艦娘可愛いです。   作:銀匙

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【その74】

 

 

「それでその、お体に不調とかはありませんか?」

自室の前で大淀がキョロキョロしていたから声を掛けたら駆け寄ってきてね。

遅いから心配したと言われて、先程の顛末を話して聞かせた反応がこれです。

「うん、大丈夫」

私が笑顔を見せると大淀はふうと息を吐いた。

「実はですねご主人様」

「うん」

「ご主人様は前に1度、妖精に誘拐されそうになってたんです」

「え、いつ?」

「喫煙具を一式渡されたことを覚えていますか?」

「あ、ああ。うんあったねそんなこと」

「あれは“神隠しのタバコ”と呼ばれる妖精の悪戯道具だったんです」

「悪戯で誘拐?」

「はい。一箱全て吸いきると神隠しに遭うのだとか」

「うへえ。どうなっちゃうの?」

「チェンジリング、というのを御存じですか?」

「えっと、なんだっけ、妖精と人が入れ替わるんだっけ?」

「正確には人間が妖精に連れ去られ、代わりに残された妖精自体のことをチェンジリングと言います」

「え、なんか今の私に似てない?」

「ご主人様は妖精だったんですか?」

「いや全然そんな覚えないけど」

「チェンジリングは自覚しているそうですから違うと思いますよ」

「へぇ」

「話を戻すとチェンジリングにすり替えられた人は地獄に行くという伝承があります」

「勘弁してほしいなあ・・それでいうと喋る猫も普通じゃないよね」

「ですが、好きにしろと言われたんですよね」

「うん。なんか予定と違うとか前置きされたなあ」

「正確に何と言われましたか?」

「ん?えっと、ちょっと予定外だけど好きにしたらいい、だったかな」

「大丈夫そうですが、一応皆で共有しておきます」

「そうしておいて。じゃあ晩御飯にしようか」

「はい」

 

 

-----

 

 

「喋る猫を知らないかって?」

「ええ」

翌朝。

提督を執務室に送った後、大淀は明石の元へと急いだ。

そして顛末を話して聞かせたのである。

 

「やー、さすがに初耳だわ。明石会オンラインで聞いとく」

「明らかになるかはあまり期待できないかしら」

「結構長生きしてる明石は居るから、誰か知ってるかもしれないけどね」

「とりあえず発言内容を聞く限りは危険はなさそうだけど」

「でも、予定外だって言ってんでしょ?」

「そうね」

「それが拡大すると気が変わるかもよ?」

「何が予定外だったのかが問題ね」

「それに、提督が一人になる瞬間を解ってて近づいてるよね」

「でもあれは突然決まったことだから事前計画での待ち伏せは不可能」

「予定外だったから何かを伝える、あるいは行動を起こそうかと思ったが、提督を見て気が変わった」

「だから好きにしたらいいと言って消えた、ってことですね?」

「そう考えればしっくりこない?」

「確かに。ちなみにあらゆるセキュリティのセンサーは無反応だったし、カメラにも映ってない」

「提督が一人で喋ってるように見えるってこと?」

「ええ。でも確実に1点を見て話をしていた」

「提督以外に見えない?」

「その場に居なかったからねえ」

言いながら大淀は、ロボットの自分には見えないだろうなと秘かに思った。

「ま、ここで話してても解るとは思えないし、何か分かったら知らせるわ」

「よろしく」

「ところで新商品を開発したんですが大淀上級捜査官殿」

「・・・審議するから見せなさい」

 

 

-----

 

 

その日の夕方。

「第1艦隊旗艦足柄、無事帰還したわっ!」

報告書を受け取りながら長門は尋ねた。

「ああ。今回はどうだった?」

「少しずつ細かいのが戻ってきてるわね。ただ敵編成に変わりはないみたい」

「イ級が後期型に変わったりとかもなかったか?」

「ないわね。鳳翔さんの一撃で消え去ったのが少しずつ戻ってきてる感じかしら」

「そうか」

「ほんと、終わりが見えないわね」

「でなければ我々がこんな年まで戦争してるはずもないだろうよ」

「それもそうね。ところで、提督はもうお仕事終わったの?」

「あと少しあるだろう・・提督、状況はどうだ?」

 

私はサインした書類を大淀に渡しながら答えた。

 

「あと3枚だね。サインするだけだけど」

 

足柄がにっと笑った。

 

「じゃあ着替えてくるから、またあとでね!」

 

そう言うとさっさと執務室を出て行ってしまったのである。

 

 

-----

 

 

「じゃーん♪提督どうかしら?」

「お~かわいいねぇ♪」

「えへっ」

 

再び執務室に現れた足柄が着ていたのは浴衣にエプロンという恰好で。

 

「エプロンってことは何か作ってくれるのかい?」

「もっちろん!夕飯にカツカレーはどう?」

「良い!肉とかガツンとしたの食べたいなと思ってた!」

「良かったあ・・じゃあ食堂で作ってお部屋に持っていくわね!」

「解った。じゃあ先に帰ってるね」

「ご飯普通に盛っていいかしら?大盛もありよ?」

「大盛でお願いします!」

「ええ良いわ!待っててね提督っ」

 

という事で再び足柄は執務室から居なくなったので、私は長門に尋ねた。

 

「酒保でビール売ってたっけ?」

「缶ビールならあったと思うぞ」

「じゃあ買って帰るか。えっと、もう終わりだよね?」

「全て終わってるぞ」

「解った。じゃあまた明日ね、長門、大淀」

「ああ、またな」

「お疲れ様でした、ご主人様」

 

そんなわけで私は酒保で缶ビールと氷を多めに買って部屋に戻り、浴衣に着替えてテーブルを片付けた。

なにせカレーは落ちないからね・・

そして洗面器に買ってきた氷とビールを沈める。ビールは氷で冷やすに限るよね。

しばらくすると足柄が部屋を訪ねてきた。

 

「提督っ、お待たせ!盛り付けはこっちですることにしたわ!」

「折角だからお揃いの格好で一緒に食べようよ」

「ええ、もちろん!、あ、そこのテーブルに置いて良いかしら?」

「良いよ」

 

最初手伝おうかと思ったんだけど、ここで倒れられても困るから控えた。

タイミングが難しいよね。

 

「そうそう、飲み物なににする?お茶で良いかしら?」

「じゃーん!」

「麦の豊かな美味しい奴!しかも氷でキンキンに冷えてるじゃない!提督ナイスよ!」

「良かった」

 

そんなわけで足柄の作ってくれたカツカレーに舌鼓を打ち、ビールを軽く飲んだわけだけど。

 

「本格的に酔っぱらう前に食器返してきちゃうわね!」

「それが良いよ。悪いけどお願い」

「まっかせて!」

「ご馳走様ね、足柄。カツもカレーもとっても美味しかったよ」

「作った甲斐があるわっ!じゃあ行ってきます!」

「足元気をつけてね」

 

 

 

 

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