魅了の魔女   作:わらにんぎょう

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 結局リシテアさんも魔眼についてはわからないらしかった。宿へ帰ってきた彼女に聞いてみても「効果はわからない」と言われてしまった。ただ、少し言い淀んでいたのは印象に残っている。

 

「うーん……そうだね。ひとつ言えることは…………常時発動してるタイプの魔眼ってことかな」

 

 魔眼から常に微弱な魔力が流れ出ているのは確かなようで、リシテアさんの見立てでは常時発動型の魔眼なのだそう。

 

「魔眼には2パターンあってね。臨時発動型と、常時発動型があるの。例えば、かの4代目勇者が持っていた歪曲の魔眼は臨時発動型だね。でも、同じ歪曲の魔眼でも、『北の魔女』が持っていたのは常時発動型。なんでこういう2種でわかれるのかは実はまだ分かってないんだけど」

 

 臨時発動型は、自分の意思でオンとオフを切り替えるもの、常時発動型は勝手にオンになり続けるものらしい。

 

「魔力制御の訓練を積めば魔眼の魔力を抑えられるようになることもあるの。常時発動型でも制御は不可能ではないわ。アモールちゃんも、訓練を頑張れば何かわかるかもね」

 

 取り敢えず今は訓練をして、魔眼を閉じられるようになれということらしい。今のところそれができる兆しは全く見えないが……頑張るしかないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「それで……経過はどう……?」

 

 対面に座るアーテルが、真剣な面持ちで私に訊ねる。

 

「あまり、芳しくないわね」

 

 そう返せば、大きく息を吐いたアーテルが脱力した。私も、あまり思わしくない状況につい彼女から目を逸らしてしまう。

 

「…………でも、()()決心も……まだ、できないんでしょう? ()()は、ずいぶん甘ちゃんね……」

 

「私はただの予備よ」

 

「あなたしか、基準に達していないもの……」

 

 その言葉が胸に突き刺さる。私も、早く心を決めないといけない時が来ている。でも、一度逃げることを選んでしまった私はいまだに決心ができずにいる。

 

 俯く私の頭部に視線を感じる。アーテルがどんな目で私を見ているのかが怖い。

 

「じゃあ……私は、もう帰るわね」

 

 俯く私を置いて、アーテルが部屋を出ていく。私はバクバクとうるさい心臓を押さながら、無言でそれを見送った。

 

 

 これからどうしようか。このままアモールちゃんを軟禁し続けても、状況は決して良くならないだろう。

 

 外は、突然潰れた最上位パーティの話題で騒ぎになっている。

 

 ラーミナさんは、夫殺しの罪で処刑される運びとなってしまった。そんなところ、アモールちゃんに見せるわけにはいかない。でも、いつかは知ってしまうだろう。

 

 本当に、これからどうしていくのが正解なのだろうか……。

 

 このまま軟禁するのは、アモールちゃんの心にもあまりよろしくない。でも外に出せば、何もかもが良くない方向に行ってしまう。まだ魔眼の制御もできていない。

 

 様々な責任に押しつぶされてしまいそうだ。全て見ない振りをして、どこかへと行ってしまいたい。

 

 ……そうだ。一度、遠くへ気晴らしに行ってみるのも良いかもしれない。人がいないような場所へ。

 

 アモールちゃんも、こんな狭い部屋にずっと閉じ込めておくのは可哀想だし。一度連れ出すべきだろう。人に出会わないような場所ならきっと大丈夫だ。

 

 まずは色々と準備をしないと……

 

 

 

 

 

 

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「ねぇアモールちゃん、今度一緒に出かけない?」

 

 

 そうリシテアさんから提案されたのは突然だった。いつものように魔力制御の訓練をしていたときのことである。

 

 なんでも、ずっと部屋に篭っているので一度遠出をしてみないかということだった。この近辺はまだ事件の影響で色々と荒れているため、遠方なら良いということらしい。

 

 

「ちょうど今欲しい素材があってね。よければ、アモールちゃんも来て欲しいんだけど……」

 

 

 本音を言えば、あまり外出したくない。家の中にずっといるのも何だか抵抗があるが、かと言って外に出たいかと言われると否だった。

 

 外に出ればまた日常が崩れるのではないかという想像が脳裏をチラつくのだ。

 

 だが、目の前には期待を込めた目で僕を見つめるリシテアさん。こんな目をされて断れるわけもない。

 

「行きたいです」

 

 何とかその言葉を絞り出す。それを聞いたリシテアさんが破顔した。この顔を見れただけでも行く選択をして良かったと思う。

 

「よかった。3日後が新月だから、明後日の早朝に出発するわ。往復で3日くらいは掛かるから、どうしても用意して欲しいものとかあったら言ってね。必要なものは私のほうで用意しておくけど」

 

「多分、大丈夫です」

 

 思っていたよりも遠出になるようだ。いや、前世の基準で考えていたが、この世界の冒険者的にはそう長い旅でもないのだろうか。

 

 なんだかんだ遠出するのは初めてだ。野宿をするのだろうか、それともどこか寝泊まりできる場所を利用するのだろうか。冒険者としては野宿に慣れておきたい気持ちもある。

 

「ちょっと保存食が不足してるから、ギルドへ買いに行ってくるわ。さっき教えた魔術の復習でもして待ってて」

 

 そう言って部屋を出ていくリシテアさんを見送る。

 

 もうこういった時間にも慣れてきた。こんな引きこもり生活に慣れるのも、あまり健康的ではないが。

 

 それから、言われた通り今日教わった分の魔術を復習するのだった。




次とその次の話で物語が動きます
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