異世界ナチス! 作:佐藤さん
硝煙と粉塵の匂いがする。商業都市であったラインラントは砲撃と爆撃によって建物は崩壊し、路上には敗北主義者と言われた者達が吊るされていた。
「同胞を吊るすとはな」
五号戦車ティーガーⅠの車長である私、ペーター・ミューラーは悲観と混沌の中、乗組員らと次なる戦場へと駆り出される、はずだった。
---
「まぁ、座りたまえ」
は、と返事と敬礼をしてミューラーは木箱の上に座る。
「初めまして私は親衛隊、モンティナ・マックス少佐だ」
ミューラーの目の前に立ち、両手を後ろに組みながらそう言うのは金髪で眼鏡をかけた細身の青年だった。ミューラーは即座に立ち上がり敬礼、所属と名前、階級を言おうとすると少佐は右手を前にかざし止められた。
「君のことは知っているとも軍曹、あぁ五号戦車ティーガーの飼い主だろう…実に羨ましいね」
実に残念そうに、そして悪辣に口を歪める。
「単刀直入だが君にはこの状況を咀嚼できるかね?」
「は、残念ながら私の理解の範疇を超えております」
(そうだ、元々市街地を走行中だったにも関わらず瞬きの合間に草原へと変わっていたのだ。遠くに特徴的な鉤十字のマークが載せられた旗が掲げられたテント群がぽつんと設置されているのが目視でき、近くに寄ってみれば我々に気づいた一度は救助だ援軍だなんだの騒いでいたが同じ穴の狢だと知ると皆暗い顔で霧散していった。騒ぎを聞きつけた下士官が私をこの急拵えの将校室に呼びつけたのだ。)
「そうか、所で君は何がより人間たらしめると考える?」
なにを藪から棒にと思った。しかし真に迫る少佐の目は私から本音、いやもっと深い人間心理の底を引き出そうとしている様にさえ思えた。
コンコンとドアを叩く音が聞こえ、ドアが開かれる。ドアからは私を呼びつけた下士官とヘルメットとゴーグルをしたバイク乗りであろう青年が現れる。
「報告です。イッヒ二等兵が農村を見つけたと」
下士官が青年に目を向け、話を促す。
「は、東に10kmほどの位置に村があり、何十匹かの家畜と藁葺きの家数十軒、風車が2つ見えました」
「素晴らしい成果だ。勲章ものだよ!ではリットン曹長、皆を広場に集めたまえ」
---
テント群の真ん中に100人ほどの兵士が並ぶ。その正面にリットン曹長が台を置けば台の上に少佐が登る。そして沈黙、兵士らの困惑と不安による静寂が訪れるまで。
「皆の衆ご苦労…」
雄弁に語る
「我々は未曾有の事態に晒された。だが!我々にはその身がその血がある!そうだろう同胞達よ!国家が今我々を支えなくともその身が我々を支えるのだ!そして我々の目的はなんだ!米英どもを薙ぎ払い祖国を救うためだろう!ならば生きよ!奪え!血で血を洗う生存競争だ!手段なぞ選ばない!目的の為ならばなんでもする!そうでなけれ明日の女神は微笑まない!さぁ行こうか!私の、私達の闘争だ!」
群衆に熱がこだまする。それらはゆらゆらと動き指ひとつ触れただけでロンドン塔を粉々にする物量を感じた。
私はこの熱量に、雰囲気に押されて倒れそうになる、そして硝煙と粉塵の匂いを感じた。
オーバークロス唯一の要素ミューラー君。ただし名前と容姿だけで中身まBF5に寄せて書こうとは思いますが、ほぼ別と言うことでお願いします。