」
「じゃ……じゃあなんで他の色のみのデッキは使おうとしないの?」
「単純にまともなデッキを作れるだけの数引けない。
それに自分で引いたカードを使わずに既製品のデッキなんざ使っててなにも面白くもない……あと使っててあんま合わない」
「そっか……その……急にごめんね?」
「どうでもいい」
結局こいつは何が聞きたかったんだろう?
というか今まであまり気にして無かったが……なんというかこの世界の子供連中って前世での子供連中よりも明らかに精神的な成長がやたらと早いような気がするのは気のせいだろうか?
TCG世界系のアニメとかでも小学生が主人公の物はちらほら見かけるがやたらと大人びてるような奴もいれば俺に突っかかってくる正義バカみたいなやつもいるしこういうものなのだろうか?
それにしても前世から家族以外と話すのはそこまで得意では無かったがこの世界に転生してから周囲の環境が環境だからそれが更に顕著になってきている気がする……そのうちまともに話すのも難しくなりそうだな……
俺はそんな事を考えていると溜め息が出てきた
小学生になってから早いものでもう半年が過ぎた
慣れというのは恐ろしいものでここ最近では鬱陶しい視線もどうでもよくなってきている。
これらの偏見に関してどうにかするのはどう考えても無理なのが分かっている以上無駄に構うだけ疲れるだけだ……
あの正義バカは今日も今日とていつも通り突っかかってくるが100勝した辺りから正直相手するのが飽きてきた……やってることが毎度毎度ワンパターンだし流石にな……
とはいえ現状まともに戦ってくれるのは赤城先生と正義バカの二人くらいで赤デッキばかりだ……突っかかってくるアホに関しては結構いろんな色のデッキと戦えたから個人的にはありがたかったんだが半年もしてくるといい加減突っかかってくるやつも居なくなっていた
まぁ誰一人として勝ててない上に赤城先生相手でも苦戦はしているが毎度勝っているしな
現状この学校で一番強いのは間違いなく俺なのだろう……突っかかってきてる奴には平然と6年生の調子にのった奴もいたが普通にカードパワーでごり押してるだけで特殊効果対策0の脳筋だったしな
せめて中学に上がる頃には最低限戦術を学んでいる奴が出てくれば良いんだがな……その方が練習試合としては丁度良い
あとは何やら俺に関する噂が学校以外にも近所とかでもちょくちょく出ているらしく、若干不安がある
俺は何言われようともどうでも良いんだが俺が原因で母さんや父さんにまで悪影響が出るのは御免だからな……折角恵まれた両親の元で生まれたんだしあの二人にはきっちりと親孝行しておきたいしな
だが俺の感じていた不安は結局現実となってしまう、まぁ両親に被害はないから別に良いんだが……
「ヒヒ……キーッヒッヒッヒ!黒デッキ使い!
お前も俺達の仲間にならねぇか?」
…………
「今の世の中不自由にもほどがあんだろぉ?
なら俺達と手を組もうや!もっと自由に生きようぜ!
キーッヒッヒッヒ!」
TCG世界で定番と言えば定番なんだけどさ…………実際に現実でこういう大人と出会すとなんというかその……な?
「はぁぁぁぁぁ……。」
見ててこっちが恥ずかしくなる……
『復讐の邪龍 カオスボーンドラゴン』
カードNo.37564
「ねぇ、なんでぼくのかぞくはニンゲンにころされたの?
なんでドラゴンだからってころされてからだをバラバラにされなきゃいけないの?
イタイ……イタイよ……パパもママもみんなかえしてよ……ぼくのカラダヲカエシテヨ!!!!」
骨だけで出来た龍の瞳や口からは紫色の炎が吹き荒れる
復讐に燃えるようにも見えるがその虚ろな瞳からは悲しみの感情が伝わってくるようだ