艦娘可愛いです。   作:銀匙

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【その18】

 

「すみませんすみません、本当に申し訳ありません。はい修復費用は全てうちで・・申し訳ありません」

 

それから15分間に渡り、相手鎮守府提督の怒声攻撃の相手をした私は、ようやく受話器を置いた。

黒電話の受話器って重いんだよね。

受話器を掴んだまま溜息をついていると、陽炎が戻ってきた。

 

「解ったわよ司令、あの子達が何をしたか」

「工廠で妖精と何したのさ」

「司令が妖精と悪ふざけで開発してた艦対艦ミサイルよ」

「あれ推進エンジンから開発中だったんだよ?!夕張止めなかったのか!」

「それどころか全員が持てるように既存兵器に押し込んだそうよ」

「ミサイルは一人1発ずつ?」

「1人30発ずつ」

「まさか全弾発射したの?」

「そのまさかよ」

「1艦隊に180発も打ち込んだの!?」

「実用化に向けて良いデータが取れたって妖精たちは大喜び」

「まさか弾頭は」

「紙吹雪よ。演習仕様ですって」

 

私は深いため息をついた。良かった。最後の一線は守られた。

 

「というと、修理は要らないのかな」

「メンタルケアでしょうね」

「あー」

 

そりゃそうだ。

張り切って航空戦と砲雷撃戦の準備してたら雨あられとミサイル撃ち込まれたんだもんね。

言葉にするとエグさがクッキリするなあ。

 

「で、どうするの?」

「なにが」

「無傷でA判定よ?」

「ルール違反で問答無用で敗北Dでしょ?」

「それがあの子、試製12cm30連装噴進砲改二として登録してるの」

「で?」

「通ってるのよ」

「12cm30連装噴進砲とは似ても似つかないじゃない」

「兵装の外観は12cm30連装噴進砲改二なのよ。弾が違うだけで」

「その弾がミサイルって違いすぎるでしょ」

「そこはちゃんと試製って断ってるって主張が通ってるわけ」

「いやそれはさすがに無理筋じゃない?」

「過去に前例があるのよ」

「前例」

「別の鎮守府の伊19だけど、開始早々SLBM撃ち込んだらしいわ」

「」

「だから別に、試製ならミサイルくらいアリってこと」

「鈴谷はそこまで調べたってのか?」

「だから言ったでしょう?あの子達本気だって」

「本気のベクトルが違いすぎるでしょ。誰がルールの穴を本気で調べると思うんだよ」

「あのね司令、何度も言ってるけど」

「え?うん」

「気安く何でも叶えてあげるとか言っちゃだめよ?目が眩んで後先見えなくなるんだから」

「・・・」

「前回のラムアタックだって深海棲艦の防御鋼を身に纏って特攻かけたでしょ」

「あー」

「ル級から強奪した奴だから相手は一発で上空高く吹っ飛ばされて轟沈判定だったし」

「あの武蔵が可哀想なくらい落ち込んでたよね」

「特攻とはいえ戦艦の武蔵を重巡の鈴谷がぶち破ったのよ?異常としか言えないの」

「そういえばそうか」

「次回以降は言わないこと。それと覚悟しておきなさいよ」

「何が?」

「今回のご褒美。とんでもない物要求されるわよ」

「まさか。普段は冗談で色々からかってくるけど良識持ってる子達だよ」

「明日の朝にも同じ事言ってられると良いわね」

「なんで朝なの?」

「しーらない。帰ってくる前に仕事済ませといた方が良いわよ」

私は即座に仕事を再開した。

こういう時、陽炎は冗談を言わない。

過去何度も助けてもらったのである。

 

 

-----

 

 

「提督っ!旗艦鈴谷、無事無傷で帰還いたしました~」

「お前な、誰が演習でジェノサイドやれっつったんだよ」

「兵装に制限ナシ!」

「あるよ!訓練に制限ナシみたいな事言ってんじゃない。まったくもー」

「いーじゃん勝ったんだからー」

 

私は一旦鈴谷との睨みあいを放棄し、傍らの艦娘に声をかけた。

 

「あー、えっと相手艦隊の方ですよね。本当に申し訳ありません」

「うぅ~痛すぎですぅ! 飲まないとやってられないぃ!」

「飲まないと?」

「ポーラ、マグナムボトルを要求します!赤と白3本ずつ!」

「えっと、まずは入浴されませんか?お食事はその後という事で」

「飲み会ですかぁ~?」

「え、あ、まぁ飲み会というか補給としての食事を・・」

「・・・」

 

ふと、ポーラが開きかけた口を閉じて、私をじっと見た。

私はなんだろうと首を傾げる。

 

「てーとくさんはー、もしかして男の人だったりしますかー?」

「ええ、男ですよ」

「Fantastico!一緒に飲んでくれますぅ~?」

「えっそれは」

「piccante・・あっ傷が・・演習時の傷が痛みますぅ」

「えっでも紙吹雪」

「一緒に飲んでくれないと心の傷で轟沈しそうですぅ」

「あー、まあ、それならちょっとだけ」

「GrazieGrazie!それでこそてーとくでぇす♪では後ほど」

 

機嫌良く執務室を後にするポーラを見送った後、私は鈴谷に向き直った。

 

「飲み会は鈴谷も出席ね」

「もちろんだよ?提督とポーラの間に居るから」

「そこまで露骨にブロックしなくても良いけどさ」

「するよ?」

「ん?」

「うちらの提督だもん。触らせないよ?」

「鈴谷、なんで目が据わってるの。もう酔ってるの?」

「酔ってないよ」

「・・はー。んで、何にするか決めた?」

「んえ?」

鈴谷の目に光が戻ってきたか。よし。

「何となくインチキ臭い気はするが、公式に認められたA勝利で怪我無しだからな」

「いーの?いーの?マジ良いの!?」

「なぁ鈴谷」

「なぁに?」

「ハッキリ言うけど、ご褒美でなくても私は鈴谷とお出かけしたりチューしたいよ?」

「!?!?!?!?!?!?」

「なんか私が君達と触れ合いたくないのをどーにかする為に褒美と引き換えにみたいに思ってる節を感じるんだけど、私は本来君達とイチャコラしたいし触れ合いたいしその先だっていいんだよ」

「!?!?!?!?!?!?」

「でもね、鈴谷。他の子にも聞いたんだけどさ、私しか男が居ないから私で妥協してないか?」

「へ?」

「伊19は違うと言ってくれたし、陽炎もそうじゃないって言ってくれた」

そういいながら傍らの陽炎を見ると、ニコッと笑いかけてくれた。

「だけど皆の好みが1人に集まるなんて考えられないだろう?誰かは好みから外れてるけど皆に合わせるしかなくて~みたいな事になってないかって怖いんだよ」

「・・・」

「鈴谷は可愛いんだよ。とんでもない美人さんだよ。こんなおっさんで妥協する必要なんて全くないんだよ?」

「・・・」

「だから皆に流されなくて良いし、言いたい事言うべきだよ?褒美は褒美でちゃんとあげるから」

「・・・てーとく」

「うん」

「鈴谷、可愛い?」

「もちろんだとも」

「てーとくから見て、私は好みに入る?」

「もちろんだよ」

「もしおっぱいが小さくても?」

「もちろんだよ」

「もし艦娘じゃなくても?」

「もちろんだとも」

「そっか・・艦娘だから好きってわけでもないんだ」

「違うよ。鈴谷の仕草も、見た目も、性格も、全部ひっくるめて好きだ痛っ!?」

 

その時、白手袋に包まれた陽炎の両手が伸びてきて、ぐりんと首を回された。痛いです。

 

「私は?」

「陽炎だって、最初にあった時からずっと好きだよ。ほんとに私は皆大好きなんだよ。だから」

「だから?」

「だから、自分を大事にして欲しいんだよ。私なんかに安売りしないでさあ」

「まだそんな事言ってるの?」

「まだ?」

「1つ質問。私や鈴谷の思う事や考えてる事を操れる?」

「出来るわけないよ」

「こう考えて。貴方は、それぞれ独立した考えを持つ子達から、好きって思われてるの」

「・・・」

「私は貴方に、好きになれなんて言われてない。むしろ安売りするなって突き放されてるわ」

「・・・」

「それでも、こんなに、大好きなの」

 

むちゅっ。

 

陽炎の手と唇が離れると、今度は別の手が私の顔を包み込んだ。

 

「鈴谷、安売りなんてしてないよ。大好きだよ提督」

 

ちゅっ。ちゅっ・・ちゅううううう・・・きゅぽっ

 

幾ら私が疎くても、この二人のキスは真剣な愛が込められてると解る。

だから私は、二人の首を両腕で引き寄せて、泣いてしまったんだ。

 

大した容姿じゃないし、若くないし、この子達の役に立ってるのかも分からない。

世界は終焉に向かってて、それでも人類は国どころか軍の中さえ団結出来なくて。

 

どうしようもない。

 

そう。私が何をしたところで世界の趨勢は変わらない。

それなら、たった1つだけの私の本心に従おう。

 

艦娘は可愛い。

 

艦娘の皆を守りたい。

彼女たちが好意を伝え、私が受け入れる事を望むのなら、応えよう。

過去のあれこれが理性を刺激して恥ずかしいけれど、折り合いを付けていこう。

今更だけど、そうすることに決めたんだ。

 

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