艦娘可愛いです。   作:銀匙

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【その12】

 

私は、ふとした疑問を鈴谷にぶつけてみた。

どさくさ紛れと言われても仕方ないけどさ、気になるものは気になるんだよ。

 

「ときに鈴谷さんや」

「なに?」

「艦娘の子達って、子供生めるの?」

「なんで?」

「いや、何人欲しいか聞かれたことがあったから」

「誰に」

「黙秘します」

「まぁ陽炎か川内かなぁ」

「もくひします!」

「当たりだね。じゃ後で二人に聞こっと。んで、妊娠できるかって事だよね」

「うん」

「出来るよ。あるもん」

「なっ、なにが?」

 

鈴谷はうんざりした顔になった。

 

「月のモノ」

「あぁ・・」

「ほんっとマジ憂鬱だし」

「そういや休暇申請理由にあったね」

「痛くて出撃してられないし」

「ちなみに、出産例聞いたことある?」

「あのね提督」

「うん」

「国中に女はわんさかいるわけ」

「・・うん」

「だからわざわざ、戦場の最前線で戦ってる女に生めとは言われないの」

「子供って授かる訳じゃん」

「は?」

「ん?どこかで話がかみ合ってないのか?」

「・・あっ!男!あーあーあー!そうだった!男だ!」

「男だけど、それが何?」

 

鈴谷は私を指差して何度も頷いた後、その人差し指を顔の前でぴっと立てながら続ける。

 

「今の女にとって、妊娠は計画的な人工授精の結果でしかないわけ」

「おおう」

「だから男と交尾して注ぎ込まれるとか」

「アウトおおおおおおお」

「ありえないんだって!」

「ナイよ大真面目にナシだよ一発で発禁になるわバカ!」

「いやマジな話。何歳から何歳の間に、この仕事の後とか完璧に調整して人工受精すんの」

「ぜぇ・・はぁ・・せ、説明は解ったよ」

「だから男って聞いても出産とかピンとこないんだって」

「まぁ、なるほどな。そうか」

「でもそっか、提督男だったんだ!」

「そっ・・そうだよ?」

 

鈴谷はちらりと視線を下げ、二ッと笑いつつ上目遣いにこちらを見た。

 

「ここに入れたいカンジ?」

「罰当番でトイレ掃除1週間な」

「ひどっ!」

「仕事中!仕事チューだから!」

「チューから始める?濃厚なの欲しいなー」

「2週間にするか!?3週間か!?」

「照れちゃってか~わいい」

「はぁ・・・」

 

ふと、鈴谷が肩をすくめて真顔に戻った。

 

「実際、わかんないんだよねえ」

「何が」

「男の人とスルのって、気持ちいいのかなあ」

「・・・何を言ってもドツボに嵌る気がするなあ」

「じゃあ提督は気持ち良いの?女とスルと」

「そりゃあなあ」

「なんでしないの?」

「婦女暴行って知ってる?」

「は?」

 

貞・操・逆・転!!!

くそっ!何もかも通じない!

 

「あー、女の人が男のそういうのをあれしてこれして無理矢理、みたいな」

「生殖行為?」

「ロコツ!」

「話進まないから勘弁してよぅ」

「じゃぁこの場だけな。そうそうそれで合ってるよ」

「提督」

「うん」

「保護区って知ってる?」

「名前だけは聞いたよ」

「そこに入れる女はごく限られててさ」

「ほう」

「食い放題らしいよ。だからそんな邪魔な法律は無いわけ」

 

ぞくりと、嫌な絵図が浮かんだ。

 

「その限られた女ってのは」

「なぜか適齢期を大幅に上回った方々なんだって」

「かたがた」

「そう言わないと不敬とかそういうカンジ」

 

要するに拉致監禁されたあげく政財界の重鎮BBAに逆レイプされると。

名称と実態が真逆すぎるよ保護区。

どうしようもないよ行き過ぎた男女比with貞操逆転世界。

 

「そんな事になるならこの鎮守府の皆と毎晩励むわ」

「えっマジ?」

「美女美少女達とイチャイチャする方が良いに決まってる」

「あ、ちなみにね提督」

「おう」

「保護区に入れる男は、童貞に限られるから」

「もう最悪だよ」

 

元の世界で考えれば政治家のヒヒジジイどもが処女を拉致監禁してヤリまくってるって事だろ。

なんだよそれ。その為に婦女暴行罪自体作らない?だから無罪?フザケンナ!

腹が立ちすぎて気持ち悪くなってきた。

 

「だからさぁ、提督?」

「はー・・なんだよ」

「シちゃったら?」

「あ?」

「私達の誰かと。全員で証言するし!」

「お前なあ。それこそナシだよ」

「なんで?」

「自分が保護区行きたくないから誰か犠牲にするのか?」

「犠牲じゃなきゃ良いじゃん」

「どういう事だ」

「こっちが好きならいいんでしょ?」

「一応私にも感情はあるんだよ?考慮しよう?」

「じゃー鈴谷は?」

ここは答えるべきじゃないとゴーストが囁いてる。

黙秘しよう。

「・・・」

「揉みたいんだよね?」

「もみたいです」

破壊力が高すぎて防壁一瞬で破られました!

「おむねだけ?」

「可愛いよ」

「顔だけ?」

「良い子だと思うよ。いやほんとにパーフェクトだよ?」

「じゃー何が引っかかってんの?」

「青少年は保護しないとって感情」

「とっくに成人してるんですけど?」

「えっ」

「してると萎える?」

「小五で悟らないよ私は」

「しょうご?」

「ロリコンじゃないよ」

「じゃ良いじゃん」

「・・・ああああああ」

「わー提督が壊れた。おっぱいもむ?」

「マジで揉むぞこのー!」

「きゃー提督のえっち~♪」

「そう言いながらなぜ寄ってくる!!!」

 

 

-----

 

 

その日の晩。

 

「たまには食堂で食べなって」

「わかったわかった」

 

鈴谷に引っ張り出された私は、書きかけの書類に付箋を貼って部屋を後にした。

廊下を歩きながら色々思い出していた。

 

「鈴谷が来た頃には、もう料理してなかったなあ」

 

ピタリ。

前を歩く鈴谷が急に止まったので、私はぶつかりそうになってしまった。

 

「おっ!?どうした鈴谷」

「・・てーとく?」

「なんだ?」

 

油の切れたロボットのように、のろのろとこちらに振り向く鈴谷。

 

「ごはん、作ってたの?」

「最初の頃な。もうほんと色々手が回らなくてな」

「作ろう?」

「は?」

「作ろう?そして振舞おう?私まだ夕飯食べてないし」

「え、だって今は間宮さん居るしそっちの方が美味しいだろ?」

「そうじゃないんだよ」

「いや美味しいだろ」

「違う美味しさなんだよ」

「だって私が作れるのってせいぜいチャーハンとか野菜炒めとかだぞ?」

「鈴谷は今、ビタミンてーとくが不足してます」

「なにそれ怖い」

「しきゅう、てーとくの手作りチャーハンと野菜炒めで補給する必要があります」

「別に良いけど・・・っておいおい引っ張るなって!うわああああ」

 

 

ガチャッ!

 

 

間宮は丁度料理を受け取る人が途切れた所だったので、勢いよく開いた扉の方を向いた。

鈴谷が引きずってるのは・・提督!?

 

「ちょっ!鈴谷さん何やってるんですか!」

「間宮さん!」

「はい?」

「提督に台所貸して」

「はい?」

「ほら提督、材料言って!気絶してんじゃないの!」

「提督をそんなにぺしぺし叩いたらダメですよ!」

 

う・・うーん?

どこだここ?

 

「んー?」

「ほら起きて提督!チャーハンと野菜炒めの材料は!」

「んー?しょーがないなあ・・」

 

ええと、冷蔵庫冷蔵庫・・部屋模様替えしたっけ?

また鈴谷の奴当番サボって俺に押し付けたな・・もー

卵と・・肉はひき肉で良いか。ご飯はあれか。なんか大きくない?業務用?

んーと、野菜はっと・・・もやしとキャベツ、にんじん、ピーマンでいいか。

 

とんとんとんとん。

ジュー・・・

 

先にひき肉を・・あ、ニンニク入れよ。

でもって一度上げて、卵・・ねぎ・・ごはん・・塩コショウ・・ここで野菜を炒め始めて・・

 

「できた」

「ふおおおおっ!これが!噂の!提督ごはん!」

「んー」

「じゃーありがたく鈴谷が・・ひいいいいっ!?」

 

提督から料理の乗ったお盆を受け取り、振り返った鈴谷はその迫力に驚いた。

食堂に居た全艦娘が鈴谷の背後に揃っていた。

無論、全員箸を装備済。目が金色に光っている。

 

「えっ、で、でも鈴谷これが晩御飯で・・・いやあああああ」

 

私は次第に意識がはっきりしてきた。

ええと、あれ、鈴谷と食堂に向かっ・・料理作るって言ったんだっけ。

何か別の事思い出してたような。なんだっけ。

ん?

 

「・・どした鈴谷?空の皿の前で蹲って」

「ごはん・・・取られた・・」

「は?」

 

周りを見ると、少なからぬ艦娘達が口を動かしてキラキラしている。

しかし、口を動かしてない面々が口を動かしてる艦娘達を恨めしそうに見ている。

え?だって間宮さんのご飯そこに・・・え?私のご飯食べたいの?

 

「えぇ・・じゃああと何人分・・うおう!?君達食べたんじゃないの!?」

 

一糸乱れず、綺麗に全員が挙手していたわけで。

その後間宮さんに手伝ってもらいながら必死に鍋をふるいましたとさ。まる。

私?間宮さんの夕飯食べたよ。絶対間宮さんのご飯の方が美味しいもん。

 

 

なお、提督を焚きつけた鈴谷は艦娘達からこれ以上ないほど称えられた。

そして万が一そういう機会が巡ってきた時は鈴谷が一番だと満場一致で決まったそうな。

 

鈴谷は胸を張りつつ、男女の営みという古の行為を思い出そうとしていた。

だが、あまりに古く、あまりにもあっさり伝えられたその知識は、ほとんど忘れていたのである。

 

「ま、いいや、何とかなるっしょ」

 

 

鈴谷は悩まないのである。

 

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