数日後。
その日は一人で執務をしていたのだが・・
「ねえねえねえ!南西方面飽きたの!」
「もうちょっとワ級連れてきて欲しいんだけど・・じゃあ近所で散歩する?」
「そっちも飽きたでち!」
「油が船体につくから嫌よ!」
「今暑いから涼しい方行きたいの!」
「北は遠いからなぁ・・うーん」
「次は空母とか、大物食っちゃうからね」
「そんなモノ食べたらいけません。ペッしなさい」
「そっちの意味じゃないよ!」
潜水艦達に囲まれた。
うちの鎮守府の潜水艦はちょうど6隻なので1艦隊でまとまってもらってる。
伊8,伊19,伊26,伊58,伊168,そして呂500。
なお、前に伊8を八兵衛と呼んだらなんか失礼な気がするとシュトーレン1ダース奢らされた。
ここでは例のドラマは存在していないのに勘のいい奴である。
しかし。
「北方イクの!」
「違うトコ行きたいでち!」
両方から肩を揺すられてるんだけど、当たるんだよなあ。
いや、むにゅっていうか、むちっていうかさ。
うん。ほんとこの子達ぴちぴちしてるんだよねえ。
それが水着着てるんだよ。しかもこうやって遠慮なくくっついてくるんだよ。
おっきさせないように心を無にするの大変なんだよ。
こうしてみると、ほんと呂500が癒しだわ。
ユーちゃんのままでも良かったんだけど、すっかり明るくなって。
おじさんは嬉しいよ。
「む。なんか提督が失礼な事考えてる気がしますって!」
「んえ?」
「ろーちゃんを見る時だけ親戚の子を見るような目線ですって!」
私は呂500の頭へと手を伸ばした。
「ろーちゃんは可愛いなあ。よしよし」
「えへへへ・・でも違いますって!」
「てーとく」
私はなんだかぞくりとしたので周囲を見回すと、残る面々がジト目になっている。
「な、なに急に?」
「ろーちゃんは、かわいいでち」
「異議があるとでも?」
「あるでち」
「なして?」
「ろーちゃん「は」可愛いというなら、ゴーヤは何だというのでち?」
「むちむち?」
「なんで疑問形でしかも擬音なんでち?」
答えようとすると、顔に手が伸びてきてグリンと回された。痛い。
そして目の前には頬を膨らませた伊19のアップがある。
「じゃあイクは何なのね?」
「ぷるっぷるん」
「ゼリーじゃないのね!」
「でもそうとしか言いようがない」
伊8が机ごしに近づいてくる。前屈みになるとこぼれますよ?
「じゃあ、はっちゃんは?」
「シュトーレン」
「それは好きな食べ物」
伊19が少し離れた所に居る伊168に声をかけた。
「イムヤは聞かなくて良いのね?」
「どうせ浮き輪とか言われるんでしょ」
私はキリッとした表情を作りながら伊168に声をかけた。
「仕事中にスマホは止めなさい」
「だからこれはスマホじゃないんだってば!」
伊8は前屈みを止めたけど、今度は腕組みをした。
溢れますよ?
「提督の心無い言動で私達6名はとても傷つきました」
「そーそー」
「なのね!」
「そーでちー」
「ですって!」
「いつものことじゃない」
「だから賠償を要求します」
「ばいしょう」
オウム返しに呟いた私に伊8達は深く頷いた。
伊168だけは呆れてるけど。
「提督は私達をちゃんと大人の女性として扱ってもらいます」
「どうしろと」
「レディに対するキスをしてください」
伊8以外の面々が一斉に伊8に向き直った。
今度は私がジト目になる番である。
「なんで」
「子供扱いしないぞって宣言です」
「今だってしてないよ?ごーや、芋けんぴ食べる?」
「食べるでち!」
「今してるじゃないですか!ごーやも貰わない!」
「・・怒られたでちー」
「よしよし、泣かない泣かない、なのね」
伊58を慰める伊19、癒されるわあ。
二人を眺めていると、人差し指を顎に当てて考え事をしていた伊26が口を開いた。
「ねぇねぇろーちゃん、レディに対するキスって何が違うの?」
呂500は両手の人差し指をつんつんとあわせ、囁くように答えた。
「じっ、時間が長くって、しながらあちこち触るんですって」
「あちこちって?」
「あーあーあー!部屋が暑いかなー!」
私はぶんぶん腕を振りながら大声で遮ったのだが
「提督うるさいでち」
「良い所なのね」
と、両側から伊19と伊58に手で口を塞がれた。
「むーっ!むー!」
「で?」
「あちこちとは?」
「どこでち?」
呂500は助けを求めるかのように伊8を見たが、伊8は目を輝かせて呂500を見ていた。
数秒の後、呂500は顔を真っ赤にしながら
「お、お胸とか、せなか・・とか・・」
と、答えたのである。
おいおいおいおいおいおいおいおいおいおい大井さん。
いやこの際大井は別にいい。
この流れはマズイ!マズイですよ!
何がマズイっておっきしちゃうって事ですよ!
意識したらなんか口を塞いでる二人の柔らかい手さえなんかエロく思えてきたんだけど?!
私は目だけ動かし、そーっと面々を見回した。
無関係を装ってるけど頬赤いですよ伊168さん。
呂500は可哀想なくらい真っ赤になっちゃって・・
後は皆キラッキラだなあ・・
二人の手が緩んだので私はあえて伊168に話しかけた。
「どうするんですかイムヤさん、この空気」
「私何もしてないじゃない!」
「なんかピンクの靄がかかってるんだけど!」
「だから私のせいじゃない!」
「てーとく」
場面転換失敗か。もうちょっとだったのに。
座ったまま、体ごと声のする方を向くと、伊168を除く5人がいつの間にか整列している。
キラキラしたままで。
「なんでしょうか?」
「私達は大人のキスを要求するのね!」
「それで?」
「一人ずつ順番なのね!」
「断る・・といったら?」
「するまでワ級取りに行かないでち!」
「くっ」
それは困る。でもこのまま流されちゃって良いのかなあ?
分水嶺のような気がするんだけど。
腕を組んで考え込んでいると、列からそっと伊26が顔を出した。
「あのっ、あのね提督」
「ん?うん?なんだ?」
「どうしても嫌だったら、やめるよ?」
「嫌っていうか・・むしろ君たちは嫌じゃないの?恋人でもないのにさ」
「・・・」
「確かに今まで私以外の男を見た事無いけどさ、誰でも良いの?」
「・・・」
「なんか謝罪とかご褒美とかさ、そんなことでさ」
「てーとく」
私の言葉を遮ったのは、伊19だった。
「うん」
「まず、はっちゃんが賠償とか言ったのは、ただの照れ隠しなのね」
ふっと、伊19が微笑んだ。
普段は見せない、大人の微笑みだった。
「私達潜水艦は情報を集めるのは得意だけど、海防艦とか天敵が多いのね」
「まぁ爆雷積める相手は怖いよね」
「でも提督はそういうのちゃんと解ってて、私達が出来る仕事を選んでくれるのね」
「それが私の仕事だろう」
「帰ってきたら補給してくれて、残らず修理してくれて、美味しいご飯が待ってるのね」
「皆で散々資源集めたからな」
「そうしようと指示してるのは提督なの」
「・・・まぁ」
「だから男女は置いておいて、私達は提督のこと、大好きなの!」
「んなっ」
「それに、川内とか陽炎がちゅーしたちゅーしたって話してるのは聞こえてくるし」
「あ、あいつら・・・」
「私達も、好きになった男の人とキスしたいのね!」
「・・」
「だけど、提督が私達とはキスするほどじゃないって思うのなら、引くの!」
「・・」
部屋の中に静かな緊張の糸が張り巡らされたような、そんな気がした。
貞操逆転世界でどうあるのが正しいのか、本当に判らないけれど。
「はっちゃん、イク、ニム,ごーや,イムヤ,それにろーちゃん」
「はい」
「ちょっと聞いてくれる?多分、私の昔の事」
目を丸くしたり、頷いたり、腕組みをしたり、ただただじっと聞いてくれたり。
6人の反応は様々だった。
あぁ、多分私は、これからもこうやって流されていく。
何が良いのか悪いのかもわからずに。
でも、それでも1つだけ言えるのは。
「みんな可愛い女の子だし、泣かせたくないんだよ、私は」
もっと気楽に、この変なディストピアの世の中をすいすい泳いでいけたらと。
そう渇望する自分は、今も腹の中に居座ってる。
でも無理だった。この子達が優しくて、明るくて、可愛くて、愛おしいから。
雑に扱えないんだ。
「えっと、だからね、だから不安なんだよ」
私は立ち上がると、そっと、伊19の両肩に手を置いた。
「手近にいる男だから、こんなんでもしょうがないから、そう思ってないかなって」
「・・・」
「だって君達は、こんなにも愛らしいのだから」
むちゅっ
あーあ、私はまた女の子からキスさせてしまった。
臆病だから?解ってても向こうから来てほしい?
優柔不断だなあ。
伊19はちゅるっと音を立てながら唇を離した。
「そんなこと、だ~れも思ってないのね」
「・・・言わせてしまったなあ」
「何でも良いのね。じゃあ順番・・・あっ忘れてたのね!」
「えっ」
伊19にむんずと掴まれた私の右手は、そのままスルっと彼女の左胸に沈み込んだ。
うん、ほんと、なんだろう、温かくて柔らかい・・ええなにこれ。
大きいと、指がめりこむんだ・・・すごいなこの感触。
もにゅもにゅと指を押し返す感触を確かめていると、伊19が声を上げた。
「んあっ!ああん!」
「はっ!?あ、つい!ごめん!」
手を引こうとしたけど、そういや伊19に掴まれたままだ!
えっむしろ押し付けられてる!?
引くに引けず、固まったまま時間が過ぎて。
伊19がとろんとした目で、ようやく腕を離してくれた。
「・・・きもちよかったのね」
「へ?」
伊19が他の面々の方に振り返り、興奮気味にまくしたてていく。
「皆もやってもらうと良いのね!とっても気持ちいいの!心がぴょんぴょんするのね!」
「えっ」
「お胸むにゅむにゅしてもらうのね!」
「えっ」
呆然と見ていた伊19の後頭部から、ふと顔を上げると。
「・・・・」
なぜか揃って口を半開きにし、頬を染める顔がそこにあったのである。
しばらくして、私は雷に打たれたような衝撃を受けた。
なん・・だと・・・
小さくても・・やわらかくて・・温かくて・・素晴らしいんだ・・
それから、しばらくして。
「はーい、司令に電文が届いて・・・司令?」
「・・・・」
「どしたの司令?真剣な表情したまま固まっちゃって」
「せ・・」
「?」
「潜水艦って・・凄いなあ・・」
「は?」
「世紀の発見だったよ・・・」
「なんか良く分かんないけど、私休憩入って良いかしら?」
「・・・あぁ」
「へんなの。じゃー陽炎!休憩入りまぁす!」
私はゲンドウポーズのまま、窓の外に沈む夕日をじっと見つめていた。
それどころじゃなかったけど。
やわらかい おむねは すきですか?