TCG世界と元現代人は価値観が噛み合わない 作:クロマ・グロ
おっさんを叩き潰した後、警察に連れられて署まで同行して取り調べを受けた
正直前世ですらこんな経験無かったから割と新鮮な感じがする
どうやらあのおっさんはこの世界でもそれなりの実力者ではあったらしく、警察も追ってはいたがバトルに負けて逃げられる事がしばしばあったらしい
正直あのデッキは何かされる前に兎に角ユニットの排除を優先さえしていれば比較的相手はしやすいと思ったんだがなぁ……
その事について警察の人に話してみたのだが……ここでもこの世界の歪な部分が悪循環を生んでいた
曰く一般的な黒デッキ使いの人はほぼ居ないらしく、殆どの人がパックで黒のカードを引いたとしてもそのまま手放してしまうそうだ
更に言えば外聞が悪いせいか自分から黒の適正があると答えるような人もほぼおらず、黒のデッキを使う殆どの人が裏の住人となっているらしい
黒のカードも売却された後は外聞が悪いため店で売りに出すような所も少なく大半が死蔵しており、警察が情報を得るために訪ねてもそんなものはないとはぐらかされてしまうそうだ
それならバトルした人からどういうカードがあったかを聞けば済む話だとは思うのだがそっちもそう上手くは行かないらしい
裏の住人の間で行われている違法改造されたバトルマシンに妙な催眠装置が出回り始めたらしい
何でも気絶した相手に催眠をかけてバトルをしている間の記憶を消してしまう物らしく、何とか逮捕した犯罪者の使っていたカードの効果くらいしかまだ判明していないのだとか
ついでに言えば警察も警察で一枚岩ではないらしく、黒デッキへの嫌悪等で逮捕した黒使いに対する取り調べもまともに進むことが少ないらしい
ハッキリ言ってしまえば職務怠慢としか言いようがないと思うのだが警察側も偏見を解くのに苦労しているそうだ
警察に俺が黒デッキ使いである事を伝えて情報提供をしようかと提案したんだがそっちに関しては断られた
曰く……
「この件に関しては我々大人の失態であり子供にまで苦労をかけてしまっては我々の信用問題になりかねない……。
私個人としては是非ともと言いたいんだが君はまだ子供だ、そこまで深く関わる必要はないんだ。
それに人様のデッキを晒してしまうのはマナー違反だからね」
と言って断られた
それ以前の問題な気もするが確かに警察の人の言うことにも一理ある
だが黒デッキの偏見を消すんなら警察側も黒に対してちゃんと対応が出来ないと話にならないと思うんだがなぁ……
そんなこんなで話していると警察の人が変な表情をして俺の頭の上を見ていたのでツッコミを入れる
するとその人は苦笑いしながら口を開いた
「その……突っ込もうかどうか悩んでいたんだが……その頭のはもしかして?」
今、俺の頭の上にはバラバラになった骨だけのドラゴンが乗っかっていた
ぶっちゃけ全く動かないので一見するとそういうアクセサリーか何かかと勘違いしそうになるんだが頭に乗せてる俺としては確かに動いてないが何故か頭から落ちない上に寝息だけが聞こえてくる……
そう……あの時召喚した『復讐の邪龍 カオスボーンドラゴン』が現実世界に顕現した存在……所謂カード精霊だった
まぁバトルしていた頃とは大違いで姿も小さく縮んでいる上に凄い子犬っぽくなっていたがやたらと俺以外の他人に対してだけ威嚇していたのが印象的だった(まぁ疲れたのかすぐに頭の上でバラバラになって寝てるけど)
「カード精霊をあの"学園"以外で見る機会があるとは思わなかったなぁ……大事にしてあげなよ?」
"学園"……それは国立チャンピオンズ学園と呼ばれる国が運営している学園であり、中等部と高等部の二つが存在している
この学院はいくつかに別れ、第一学園、第二学園というような形で各地に点在している
だが国立でしかもこの世界の根幹ともいえるチャンピオンズに関する学園……勉強面はそこまで重視されておらず、バトルでの成績最優先の為偏差値はそこまでだが、それ以上に倍率が頭おかしいことになっていた
ほぼ全ての学園で平均倍率が50を超えており、首都圏の一部に至っては100倍以上な年すら普通にあるらしい
正直受験するべきかどうか迷うが一般的な奴らの実力を見る限りそこまで苦戦はしなさそうなんだよなぁ……
そんなことを思っているとあることを思い付いたので警察の人に提案してみる
「警察の調査に協力するのがダメなら定期的に個人的なバトルしてくれません?
それなら俺は他の色に対する対人経験を積めるし警察は黒に対する知識を得れる。
デッキに関してはちょくちょく変えるのでそこまで問題にならないんじゃないですか?」
「そうか……警察としての立場ではなく一個人としてバトルをする分には外聞が悪くはならないか……。
こんな事を頼むのは情けないがお願いしても良いだろうか?」
「はい、大丈夫ですよ。
バトル装置のチャット相手に登録しておきますか?」
「是非お願いするよ、だけど良いのかい?ほぼ報酬なんて出せないが……」
報酬を子供相手に出してしまったらそれこそ信用問題になるしな
「問題ないですよ。
出来れば色んなデッキと戦いたいので知り合いなんかが居れば誘ってくれません?」
「あぁ、とても助かるよ」
こうして俺の取り調べも終わり、家までこの警察の人……
この世界にいるとちょくちょく思うんだが名前がそのまんまの奴多くね……?
俺も人の事言えないけど
犬士さんに家まで送り届けてもらい、帰宅すると両親から死ぬ程心配されて揉みくちゃにされた
まぁ当然の反応だわな
結局相手を返り討ちにしてそのまま軽く取り調べを受けて帰してもらったと説明をしたらようやくホッとしたのか落ち着いてくれた
まぁその後に俺の頭に乗ってるカード精霊に気が付いてまた騒ぐ羽目になりはしたがこっちはむしろ喜んでくれていた
ほんと比較的偏見のない両親の元に生まれて良かったと心から思えるな……
うちの両親にカード精霊の事でなんでそんなに嬉しそうに騒いでいたのか聞いてみる。
両親曰く"ただでさえ友達の出来なかった俺にようやく仲良くしてくれそうな子が出来たから"らしい
基本的にカード精霊は自分の
俺はこのカードのフレーバーテキストを見て若干どうなんだろうかと悩んだがまぁ懐いている?ようなのでスルーすることにした
しばらくするとカオスボーンドラゴンも起きて来たのか動き出し始めた
まるで逆再生するかのような形で骨の関節同士が繋がってゆるキャラっぽい姿に戻り、瞳や口から紫色の炎が出てきた
うちの両親を見た時の反応がどうなるか若干不安だったが匂いを嗅ぐような仕草をすると突然笑顔……笑顔?になり両親の元へと駆け寄って尻尾を振っている
…………やっぱり犬にしか思えない
翌朝……朝起きてみると顔面にカオスボーンドラゴンが乗っかった状態で眠っており、起き上がるとそのまま骨が顔面に張り付いてて前がまともに見えなかった……
なんとかカオスボーンドラゴンを起こしてから日課であるデッキの調整を行う
デッキ調整中に目についたのがやはり……『狂気の邪神 ナイアーラトホテップ』と『異端の戦乙女 ジャンヌ・ダルク』の二枚だった
ジャンヌはともかくとしてナイアーラトホテップは実体化したら流石に不味いんじゃ無いか?
そんなことを思いながらこのカードを見ているとやはり使えと言わんばかりにカードが主張してくる気がする。
ろくでもないことにならないと良いんだが……
今日は休日なのもあるので俺が懇意にしているカードショップへと向かう
「おう、らっしゃいクロ坊。
今日もまたなんか探しに来たのか?」
店に入ると厳つい顔の店長……『
この人も例に漏れず名前がド直球で読み方変えれば顔面凶器になってしまう可愛そうな人だがその顔の恐さが原因であんまり店に子供が来てくれないらしい
そして店長本人は子供好きなのでそこそこ悲しいらしい
俺はこの人に対する偏見とかは特に無いため近所のおっちゃんみたいな感覚で接しており、たまにパックを安売りしてくれたり死蔵している黒カードを見せてくれて俺にくれたりもしてくれるのでとても助かっている
「それも良いけど今回はこの間の臨時収入がまだ残ってるからパックを買いに来た。」
「この間ってーとあれか?
チャンピオンズの子供大会に参加して荒らし回ったってやつ?」
そう、実はあのおっさんが絡んでくる数日前にちょうど賞金も出ている小学生限定のチャンピオンズ大会がやっていたので軽く参加して優勝して荒らしてきたのだ
対戦相手やら実況やらは色々と言ってきたが全員叩きのめしてあっさりと黙らせた
すると会場の雰囲気は盛り下がる人も居れば逆に認めてくれている人もいてアップダウンの激しいギャラリーになっていた
やっぱり黒デッキを認めさせるにはちゃんとした大会で成績を残した方が手っ取り早そうだな
そんな事を思い出していると店長が少し悩むような表情をして店の裏に移動してすぐに戻ってくる
「まだ発売しないように言われてるんだがな、貴重な常連のクロ坊にだけ特別だ。
こいつを開けてみな」
このパックは……確かに予告だけされてた新弾の『カオスストリーム』だな
「良いのか?」
「ほんとはあんまり良くないが売った訳じゃないからな。
それに新弾のパックにどんなのが浮かび上がるのか俺も興味があるからな」
相変わらずこの人は良い人だな……。
このまともじゃない世界で信用出来る数少ない大人の一人だ
「それじゃ…………って全部黒混合の複合カード?」
いざパックを開けて見ると中身は黒属性を含めた複合カードが5枚と貴重なカードだらけのように思えたがその全てが持っていた新しいカードコンセプトの効果を見てこの新弾の目的がはっきりした
《混沌》
こいつは面白いデッキが作れそうだな