それは、ある日のこと。
「たのもー!」
「うん?鈴谷が来るなんて珍しいな」
「建造以来かな」
「そこまでか」
「だって旗艦やらせてくれないじゃーん」
「育成中だからなあ」
「むー」
そう。
うちの鎮守府は妙に艦種に偏りがあり、最近まで戦艦も重巡も居なかったのである。
正規空母は就役してくれてるから資源探訪には苦労してないのだけど。
球ではなく、あれこれ資源投入量を調整してやっとお迎え出来たのが鈴谷である。
その鈴谷でも安定して資源探訪を任せられるレベルにはなっていない。
なので資源当番の日はずっと演習に行ってもらってる。集中育成ってやつ。
「なので鈴谷は考えました!」
「はいな」
「秘書艦を当番制で運用しよー!」
「秘書艦?」
「うん。そろそろ事務仕事限界っしょ?」
確かにそのとおりである。
陽炎と始めたこの鎮守府も、そろそろ百を超える艦娘が在籍している。
何本ものボールペンを空にして書類を書き続けてきた。
ペンだこが痛くて泣きそうになった日もあったけど、さすがに慣れてきた。
とはいえ、書類の絶対量は日々増えている。
一緒に書類仕事やってくれると助かるは助かるのだけど。
「とはいえ、なあ」
「どしたの?」
「ペンだこって痛いんだよ」
「うん」
「可哀想じゃん。当番制にしたらみんなそうなっちゃうでしょ?」
「毎日じゃないからねえ」
「それに好き好んで書類仕事やりたいかねえ?」
「違うんだなあ」
「何が?」
「秘書艦になると提督と1日居られるじゃん」
「で?」
「楽しいじゃん」
「楽しいか?」
「今楽しいよ?」
「そっ・・そっか・・」
鈴谷は満面に悪い笑みを浮かべた。
「てーとく、かーわいー!」
「からかうんじゃありません」
「うりゃうりゃ」
「肘でつつくんじゃありません」
「・・・というわけで私達にもメリットがあるのです!」
「私にデメリットがあるんだけど」
「どんな?あっ、苦手な子がいるとか?」
「そんな子は居ないけど」
「じゃあ何?」
「その、部屋が良い匂いになる」
「は?」
「この部屋は知っての通り、よほどの時を除いて艦隊旗艦だけ来てもらってるでしょ」
「うん」
「それはあまり女の子の匂いをさせないようにしてるんだよ」
「なんで?良い匂いなんでしょ?」
「・・・黙秘します」
「そこまで言って黙られると無茶苦茶気になるんだけどー!」
「・・・」
「マジ言わないとか無いし」
「・・・むらむらするからです」
「むらむら?」
「あー!何気ない仕草とかでおっきしちゃうんだよ。ほんとにもー!」
「うわ提督が子供みたいになった!」
「何なの君達!無防備すぎるんだよ本当に!」
「なにが?・・・んーっ」
「ほらぁ!そうやって目の前で背伸びとかするしー!」
「・・・んえ。だって肩とか凝るし。背伸びしたら何が悪いのー?」
「おっきい おむねが くっきり 見えるから!」
「揉みたい?」
「揉みたいです」
「揉みたいんだ。これねぇ・・重たいだけなんだけど」
鈴谷は自分の両手でむにむにと自分の胸を揉んでいる。
「おむねには 夢が 詰まってるんですよ」
「ていうか提督なんでカタコトなの?」
「おっきするの抑えてるの!」
「あえ?・・あーっと、ええと、おっきするとビュービュー出るんだっけ?」
「ロコツ!卑猥!それに違う!ずっと後ですって!」
「と、なるとぉ」
鈴谷は椅子を1脚運んでくると、私の机の前に離して置いた。
「何してるのさ?」
「こう、座ってね」
「うん」
鈴谷は椅子にきちんと腰かけると、真顔のまま、ゆっくりとスカートをめくり上げた。
私は突然の状況に目が釘付けである。ありえないご開帳で色々真っ白だよ!
「!?!?!?何してんの鈴谷!?」
「おぉ、反応が凄いや」
「そりゃ凄いよ何してくれてんの本当にごちそうさまですよ!」
「おそまつさまです?」
「むっちむちで素晴らしいですよ!決してお粗末じゃないですよ!」
「かつてないほど提督のレスポンスにキレがある」
「ていうか下ろしなさいスカート!」
「?」
「下に!」
「いっ・・良いよ」
「脱がなくていい脱がなくて!ほんと何やってんのもー!」
「えっ?だって下にっていうから」
「スカートを!元通り!履いて!座ってください!」
「はいはい・・もーそんなおっきな声出さないでよ~」
「デリカシー!デリカシーをもっと持って!もうやだこの世界!」
鈴谷は床に落ちたスカートを履き直すと、改めて椅子に腰かけた。
「おっきした?」
「驚きすぎて引っ込んだよ」
「難しいんだねえ男って」
「じゃあ女の子は簡単なの?」
「んー・・」
鈴谷は眉を寄せて少し考えるそぶりを見せたが、そのまま口を開いた。
「えーとね。割と駆逐や軽巡の子達は頻繁だよ」
「?」
「潜水艦の子達は何日か前大騒ぎしてたし」
「・・・」
「あぁでも、あれだよ。空母は陰でコッソリムッツリだよ?」
「は?」
「具体的には翔鶴はハンカチ噛んで声出さないようにしてた」
「待て鈴谷。何の話だ?」
「ええと、デリカシーを持って言うと・・格納庫整理?自家発電?スッキリするヤツ?」
「解ったから!段々生々しくなってきてるから!」
「聞いてきたの提督じゃん」
「格納庫整理事情をあけすけに話せとは言ってないよ」
「いーじゃん女の事情なんてー」
くそっ!貞操逆転!くそうっ!慣れてない自分に腹が立つ!
「はぁ、んで、皆何をオカズにしてるのさ」
「へっ?」
鈴谷が何を今更という表情をしたのですぐ理解したよ。
「私は別にエロい仕草とかしてないじゃないか」
「良い匂いだし」
「は?」
「伊19とかが事細かに説明してたし」
「何を」
「おっぱい揉んでキスしたこと?」
「えぇマジか・・秘密にしないんだ」
「それこそなんで?」
「恥ずかしくない?」
「んー」
鈴谷が再び考え込んだので、私は嫌な予感がしつつも冷えた茶を口にした。
「男の人って一夫一妻を希望するじゃん」
「いやその辺にこだわりは無いよ」
鈴谷が真顔になってがばりと身を乗り出してきた。
「えっマジ?大ニュースだよそれ?嘘なら取り消すの今しかないよ?」
「嘘じゃないよ。でも重婚とか無理じゃないの?」
「一夫多妻で補助金がっぽがぽだよ?」
「えぇ・・」
あぁそうか男女比。
クソッ!設定が!違い過ぎる!
「んーとね、あたしたちは良い男の情報はシェアするもんなんだよ」
「なぜに」
「単純に居ないからネタに飢えてるし、情報が多いほど嫌われにくくなるじゃん?」
「あー、その男の嗜好とかそういうこと?」
「どんな服装したら喜んでくれたとか、手をつなぐの嫌いみたい、とか」
「ほう」
「でも最近は男そのものを見なくなっちゃったからさ」
「うん」
「お洒落とかサボっちゃっても良いかなーって」
「あー」
極端な男女比の影響ってこういう所にも出るんだな。
鈴谷がお洒落を放棄するって相当だな。
「だからこの鎮守府の子達はお洒落とかすごくちゃんとしてるよ?」
「なのにスカートまくり上げて平気なの?」
鈴谷がにやりんと笑った。
「いやー、あの反応みられるんだったらこんな布っ切れ1枚めくるくらい」
「そこには憧れの回廊があるんだよお!!!」
「かつてないほど提督が力説してる」
「するよ!ほんとにもう!」
「出し入れすると気持ちいいんだっけ?」
「言い方!」