咲-Saki- 頂を目指す者   作:しゅてるんるん

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第七局

寛SIDE

季節は冬の終わりの2月に入っていた

町の空気はバレンタイン一色になっていた

そういう俺も照に呼ばれて照の家に向かっている

照とデートしたら夜は家に遊びに行くのがパターン化してきた

照のお母さんとも仲良くなって三人でコーヒーを飲んでたりすることもよくある

照は去年の秋にあった秋季大会の団体で優勝している

秋季は団体の部しかなかったから俺は当然参加していないっていうか出来なかった

2学期になっても一向に部員は集まらず全国大会出場っていう実績が無かったら廃部になってたって校長に言われた

マジで危なかったな

 

照の家に着いた

俺はチャイムを押してドアの前に立っていた

「は~い。あら寛君ね。上がってあがって」

扉を開けたのは華さんでそのまま照の部屋に通された

「お邪魔しま~す。」

「早かったわね。」

「電車一本早く出たからな。早く着いた。」

たまたま一本早い電車に間に合ったからな

「そう。じゃあこれがチョコレートよ」

照が小さな包みに入ったチョコレートを渡してきた

「ありがとな。これ手作りか?」

「時間がなかったから今年は買ったわ。来年は作るかもしれないけど」

「まあなんにせよ貰えるだけいいよ。もらえない奴がたくさんいるんだからな。」

今頃もらえない奴らは町の片隅で涙を浮かべているだろうな…

麻雀関係の友人しか俺はここら辺に居ないからそういう話で盛り上がることもまずないけどな

そういえば真治の奴の受験もセンターが終わって今度は私立大学の受験勉強をしないといけないとか言ってたな

三年は大変だな

大学に受かったら麻雀に誘うか

「なあ照、前から気になってたんだけどあの写真って家族写真か?」

照の机の上にある写真

真ん中に照と小さな女の子でその左右に華さんともう一人の男性―たぶんお父さんだろうな―が立っている

「…寛には言ったことなかったわね。私には妹が居るの。お父さんとお母さんが不仲で別居するときに私はお母さんについてきて東京に来たけど、妹は長野に居るわ。」

お父さんが居ないっていうのはやっぱりそういう事だったのか

「お前と妹はどうなんだ?」

写真を見るとすごく仲のよさそうな二人に見えるけどな

「…昔は仲良しだったんだけどね。咲っていうんだけどすごく私に懐いてた。泣き虫でドジでずっとびくびくしててなんでも私の真似をしてたわ。私は両親が別居するのを少し前から知っていたから咲には一人でなんでも決めれる子になってほしかった。だから東京に来たのを機に冷たくする事にしたの。この前咲が遊びに来た時もほとんど話をしてないわ。…もしかしたら、いえ、もしかしなくても嫌われたでしょうね」

「そうか?俺には兄弟とか居ないからそういうのは良くわからねえけど、もしかしたらその時冷たくしたことがどこかで何かのきっかけとうまく絡み合って変わるきっかけになるかもしれないぞ?」

人が変わるのにそんな大それたことは必要ない

新たな一歩を踏み出す勇気ときっかけがあれば人は簡単に変われると思う

俺の体験談でもなんでもないから説得力は無いけどな

「ありがと。少し気が楽になったわ」

「どういたしまして。まあお前の前に強くなった姿で現れたら話くらいしてやれよ?」

「分かってるわよ。そういえば春季大会には参加するの?」

 

夏のシードを決める重要な春季大会

ここでベスト4に入れば予選大会を免除されていきなり全国大会の予選から始めることができる

「当然出るぞ。神奈川県って言ったら俺だろ?」

春季大会は夏ほど盛り上がらないけれど個人戦もあるから俺もなんとか参加できる

まあ決勝大会じゃ見知った顔に結構会いそうだけどな

修平は役満でしか上がる気がないからもしかしたら出てこないかもしれないが

個人でしか出てこない奴も結構いたりするしな

まあ俺みたいな特殊なパターンじゃなくてチームの奴と仲が悪くて団体には出たくないとかいう奴らがほとんどだ

全国の決勝に出てくる奴って自分で言うのもなんだが変わり者が多い気がする

「神奈川と言ったら寛って理由が全くわからないけれど順当にいけば全国には出てくるでしょうね」

「そういう白糸台も楽勝だろ?」

「油断はしないわ。万が一ってことも十分にあり得るのが麻雀なのよ」

麻雀は実力よりも運で結果が左右されることも良くあるからな

「そうだな。麻雀に絶対はあり得ないからな。それでも俺は負けない」

「そういう所、私は好きよ」

「ありがと」

それからしばらくは照と二人で話をして

晩飯をごちそうになって照の家を出た

 

それにしても照の家もいろいろと大変なんだな。

「お~い寛~」

駅に向かって歩いていると後ろからよく知った声が聞こえてきた

「…修平か、なんでここにいるんだ?」

こいつの家は長野の筈なんだけどな

俺が照に会いに東京に来るたびに帰りにこいつにあってる気がする

「今日はバレンタインのキャンペーンで秋葉原で限定のアイテムがあったから長野から来てるんだよ。終電で帰るけどな」

「何度も言わせてもらうがお前部活は?」

「サボってきた。だってよ~役満で和了るなとか言うし、あいつ等とは絶対に合わねえ」

「言いたいことは分かるけどよ、そのうち部から追い出されるぞ?」

「追い出されたらもっと楽しそうな学校に転校するから何の問題もねえよ」

まあ、個人で全国を狙える選手で団体に出ないならどこの学校でも問題ないもんな

必要なのは麻雀部だけだし

こいつの場合麻雀にそこまで賭けてるわけでもないしな

趣味の延長でやってる所が強いからな

「そうか。ならいいんだけどな。お前は春季大会全国狙ってるのか?」

「ああ、実績出しとかないと冗談抜きで追い出されそうだからな」

冗談抜きで追い出されるだろうな

こいつの通ってる西峰は長野県の男子ではおそらく最強だ

ここ6年は連続で全国大会に顔を出しているみたいだしな

女子は風越女子とかいう場所だった気がするな

「本気で全国狙うなら普通に打ってみたらどうだ?」

こいつの実力と一回の半荘で役満を和了る強運が組み合わさったら個人の全国は固いはずだ

長野からは個人は3人分枠があったしな

1位じゃなくても全国には出れると思う

「そうだな。運任せで部を追い出されたらシャレにならんしな」

まあ全国に出たとしても練習に顔を出さないでサボり続けたらそのうち追い出されると思うけどな

「じゃあ俺は家に帰るから。また会おうぜ」

「そういえばお前はなんでいっつも東京に居るんだ?」

「ん?知り合いとあってるだけだ。俺、友達は麻雀関係だけだからな。学校には友達居ねえんだよ」

「ぼっちか」

「んで今日はその知り合いと会っていたってわけだ」

照ってことは伏せておこう

リア充とか爆発しろとかうるさいからな

「お前…もしかして宮永照と会ってたのか?そしてその手に持っている物、今日…もしかしてお前、宮永照と付き合ってるのか?」

こいつはエスパーか何かなのか?

あんまり付き合ってることを人に知られたくないんだけどな

照の学校の友達もたぶん俺たちが付き合ってるってことは知らないと思うし

「あんまり言いふらすなよ。俺はともかく照に迷惑がかかるからな」

「なら今日お前の家に泊めてくれないか?」

「意味が分かんねえんだけど?」

口止め料に俺の家に泊まりたいってどういう事だ?

「明日もイベントがあるんだけどさ、ホテルに泊まる金は流石にないから今日帰って明日の始発でこようと思ってたんだよ。でもやっぱ長野からはここ遠くてさ。確実に手に入れるには近場の方がいいだろ?ってことで神奈川に住んでるお前の家なら始発で来れば確実に行けそうだし。どうだ?」

母さんは居るかもしれないけど別に長野から来た友達だって言ったら追い出しはしないだろう

照のこともあるし…

まあいいか

「晩飯は出ないけどそれでいいなら泊めてやる」

「恩に着る」

 

その後修平と一緒に神奈川に戻ってコンビニで修平の晩飯を調達した後に俺の家に帰った

「お邪魔します」

「母さんはまだ仕事みたいだな。ま、適当に俺の部屋でゆっくりしてくれや」

その夜は修平がひたすら昨今のアニメについて語ってきたせいで寝ることが出来なかったが、友達を家に泊めるのは中学以来だったから少し懐かしさを感じていた

 

「昨日はありがとな。俺、絶対に限定グッズ手に入れてみせるよ」

「俺にそんな宣言してどうするつもりだよ…」

手に入れたとしても手に入れれなかったとしても俺には全く関係ないしな

「次に会うのは何時だろな?」

「まあ、何もなかったら春季大会の決勝大会で会うんじゃないか?」

「その前にまた東京で会うかもしれないぞ?」

「会わないことを俺は願うけどな」

こいつを家に泊めたら寝ることができないことが良く分かったからな

「またまた~。じゃ、そろそろ行くわ。またな寛」

「おう。じゃあな修平」

修平を見送った後、俺は布団に戻って二度寝をした

 

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