寛SIDE
全国大会も終盤に近づき、今日は団体の部の決勝戦が行われている
最初のスケジュールは個人、団体の交互だったが、最終日に団体戦をすると時間の関係上、表彰式等を一日遅らせなくてはいけなくなるらしく個人の決勝が最後に回された
俺たちは今は女子の部の決勝を見ている
対戦カードは
白糸台と臨海女子、千里山、姫松だ
「東京と大阪しか残ってないな」
「他の県が弱いわけじゃないからこの4校が強すぎるんじゃねえのか?」
「つーか臨海女子は留学生ばっかやからな。東京っていうか世界代表みたいなもんやろ」
「千里山びいきの康平としてはちょっとむかついとんちゃうんか?」
「…それにしても白糸台は頭一つ飛び抜け取るな。」
弄られそうになったらすぐに逃げるのが康平の特徴だ
「確かにな。大将戦に入る前にもうほとんど決まっていたな」
大将は照だがそれまでに2位と5万点以上の差をつけていたからな
結果は予想通りとなり優勝は白糸台で千里山は4位だった
「明日は俺たちの番か。隆司も決勝の卓に入るっていうのに…なんでお前は役満喰らって5位に落ちてんだよ」
役満大好きな奴が役満くらってりゃ世話ねえぞ
「俺もびっくりだよ。まさか役満ばっか狙う俺みたいな奴がもう一人いたなんてな」
「まあええやんか。最初の予定通りにやったら問題ないって。俺らが和了って点数稼ぐから、修平は絶対
4位になれよ?」
4位と5位の点差はかなり小さい
6位以降は絶望的だけどな
「寛が+95なんてスコアをまたたたき出したら俺らもやばないか?」
「お前らはそこまで弱くないだろ。そもそも遠藤は完全なデジタル麻雀で確率ばっかで打つから俺に振り込みまくったんだよ。お前らは勘で打っとけば大丈夫だろ」
「そうやな。まあ何とかなるわ」
「ってことで旅行の晩飯は修平のおごりは確定な」
「そんな殺生な!!」
「約束やからな〜」
「ゴチになるわ」
決勝戦の前の晩とは思えないテンションだな
明日は楽しい一日になりそうだ
照SIDE
昨日の決勝戦が終わった後にインタビューに来た西本っていう名前の記者は完全に私と寛のことに気付いてると思う
麻雀部記者に女性は少ないからそういうところにはほかの記者は目が行かないのかもしれないわね
とりあえず、プライベートなことだからって曖昧な返事で終わらせたけど…
香苗さんの言うとおりいっその事ばらしてしまった方が楽でいいのかもしれないと思って昨日寛に相談したら
「別に俺はばれても全然かまわないぞ?つーか照が困るから俺はばれない方がいいと思ってただけだしな」って言われたから
今度そういう取材があった時に言っておいてもらうことにした
『女子の部は既に宮永選手が連覇を達成していますが男子の部にも連覇のかかっている藤原選手がいます。非常に注目度の高い試合です』
私は午前に行われた決勝戦で優勝して連覇を決めた
寛の方もほとんど決まったみたいなものだと思うけどね
問題は朝井君が4位に入るか入らないかだけど
寛と上島君の二人がいる以上どう考えても+では終われないと思う
だから朝井君は自分の卓で+10以上で勝てば4位に食い込める
大会規定が変わって文句言ってたみたいだけど一番助けられたのは朝井君かもしれないわね
『場決めは既に終わり、
東家…橋本
南家…上島
西家…藤原
北家…川村
となっています。やはり初出場でこの卓に入る橋本君は緊張の色が見えますが、どうですか?』
アナウンサーが解説プロに話を振った
今日の解説プロは三尋木プロ
『私ならこの卓には入りたくないねぇ〜。橋本って子の予選の牌譜見たけど、特別ななんか持ってるって訳でもなさそうだしね〜。分からんけど』
『何かを持っているとは?』
『ここ一番ってところで和了る強運とか勝負強さとかかね〜』
『他の3人は持っているという事でしょうか?』
『少なくとも藤原って子は持ってるんじゃないかな?しらんけど』
さっきからこの人断定を避けてばっかね
なんか隣のアナウンサーもキレかけてるし
でも、言ってることは全然間違えていない
橋本君がどんな選手か分からないけれど、何かを持っているようには見えない
多分、本人がこの場に居ることに一番戸惑ってるんじゃないかしら
緊張でガチガチだし
『対局開始の5分前ですが、藤原選手は目を瞑り、上島選手は卓に突っ伏し、川村選手はうつむいていますが、これは寝ているのでしょうか?』
…完全に寝てるわね
昨日の夜何してたのかしら?
決勝戦で寝るってどんな神経してるのよ
まあ4人中3人が良く見知った顔の決勝戦って普通じゃ有り得ないのよね
『寝てるんじゃないの?知らんけど』
『決勝戦で、それも連覇のかかった試合で寝るなんてふざけているとしか思えませんが…』
『この子たちにとって決勝戦も一回戦も同じ一試合ってことなんじゃないの?』
それ以降はここまでの寛たちの牌譜の話などで5分が過ぎて行った
『それでは、決勝戦開始です』
試合開始のブザーで3人が動き出した
その眼には闘志が宿っているように見えた
『東一局親は橋本選手です』
9巡目で橋本君が聴牌
そのまま立直をかけた
『先制立直は親の橋本選手、臆せず仕掛ける姿勢ですね』
でも、その立直をかけた牌は川村君の…
『ロン。断幺ドラ一』
最後の大会だからなのか川村君は絶好調ね
『第一和了は川村選手。得意の喰い断で橋本選手の勢いを削ります』
東三局
『藤原選手の親番が回ってきました。先ほど東二局で海底の満貫で和了った勢いのまま連続和了なるか?』
ドラは五索
寛の配牌は…そこそこね
12巡目で寛と上島君が両方聴牌
互いに黙聴で行くつもりなのかしら?
『ツモ。ツモ断幺ドラ2。4000オール』
『二連続満貫ツモ!!前局からの勢いが続いています。藤原選手一歩リード』
オーラス
『ここまでの成績は一位が藤原選手でその点数は二位の上島選手と15000です。しかしまだまだ勝負は分からない。このまま一気に藤原選手が二連覇を決めるのか、それとも他の選手が待ったをかけるのか。』
ほとんど決まってると思うんだけど…
この局だけの勝敗で決まるならともかく新ルールで総合得点式になってるからもう寛の優勝は揺るがないと思う
後は他の3人が4位以内に入るかどうかが問題になってくるけど…
見た感じで橋本君の−は確定だし
もうすぐ試合も終わるかしら?
さっき速報で出たスコアでは朝井君は暫定4位に入っていたけど
『槓!!嶺上開花対々三暗刻ドラ2』
『藤原選手容赦なしで最後の最後まで手を抜かず連覇を決めました!!』
最後の最後に嶺上開花って…
どれだけ勝負強いのよ
「嶺上開花…か、咲、元気にしてるのかしら?長いことあってないけど。咲の為に憎まれ役になるって決めたのに…妹に会えないのって結構つらいな」
嶺上開花…私の大切な妹が得意な役だった。あの子は麻雀が嫌いって言っていたけど、いつか私の前に現れると思う
その時まで私は負けるわけにはいかない
もちろん咲に負けるつもりもないけどね
でも、少しでも強くなっていてほしいな
精神的な意味で
寛SIDE
試合が終わってそのまま表彰式に移るらしく俺たちは抽選会場の所に来ていた
会場に居るのは表彰される選手と、チーム、あとは記者くらいだ
この場所に来るのも3回目か
いい加減慣れたな
タイトルとかの発表も内密に選手には連絡が届いている
今回はいつも通りMVPと最高得点のタイトルがもらえるらしい
最高得点っていうのは一回の試合でたたき出したスコアの事だ
今回は+95の俺の点数が最高らしい
去年は+69だったけどな
女子の団体は
一位 白糸台
二位 千里山
三位 臨海女子
四位 姫松
となったみたいだ
個人は
一位 照
二位 憩
三位 辻垣内って名前の臨海女子の選手
四位 愛宕って名前の姫松の選手
個人では千里山からは誰も残っていなかったらしい
団体戦に特化した個々の実力じゃなくて全体の総合力の高いチームみたいだな
チーム内での雰囲気も結構楽しそうに見えたし
そういう意味では白糸台より強いかもな
白糸台は圧倒的に強いけど、今の主将が抜けたら誰がまとめるのか今の所全くわからない
実力だけで決めるとするなら絶対に照だろうな
指輪の件については照に許可をもらって記者には俺が言っておいた
まあ、高校生同士の恋愛だしそこまで騒ぎにならないだろう、と梶本さんは言ってたな
記事としては載せるけど、コアな読者しか分からない小さなコラムにすると言っていた
「今年の表彰式長くないか?」
「確かにな。はよ終わらせて帰りたいのに」
まあ重要なのは試合でそのあとの表彰はおまけみたいなもんだからな
「女子の部に時間かけてるから男子はすぐ終わるんじゃねえのか?」
メディア的にも全国的にもめったなことがないと男子の試合はそこまで注目されない
俺みたいに連覇のかかったやつがいるとかな
男子の団体は名古屋の高校が優勝していたな
強豪でも新参校でもない中堅の高校だから対して注目もされていないけど
『以上を持ちまして、表彰式を終了します』
最後の選手…つまり男子個人の部優勝者の俺だが、俺の表彰が終わって今年の全国大会は終了した
本当なら今すぐホテルに戻りたいんだが中々それを許してくれそうにはない
「藤原選手、優勝おめでとうございます」
大量の記者が押しかけてきた
他の奴の所にもいってるが俺の所が3割増しで多い
「ありがとうございます」
「連覇という事ですが、3連覇は狙っているんですか?」
「はい。狙っています」
これは俺が高校に入ったときに立てた目標だ
「WEEKLY麻雀TODAYの者ですが、個人戦入賞者の集合写真を撮りたいので会館のロビーに集まってもらっていいでしょうか?」
そのまま解散することもできる場所だな
立ち位置は
二列の前列左から康平、俺、照、憩
後列に修平、隆司、愛宕、辻垣内
ってなっている
憩は照に試合後完全におびえていたみたいだったから俺が紹介してやった
荒川の従妹ってこともあってすぐに打ち解けれたみたいだ
憩も元々の元気な感じに戻って写真を撮りにくる途中も照と話をしていた
「では、撮ります。…ありがとうございました」
「じゃあ帰るとするか「寛さ〜ん」ん?憩か」
ホテルに戻ろうと歩いていた俺たちの所に憩が歩いてきた
「寛さんってこの後の予定どないなってるん?」
「一旦ホテルに戻って頃合いを見て再集合して晩飯食べに行くけど?」
毎回の恒例みたいになっている打ち上げだな
「照さんも行くん?」
憩の質問に小さな声で返事した
周りに記者は居ないがどこで聞かれてるか分からないからな
まあ別に聞かれてても問題は無いけどな
「来るぞ。憩はいつ大阪に帰るんだ?」
「明日。真治兄に送ってもらうねん」
真治ってもしかして憩に激甘なんじゃねえのか?
「じゃあ一緒に食べに行くか?面子がここに居る奴でよかったら」
「えっ!!ええの?ウチ個人でしかも大阪やから知り合い少ないねん。しかも他の子はもう帰ってもてるからごはん一緒に食べる子も居らんかったねん。おともさせてもらいます〜」
いつものメンバーに憩が加わって打ち上げに向かった
憩は普段は見せない照の意外な面に驚いていたが楽しんでいた
会話の中心は旅行先だったが、とりあえず参加するのは4人で関西方面に行くことになった
最初に大阪に集合して、来週退院する予定の康平の幼馴染、園城寺怜を見に行くのが目的の一つだ
その後は適当に遊ぶ予定だ
暇だったら大阪に居る間は憩も参加するかもしれないけどな
その後俺たちはホテルに帰って憩は電車で真治の家に向かった
明日そのまま帰るらしい
二度目の夏の大会もこうして終わっていった
感想、誤字脱字の報告をお待ちしていますm(__)m