「うぅ恥ずかしい・・一番恥ずかしい思い出を・・」
「でもさ鳳翔、私はそんな鳳翔を誇らしく思うよ?」
「・・・へっ?」
「だってちゃんと更生させたんでしょ?海域取り返してきたんでしょ?」
「で、ででですがお行儀が」
「勝てば官軍なのだよ鳳翔クン!」
「あなた・・」
「敬意をこめて閣下と呼ばれるなんて、ほんと自慢の奥さんだよ、鳳翔」
「大好きです、あなた。私も妊娠させてくださいね?」
「もちろんだよ」
でもって性懲りもなく鳳翔とちゅっちゅちゅっちゅちゅっちゅちゅっちゅやってたらね。
「あ゛ー、おほんおほん!え゛っへんえ゛っへん!」
てな感じで伊勢さんが介入して。
無事、居酒屋鳳翔を後にしたのでした。
「この後どうしますか伊勢さんや?」
「・・ちょっとだけ真面目な話をしない?」
「私、割と酔ってるけど良いの?」
「少しくらい酔ってないと無理な話だから」
「・・解った。どこで?」
「ああ別に提督の部屋で問題ないわよ。大淀とか居ても良いし」
「居ない居ない。そんな野暮はしないよ」
「うん。じゃ、行きましょ」
-----
「えっと、ごめん。すぐ出せるのが冷水しかないや。いい?」
「酔い覚ましにはちょうどいいわ。ありがと」
部屋に入った伊勢は少し頬が赤かったけど、表情は似つかわしくない位真面目で。
ひじ掛け付きの1人掛けソファに腰を沈めると、片手で頬杖をついたんだ。
「えっと、何から話そうかしらね」
「ゆっくりでいいよ。夜は長いさ」
「夜、か。あのね提督」
「うん」
「川内に晴着買った事、覚えてないかな?」
時間が止まったような気がした。
-----
私の頭の中で、映像が物凄い速さで流れていた。
数えきれないほどやってきた戦の指揮、大きな戦果の祝勝会。出会いと別れ。
そこには加古、大淀、榛名、那智、比叡、加賀、金剛、霧島、日向、鳳翔、陸奥、足柄、伊勢、鹿島が居て。
さらには翔鶴、高雄、川内、夕張、鈴谷、祥鳳、初月、浜風、黒潮、谷風、皐月、伊19、伊58、伊8、伊168、伊26、呂500が居て。
そして、長門と陽炎がいた。
「あーちょっとしんどいけど、色々思い出したよ。やぁ伊勢。久しぶりだね」
「ちゃんと帰って来たわね。おかえりなさい提督。ご無沙汰過ぎるわよ?」
「ええとさ、さっきの話だけど、鳳翔が閣下と呼ばれた頃には・・」
「既に提督は亡くなってたわよ」
「死んだんだ」
「だと思うのよね。提督の居た筈の鎮守府というか町ごと燃やし尽くされたから」
「敵さんに攻め込まれたのかい?」
「正確に言えば、敵国。通商に邪魔だったらしいわ」
「深海棲艦じゃなく?」
「ええ。私達の不在を狙って何発もの大型爆弾を投下してきたわ。救出に向かった翔鶴達も何もかも燃やされた」
「じゃあ私の死体は誰も見ていない?」
「それどころか私達だって死んでる筈なの。でも気が付いたら海に立ってたってわけ」
「それで残る私を探し始めたの?」
「ええ。私達は最初は何十年も世界中を探したわ。日本にしか現れないって分かってからは止めたけど」
「でも、そもそも人間の寿命は」
「そう。そんな筈はなかったの。探しても居る筈なんて無かった。でもそうするしか持て余す時間を潰せなかった」
「そっか。でもどうやって探したの?」
「最初から貴方は桁外れに艦娘に優しいのよ。こんな腐れた世界の中でね。だからそれを頼りにしたわ」
「別に世界がどうであれ皆が好きなんだから優しくするさ」
「そういうわけで、現れたらすぐ見つかるのよ」
「艦娘に優しい男がそんなに少ないなんて酷過ぎるなあ」
「でも・・こんなパターンは初めてだったのよねえ」
「こんなパターン?」
「既に司令官として働いてる別の人の体に乗り移るってパターン」
「あ、そっか。え、今までは?」
「突然現れるの。日本のどこかにね。容姿も年齢もバラバラだけど必ず男でね」
「どこかに?」
「ええ。そして妖精が見える事がすぐバレて司令官にさせられる」
「妖精見える人少ないの?」
「男女ともね。でも司令官には必須の条件だから見えたら海軍は有無を言わせず就任させる」
「あ、じゃあ君達は新規配属の司令官を探してれば良いのか」
「ええ。海軍所属を捨てないのはその為よ」
「じゃあ今回はどうして?」
「名前よ」
「名前?」
「提督はこの世に現れると、必ず桧山竜二を名乗るの」
「え、でも」
「そう。前の魂は貴方と別人のただの同姓同名だった」
「じゃあ」
「でも陽炎がね、どうしても可能性を捨てきれないからついてて欲しいって頼んできたの」
「その為に半数近い子達がついててくれたの?」
「過剰防衛かもしれないけど、1度背後を突かれてるからね」
「私に変わらなかったどうするつもりだったのさ?」
「その人の寿命まで別人を護衛してた、それだけよ。良くある話だし」
「どういうこと?」
「提督は続けて現れてはくれないの。現れて数年一緒に居たら今度は50年後まで現れないとかね」
「消えるって、まさか神隠しのタバコ?」
「良く知ってたわね。提督が過去に消えた何度かの状況は、そうじゃないかって疑ってるわ」
「ええとね、さっき説明した猫神様がさ、私に好意が集まり過ぎると神隠しのタバコでコントロールしてたって言ってたよ」
伊勢の目からハイライトが消えた。
「三味線作ろうかしら」
「いや止めてあげて。多分この世界の神様だから」
「そんなくだらない理由の為に私達が何世紀もの間苦労して探し回ってるのかと・・っ!」
「そっか、そうだよね。なんかごめんね?」
「提督は何も悪くないわよ。悪いのはそのクソ猫よ。会ったらぶっ潰してやるんだから」
「いやほら、世界が滅んじゃうのを回避しようとしたみたいだよ?」
「提督」
「はいな」
「こんな世界が続くことに意味がある?」
「少なくとも続いてるから今夜伊勢とデート出来てるからねえ」
伊勢は口を尖らせたまま、少しそっぽを向いた。
「じゃあ三味線の皮にするのは勘弁してやろうかしら。でもぶん殴るわ」
「オーケー解った止めないよ」
「ま、そんな訳でね提督、残りの子達も声をかければ飛んでくるに違いないのよ」
「代替要員・・あれ?」
「なに?」
「ってことはその子達もケッコンカッコカリしてくれるかも」
「するに決まってるじゃない」
「じゃあお母さんいっぱいだね!近親相姦の可能性がもっと減るね!」
「ま、そうね」
「・・うん。川内に晴着買ってあげたよ。そうそう。赤と黒の綺麗なやつ」
「でも鎮守府破壊工作を食らった時に燃えちゃって泣いてたわよ」
「・・売ってるかなあ?」
「絶対無理。和服自体絶滅して久しいもの」
「皆は服どうしてるの?」
「戦闘時の服は妖精さんが縫ってくれるし、私服は洋服よ?洋服なら多少は手に入るから」
「寝巻の浴衣は?」
「あれは妖精さん謹製。提督の服は全部そうよ」
「あれれ?昔から付き合いがあるっていうんならさ」
「ええ」
「皆、連結するの初めてって言ってたんだけど?」
伊勢が溜息をついた。
「ホントにそうなのよ、これが」
「え?何度も出てくるんでしょ私?言い方変だけど」
「過去何回か会えたんだけど、今ここにいる面々はついぞおせっせに縁が無くてね」
「なして?」
「ヒントはタ・バ・コ」
「まさか・・仲が進むと?」
「消えちゃうのよ」
「そりゃ三味線にしたくなるね」
「そうよね?私おかしく無いわよね?」
「同情するよ心から」
「なら提督!」
「はい?」
「今夜こそ逃がさないわよ?」
「バッチコイです。最初風呂から行く?」
「イクイク~♪」