艦娘可愛いです。   作:銀匙

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【その19】

 

「提督ぅこのお酒サイコーです!Grazie、Grazieで~す!ポーラご機嫌で~す!」

「さぁさぁもっとグッと行きましょ!グッと!」

「バルバレスコも美味しいけど・・あ!アカーシ!バンフィもう少しくだサーイ♪」

「はい喜んで!」

「提督、何かお疲れですか?そうだ!アクィラがよしよししてあげましょう!」

「間に合ってます」

「あー・・」

 

食堂は地獄絵図が広がっていた。

食事会を半ば強引に最初に行い、その時点で眠たげだったマエストラーレ、グレカーレ、リベッチオの3人は部屋に退避させておいて本当に良かったと思う。

それから始まった慰労会という名の飲み会は既に6時間が経過し、とっくに日を跨いでいた。

誰がどう見てもべろんべろんに酔っぱらってるのにガンガン飲み続ける相手艦隊旗艦のポーラ。

顔色はさほど変わってないのに次々とグラスを開け続けるアブルッツィ。

その二人を見ないふりしつつ私にずっと話しかけてくるアクィラのお三方である。

一方。

そんな三人に接待と言いつつ私との間で戦っているのは鈴谷、翔鶴、陽炎の3人である。

私を挟んで反対側には酔いつぶれた夕張と、夕張を膝枕する伊26、私から離れない伊19。

そしてイタリア艦隊の背後に立ち、次々と超高級ワインを手渡し続ける明石屋。

お前1本10万位のワインをダース単位で渡すんじゃないよ!どこに備蓄してたの!

私が安いウォッカとかウイスキーとか適当にお酌してお茶濁そうと思ってたのに!

その請求書見たくもないんですけど!ていうかこうなるの嫌だったから元々呼んでないのに!

 

「あの、もうそろそろ良いお時間ですし、明日ってか今日に障るといけないのでお開きにしませんか?」

「ポーラ大丈夫!ポーラは大丈夫なのでまだ飲みますよぉ!あひゃひゃひゃ!」

 

私の懇願は一瞬で却下され、グラスに再び勢いよくワインを注ぎ込むポーラ。

あれは間違いなく明日は起床不可だろうなあ・・

ふと気が付くと、隣に居たはずの伊19が居らず、代わりに伊26が座っていた。

 

「ねぇニム」

「なになになに?」

「イクはどこ行ったの?」

「電話するって」

「電話?」

「うん」

 

私が首を傾げていると、電話を手に伊19が戻ってきた。

行動を目で追っていると、伊19はそのまま電話をポーラの耳にぐいと押し当てた。

 

「アカーシ!バルバレスコもう1ぽーん!・・あれ、おかしいなあ。ザラ姉さまの声が聞こえる?」

ポーラが一瞬でべろべろの酩酊状態から真顔に戻ったぞ?

「・・・ザラ姉さま?違うんですよ。ぽっ、ポーラ、一生懸命演習して怪我したので治療を」

赤ら顔から一気に青白くなってるが大丈夫なのか?

「バルバレスコ?違います違いますザラ姉さま。ばっ、バン・・ソー・・そうバンソーコーです!」

「へっ?朝一でアルコールチェック?今から向かう?止めてくださいザラ姉さま夜の海は危険で・・あっ」

すまし顔で通話終了ボタンを押す伊19。

青白さを通り越して土気色の顔色になっているポーラ。マジで大丈夫なのか?

 

「あ、あの、お部屋をご用意していますので」

「てっ、てーとくさん?」

「はいなんでしょう」

「ザラ姉さまに殺されたくないので協力してください」

「殺される!?」

「禁酒期間中にこんなに飲んだとバレたら間違いなくポーラ殺されます」

「なんで禁酒期間中に飲んだんですか」

「ここは総合商社アカーシの本拠地なんですよ!」

「はぁ」

「イタリアワインの日本総輸入元まで来て飲まないほどポーラ愚か者ではありません」

え?なにそれ初耳なんだけど。

「禁酒期間中に飲むほうが愚か者だと思うのですが」

「とにかく!今日は飲み会はなかったって言ってください!」

「あの、ポーラさん」

「何ですか提督さん!ポーラ裸踊りでもなんでもします!」

「いや、あの、あれ」

 

私がそっと指差した先には、ボトルからなみなみと注ぎ続けるアブルッツィ。

そして鈴谷と両手でがっぷり4つに組み合ってる赤ら顔のアクィラが居る。

ポーラの手からワイングラスが滑り落ちた。表情は絶望の2文字のみである。

 

「あの二人が二日酔い確実である以上無理だと思うんです。正直に言って謝りましょ?」

「イヤです。提督はザラ姉さまの怖さを知らないからそんな事言うんです」

「なんでそんなに怖いザラ姉さまとの約束を破ったんですか」

私まで口調がうつってきたよ。

「飲みたい!お酒が!そこに!あるからです!」

「とにかく、今から少しでもお休みになって、酔い覚ましをした方が良いですよ」

「うー」

「お水ありますよ。さぁ少しでも飲んで」

「・・・ザラ姉さま怖いです」

 

震えながらリスのように両手でコップの水をこくこくと飲むポーラ。

すっかり冷水を浴びせられた格好となった宴の中、パンパンと陽炎が手を叩きながら言った。

 

「はい、それではお開きという事で。皆様お疲れさまでした!」

 

すごいよ陽炎。こんな憔悴してるポーラを完全無視して場を締めたよ!

アブルッツィとアクィラもなんでそんな平然と席を立ってるのさ!

なんだか私まで夜明けが怖くなってきた。

 

 

-----

 

 

その朝はとても眩しくて、爽やかで素敵な朝だったんだ。

そしてそんな夜明けの海からきちんと上がってきたのがこの人。

 

「Buongiorno!ザラ級重巡、一番艦ザラです。初めまして提督」

 

私はこのあどけないはずの少女の肩口からゆらゆらとした殺気を感じて冷や汗が止まらなかったよ。

 

「あっ、あの、おはようございますザラ姉さま」

「ザラ姉さま?」

「あっいや、ポーラさんの口癖がうつってしまって」

「そのポーラはどこですか?」

「あっ、あああえーと、ちょっ、朝食中かな!?」

「こんなに朝早くからですか?」

「い、いいいや、ちょっと秘書艦に聞いてきます」

「一緒に行きます」

「そっ、そうですか」

 

ポーラに散々吹き込まれたのもあってビクビクしてたけど、真面目そうな子だなあ。

海外艦ってうちには居ないんだけど、艦娘は皆可愛いなあ。

 

「なんでしょう?」

「あ、いえ。ザラさん可愛いなあって」

「へっ!?」

「ああいや、私、昨日の酒が残ってるかもってこれ言っちゃいけない奴!」

 

恐る恐るザラを見ると、がっくりと肩を下げたザラが溜息をついていた。

 

「まぁ、嫌な予感はしてたんです」

 

そういいながらザラが指差したのは「総合商社明石」の看板。

やはりあのピンクが主犯か。

 

「今は本当にイタリアの品物って手に入らなくて」

「はぁ」

「明石屋さんは良心的なお値段でリガトーニとか売ってくださるので」

「ほう」

 

ちょっと手心を加えてあげようかな。

 

「でもいつの間にかポーラが高級イタリアワインを次々と買い込んで借金漬けになっていて」

 

明石アウトおおおお!

 

「借金を払い終えるまではお酒はダメって言ってたのに・・」

 

罪悪感がハンパないなこれ。

 

「あの、うちの明石が本当に余計な事してすみません」

「いえ!とんでもないです!無計画に買い漁ったポーラが悪いんです!」

「元々売ってなければそんな事にはならなかったでしょう。全て廃棄させますので」

「いえ、もう手遅れかと」

「は?」

「本当に美味しいんです。イタリアの超高級ワインは」

「はぁ」

「1度その味を知ってしまったら、多分現地に買い付けに行ってでも手にいれる筈です」

「え?そんなに長期休みが?」

「あるわけないじゃないですか」

「とすると?」

「脱走です」

「脱走!?」

「ですから、まだ、通販で手に入れられる方が」

 

なんかヤク中に両方ダメだけどこっちの薬の方がマシって選ばせてる感じが・・

悲痛な表情を浮かべるザラを見てると本当に申し訳なくなるよ!

っていうか、完全に明石の奴、ハメたな?

これはお灸を据えないとダメだ。

とはいえどうしたものか・・・あ。

 

「ザラさん、お願いがあります」

どうだろう、イクさん、ネタ集まったかなあ・・

 

 

 

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