艦娘可愛いです。   作:銀匙

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【その69】

 

 

「ん・・」

鳳翔は真夜中の闇の中でそっと目を覚ました。

とんでもない全身のだるさ、下腹部のジワリとした痛み。

感じた事のない、腹の内側に溜まる確かな重み。

それがとてつもない幸福感に結び付いて。

「あぁ・・ついに子種を頂いたんですね・・なんて重い・・」

皮膚のあちこちで感じる、パリパリに乾いたもの。

ゆっくり目を開ければ、間近で寝息を立てる愛しい人の横顔があって。

「どうしようもなく、あなたが好きになってしまいました」

ゆっくりと腕を動かし、提督の胸に掌をあてる。

ふと、提督達人間と、自分達艦娘に許される時間の差に考えが及ぶが、鳳翔は小さく首を振った。

この人の寿命が尽きたら、間違いなくこの鎮守府の皆は世界の終わりを始めるでしょう。

この星ごと終わらせれば、さすがに艦娘とて死ねるでしょう。

死ぬ時に多少の時間差があれど、気合で追いつけばよいのです。

「命が尽きようと、私は永遠に離れませんからね、あなた」

鳳翔は目を瞑った。

 

 

-----

 

 

「あ、あの、鳳翔?」

「・・・」

「さ、昨夜ハッスルしすぎたのは悪かったと思うんだけどさ」

「・・・」

「だいぶ日が昇ってるような気がするからさ、お、起きたりしない?」

「・・や」

「いやかあ・・」

 

 

私は近いのはチューチューさわさわしちゃった時の加賀かなと思っていた。

鳳翔は只今私の胴体右側面にぴったり抱き付いてます。

ちょうど私の脇の下に鳳翔の小さい肩がすっぽり収まって。

そこから鳳翔の可愛い頭が私の肩に頬ずりを続けていて。

時折ちゅっちゅちゅっちゅされてます。どうせならキスしたい。

 

え?何か現実逃避の気配がする?

気のせいじゃないですかね。

 

明らかに朝は過ぎ去った日の光の色とか、

柱時計がさっき10回位鐘を鳴らしたなとか、

店の入り口とか裏口をノックしたりドアノブを回す音とかしてないしてない。

 

してないったらしてないんだ!

 

 

-----

 

 

「ごめんね、私がインカム持ってたら連絡くらい出来たんだけど」

 

結局11時過ぎに長門が勝手口の鍵を壊して突入してきました。

そしてガッチリ鳳翔にホールドされる私を見て場が凍りました。

気まずいったらないよ!

 

長門の説得で不承不承、本当に不承不承体を離してくれた鳳翔から離れ、私は身支度を整えた。

しかし私より遥かに手順が多い筈の鳳翔の方が着替えるの早かった。なぜだ。

そして。

「長門さん、大変失礼しました」

「い、いや、どうせ提督が特大のロクでもない事をしでかしたのだろう。解るぞ」

私は反論しようと口を開きかけて閉じた。心当たりがあったからである。

鳳翔は1つ大きく呼吸すると、顔を上げた。

「提督にご裁可を仰ぎますが、解体もやむを得ないと思っています」

私は鳳翔の方を向いて首を傾げた。

「なんで?どのあたりが?」

「湯当たりして意識が薄かったとはいえ、組み敷いてお口でした事です」

「バッチコイだけど?」

「・・はい?」

「それくらい前戯じゃん。その後私は鳳翔さんに下から突っ込んだんだし」

「あっ、あれは」

「それで数えきれない位パンパン突っ込んで好き放題放ったんだから、私の方が罪重いでしょ」

「いいえ。あなたのはドロドロで温かくて最高に気持ち良くて」

 

「ウォッホン!」

 

長門が顔を真っ赤にしながらわざとらしく咳払いしたので、私も鳳翔さんも口を閉じた。

「提督、一応聞くが。鳳翔を咎めるつもりは」

「皆無です。あ、1つだけ。時間が来たら起きようね?」

「へっ?あ、ごめんなさい」

「皆が心配しちゃうからね。それだけだよ長門」

 

長門は1度大きく溜息をつくと、鳳翔に向き直った。

 

「ここで解体だの自害だのすると提督が悲しむからな、鳳翔」

「・・・はい。それでは」

「うん?」

「北半分を始・・あいたっ」

私は鳳翔に軽く落とした拳骨を引きつつ、言葉をつづけた。

「こら、鳳翔さん?」

「はっはい?」

「昨夜初夜だったのに出撃しようとしてないよね?」

「えっでも」

「あれだけ目がぐるぐるの状態で激しくしたんだから1日は様子見しよ?」

「で、ですが」

「様子見しよ?」

「だ、だいじょう」

「様子見、しよ?」

「・・はい」

私は鳳翔の頭をくりくりと撫でると、長門に向かって頷いた。

「ということで、鳳翔さんは今日お休みね」

「ああ、解った。提督の分の仕事はまとめておくから明日でも良いぞ」

「いや、このまま執務室に行くよ。じゃあ鳳翔さん、ちゃんと体休めてね?約束」

「・・はい、お約束します」

「よっし。私の素敵な奥様はちゃんと言う事聞いてくれて嬉しいよ。じゃあ長門、行こうか」

「・・」

「ああ、行こうか」

 

 

-----

 

 

執務室のある棟に向かっている時、私は長門に声をかけた。

「ありがとね長門。多分鳳翔はもうすこし一緒に居たかったはずなんだけどさ」

「・・いや、すまなかった」

「なんで?」

「恐らくだが、昨夜どこかの時点で鳳翔はヒャッハアしてしまったのだと思う」

「あー、あれが」

「我々は艦娘の中でも相当耐性は高い方なのだが」

「昨晩は私もなんか悪ノリしちゃってたから、役満だらけだったんじゃないかな」

「・・」

「鳳翔に変な罰則とか処分とかしないでね?本当に」

「・・それで良いのか?」

「良いよ。だって好きな奥さんと楽しく激しい夜を過ごしただけだよ」

「・・」

「今朝まで余韻が残りすぎちゃったのは言って聞かせたから、改めてくれると思うし」

「・・」

「言ったじゃん。私は所属艦娘の皆ならバッチコイだって」

「・・」

「だから気にしなくて良いし、昨夜はなんか私も悪ノリしちゃったんだよ」

「・・本来、提督の意志に反して艦娘から性行為があった場合は転籍か解体処分なのだ」

「じゃあ私の意志がバッチコイなんだから良いじゃない」

長門は苦笑交じりに私を見て、何回も首を振った。

「本当に、提督は変わったな」

「だろうね」

「正直、裏口の鍵を壊した時は最悪の展開も考えていた」

「最悪というと?」

「鳳翔が独占する為に提督を手にかけた可能性だ」

「そういう事件あるの?」

「男性の死亡理由の2位は他殺で、犯人はほぼ自称交際相手または妻だ」

「うわぁ・・」

「ちなみに1位は自殺だから、男性の場合病死よりそれらで死ぬ可能性が遥かに高いんだ」

「あー」

長門が立ち止まったので、私は振り向いた。

「・・良かった。提督が、生きていて、良かった」

私は長門を抱きしめた。

「助けに来てくれて、ありがとうね。長門」

「ああ。無事でよかった」

「そういえば大淀さんと鹿島さんは?」

「・・初めは二人が行くと言っていたのだがな」

「うん」

「・・その、鳳翔が仮に気が触れていれば、二人では取り押さえる事も無理だから止めた」

「・・」

「私なら最悪相打ちには持ち込めると判断したんだ」

「・・長門」

「ん?」

「カッコイイ上司やってるねえ」

「茶化すな」

「ちゃんと責任を取れる上司は好かれるよ。長門は大丈夫だね」

「ばかもの」

「じゃあ改めて。危険を承知で助けに来てくれてありがとう、長門。愛してるよ」

「ああ。私もだ。旦那様」

私は長門をきゅっと抱きしめて、1度だけ口づけしたんだけど、長門は身を離しながら言ったんだ。

「礼を期待して助けた訳では無いのだが」

「うん」

「礼を言ってもらえると、本当に嬉しいな」

「良かった」

「ああ」

「じゃ、仕事しよっか」

「ああ!」

 

 

 

 




予告です。

そろそろ結末に向かいます。
今月いっぱいは・・ある・・かな?
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